フルスタックエンジニアのロードマップを初級~上級に分けて解説

最終更新日:2024年10月15日

フルスタックエンジニアは、サーバーサイド開発からフロントエンド開発・インフラ設定まで、幅広いスキルを持った技術者です。フルスタックエンジニアとして活躍するには、下流工程で専門性を身につけてから、上流工程を経験しつつ、他の技術分野を習得するキャリア戦略が推奨されます。

本記事では、フルスタックエンジニアのキャリアを目指すためのロードマップについて解説します。

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この記事のまとめ

  • フルスタックエンジニアは、幅広い案件、技術、工程に対応できるエンジニア
  • フルスタックエンジニアになることでIT市場で需要が生まれやすく、スキルの相乗効果がある
  • フルスタックエンジニアはスキルが浅くなってしまうことがあるため、得意分野を作ることも重要

フルスタックエンジニアとは?

フルスタックエンジニアとは、アプリケーション開発からインフラ設定まで網羅的なスキルを持ったエンジニアのことです。サーバーサイド開発やフロントエンド開発に加え、サーバー・データベース・ネットワークなどの技術も担当する場合があります。

フルスタックエンジニアの仕事内容

フルスタックエンジニアの仕事内容


フルスタックエンジニアに仕事内容は当然多岐にわたります。具体的には、フロントエンド開発、バックエンド開発、インフラ構築、データベース開発などが挙げられるでしょう。またシステムの種類も幅広いです。開発だけでなく、マネジメントを担当する場合もあります。

フルスタックエンジニアの年収

フルスタックエンジニアの年収はどのような案件にどのようなポジションで参画するかによって変わってきます。フルスタックエンジニアは幅広い案件に参画するので、年収も幅広いということです。レバテックキャリアの求人では、フルスタックエンジニアの平均年収は700万円程度と考えられます。

フルスタックエンジニアが持つべきスキル

フルスタックエンジニアに求められる技術スキルについて解説します。技術要素からプロジェクト管理・技術経営まで網羅しているIPA応用情報技術者資格試験のシラバスも、スキルマップとして参照すると役立ちます。

参考:応用情報技術者試験(レベル3)シラバス

プログラミング

Webアプリケーションやモバイルアプリの開発を中心としたプログラミングの実務経験が求められます。具体的には、PHPやJavaを使ったサーバーサイド開発や、JavaScriptを活用したフロントエンド開発などを経験したエンジニアが多いです。

また、効率的な開発を行うために、最新のフレームワークを使いこなせるスキルが求められる場面も見受けられます。

開発プロセス

要件定義・設計・開発・テストの各局面で力を発揮できるのが、フルスタックエンジニアの特長です。ユーザーから見た機能を実装する際に、どのように実装するかを決定し、実際に開発作業も行います。

また、開発プロセスには欠かせないUMLを用いた文書作成などの基本知識も備えている必要があります。加えて、テストツールの利用やCI/CD(継続的インテグレーション、継続的デリバリー)の流れを理解しており、開発・運用の効率化にも貢献します。

ミドルウェア

アプリケーション開発をする上では、ミドルウェアに対する理解も欠かせません。たとえば、Webアプリケーションの場合、Webサーバーの設計・実装を経験していると、セキュリティを担保しながら安定したサービス運用につなげられます。

また、データベース・ソフトウェアの設定を行ったり、データモデルを設計したりして、パフォーマンスチューニングに携わる場面もあります。

インフラ(インフラストラクチャー)

フルスタックエンジニアには、ネットワーク技術の基礎に対する理解が不可欠です。近年では、クラウド基盤を活用したアプリケーションが増えているため、AWSに代表されるクラウドサービスの設計・設定を行う場面が多々あります。

また、Webアプリケーションを安全に運用するため、情報セキュリティの基礎を理解し、専門家の支援を受けながら最低限の対策を講じる必要があります。

プロジェクト管理

プロジェクトマネジメントの概念を理解し、経験を積んだ上級職のエンジニアとして、チームで成果を上げられるように貢献することが求められます。また、PM(プロジェクトマネージャー)や顧客企業と円滑なコミュニケーションがとれるソフトスキルも欠かせません。

フルスタックエンジニアを目指す際の心構え

これからフルスタックエンジニアを目指す人が持つべき心構えについて解説します。

好奇心と継続的な学習

変化の激しいIT業界では、新しい技術が絶え間なく登場します。そのため、好奇心を持って学習を続けられる人は、フルスタックエンジニアに向いています。キャリアについて受け身になることなく、自らの興味の幅を広げて継続的に学習するからこそ、幅広いスキルが身につけられるでしょう。

柔軟性を身に着ける

担当範囲に柔軟に対応し、さまざまな仕事を依頼されても前向きに臨める人が求められます。柔軟性に優れている人は、他人が担当した仕事であっても、技術文書などから関連技術がどのように動いているのか、どのように実装されているのか、といった情報を得られるため、積極的に情報を吸収していくことができます。

長期的なキャリア戦略

幅広いスキルは、一朝一夕で身につくわけではありません。フルスタックエンジニアとして活躍するには、長期的なキャリア戦略が必要なことを理解しておきましょう。目の前の仕事を着実に完遂させる経験を積むなかで、結果としてフルスタックのスキルが身につく可能性もあります。

また、キャリア設計は会社任せにせず、フルスタックエンジニアとしてのキャリアを確立するよう心がける必要があります。スキルが身につけば、フリーランスとして独立できる可能性もあるでしょう。

専門性を磨く

フルスタックエンジニアは、ゼネラリストであると評価される傾向がありますが、ゼネラリストにはメリットとデメリットが存在します。メリットとしては、さまざまな分野で力を発揮し、チームの中でもユニークな存在となり、高い評価を得られる点が挙げられます。

一方、器用貧乏な存在だと思われるデメリットもあります。そのためフルスタックエンジニアには、ひとつの専門性を磨き上げてから、技術の幅を広げていくキャリア戦略が推奨されます。

フルスタックエンジニアのロードマップ1【未経験から初級】

フルスタックエンジニアを目指す際に、1年~3年程度の間で経験するべきことを整理します。開発・テストの技術を身につけ、実務をこなせるレベルに達するのが目標です。

下流工程

定められた仕様に従って、開発・テストの実務経験を積むのがエンジニアとしての第一歩です。プログラミングの品質を追求したり、方法論に従ったテストを実施したりするなど、理論と実践の両面から経験を高める必要があります。

また、サーバーサイド・フロントエンド・モバイルといった技術領域のなかから、ひとつの分野で専門性を身につけるとよいでしょう。最新のフレームワークやツールを積極的に活用し、理解を深めます。

関連技術

プログラミング作業にとどまらず、データベース設計やクラウド基盤の設計・設定を経験するのも、フルスタックエンジニアを目指すための重要なステップです。ほかにも、テストツールの利用・セキュリティを意識した開発・本番環境の設定・開発プロセスの整備など、開発プロセスを円滑に進めるために学ぶべきことは多々あります。実務に欠かせない技術文書の作成や、設計アイデアの文書化にも、積極的に関わるようにしましょう。

Web開発をひとりでできる

「初級」の段階では、Webアプリケーションをゼロから作る経験を積むことが重要です。初級者向け技術書のサンプルのような簡単なサービスで構わないため、要件定義・設計・開発・テスト・運用を一通り経験すると、どのような技術でアプリケーションが構成されているのかを体感できるでしょう。

クラウド基盤を上手に活用すれば、コストをかけずにWebアプリケーションを外部へ公開できます。Web開発を体験する機会は、企業の研修・独学・プログラミングスクールなど豊富にあります。

関連記事:未経験からフルスタックエンジニアになるには?1年間でやったこと【インタビュー】

フルスタックエンジニアのロードマップ2【中級から上級】

エンジニアとして数年の経験を積むと、PMやアーキテクトへのキャリアアップも検討できます。フルスタックエンジニアとして活躍するのに何年の経験が必要かは場合によりますが、少なくとも各技術分野や開発プロセスのスキルを網羅しておく必要があるでしょう。以下では、上級エンジニア職のなかでも、フルスタックエンジニアを目指す際に経験するべきことを整理します。

上流工程

要件定義や設計を経験すると、エンジニアとしての評価が高まります。下流工程を経験しているからこそ、技術の理解に基づいて上流工程の活動ができるためです。顧客企業のニーズに対して最適な機能を提案したり、特定の技術分野のスペシャリストとしてチームを主導したりする経験は重要です。

専門性

いわゆる器用貧乏と言われる評価を避けるためには、特定の分野で専門性を磨くことが推奨されます。とくに、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)といった先端技術・AWSを含めたクラウド技術・Dockerのような仮想化技術に秀でた人は需要が高いです。また、システムアーキテクトデータベーススペシャリストといった上級資格で専門性を証明する方法もあります。

継続した学習

フルスタックエンジニアとして不足しているスキルや補完するべきスキルを特定し、学習を継続する姿勢が求められます。たとえば、アプリケーション開発を主に行ってきた人は、クラウド技術を身につけると、エンジニアとしての価値がより高まるでしょう。加えて、プロジェクトマネジメントや経営戦略を理解し、利害関係者との会話を円滑にする方向性も考えられます。

フルスタックエンジニアのメリット・デメリット

フルスタックエンジニアにはメリットもデメリットもあります。

メリット

まずフルスタックエンジニアのメリットとしては、幅広い対応ができるためエンジニアとしての市場価値が向上しやすいです。いろいろなポジションに対応できることはもちろん、フルスタックエンジニアは一人でプロジェクト全体を把握できるため、プロジェクトを適切な方向に牽引しやすいという点も評価につながるでしょう。

デメリット

フルスタックエンジニアのデメリットは、特定の分野で突出するのは難しいことです。いろいろな分野を学ぶことになるため、全体的に広く浅くなりがちです。フルスタックエンジニアを名乗っているものの、すべてが中途半端、もしくは実践的なレベルで考えると低め、といった場合も多いでしょう。フルスタックエンジニアとして特に得意分野は専門レベルと言えるレベルに達するには、他のエンジニアよりも勉強量が必要になります。

フルスタックエンジニアになった後のキャリアパス

網羅的なスキルを習得した後、フルスタックエンジニアとして活躍し続けることも可能ですが、その他の職種に移るキャリアを検討してもよいでしょう。フルスタックエンジニアのキャリアパスとして考えられる職種を紹介します。

アーキテクト

システム全体を俯瞰した設計を目指し、技術的な意思決定を行う職種です。求められる要件に基づいて、最適なインフラ構成を検討したり、プログラミング言語・フレームワークを選定したりする役割を持ちます。フルスタックエンジニアの網羅的なスキル・経験が活用できる職種と言えます。

関連記事:
ITアーキテクトに役立つ資格とは?仕事内容や役割もあわせて解説
ITアーキテクトとは?求められるスキル・資格などをご紹介

エンジニアリングマネージャー・VPoE(Vice President of Engineering)

開発チームの生産性を高めるために、開発チームを統括するエンジニアリングマネージャーの役職を置く企業が見受けられます。人材管理・育成・採用に携わる場面が多いため、コミュニケーション力を含めたソフトスキルが求められます。また、開発・運用環境の最適化を目指すDevOpsを含めて、エンジニアチームに高い生産性を維持させる責任も負います。

CTO(Chief Technology Officer)

経営層のひとりとして技術的な意思決定に携わるのと同時に、技術のスペシャリストとして社外にも影響を及ぼすのがCTO(最高技術責任者)の役割です。創業初期のベンチャー企業であれば、実装やコードレビューにも携わる機会が多く見られます。フルスタックエンジニアとしての広範なスキルが活用できる役職と言えます。

関連記事:CTOとは?CEOとの違いや各役職の役割について解説

フリーランス

フリーランスのエンジニアとして独立し、顧客企業の開発作業を実施したり、アプリケーション開発に関わるコンサルティング業を営んだりするキャリアも考えられます。サーバーサイドからフロントエンドにまたがる案件でも対応できるのはフルスタックエンジニアの強みです。幅広い領域で案件が獲得できれば、フリーランスとして息の長い活躍ができるようになります。

フルスタックエンジニアを目指す際の所属企業ごとの考慮点

現在の所属企業によって、経験できる領域が異なり、フルスタックエンジニアを目指す際のキャリアパスが変わってきます。以下では、フルスタックエンジニアを目指す際の考慮点を、所属企業ごとに解説します。

Web系企業からの転職

アジャイル開発を採用するWeb系企業は、フルスタックエンジニアの需要が高い傾向があります。そのため、自社や関連企業ですでにフルスタックエンジニアとして活躍しているロールモデルを見つけ、キャリアの参考にしてもよいでしょう。エンジニアとして専門性を磨きながら、Webサービス運用に必要なスキルを総合的に身につけていくキャリア戦略が推奨されます。

SIer(エスアイヤー)からの転職

SIerで働く利点として、上流工程を中心に開発プロセスを網羅的に経験できることが挙げられます。一方で、企業によっては実装に携わる機会が少ないため、フルスタックエンジニアを目指すには、技術力を補完する必要があります。

また、旧来のウォーターフォール開発を採用するSIerでは、分業体制をとるケースが多いです。そのため、ゼネラリストであるフルスタックエンジニアが活躍できるプロジェクトが自社にあるかどうかを確認する必要があるでしょう。もし何年たっても、そのような機会が得られなければ、転職も検討するべきです。

ユーザー企業からの転職

ユーザー企業の情報システム部門は、企画や運用が主な役割のため、フルスタックエンジニアが活躍する機会は限られています。現在は社内エンジニアで、フルスタックエンジニアを目指す場合、プログラミングを学習して技術力を補完しながら、転職を視野に入れたキャリアアップを検討するのもひとつの手です。

Web制作会社からの転職

Webサイトの制作を請け負う企業では、Webデザインやフロントエンド開発がエンジニアの主な役割となります。サーバーサイド開発のスキルを補完すれば、フロントエンドに強みを持つフルスタックエンジニアになれる可能性もあります。長期的な視点を持って、着実にスキルを身につけながらキャリアアップを目指すことが推奨されます。

未経験からの転職

エンジニアとしての実務経験がない場合は、プログラミングスクールなどを活用して、Webアプリケーション開発の流れを経験するところから始めるべきです。そして、可能であればWeb系企業に就職し、エンジニアとしての実務経験を積みます。まずは、ひとつの分野で専門性を磨き、長期的な視点でフルスタックエンジニアを目指しましょう

フルスタックエンジニアに関するよくある質問

フルスタックエンジニアに関するよくある質問と回答を紹介します。

Q1. フルスタックエンジニアとSEの違いを教えてください。

フルスタックエンジニアは、幅広い案件、技術、工程に対応できるSEのことです。逆に言えば、SEとしていろいろな案件に参画しながら技術の幅を広げていけば、フルスタックエンジニアと言えるスキルが身に付く可能性があります。

Q2. フルスタックエンジニアの強みは何ですか?

フルスタックエンジニアの強みは、幅広い役割に対応できることと、一人でプロジェクト全体に対応できることです。フルスタックエンジニアが幅広く対応することで業務をこなしていけることはもちろん、一人の人が対応できる範囲が広いとコミュニケーションのミスや無駄な労力を減らせます。

Q3. フルスタックエンジニアになるには何年かかりますか?

フルスタックエンジニアになれる目安は、3年~5年程度です。ただし3年~5年普通にエンジニアとして働いていれば良いわけではなく、エンジニアとして働きながら休日は勉強や独自のシステム開発などに費やし、熱心にスキルアップに取り組んだ場合に3年~5年ということです。

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