社内SE(情シス)とSEの違い

最終更新日:2022年11月10日

同じSE(システムエンジニア)でも、社内システムの開発や運用を担う「社内SE(情シス)」と、顧客向けのシステム開発を担う「SE」では、仕事内容や求められるスキルなどに大きな違いがあります。また近年では社内SEの中でも、自社が提供するサービスの開発や運用に携わる、社内のDX推進を主業務とするなど仕事内容が多様化してきています。

この記事では、キャリアアップしたいものの、SEと社内SEとどちらを目指すべきか迷っている方に向け、社内SEとSEの違い、それぞれの仕事内容や求められるスキルについて解説します。

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社内SEとSEの違い

SEや社内SEといった職種に詳細な定義や資格は存在しません。このため、本記事では一般論としてその分類について記載しています。

ベンダー企業かユーザー企業かでの分類が一般的

本来、SEはIT技術を利用して課題を解決する仕事の総称です。狭義ではITベンダーに所属して、クライアントのためのITシステム開発を行うエンジニアをSEと呼びます。以降、本記事では狭義のSEの意味で記載します。

SEと社内SEでは業務内容が異なります。

社内SEの例としては以下が挙げられます。

  • ・社内向けのIT全般に対して、企画、導入、開発、管理等を行う情報システム部門のSE

    ・自社の提供する外部向けITサービスの開発運用を行うSE

    ・自社内のDX推進を主業務とするSE


社内向けにシステムの開発を行ったり、ITを用いて社内の業務改善を行う人が社内SEで、ITを活用したサービスや商品をクライアントに提供することに携わる人がSEです。

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社内SEの特徴

社内SEの大きな特徴は、企業の間接部門に所属していることです。たとえば、金融業界、物流業界、製造業界といったITを商材にしているわけではない企業に所属し、IT関連の業務を行う立ち位置になります。

そのため、他部門が働きやすいようにIT周りを整えたり、サーバーやパソコンに不具合が生じれば対応したりする業務が多くなります。また、自社向けのシステム開発を行う場合、社内SEはベンダー企業との交渉役になることが多いです。

開発の主軸はベンダー企業になりますが、社内SEが適切に要望を伝え、マネジメントしていく必要があります。

SEの特徴

SEは主にクライアントに対してシステム、もしくは技術力、労働力を提供するエンジニアを指します。自社でシステムを完成させて販売する場合もあれば、クライアント先に派遣される形で技術力、労働力を提供する場合もあります。

社内SEと違って、自社向けの作業ではないという点が大きな特徴です。SEが所属しているクライアント企業に対してシステムや技術力を提供する企業をベンダー企業と言います。

関連記事:SE(システムエンジニア)とは?仕事内容・スキル・年収などを解説

社内SEとSEの具体的な仕事内容の違い

前項では社内SEとSEの大まかな違いについて説明していますが、より具体的に仕事の内容がどのように異なっているかを確認しましょう。

社内SEの仕事内容

社内SEの仕事は、社内のITに関することすべてです。ITを利用して業務をスムーズに行うための支援をすることが社内SEのミッションとなります。企業によって違いはあるものの、IT機器の管理からシステム導入に関する企画まで、社内SEの業務は多岐に渡ります。

関連記事:社内SEとは|仕事内容や必要なスキル、役立つ資格も解説

ITに関する予算管理

IT関連に必要となる予算の管理を行うことも社内SEの業務の一つです。システム投資、システム運用コスト、IT機器導入費用、減価償却などあらゆる部分でのITに関連する予算を把握する立場にあります。

ITに関する企画

業務効率化のためのITシステム導入に関する企画を行うことも社内SEの仕事です。業務部門と連携して、業務へのIT導入による効率化の企画を立てます。コストと費用対効果をまとめて、経営層にプレゼンテーションを行います。

システム開発

システム企画が通れば、社内SEはシステム開発プロジェクトの推進を行う立場となります。各企業の方針により、システム開発プロジェクトの推進方法は、内製化かITベンダーへの発注に分かれます。

内製化の場合は要件定義、設計、開発、テストなどを社内で実施するため、社内SEはその指揮を取り、実際の開発作業も実施する立場となります。ITベンダーに発注を行う場合には、ベンダーの仕事を監視しプロジェクト推進の管理を行う立場となります。

開発にはサーバーやセキュリティ、ネットワークなどの知識が必要となります。

システム運用・保守

社内で利用しているシステムの運用及び保守を行います。利用者と直接やり取りをするため、意見を汲み上げてシステム改善することも業務に含まれます。

実際に直接システム運用業務を行う場合と、ベンダーに発注してシステム運用業務の指示、管理を担当する場合があります。インフラ周りの知識が必要となります。

ベンダーマネジメント

システム開発や運用・保守で発注したベンダーの業務状況を把握し、管理することも社内SEの重要な業務です。また、特定のベンダーに依存しすぎたベンダーロックインと呼ばれる状況を避ける必要があります。

マルチベンダーでの開発では、ベンダー間の連携を取り持つベンダーコントロールも重要な責務となります。

ITに関する資産管理

PC、スマートフォン、タブレットやその他の社給デジタル機器などの物理的な資産の管理、ソフトウェアライセンスの管理も業務に含まれます。管理をすることにより担当者間の引き継ぎをスムーズにし、必要のない投資を避けられるようになります。

これに伴い、各種の機器のセキュリティ対応管理も必要となります。

ヘルプデスク

社内の各所から出るトラブル、問い合わせに対応するヘルプデスク業務も社内SEの仕事に含まれます。利用している機器、ソフトウェア、システムに関わる範囲まで、課題の解決に携わります。

SEの仕事内容

ITベンダーに所属するSEの主業務は、クライアントの要求に従ったITシステムの構築とその運用保守です。

関連記事:
SEとして就職する方法|就職先の種類や、未経験からのステップを解説

上流工程(要件定義、基本設計など)

クライアントの要望を聞き出し、システム開発の全体像を決めるのが要件定義です。業務をシステム化するにあたり、どの業務のどんな作業にIT化を適用するか、どのようなフローで利用するかをクライアントと一緒に考えます。本来的には要件定義はクライアントの仕事ですが、スムーズな進行や必要な情報を引き出すために支援という形でSEが携わります。

要件を具体化して目に見える形にしていくのが設計工程の業務です。どのようにプログラムを作り、組み立てれば要件定義で定めたことを実現できるかをドキュメントに書き起こします。

下流工程(プログラミング、テスト作業など)

設計に従い、プログラムの作成を行うプログラミング工程、プログラムに対しテストを行い品質を向上させるテスト工程にもSEは携わります。実作業を担う場合もあれば、プログラマーやテスターを雇ってその管理を行うこともSEの仕事です。

システム運用・保守

開発したシステムは納品したら終わりではなく、運用に関する問い合わせの対応やアップデートなどの業務があります。新たな脆弱性への対応や適切にインストールできているかなどを支援することも含まれることがあります。

社内SEとSEに求められるスキルの違い

社内SEとSEに求められるスキルの大まかな違いは、それぞれの仕事内容から、次のようにまとめられます。
 

  • ・社内SEは業務を支援する立場として立ち回るためのスキル

    ・SEはものづくりをするためのスキル


以下では、より詳細に紹介します。

社内SEに求められるスキル

社内SEのミッションはITにより社内の業務をスムーズに行えるよう支援することです。この支援の実現のために必要となるスキルとして、下記が挙げられます。

関連記事:社内SEになるにはどうしたら良い?求められるスキルや資格を解説

コミュニケーションスキル

社内SEが携わる相手はITに関連する事を主業務とする人のほかに、現場部門の担当者、経営部門、バックオフィスや自社のクライアントなど多岐に渡ります。その中にはITリテラシーの高くない相手も含まれるため、どの様な相手とも意思を疎通できる高いコミュニケーション能力が必要となります。

自社の業務・システムに関する知識

社内SEは自部門である情報システム系の部門の業務だけではなく、社内のあらゆる部署の業務を知り、そこで使われているシステム、仕組みを理解していることが支援業務上必要となります。また、IT企画をたてて、システム開発プロジェクトを進めるにあたり、社内のメンバーとして発注先のエンジニアとやり取りを行う窓口となることも、自社業務への理解が必要となる理由の一つです。

システム開発とインフラに関する知識

社内SEの関わる業務範疇は広く、システムの開発プロジェクトを管理する立場となることもあります。このため、一般的なシステム開発プロジェクトでのシステム開発のプロセスを知っておく必要があります。また、運用保守の立場ではインフラ分野も担当するため、こちらに関しても知識を求められることになります。

課題解決力

社内のIT関連で発生した課題に対し、その解決の中心として働く役割が社内SEには求められます。システムを業務に利用している部門からのヒアリング、使用しているシステム、機器、インフラに渡って問題の調査、原因の特定が必要です。原因特定に至った後はしかるべき相手に対処依頼するという中心的な役回りとなるため、高い課題解決力が必要とされます。

関連記事:社内SEに必要なスキル|SIに所属するSEとの違いや役立つ資格も解説

SEに求められるスキル

SEはシステム開発のプロフェッショナルとして、顧客の要望を満たし、QCD(Quality=品質、Cost=費用、Delivery=納期)を満たしたプロジェクトの推進を行うためのスキルが求められます。

関連記事:SE(システムエンジニア)になるには?独学の方法や資格を解説

専門性の高い業務を遂行できる力

システム開発の専門化として、高い技術知識を持ち、システム開発や運用で発生する課題を解決しながら、高品質なシステムを作り上げる能力が必要となります。プログラミングの考え方を理解した上で、業務に活用できる仕組みとして顧客に提供できるプロダクトを生み出すことまでが求められるためです。

論理的思考力

ITシステムはプログラムやOS上の命令文などを組み合わせて作られた、論理的な思考を積み重ねた集合体です。この構築を行うためには、高い論理的思考力が求められます。さらに、システム開発プロジェクトを推進する上でも、様々な要素から最適な手段を選択するための論理的思考が必要です。

交渉力

SEはプロジェクトマネージャーや上司など自社の上層部、クライアントの情報システム部門や業務部門といった相手に対し、システム視点の代弁者としてやり取りをする必要があります。ここでもQCDの達成というハードルが存在しており、これに対しシステム側としてどういった方針を取るのか、お互いに納得できる現実解を探すための交渉力が必要とされます。

関連記事:
独学による勉強でSE(システムエンジニア)を目指す方法
未経験からSEへ!必要なスキルや転職活動のコツを紹介

社内SEとSEが仕事でスキルアップできる内容の違い

社内SEとSEは業務内容の違いから経験できる内容に大きく違いがあります。その違いはキャリアにどのように影響してくるのでしょうか。

関連記事:未経験から社内SEになるための6つのポイントとは

社内SEは自社の業務システムの知識が身につく

社内SEは社内で利用するシステムに深く関わる仕事であるため、従事している企業の業界知識を専門的に習得することができます。また、企業の経営戦略に沿ってシステムの導入や運用を行うため、経営に関わる意識が培われます。SEとは違いクライアントへの納期が無いため、ワークライフバランスが取りやすい傾向にあります。

関連記事:社内SEの仕事・転職に役立つおすすめ資格12選

SEは最新の技術に触れる機会が多い

SEはクライアントシステムの構築を行うため、クライアント企業へ派遣されることがあります。構築が完了してプロジェクトが終了すると別のクライアントへ派遣されることがあります。そのためSEは派遣先ごとに必要とされる技術が変わり、多くの技術やノウハウを身につけられるようになります。ただしSEでも自社開発に携わるケースもあります。

関連記事:
SE(システムエンジニア)に必要なスキルとは?スキルマップの作り方も解説

社内SEとSEの平均年収の違い

社内SEとSEの平均年収について、実際の求人・転職情報より調査を行いました。レバテックキャリアの職種「社内SE」および「PG・SEすべて」について30件のデータを抽出し、年収の上限、下限の中間値の平均を取って平均年収を算出しています(2022年10月23日時点)

社内SEの求人・転職情報

社内SEの平均年収

上記の算出方法により社内SEの平均年収を算出すると、約525万円となりました。社内SEの中でも企画などの上流工程から携わるエンジニアは高い年収、システム運用やヘルプデスク業務を担当するエンジニアは低い年収となる傾向があります。社内SEとして働く場合も、スキルが評価の対象となっている事を裏付けています。

関連記事:社内SEへの希望者必見!志望動機の書き方のポイントを例文付きで解説

SEの平均年収

上記の算出方法によりPG・SEすべての平均年収を算出すると、約611万円となりました。上流工程やマネジメント業務、高い技術スキルを要する求人・転職では年収の上限が1000万円を超えるものもありました。一方で、下流工程の求人・転職は年収は高くないものの、必要とされるスキル、経験も比較的低い傾向があります。

関連記事:SE(システムエンジニア)職務経歴書の書き方【テンプレート付き】

社内SEとSE、転職するならどっちが良い?

社内SEとSEのどちらが絶対的に良いわけではありません。一長一短です。ただし、事例としては、SEからSE、SEから社内SEへの転職が多いです。社内SEからSEへの転職はあまり多くないでしょう。希望する人が少ないことと、長年社内SEをやっているとSEへの転職が難しくなるという事情があります。

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それぞれのメリットとデメリットを把握する

社内SEとSEにはそれぞれメリットとデメリットがあります。まとめると以下のようになります。

・社内SEのメリット
まず社内SEのメリットは、業務量が比較的少なく、ワークライフバランスを保ちやすいということです。

・社内SEのデメリット
次に社内SEのデメリットは、スキルが停滞しがちなことと、給与が少なめであることです。

・SEのメリット
SEのメリットは、スキルアップしやすく、給与が社内SEに比べると高めであることです。

・SEのデメリット
SEのデメリットは、激務の場合もあり、プライベートの時間を確保しにくいことです。

以上を踏まえて、どのような人にSEがおすすめで、どのような人に社内SEがおすすめかご紹介します。

関連記事:社内SEのメリット・デメリット - 院内SEも含めて解説

キャリアアップしたいならSIerのSEがおすすめ

キャリアアップを目指すのであれば、SIerのSEがおすすめです。SIerは大きく分けて3種類で、ユーザー系、メーカー系、独立系です。ユーザー系はITとは関係ない企業が親会社で、そこから情報部門が独立する形でできています。メーカー系は親会社がIT関連の企業で、そこから派生して誕生しています。独立系は、ユーザー系やメーカー系のように親会社を持ちません。

ユーザー系とメーカー系は親会社があるので案件が固定されがちですが、独立系SIerは様々なプロジェクトに参画することが多いです。そのため、独立系SIerに所属するのがもっともキャリアアップには適しています。

ただし、キャリアアップと言ってもその企業で生涯働くという意味ではなく、スキルを身に付けて自分の市場価値を高めるということです。その後の選択肢は豊富です。具体的には、SIerでマネジメント職を目指す、Web業界に転職する、ITコンサルタントになる、などの選択肢があります。

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ワークバランスの取りやすさを重視するなら社内SEがおすすめ

社内SEは業務量が比較的安定していて、SEのように残業が常習化しており、厳しい納期に追われるようなことは少ないです。

若い頃はSEとして厳しめの環境で働いていたが、ある程度キャリアを積んだ後プライベートも重視するために社内SEに転職する、といったケースも多いです。

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まとめ

社内SEとSEの違いは所属する企業の業種です。ITベンダーに所属するのがSE、ユーザー企業に所属するのが社内SEと分類することができます。

かつては社内SEに関しては、業務担当範囲にシステムの構築が含まれない場合がほとんどでした。しかし近年では状況が変わり、内製化や自社サービスの開発を行う社内SEが増えてきています。社内SEに興味のある方は、転職支援実績豊富なレバテックキャリアにぜひご相談ください。

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