日本全体が「エンジニア不足」にあえぐ今、ITエンジニアには底堅い需要があります。一方、スキル・経験・職種によって市場価値が大きく変動するのも、ITエンジニアの特徴です。そのため、年収アップ・キャリアアップを目指すには、市場価値を意識した自己研鑽・転職活動が必要になるでしょう。
ここでは、市場価値の高い職種について知りたいエンジニアの方に向け、具体的な職種の例やエンジニアの市場価値を高めるために必要なスキル・経験などを紹介します。
- 1. エンジニアの市場価値とは
- 2. 市場価値が高くなりやすいエンジニアの特徴
- 3. 市場価値が高くなりやすい職種の具体例
- 4. エンジニアとして市場価値を高めるために何をすべきか
- 5. エンジニアとしての市場価値を診断する方法
- 6. まとめ
1. エンジニアの市場価値とは
エンジニアの市場価値とは、そのエンジニアが持つスキルとキャリアです。どのようなスキルを持っているか、どのようなキャリアを持っているかによってそのエンジニアの市場価値が決まるということです。
人柄やコミュニケーション能力なども重要ですが、エンジニアという観点に絞るなら特にスキルとキャリアで評価が決まると言って過言ではありません。
エンジニアの市場価値は時代によって変化していく
エンジニアの市場価値はスキルとキャリアで決まるということでしたが、技術の世界は膨大です。たとえば組み込みの分野ではベテランで高いスキルを持つがWeb開発は未経験、データベースに特化して長年従事してきたがそれ以外の経験はない、といったエンジニアも多いでしょう。
多かれ少なかれエンジニアのスキルとキャリアは偏ります。それで問題なく、スキルとキャリアを持っている分野では市場価値が高く、逆に未経験の分野では市場価値が低くなるということです。
そして一度スキルとキャリアを培ったらそれが未来永劫使えるというわけではありません。もちろんIT業界で培ったスキルとキャリアが無駄になるわけではありませんが、市場を見ながら新たなスキルを磨き続ける必要があります。
IT業界は変化が激しいので、技術が陳腐化しやすいです。長年業務系の古いシステムに携わっていたためWeb技術に対応できない、といった話はよく耳にするので、市場の変化に対応していく必要があります。
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2. 市場価値が高くなりやすいエンジニアの特徴
一般的にエンジニアの市場価値は経験年数と比例して上昇する傾向にあります。ただし、「高年収を提示されやすいスキル・経験」を押さえていることが前提です。そこで最新の市場動向をもとに、市場価値が高いと判断されやすいエンジニアの特徴をまとめてみます。
市場価値が高まりやすいエンジニアのスキル面の特徴
フルスタック型
フルスタック型とは「複数の技術分野で知見を持ち、単独でシステムの設計・構築・保守・運用までをカバーできる人材」を指します。一般的にITシステムは、サーバー、ネットワークなどのインフラ部分やDB、アプリケーションなどで構成され、それぞれに担当のエンジニアがアサインされます。
フルスタック型のエンジニアは、プログラミング、DB、ネットワーク、UI設計など広範な専門知識を持ち、単独でシステム構築が可能(もしくはシステム開発を指揮できる)なことから、高い市場価値を持つ存在です。フルスタック型エンジニアがアサインされることで、分野間のコミュニケーション精度が上がり、スピーディーで高品質な開発が可能になるからです。
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マネジメント型
マネジメント型は「3~5年の実務経験を持ち、マネジメントスキルやマネジメント経験を持つ人材」と定義できるでしょう。よくある例としては、自身もSEとして働きながら、部下のSEやプログラマーを取りまとめる「プレイングマネージャー」のような存在が挙げられます。特にTL(チームリーダー)やPL(プロジェクトリーダー)クラスから年収が上がり始め、PM(プロジェクトマネージャー)クラスでは、メンバークラスの1.5倍程度の年収が提示されるケースも珍しくありません。
先端技術特化型
先端技術特化型は「AI、機械学習、データサイエンス、IoTなど先端技術に関するスキル、経験を持つ人材」です。これらの分野でスキル・経験を有するエンジニアは、一般的に「先端IT人材」と呼ばれます。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表している「DX白書2021」を参照すると、「先端IT人材」と「非先端IT人材」の年収には乖離があることがわかります。
具体的には、年収600万未満では非先端IT人材が先端IT人材よりも3~4割ほど多いのに対し、年収600万円以上になると先端IT人材の割合が高くなります。この傾向は年収の増加に比例して顕著になり、年収900~1000万円のレンジでは、先端IT人材の割合が非先端IT人材の約2倍に達しているほどです。
市場価値が高まりやすいエンジニアの思考面の特徴
エンジニアの市場価値はスキルとキャリアで決まり、また変化に合わせてスキルを身につけることが重要だとご説明しました。しかしこれを実行するのは簡単なことではなく、エンジニア適性のある思考面が必須になります。では市場価値が高まりやすいエンジニアは思考面にどのような特徴を持っているのか解説していきます。
プログラミングが好き
プログラミングが好きなエンジニアは、自分の市場価値などを意識しなくても自ずとスキルを身につけていきます。何事にも当てはまることですが、好きならどんどん上達していきます。そしてIT業界ではスキルや技術の指標がわかりやすいのでより「好きこそものの上手なれ」が当てはまります。
流行に敏感で学習意欲が高い
技術の流行に敏感で学習意欲が高い人もエンジニアとして成長できる適性があると言えます。ある程度開発現場での作業に慣れるとそこで成長が止まってしまうエンジニアも多いのですが、アンテナを張って新しいスキルを取り入れていけば、市場に取り残されにくいでしょう。
ユーザー目線で取り組める
エンジニアの仕事は技術力を提供することですが、最終的にその技術力はユーザーの求めるシステムになります。逆に言えば、いくら技術力が高くてもエンドユーザーのニーズに合っていないシステムが完成したら技術力によって価値を提供できていません。そのためユーザー目線で考える思考は必須です。
コミュニケーション力が高い
エンジニアとしてプロジェクトに参画すると、他の開発メンバーや顧客とやり取りすることになります。そこではコミュニケーションを取る必要もあります。コミュニケーション力が高ければ業務が円滑になり、またプロジェクトマネージャーのようにコミュニケーション力を武器にしたポジションもあります。
3. 市場価値が高くなりやすい職種の具体例
次に、市場価値が高くなりやすい職種を具体的に紹介します。
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーは「テクノロジーを活用してプロダクトの価値創出をリードする人材」です。プロジェクトマネージャーと混同されがちですが、目的は明確に異なります。プロジェクトマネージャーは、「プロジェクトの完遂」を目的とする一方、プロダクトマネージャーは「プロダクトの開発が完了したあとも、顧客に価値を提供できるようアップデートを続けていく」ことが目的だからです。
サブスクリプション型ビジネスの台頭により、長期かつ継続的な価値の提供が必須となる今、プロダクトマネージャーは技術と顧客をつないで価値を創出し続けるための重要なポジションであると言えます。
データサイエンティスト
データサイエンティストはデータを分析して業務効率化などに結び付けるエンジニアです。近年ビッグデータの注目度が高まっていて、ビッグデータを活用する企業が増加しています。ビッグデータ自体はデータベースに大量のデータが入っている状態なので、これを有効活用するための技術が必要です。そこでデータサイエンティストの役目ということです。
より厳密にはデータをマーケティングに役立てるデータマーケター、データ分析に特化したデータアナリストなどの分類もありますが、広くデータを分析し業務に役立てるエンジニアとしてデータサイエンティストという職種があります。
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データサイエンティストとは?役割や必要なスキルを解説
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先端技術エンジニア
AI、機械学習、IoTなど先端技術のスキル・知見を持ったエンジニアです。(後述の「AIエンジニア」や「IoTエンジニア」などが該当します)
近年は、「Python」のように先端技術と親和性の高い言語が生まれています。PythonエンジニアからAI・機械学習・IoTなどへ移行するエンジニアも少なくありません。ただし、IoTエンジニアには組み込みエンジニアの素養も必要になるため、電子回路やリアルタイムOSなど特殊なスキルが求められます。
テックリード
テックリードは「技術的な側面からチームをリード、もしくはサポートするリーダー」です。コード品質の担保やチーム全体の生産性向上、アーキテクチャや設計手法の選定など、主に技術面からチームを支えます。チームメンバー全体の技術的なメンターとも言えるため、深く広範な知識・スキルと、豊富な経験が求められる職種です。
AIエンジニア
AIエンジニアは機械学習によってビッグデータ解析を行うエンジニアです。AIはエンジニアの世界だけでなく、いろいろな業界、消費者の間でも話題になっている技術です。今後ますます市場が拡大すると考えられる技術です。
市場の拡大が見込まれるので、AIエンジニアの需要も伸びると言えます。AIエンジニアには、機械学習、ディープラーニングの知識にくわえ、Python、Javaなどのプログラミングスキルも求められます。
関連記事:AIエンジニアとは?仕事内容、知識・スキル、将来性を解説
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアはサーバー攻撃などから情報資産を守るエンジニアです。情報の機密性を守ることの重要性はIT業界だけでなく、どこの企業でも厳しく指摘されていることでしょう。そのためセキュリティエンジニアの需要は大きいのですが、セキュリティエンジニアはスキルが求められることはもちろん責任も大きい立場になります。
関連記事:セキュリティエンジニアの仕事内容とは?分野別に必要なスキルや資格も解説
IoTエンジニア
IoTとは、いろいろなデバイスをインターネットにつなげることです。具体的には、家電が代表的です。IoTの分野は今後も拡大していくと予測されるので、IoTエンジニアの需要も大きくなるでしょう。ただしIoTは独立した分野というよりは、組み込みエンジニアやWebエンジニアが派生している場合が多いです。つまり、これらのエンジニアが幅広いスキルを身につけた結果として存在します。
関連記事:IoTエンジニアは未経験から転職可能か?
クラウドエンジニア
クラウドエンジニアとは、クラウドサービス上でのシステム設計、構築などを行うエンジニアです。具体的なツールとしては「AWS」「GCP」「Azure」などが挙げられ、これらのツールを扱えると需要が高くなります。
クラウドエンジニアのバックグラウンドとしては、アプリケーションよりはインフラエンジニアから派生している場合が多いでしょう。インフラがクラウド化しているため、技術を追いかけていった結果クラウドエンジニアとしても活躍できるということです。
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ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは、ネットワークの構築・保守・運用を行うエンジニアです。ネットワークなのでインフラエンジニアやクラウドエンジニアと重複する部分がありますが、これらをひっくるめてネットワークエンジニアと考えると良いでしょう。
ネットワークエンジニアはネットワークの土台にある物理サーバーや、サーバーがクラウド上にある場合はクラウドサーバーの構築にも携わるということです。そして今後も需要が大きい分野になります。
関連記事:ネットワークエンジニアとは?どんな仕事かをわかりやすく解説
インフラエンジニア
インフラエンジニアは開発現場などのインフラ環境を構築・保守・運用するエンジニアです。インフラの範囲としては、土台となるサーバー、個々のパソコンなどの端末、ネットワークなどが含まれます。また最近はサーバー時代がクラウド化しています。そのためインフラエンジニアがクラウド技術を身につけるとより需要が高くなり、クラウドエンジニアとしても活躍できるようになります。
関連記事:インフラエンジニアとは?仕事内容や年収、将来性を解説
4. エンジニアとして市場価値を高めるために何をすべきか
エンジニアとして市場価値を高めるためのヒントをご紹介します。
複数の強みを持つ
現代のITエンジニアは、ひとつの専門領域だけでは評価されにくい傾向にあります。そのため、需要がある言語を2~3つ程度は扱えるようにしておきたいところです。例えば、C言語やJavaが身についているのであれば、PythonやPHPなども習得することで、「レガシーシステムから新システムへのマイグレーションプロジェクト」などで活躍できる可能性が高まります。
さらに、DBやネットワーク構築も身に着けると、汎用性が高く希少な人材と見なされるでしょう。
マネジメントスキルを研鑽する
ITシステム開発は、大規模化・複雑化に加え、品質や納期の要求も厳しくなっています。したがってチーム全体で生産性を高めなければ、顧客を満足させることが難しくなっています。テックリードやプロダクトマネージャーのように、技術に精通しつつも生産性向上・価値創造につながる施策を考案したり、チームメンバーが働きやすい環境を作ったりと、「チームを率いてパフォーマンスを向上させる」スキルが評価されるでしょう。
資格を取得する
IT業界は資格よりも実力重視です。しかし、知識が体系化されて定着している人材は、信頼される傾向にあります。そのために、資格取得も市場価値を高めるための有効な手段といえるでしょう。
先端技術に関与する
近年、ITシステムを活用している日本企業では「2025年の崖」という言葉が話題になっています。「2025年の崖」とは、「老朽化、ブラックボックス化が進むレガシーシステムを使い続けることで、競争力が落ち、経済的な損失が生ずるリスク」を指しており、2025年を境に巨額の経済損失リスクが発生するとの試算が出ています。その額は最大12兆円/年とも言われており、レガシーシステムのマイグレーションや先端IT人材の育成といった対策の必要性が叫ばれているのです。
このような現状を考慮すると、「新旧の技術を繋ぐDX人材」が求められることは確実です。前述したように、古い技術と新しい技術の両方を身につけ、「古い仕組みをリファインできる人材」を目指すことで、市場価値を高められるでしょう。
ポータブルスキルを身につける
ポータブルスキルとは、業種や職種問わず幅広く役立つスキルのことです。具体的には、思考力、プレゼンスキル、コミュニケーションスキル、問題可決力、交渉力、などが挙げられます。どれも抽象的なスキルなのでイメージしにくい部分はありますが、要するにつぶしの利く人材になるべきということです。
今の時代は変化が激しく、なおかつ多様化しています。またAIの台頭などによって、人間の仕事が変わりつつあります。IT業界は特にこのような時代の変化の影響を受けやすいです。ポータブルスキルを身につけて、臨機応変に動く必要があります。
5. エンジニアとしての市場価値を診断する方法
ネット上には、自分のエンジニアとしての市場価値を診断できるツールが複数あります。ツールでは今までの経験やスキルに関していろいろな質問をされ、最終的に自分の市場価値が表示されます。これらのツールである程度自分の市場価値を知れると同時に、何があれば市場価値が高まるのかということも推測できます。
ただしツールはあくまでも機械的に質問をしていくだけなので、参考程度と言えます。自分がアピールしたい項目がなかったり、上でご紹介したポータブルスキルなどはアピールするのが難しいです。
そこで、自分の正確な市場価値を知るためには転職エージェントに登録するのがおすすめです。転職エージェントに自身の情報を提供すれば転職エージェントが市場価値を判断し、適切な求人を紹介してくれます。
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6. まとめ
IT業界においてエンジニアは常に不足しているため、底堅い需要があります。さらに、今後も需要は高まっていくと予想されています。その一方で、エンジニアはスキル・経験・職種によって市場価値が大きく変動する傾向にある職種であるともいえます。そのため、年収・キャリアアップのためには、市場価値を意識した自己研鑽・転職活動を行うことが鍵となるでしょう。
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