経済産業省のデータをもとに、SEの需要状況や将来性を考察SEの需要と将来性について

IT市場の拡大に伴い、SE(システムエンジニア)の需要が高まっています。しかし、経済産業省の最新の調査によると、領域によっては将来的に人材が余剰となることも指摘されています。それでは、領域別で見たときSEの需要と供給はどう変化していくのでしょうか。この記事では、経済産業省の情報を交えながらSEの需要状況や将来性について考察します。

1. SEの現在の需要

まず、SEの現在の需要状況を簡単について解説します。

リーマンショック以降、企業におけるIT人材の不足感は急速に拡大しており、IPAが公表した調査(※1)では約92%のIT企業は人材が不足していると回答しています。

これらの調査結果から、現在のSEの需要は高いと考えてよいでしょう。

※1 参考:IPA「IT人材白書(令和元年5月24日)」

2. SEの今後の需要

次に、SEの将来の需要について解説します。
 
経済産業省が平成28年に公表した調査(※2)によると、2019年のIT人材は供給数が約92万人に対し不足数は約27万人となっています。システム開発などのITニーズは今後も拡大する見込みですが、少子化などによる労働者人口の減少に伴い、今後ますます人材不足が深刻化すると予測されます。
 
また、経済産業省の別の調査(※3)でも、生産性の上昇率とIT需要の伸びを考慮した6つのシナリオのうち、5つのシナリオにおいて2030年にIT人材が大幅に不足することが推計されています。

不足が予想されるのは、AIやIoTなどに対応する「先端IT人材」

同調査ではさらにIT人材を「先端IT人材」と「従来型IT人材」とに分けて推計を行っています。先端IT人材とは「AI やビッグデータ、IoT 等、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手として、付加価値の創出や革新的な効率化等により生産性向上等に寄与できる IT 人材」と定義されており、従来型IT人材とは「従来からの需要に対応するIT人材」と定義されています。
 
上記人材の2030年における需要を推計した結果、先端IT人材は多くのシナリオにおいて不足するのに対し、従来型IT人材は多くのシナリオで余剰となることが示されています。SEの中でも将来的に需要があるかどうかは、先端IT人材か従来型IT人材かによって異なるということです。
 
※2 参考:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(平成28年6月10日)」
※3 参考:経済産業省委託事業「IT 人材需給に関する調査(平成31年3月)」

3. 将来、需要が高まるSEとは

続いて、将来的に需要が高まると言われているIT人材の特徴について詳しく解説していきます。将来的に余剰が見込まれる従来型IT人材であっても、特定領域のスキルを伸ばすことで高い需要を保つことが可能になります。市場価値が高まる人材の特徴を押さえながら、今後のキャリアパスの設計に役立ててください。

AIやビッグデータ、IoTに対応できる「先端IT人材」

前述したとおり、AI やビッグデータ、IoT 等の先端技術を駆使して新しいシステムを開発する先端IT人材は、今後ますます需要が高まっていくでしょう。
 
具体的には、AIエンジニア、データサイエンティスト、IoT技術者といった職種が該当します。AIエンジニアは、ディープラーニングなどの手法を活用し、大量のデータを用いてAIモデルを構築し、AIを活用したシステムの土台づくりを担う職種です。構築されたAIモデルは、画像認識などさまざまなシステムに流用されます。医療や自動車、物流などさまざまな分野で活躍が期待されています。
 
データサイエンティストは、統計学やプログラミング言語を使用してビッグデータの分析を行い、業務効率化や新しいビジネスの創出の支援をします。例えば、今まで店員の経験でしか分からなかったお客様の嗜好性をシステム的に見える化し、商品の改善につなげていくなど、分析結果をもとにさまざまな業務の改善を企画・提案します。製造業や小売業、金融業など幅広い業界で需要が高まっていくでしょう。
 
IoT技術者は、デバイスやセンサーなどの制御プログラムを実装しIoTシステムの開発などを担う職種です。IoT家電の開発など、主に製造業などで活躍が期待されている人材です。
 
ここで紹介した業界はほんの一例で、これらの職種が必要とされていない業界はないといっても過言ではありません。これらの職種に就くには、該当する先端技術だけでなく、その周辺スキルの習得がカギとなります。
 
例えばAIシステムの開発現場では、AIエンジニアだけでなく、システムの実行基盤を構築して運用を行うエンジニアやプロジェクトを管理する人材が必要です。また、AIを活用した製品やサービスを企画し、市場に売り出す人材(マーケター)も求められます。自身の価値を発揮しやすそうな領域を見極め、スキルの幅を広げていくとよいでしょう。
 
先端技術の習得は、日本ディープラーニング協会が提供している検定や、データサイエンティスト協会のセミナーAWSなどクラウドサービス各社のeラーニングなどで学習することができます。

セキュアプログラミングやクラウド移行など、時代のニーズに対応できる「従来型IT人材」

従来型IT人材とは、従来からのIT需要に対して設計、開発、運用、保守などを担う人材です。具体的には、AIやIoT等の先端技術を用いないアプリケーション(ウェブアプリや業務アプリなど)、基幹システム、組み込みシステムなどが該当するでしょう。
 
先ほど、従来型人材は将来余剰となる可能性があるとお伝えしましたが、従来の技術すべてが新しい技術に代替されていくとは限りません。従来型のIT人材であっても、特定のITスキル領域で高い技術力を身につけることで自身の価値を高めることは可能です。

磨くべきスキル
・アプリケーションエンジニア:セキュアプログラミング、スクラム開発スキル など
・インフラエンジニア :クラウド移行スキル、クラウド運用するスキル、OracleやLinuxの高度なスキル(オラクルマスターのGold、LinuCのレベル3以上) など
・組込みエンジニア:制御ECUの開発スキル など
 
日々必要とされる技術は変わっていきますので、時代の流れを察知してスキルをアップデートし続けていくことが大切です。具体的には、アプリケーションエンジニアはPythonやRubyなどの需要が伸びている言語スキルやテスト自動化スキルを、インフラエンジニア はセキュリティとクラウドを、組み込みエンジニアは制御ECUなどの開発スキルを磨いていくことが大切です。

特定領域への高い専門性を持つ「セキュリティ人材」

セキュリティ人材は、先述した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」でも、市場成長の鍵を握る人材として取り上げられています。2020年には約19万人不足すると推計されていることから、セキュリティに関する知識・スキルを身につけることで活躍の場が広がるでしょう。
 
同調査ではセキュリティ人材に関する定義はありませんが、NEC、日立、富士通が共同で「統合セキュリティ人材モデル」(※4)というものを策定しています。
 
同モデルでは、アプリケーションなどの脆弱性診断を行うペネトレーションテスター、インシデント発生時に調査を実施するフォレンジックエンジニア、セキュリティに関するシステム仕様を策定するセキュリティコンサルタントなどの人材が定義されています。
 
これらの人材にキャリアチェンジする、もしくは現在の職種に活かせるセキュリティ領域のスキルを補填することで価値を高めることができます。
 
また、セキュリティに関する資格は比較的数が多く、国家資格である「情報処理安全支援士試験」「情報セキュリティマネジメント試験」、ネットワーク製品大手のCiscoが運営する試験である「CCNA Security」、世界的なIT団体であるCompTIAが運営する試験の「CompTIA Security+」などがあります。これらを活用することで効率的にスキルを習得することができるでしょう。

※4 参考:NEC・日立・富士通、サイバーセキュリティ技術者の共通人材モデル「統合セキュリティ人材モデル」を策定

4. まとめ

この記事では、経済産業省の調査結果をふまえながらSEの需要状況や将来性について考察しました。将来的に大幅な人材不足が予想される先端IT技術のスキル習得は、将来性を担保する上で有効な手段のひとつです。一方で、従来のIT領域の需要がなくなるわけではありませんので、SEとして活躍し続ける手段も複数あります。
 
どの領域においても大切なのは、変化する技術ニーズをすばやく察知して柔軟に対応していくことです。資格制度やセミナー、書籍などをうまく活用しながら、スキル向上の姿勢を持ち続けましょう。

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執筆者プロフィール
株式会社アイティベル 代表取締役 野崎 晋平(のざき しんぺい)

1985年生まれ。大学卒業後は東証一部上場のSI企業や小売企業のシステム部門で、多数の基幹システムやECサイト、各種業務システムの設計・開発・導入を担当。プロジェクト管理や要件定義、予算管理等の経験も持つ。2015年に独立し、現在はITサービス領域の記事制作やメディア運営、ITプロジェクト支援のための人材サービスなど、幅広く事業を展開している。

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