組み込みエンジニアとは、ネットワーク機器や車載機器、家電のマイコン、工業用機械などの制御等で利用するソフトウェアを開発するエンジニアです。業務範囲は幅広く、設計や開発、テストのみならず、企画フェーズから開発に携わることもあります。現状でも各種機器へのソフトウェア開発の需要があり、今後はIoTでのさらなる活躍が見込まれる分野です。
本記事では、組み込みエンジニアとして活躍する上で必要となるスキルについて記載します。
1. 組み込みエンジニアに求められる知識とスキル
組み込みエンジニアの作るプログラムやソフトウェアは、車両や家電に搭載されるマイコン向け、ネットワーク機器やカーナビなどの電子機器、工業用機械、ロボットなどの制御といった目的で作成されます。ハードウェアに近い部分のプログラムを作成する必要があり、そこには他のITエンジニアとは違うスキルが必要とされる部分があります。
技術スキル
プログラミング言語としてはC言語、C++、javaなどが利用されることが多いです。また、場合によってはアセンブラなどの低水準言語を利用することもあります。
組み込みアプリはリソースに制限がある、高速な動作を求められるといったタイトなケースが多く、ただ動くプログラムではなく最適化されたプログラムを作成できるスキルが必要となります。各言語の言語仕様、仕組みを理解し、処理速度やメモリ使用量を考慮したプログラム作成が求められるため、習熟が必要です。
技術知識
組み込みエンジニアは機能要件を満たしたプログラム作成にあたり、最適な言語、構造の選択ができる必要があります。そのためには、言語間での特徴の差異がわかるレベルでの技術知識が求められます。
また、ハードウェア面に関しても知見が求められます。特によく利用するハードウェアについて、特性なども押さえておきたい知識です。さらには、基盤となるOSやユーザ側視点でのGUIについても見識が必要となってきます。
ヒューマンスキル
組み込みエンジニアの業務であるシステム開発プロジェクトでは、複数人でチームを作ってシステム、プログラムを構築することが多いです。チームでの成果を実現するために、円滑な推進に向けたコミュニケーション能力が必要となります。
また、タイトな環境でのプログラム作成では仕様、要件についての確認や齟齬の解消が必要不可欠です。クライアント、ハードウェア側の担当者、さらには連携するアプリケーションの担当者など対外的なコミュニケーション能力も求められます。
2.組込みスキル標準(ETSS)とは
組み込みスキル標準(ETSS)は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)および経済産業省により策定された、組み込みソフトウェアの開発者に関する基準です(※1)。大きく、下記の3つのカテゴリに分かれています。
-
・スキル基準
・キャリア基準
・教育研修基準
最新版は2008年度に策定された組み込みスキル標準2008です。
※1 独立行政法人情報処理推進機構「組込みスキル標準(ETSS Series)」(2021/07/21アクセス)
有効に活用することで組み込みエンジニアとしてのスキルを明確化することができます。キャリア形成上で次に必要となるスキルを探す目的でも利用可能です。
スキル基準
組み込みソフトウェアに関する技術スキルを「技術要素」、「開発技術」、「管理技術」の3つのカテゴリに整理し、4段階の階層(初級、中級、上級、最上級)でスキル診断を行います。スキルの定量的な可視化を目的とするものです。
キャリア基準
組込みシステム開発に関わる職種・専門分野を分類し、経済性と責任性の度合いを7段階のキャリアレベルで表したものです。職種は全10種類に分けられており、職種に紐づいて一つまたは二つの専門分野が紐づいています。
職種、専門分野の組み合わせは以下の通りです。
職種 | 専門分野 |
---|---|
プロダクトマネージャー | 専門分野組込みシステム |
プロジェクトマネージャー | 専門分野組込みソフトウェア開発 |
ドメインスペシャリスト | 専門分野組込み関連技術 |
システムアーキテクト | 専門分野組込みアプリケーション開発 |
システムアーキテクト | 専門分野組込みプラットフォーム開発 |
ソフトウェアエンジニア | 専門分野組込みアプリケーション開発 |
ソフトウェアエンジニア | 専門分野組込みプラットフォーム開発 |
ブリッジSE | 専門分野組込みソフトウェア開発 |
開発環境エンジニア | 専門分野組込みソフトウェア開発 |
開発プロセス改善スペシャリスト | 専門分野組込みソフトウェア開発 |
QAスペシャリスト | 専門分野組込みソフトウェア開発 |
テストエンジニア | 専門分野組込みソフトウェア開発 |
教育研修基準
組込みソフトウェア開発のスキルアップ・キャリアアップを支援する教育カリキュラムのフレームワークを定義しています。活動のポイントと予定成果物をペアとして3つの組み合わせが対象です。
活動のポイントと予定成果物は以下になります。
-
・研修コースなどが対応する技術範囲やレベル定義などのカリキュラムの枠組みの策定
▶教育カリキュラムフレームワーク
・組込み技術者教育カリキュラムの品質維持
▶未経験者向け教育ガイドライン
・組込み教育カリキュラムの普及
▶研修コース開発手順書
3.組み込みエンジニアとしてのスキルを証明できる資格
組み込みエンジニアになるために必要な資格は特にありません。しかしながら、プロジェクトへのアサインや転職時などで活用できる資格が存在するためご紹介します。
ETEC(組込み技術者試験制度)
一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が運営する組み込み技術者向けの試験制度です。二段階のレベルがあり、クラス2は組込みソフトウェア開発者としてのエントリレベル、クラス1は組込みソフトウェア開発者のミドルレベルの知識を有することを示す試験です。クラス1はETSSのレベル3に相当します。
JSTQB(テスト技術者資格認定試験)
JSTQB 認定テスト技術者資格とは、テスト技法やテストマネジメント、テスト評価に関するスキルを証明する資格です(※1)。JSTQBはJapan Software Testing Qualifications Boardの略称でソフトウェアテスト技術者認定の運営を行っています。各国のテスト技術者認定組織と相互認証を行っているため、海外でも有効な資格となっています。
「Foundation Level」ではソフトウェアテスト全般に関する知識が問われ、「Advanced Level」ではテストマネジメントやテスト評価に関する知識が問われます。組み込み系に特化した資格ではありませんが、テストエンジニアリングに関する知識を習得することができます。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の運営する国家資格試験です。ITエンジニアとして実務に臨むための基礎レベルのスキルが問われます。出題範囲はハードウェア、ソフトウェア、プログラミング、プロジェクトマネジメントなど多岐に渡り、合格率は20%前後のことが多い難関資格です。組み込みエンジニアに限らず広くITエンジニアとしてのスキルと知識を示す資格となっています。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の運営する国家資格試験です。ITエンジニアとしての基礎レベルを問う基本情報技術者試験からワンランク上のスキル、知識を持つことを示すことができる資格です。ITエンジニアとしての応用レベルのスキルを持ち、高度IT人材として方向性の定まった者を対象者としています。出題範囲は基本情報技術者試験と同様に多岐に渡り、合格率は20%前後のことが多い難関資格です。組み込みエンジニアに限らず広くITエンジニアとして、ワンランク上のスキルと知識を保有することを証明してくれる資格となっています。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデットシステムスペシャリスト試験は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の運営する国家資格試験です。IoTを含む組込みシステムの開発に関係する広い知識とスキルを持つ設計・構築・製造を主導するエンジニアを対象者としています。IoTを含めた組み込みソフトウェアに特化した資格試験であり、組み込みエンジニアとしての高いスキルを保有することを示すことが可能です。
4.まとめ
組み込みエンジニアはよりハードウェアに近いタイトな領域のプログラムを作るエンジニアです。高度な設計・開発技術が必要とされる分野であり、技術スキル、技術知識、ヒューマンスキルといった能力が求められます。対外的にそのスキルを示すためには組み込みスキル標準(ETSS)に沿ってスキルを整理することや各種の資格の取得が利用できます。
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