IT人材不足の背景と今後需要が減る人材・増える人材を政府データから考察IT人材(SE)が不足する背景と、その将来性について

経済産業省によると、SEをはじめとしたIT人材の不足数は、2030年には最大で79万人にまで上ると予測されています(※)。この背景には、少子高齢化による労働力人口の減少が大きな原因の一つとして挙げられています。この記事ではIT人材が不足する背景と、今後需要が減る、あるいは増えるIT人材について解説します。

※参考:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(平成28年6月10日)」P.7

1. IT人材不足の現状

IT人材とは、SE(システムエンジニア)やPG(プログラマー)、プロジェクトマネージャー、ITコンサルタントなど、ITスキルと知識を使ってシステム導入やシステム開発、IT戦略支援などを行う人材の総称です。ここでは、IT人材不足の現状を、経済産業省の調査(※)をもとに整理します。

現時点の状況

経済産業省が2016年に公表した調査によると、IT人材(IT企業と、ユーザー企業の情報システム部門に所属する人材の合計)の不足状況は以下となっています。

・現状でIT人材は91.9万人いるが、17.1万人が不足している
・上記のうち、情報セキュリティ人材は現在28.1万人いるが、13.2万人が不足している
・先端IT人材は9.7万人いるが、1.5万人不足している

このように、現時点でも多くのIT人材が不足しています。

2030年までの見通し

現時点で17.1万人以上不足している状況ですが、今後IT人材不足はさらに加速すると予想されています。具体的に不足する人材数は、以下3つのシナリオに分かれています。
 
・低位シナリオ:約41万人が不足
・中位シナリオ:約59万人が不足
・高位シナリオ:約79万人が不足

仮に低位シナリオの推移となったとしても約41万人ものIT人材が不足するとされており、さまざまな産業に大きな影響が出ることが懸念されています。
 
※参照:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(平成28年6月10日)」

2. なぜIT人材は不足しているのか

次に、IT人材が不足している理由について解説します。
IT人材が不足する大きな理由は、少子高齢化に伴う日本の労働力人口(15歳以上で働く能力と意思のある者)の減少が起因しています。
 
労働力人口が減少する一方で、現代の産業はITの利活用が必要不可欠となっており、IT市場は年々拡大を続けています。つまり、労働力人口の減少とIT案件の増加が同時に起こっている事が深刻なIT人材不足を招いていると言えるのです。

3. 今後需要が減少するとされているIT人材とは

次に、今後需要が減少するとされているIT人材について解説します。
IT業界では、従来のオンプレミスからクラウドへの変化など、仕事の内容が大きく変わってきています。このような技術変化に伴い「需要が高まる仕事」もあれば「需要が減少する仕事」もあります。

人工知能やロボット技術による代替が可能な人材

2013年に英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授によって発表された「The Future of Employment(雇用の未来)」という論文は、世界に大きな衝撃を与えました。この中で彼は、「AIやロボット技術の進展によって、将来的に現在の半数の仕事がなくなってしまう」といったことを主張しています。日本でも、マイケル・A・オズボーン准教授と野村総合研究所による共同研究(※)で労働力人口のうち49%が人工知能やロボットによって代替可能という結果が出ています。

よって、人工知能やロボットが得意とされている領域の仕事は、今後需要が減っていくと考えられます。これらが得意としているのは、単純作業(フローが決まっている)に近い作業です。IT業界では以下のエンジニア職種の需要が減少していくでしょう。
 
・運用や監視を担うエンジニア
・テスター(テスト実施を担当するエンジニア)
・プログラマー
 
参考:野村総合研究所「AIと共存する未来~AI時代の人材~」

技術革新により需要が減る人材

AIだけでなく、技術革新に伴い需要が減る人材もいるでしょう。
例えば、インフラ領域はクラウド化が加速しており、オンプレを主に扱うインフラエンジニアの需要は減少傾向にあります。また、ビッグデータやIoT、AIなど、これからのシステムの根幹となる先端技術を扱えないエンジニアも、需要は減少していくと考えられます。

反対に、サーバーやアプリケーションの設計作業を担うSEや端技術の実装を担当するPGの需要は上がっていくでしょう。次章で今後需要が高まるIT人材について詳しく解説します。

4. 今後需要が高まるIT人材とは

ここでは、今後需要が高まるIT人材について解説します。

経済産業省の調査(※)では、今後の市場成長の鍵を握るIT人材として、先端IT技術を担う人材と情報セキュリティ人材を挙げています。これらのスキルを身につける事ができれば、SEとして長く働いていく事ができるでしょう。それぞれ詳しく解説します。

先端IT技術を担う人材

先端IT技術とは、主に以下の4つ指します。
これらの需要は年々増えているため、先端IT技術を扱うSE・PGとして活躍できればIT業界で長く働いていく事ができるでしょう。

①ビックデータ
インターネットを活用して集積された膨大なデータはビッグデータとして、さまざまな分野で使われ始めています。ビックデータを扱う人材は、ビックデータを蓄積する仕組みを設計・構築するエンジニアやビックデータを分析してビジネスに活用するデータサイエンティストなどが考えられます。

IoT
IoTは、電気やガスのスマートメーターや家電、自動車など、さまざまなところで利用が始まっています。こうしたIoTを開発するエンジニアは、今後も需要が高まり続けることが予想されます。

③ロボット
労働力人口が減少する中で、従来の産業用ロボットだけではなく介護やサービス業などの分野でも、ロボットが人の代わりに仕事をする時代になるでしょう。そのようなロボットの開発やメンテナンスを担うエンジニアが求められています。
 
④AI(人工知能)
AIは医療業界や自動車業界、物流業界など、AIを応用できない業界はないと言って良いほど期待されている技術です。例えば、在庫管理システムではAIが商品の売れ行きや在庫状況を分析し、最適な仕入れや店舗への配送数をサジェストするといった技術がすでに実現され始めています。今後、AIはPGやSEに必須のスキルとなるでしょう。

情報セキュリティ人材(セキュリティエンジニア/セキュリティコンサルタント)

急速に拡大するセキュリティ上の脅威、そしてIoTなどネットワークに接続される機器が爆発的に増えるなどといった現状を踏まえ、セキュリティに関する高度な専門的知識・スキルを持つ情報セキュリティ人材の確保が急務となっています。情報セキュリティ事故は、企業の存続に影響を与えることもあるため、多くの企業が費用を投じて対策を講じています。企業の数だけニーズがあると言っても過言ではないでしょう。

※参考:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(平成28年6月10日)」 

5. まとめ

この記事ではIT人材が不足する背景と、今後需要が減る、あるいは増えるIT人材について解説しました。IT業界の人材不足は中長期に渡る課題として多くの業界で認知されています。しかし、すべてのIT分野で人材が不足するわけではありません。今後SEとして長く働いていくには、需要が増える技術、減る技術の動向を把握しながら、求められるスキルを習得し続ける事が大切です。

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執筆者プロフィール
株式会社アイティベル 代表取締役 野崎 晋平(のざき しんぺい)

1985年生まれ。大学卒業後は東証一部上場のSI企業や小売企業のシステム部門で、多数の基幹システムやECサイト、各種業務システムの設計・開発・導入を担当。プロジェクト管理や要件定義、予算管理等の経験も持つ。2015年に独立し、現在はITサービス領域の記事制作やメディア運営、ITプロジェクト支援のための人材サービスなど、幅広く事業を展開している。

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