社内SEの仕事とは?
社内SEと一口にいっても、その業務内容は多岐にわたり、企業によって任される仕事は大きく異なります。そのため、社内SEへの転職を希望しているエンジニア自身も、入社後の仕事内容を正しく理解できていないことは珍しくありません。まずは、社内SEの仕事内容を確認しておきましょう。
一般的な社内SEとは、企業の情報システム部門担当
一般的に社内SEというと、企業内の情報システム部門の担当者を指しています。仕事内容としては、主に以下の5つが挙げられます。
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・パソコン/スマートフォンのトラブル対応・IT資産管理
・セキュリティ管理
・基幹システム管理
・社内システム開発、管理
「パソコン/スマートフォンのトラブル対応」でいうと、以前はパソコンのみのトラブル対応で済んでいたのですが、現在は会社で支給しているスマートフォンに問題が起こった際も、社内SEが解決に当たります。
「IT資産管理」は会社のスマートフォンやパソコン、ルータをはじめとしたネットワーク機器、サーバーなど、ITに関連するあらゆる資産を管理する仕事ですね。会社が契約しているツールやソフトに年間どのくらいのコストがかかるのか、削減できるポイントはないか、といったことも社内SEが考えます。
社内の「セキュリティ管理」は、例えば業務でクラウドサービスの利用を許可するかどうか、会社からのアクセスを禁止するWebサイトを設定するかどうかなど、会社としてのセキュリティポリシーを決めることがそれに当たります。
社内SEはこういった管理業務を多く担当するのですが、求職者の方は知らないケースも多いですね。
「基幹システム管理」、「社内システム開発・管理」とは社員が使用するシステムの開発や管理です。社内システムを新規で開発する場合は、要件定義や設計などの上流工程のみを社内SEが担当して、下流工程は協力会社に外注することが多いです。
一部企業では「自社内開発エンジニア」を社内SEと呼ぶことも
一般的に社内SEが担当するシステム開発や管理業務は、その名前の通り「社内向き」のものなんです。しかし、一部の企業では「自社サービス開発」も社内SEの仕事に含んでいることがあります。
例えば、この記事を掲載しているレバテックキャリアのサイトも自社サービスに含まれますが、これは一般ユーザーに向けたもの、すなわち「社外向き」のものです。本来はこういったサービス開発を担当する職種は、社内SEではなく「自社内の開発エンジニア」といった方が正しいでしょう。
このように社内SE業務の境界線が曖昧になっているのは、IT業界における慢性的なエンジニア不足が影響しています。良いエンジニアを採用したいという想いから、自社の求人に興味を持ってもらうために「人気の高い社内SEというキーワードで目を引こう」と考える採用担当者の方もいるのです。
そのため、社内SEの業務範囲がどんどん広がっていき、企業によって担当する仕事が全く違う、といったことが起こりやすくなっていますね。
求職者の方も、相談に来た段階ではこれらの実情を把握していないので、よくよく話を聞いてみないと、ご本人がどんな仕事を求めているのか、それは社内SEになれば叶えられるのかを判断しづらい部分があります。
関連記事:社内SEとは|仕事内容や必要なスキル、役立つ資格も解説
社内SEのやりがい
社内SEはIT業界の技術を学び続け、あらゆる場面に対処できるスキルを身につける必要があります。その分、企業の成長に貢献できるというやりがいもあります。自らが手掛けたシステムの成果を目の当たりにできるため、仕事に対する達成感や充実感が得られやすいでしょう。
また、突発的なシステム障害への対応や社員からの質問へ細やかな対応が求められる場面も多いです。そのため、同僚から感謝される機会もあり、自分のスキルが人の役に立つ実感が仕事のやりがいにつながります。
企業規模にもよりますが、社内SEは上流工程に携われる場合もあります。社内SEとしての実力と経験を磨き上げ、IT業界でさらなるキャリアアップを目指せる可能性もあります。
社内SEの年収
転職活動を進めるにあたって、年収は無視できないポイントといえるでしょう。ここでは、社内SEに転職した場合の年収について解説します。
平均年収は約506万円
厚生労働省が発表している令和3年度賃金構造基本調査によると、情報システム(社内SE)の平均年収は約506万円となっており、日本人の平均年収よりも、やや高い水準にあります。
※所定内給与額×12ヶ月+年間賞与にて計算
参考 :令和4年賃金構造基本統計調査
社内SEは所属する企業や業務内容によって年収は大きく異なり、IT戦略やIT監査対応など、企業の経営に影響を与える立場だと年収1000万を超えるケースもあります。また、外資系企業や大手持株会社の情報システム部門も比較的高年収が提示される傾向にあります。
ただ、このような上流工程を担当する高年収求人は数としては少ないです。社内SEでもっとも募集が多いのは、ヘルプデスク業務や基幹システムの運用管理が主な業務の求人です。
社内SEが人気の理由
それでは、なぜ社内SEはエンジニアに高い人気を誇っているのでしょうか。ここでは、レバテックキャリアを利用している求職者の方がよく挙げる志望理由を紹介します。
Slerからの転職先としての魅力
現職が客先常駐で働くSIerの場合、社内SEの志望理由としてよく挙がるのは次のような内容ですね。
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・勤務場所が変わらない・ユーザーとの距離が近い
・応募先の企業や業界そのものが好き
プロジェクト単位で常駐先が変わることや、自分の手掛けたシステムがどのように使われているのかわからないことにストレスを抱えている方は多いです。
また、SIerだとお客様からの発注に対してシステムを開発するので、なかなか自分でスケジュールをコントロールしづらい部分があります。社内SEであれば、開発するのは自社内のシステムなのでスケジュール調整がしやすく、残業も少ないのではないか、というイメージがあるようです。
あとは、応募先の企業・業界そのものが好きで、事業の成長に貢献したいという理由で志望する方も一定数います。この理由は採用を行う企業側も納得感を得やすく、よい印象を持ちやすい傾向があります。
SESからの転職先としての魅力
SIerと同様に、SESからの転職先としても社内SEは人気ですね。プロジェクト単位で常駐先が変わることやエンドユーザーや市場からの反応が見えづらい、スケジュールをコントロールしずらいといった点ではSIerと同様ですが、SIerは上流工程も担当することが多いのに対して、SESは開発やテストといった下流工程が主になります。
そのため、要件定義や基本設計などの上流工程の経験を積むためにキャリアアップしたい、責任と裁量を持って事業の成長に貢献したいなどの理由でSESから社内SEへの転職を志望する方も多いです。
関連記事:社内SEが「人気・勝ち組の職種」と呼ばれる7つの理由
DX化でエンジニアを必要とする企業が増え、将来性がある
IT化・DX化を迫られる企業も多く、エンジニアに求められることが増えているといった点も、社内SEが人気である理由のひとつです。社内リソースを活用してクラウドやセキュリティ、AIなど最新の技術を取り入れていくことは、エンジニアにとってやりがいにつながっていくでしょう。
また、企業側の意向として、IT活用への投資を積極的に行い、知見のある人材を自社で抱え、独自のノウハウを蓄積していきたいという傾向が強まっています。そのため、社内SEは将来性のある職種といえます。
リモートワーク対応なども、社内SEの対応範囲となっているため、その面でも社内SEの活躍できる場面は多くなっているといえます。技術力の高い人材は重宝され、評価も上がっていくことから、収入面での高待遇も期待できるでしょう。
関連記事:社内SEの将来性は?仕事内容や平均年収キャリアパスも紹介
社内SEの転職先事例
社内のITインフラを担う社内SEは、特定の業界に限らず幅広く必要とされる職種です。とはいえ、業界や事業内容によって求められる仕事内容に傾向があるのも事実です。そこで、分かりやすい例として「製造業」「金融・保険業」「Web・IT系」の3つを取り上げ、それぞれで働く社内SEの仕事内容や役割などをご紹介します。
製造業の社内SE(情報システム部門)
製造業には、他の業界と比較してもIT化・DX化が遅れているという課題があります。そのため多くの場合において、レガシーなシステムと向き合いながら、社内のITインフラを改善・運用していくことになるでしょう。製造業で主に導入されているシステムは、「ERP(統合管理システム)」「SCM(流通管理システム)」「CRM(顧客管理システム)」の3つです。
一方でグローバル化(海外拠点など)が進んでいる業界でもあるため、国際化対応などの他の業界では身につけがたいスキルを得られる点も特徴です。
金融・保険業の社内SE(情報システム部門)
「金融」とざっくり括りましたが、銀行や証券会社などをイメージしていただくと分かりやすいと思います。直接的にお金を取り扱う事業であることから、一つの不具合が会社の社会的信用に大きな影響を与えます。
そのため、設計や開発のフェーズでは慎重さや綿密さが求められる一方で、運用保守におけるトラブル時にはスピード感を持って解決にあたることが求められます。社会インフラを支えるという責任感ややりがいがあり、社内SEの中でも、金融・保険業の社内SEは比較的高い年収を貰いやすい傾向にあります。
Web・IT系企業の社内SE(情報システム部門)
『一部の企業では、「自社サービス開発」も社内SEの仕事に含んでいることがあります。』と前述しましたが、このケースに該当することが多いのがWeb・IT系企業の社内SEです。社内インフラに関連する業務が社内SEの仕事と認識している方からすると、仕事内容にギャップが出ることがあるので、求人を見る際には注意しましょう。
Web・IT系企業は基本的にIT投資に積極的な企業が多いです。そのため、最新のシステムに触れる機会が多く、社内にIT投資への提案もしやすいというのが特徴です。社内SEであっても技術トレンドを追い続ける必要性が高くなるため、そのことを苦に感じない方に向いています。
他職種から社内SEへの転職事例
社内SEが未経験の方にとって転職で気になることは、「自分のキャリアやスキルで希望する企業に転職できるのか」ということではないでしょうか。社内SEへ転職できた方はどのような対策をしていたのか、成功事例をいくつかご紹介します。また、キャリアアドバイザーが転職成功のポイントを解説していますので、参考にしてみてください。
【社内SEへの転職成功】Aさん29歳・男性
【転職前】SIer(サーバーサイドエンジニア)
【転職後】不動産(社内SE)
現職で自分の裁量による仕事をコントロールしにくいことから、働き方の改善を希望していました。また、保守フェーズの役割が多く、上流部分を経験できないことも理由でした。自分で仕事をコントロールでき、企画フェーズから携わりたいとの思いがあり、社内SEへの転職活動を始めました。
転職成功のポイント:スキルの棚卸し・キャリア形成のパターン提示・念入りな面接対策
【担当したキャリアアドバイザーのコメント】
開発エンジニアとしてC#の使用経験やデータベース周りの知見があり、さらに20代ではあるものの小規模のPM経験もあり、折衝能力やマネジメントスキルもアピールできる点でした。
ご本人のやりたい軸「開発よりも上流工程のスキルを磨いていきたい」、「ワークライフバランスを維持しながら市場価値もあげていきたい」を踏まえ、企業の選定を行いました。社内SEの中でも上流工程が中心で、DXに力を入れたい・IT投資をおしまない企業といった観点で、転職先の企業をご紹介いたしました。
面接前には十分な情報提供とともに面接対策を行い、最終的に不動産系企業の内定を獲得することができました。
【社内SEへの転職成功】Bさん38歳・男性
【転職前】SIer(PM)
【転職後】化学(社内SE)
現職で慢性的に人が足りず、一年以上も土日出勤を頻繁に続けていたことから、ワークライフバランスを整える働き方を希望していました。また、PMだけでなく技術の部分にも携わりたいとの思いから、社内SEへの転職活動を始めました。
転職成功のポイント:スキルの棚卸・叶えたい希望条件の深堀り・念入りな面接対策
【担当したキャリアアドバイザーのコメント】
大規模基幹系システムのPM経験をもち、技術スタックもJava(Spring)をメインに、クラウド周りの知見もある方でした。
当初は、残業時間の抑制のみを重視されていましたが、残業を抑制したその先にご本人のやりたい軸が何なのかを棚卸し、単にPMをやるだけではなく、アーキテクチャ領域にも触れていきたいといった思いをお持ちでした。そのため、企画やベンダーコントロールのみを行うのではなく、技術領域にも触れられる企業をご紹介いたしました。
面接前には十分な情報提供とともに面接対策を行い、最終的に化学系企業の内定を獲得することができました。
社内SE(情報システム部門)への転職は難しい?
社内SEの転職が難しいとされる理由は主に以下の3つが挙げられます。
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①職種としての人気が高いため、競争が激しい②年齢に伴い、求人企業の採用条件が厳しくなる
③業務内容が入社企業によって異なるため、転職活動そのものがやりにくい
このように、人気職種である社内SEへの転職を考える際に、業界の競争倍率、仕事内容、スキルレベルなど、様々なことを考慮する必要があり、難易度が非常に高いです。
では、順調に社内SEの転職活動を進めるために、どうすれば良いのでしょうか。
社内SEへの転職の競争倍率
社内SEの競争倍率は5倍以上
社内SE転職の競争倍率は非常に高いです。レバテックキャリアに登録しているエンジニアの方に限れば、実に約半数以上が社内SEへの転職を希望しています。しかし、実際に希望通り社内SEとして転職できるのは多く見積もって5人に1人といったところでしょう。
そもそも、社内SEがひとつの企業で大量に募集されることはありません。人員の入れ替えや事業拡大で1~2名増やす程度で、小さな企業であれば1名いれば充足するポジションです。
希望者が多いため、気になる求人があれば早く応募することが大切です。社内SEの求人は応募が殺到し、募集開始後1週間程度で受付が終了することも珍しくありません。
社内SEへの転職可能な年齢
社内SEの転職に年齢制限はあるのでしょうか。面接で落ちたのは年齢が原因なのでしょうか。本章では、30代半ば、40代以降の社内SEへの転職に関して解説します。
転職しやすい年齢は30代半ばまで
社内SEとして転職しやすい年齢は30代半ば、上限目安としては36、7歳です。それ以上の年齢になると、企業内で管理職のポジションに就いている人が多くなってくるため、求められるスキル・経験が一段と高くなったり、そもそも社内SEで管理職を募集していなかったりして、求人の数が少なくなります。
40代は+αの専門性が求められる
年功序列制度は古い文化になりつつあるものの、一般論として年代が上がるほどスキルや経験値が高くなり、給与や年収も高くなる傾向にあることはいうまでもありません。当然、40代の方を雇おうとするとそれなりの人件費がかかるということを企業は考えます。
40代以上の社内SEに期待される役割は、即戦力であることは勿論のこと、プロジェクトマネジメントや組織マネジメント、役員などの経営陣との折衝などです。とはいえ、これらの経験が浅いという場合でも、金融や物流など特定の業界での上流経験が豊富な場合、求人企業のニーズとマッチすれば、その専門性が評価されて採用に至るケースはあります。
年齢に見合った成果をアピールする
採用を断られる理由で多いのは「年齢に見合った成果をあげていない」「年齢に見合ったキャリアではない」と判断されているからです。ではどうすれば良いのでしょうか。次のような内容を意識して転職活動に望んでみましょう。
チームであげた成果をアピールする
個人のスキルや成績は重要ですが、それ以上に重要なのはチームの成果です。
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・チームであげた成果・チームで解決した課題と苦労
・チームの中での役割
自分の役割がチームリーダーであった内容を職務経歴書に書きこみ、面接に挑みましょう。
社外評価・上司評価をアピールする
「現在の上司や顧客から高く評価されているのか?」という点は採用担当者の評価の参考になります。そのため、書類選考や面接では社外評価や上司評価など、客観的な評価結果も含めるようにしましょう。例えば、社外評価ではイベントでの登壇実績、社内評価では社内表彰・昇格スピード・任されていた仕事の内容などです。
転職後に活躍できることをアピールする
採用担当者は「高いスキルを自社で発揮できる人」を採用したいと考えています。40代以上なら「即結果を出せるか」という目線で見られます。これまでの成果は、会社の看板や仕組みで上手くいったのではないことを説明できるようにしましょう。
社内SEへの転職で失敗する人の共通点
社内SEは人気の職種である一方で、入社後の早期退職など、結果的に転職に失敗してしまう人も一定数います。社内SE転職に失敗する人の共通点はどこにあるのでしょうか。
想定していたよりも残業が多く、疲弊してしまう
「残業が少ない」ことが社内SE人気のひとつの理由でしたが、実際は必ずしも社内SE=残業が少ない、とはいえません。
自社のシステムであっても納期前に稼働が上がることはよくあることですし、企業によっては社内SEの業務範囲が広いために業務過多になり、残業が多くなるケースもあります。結果的に前職よりも残業が多くなってしまい、疲弊して退職する方も中にはいます。
入社前イメージと実際の業務内容にギャップがある
社内SEの役割や裁量の大きさは企業によって異なるので、入社後に「イメージしていた仕事と違った」というギャップが生まれてしまう方もいます。
現職の主な業務内容が下流工程の場合、IT戦略や社内システム開発の企画立案といった「上流工程が経験できること」を社内SEの志望理由として挙げる方もいますが、これらの業務を担当できるかどうかは各企業の方針や社風によります。
実際に、システム開発の上流工程に携われると思っていたのに、入社してみたらヘルプデスクや社内調整などの泥臭い業務がメインで早期退職してしまった、とレバテックキャリアに相談に来る方も少なくありません。
そうならないためにも、自身がイメージしている業務と実際の業務に齟齬がないか入社前に確認する必要があるのですが、それらを求人票だけで判断するのは難しいのが実情です。例えば、求人票内で会社の方針として「AI活用」や「DX推進」など先端の技術やビジネスモデルへの取り組みを掲げていたとしても、社内の実態と乖離していることがあるからです。
そのため、業務内容について不明点がある場合は、採用面接の場で直接質問してみましょう。「平均的な1日の業務スケジュール」や「社内SEが担当する主な業務内容やミッション」などを質問してみると、入社後の業務内容を理解しやすくなると思います。
部署内でエンジニアが自分しかいない
転職先によって社内SEは総務に配属されることも多いです。その場合、切れた電球の取り換えや設備保全といった、IT以外の雑用に大きな時間を割くことがあります。総務としての仕事も常にあるため思ったよりも忙しく大変です。
また、社内のインフラ整備やシステム開発、ヘルプデスクといった幅広い業務を任されるので、希望している業務だけをすることはできません。1つの仕事を極めたいと思っている方には向いてないといえるでしょう。
コミュニケーションを上手くとれない
業務によっては、IT知識が乏しい人へシステムについての説明をする機会もあります。専門用語をわかりやすく説明するのは大変で、折衝能力が必要です。不具合が発生したときも、納得がいくように説明しなければなりません。
一般的なSEと比べて人を相手にする業務が多いことから、コミュニケーションが苦手な人だとストレスを感じやすいです。そのため、ひとりで仕事をしたい人にはあまり向かないでしょう。
将来のキャリアプランが見えない
社内SEは稼働中のシステムの保守や運用などは行いますが、自ら開発に携わる機会は少なくなるでしょう。そのため、新しい技術やスキルが身につきにくい傾向にあります。
業務範囲が多岐にわたることから、システムエンジニアよりも技術面を学ぶ機会が減ってしまいます。プログラミングスキルを向上させたいと考えている場合には、社内SEは向いてないといえます。
関連記事:社内SEのメリット・デメリット
社内SEに求められるスキル・経験とは?
続いて、社内SEに内定する人の特徴を、求められるスキルや経験から解説します。
好まれるのはオールラウンダーなスキルを持つエンジニア
社内SE求人の採用条件は厳しいことが多く、どの求人でも以下のスキルが求められます。
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・ステークホルダーとの折衝能力・コミュニケーション能力
・上流から下流までのシステム開発スキル
まず、ステークホルダーとの折衝能力やコミュニケーション能力は必須です。冒頭で紹介した社内SEの業務を進める上で、必ずやらなければならないのが社内調整です。調整業務を滞りなく進めるにはこれらのスキルが不可欠になります。
例えば「新しい社内システムを開発しよう」となったとき、最初に行うのは関係者を集めて概要を説明することではなく、まずは会議を開きたい旨をメールで周知して参加を請う、といった事前お伺いである場合があります。
システム部門以外の社員にとって、社内システム開発に協力することは業務外という認識です。しかも、協力を請う相手が役職のある人だったり、勤務地の異なる人だったりした場合、依頼のハードルはさらに高くなるでしょう。説明をする相手のITリテラシーが低いと、新しいシステムの必要性をわかりやすく説明する力も求められます。
大企業になればなるほどステークホルダーは多くなり、こういった泥臭い調整業務が頻発する傾向にあります。そのため、エンジニアとして技術や開発そのものが好きな方には合わないかもしれません。
それでいて、社内SEはエンジニアとしての技術力も求められます。社内SEになると自分で手を動かすことは少なくなりますが、要件定義書や設計書の作成のほか、開発業務を外注した際のベンダーコントロールなども担当します。社内SEになるには、上流から下流までの一通りの開発スキルを持っている必要があります。
関連記事:社内SEに必要なスキル|SEとの違いや役立つ資格も解説
特定の業界に対する興味・関心も、社内SE採用では重要なポイントに
これは志望理由の話にも繋がるのですが、社内SEの採用ではさまざまなスキルだけでなく、「企業が属する業界への興味、関心があること」も求められます。
例えば小売系企業だと、エンジニアであっても一定期間店舗に立って販売の仕事をする場合があります。これは、エンジニアにも現場への理解を深めてほしいと思っているからなんです。
現場への理解があれば、社内システムを設計するときにもどんな機能が役に立つのかを自分で考えることができるので、必然的にアウトプットの質も変わってきます。入社前の時点で業界や事業に詳しくある必要はないですが、興味すら持てない人は社内SEには向いていないと思います。
関連記事:社内SEへの希望者必見!志望動機の書き方のポイントを例文付きで解説
評価されるのは上流工程の経験。社内SE未経験でも転職は可能
社内SE求人では、上述したようなスキルとマインドが求められるので、前職で以下のような職種・ポジションを経験していた人であれば、比較的転職もしやすくなります。
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・ITコンサルタント・プロジェクトマネージャー(PM)
・システム開発における上流工程
社内SEの業務には社内折衝やベンダーコントロールが発生するため、それに近い業務経験、すなわちITコンサルタントやPM、システム開発における上流工程の経験があると有利になります。
これらの経験がある人は、専門的な内容をわかりやすく伝える説明能力や、関係者に配布する提案資料の作成能力が高い場合が多いです。たとえ社内SEとしての経験は未経験であったとしても、必要なスキルが似ているので企業側も入社後に活躍できるイメージを持ちやすいのだと思いますね。
関連記事:未経験から社内SEになるための6つのポイントとは
担当業務によっては、資格の保有が評価に繋がることもある
また、これは必須ではありませんが、自身のスキルを対外的に証明する上で資格が役立つ場合もあります。入社後にどのような業務に携わるかによって評価される資格も変わってきますので、自身の望むキャリアに合わせて取得を目指すことをおすすめします。
社内SEに役立つ資格
資格名 | 役立つシーン |
---|---|
ITストラテジスト試験 | 企業のIT戦略の策定 |
情報処理安全確保支援士試験 | セキュリティ関連業務 |
システムアーキテクト試験 | システムの上流工程 |
ITサービスマネージャ試験 | 社内システムの運用管理 |
システム監査技術者試験 | システム監査への対応 |
ただし、社内SEに限らず、中途採用でもっとも重視されるのは実務経験です。資格はあくまでも+αのアピールポイントと捉えるのがよいでしょう。
関連記事:社内SEの仕事・転職に役立つおすすめ資格12選
社内SEを本気で目指したい人がやるべきこと
ここまで社内SEの仕事内容や求められるスキル・経験、年収など、転職を考えている人が気になるであろうポイントについて解説してきました。なかなかハードルの高い社内SEへの転職ですが、それでも目指したいと考えるエンジニアは、具体的にどのようなアクションを起こせばよいのでしょうか。
現職がプログラマーの場合は、上流工程を経験することがファーストステップ
前述したITコンサルタントやPMの経験がすでにある方であれば、そのまま転職活動を進めても問題ないでしょう。
しかし、これまでプログラマー経験しかなく、上流工程を経験したことがないという方であれば、まずは「大手SIerやプライムベンダーにおける上流工程の経験」あるいは「システム開発プロジェクトにおけるリーダー経験」を積む必要があります。
これらが経験できる企業に転職をするか、現職でPMやPLなど、プロジェクト全体を見渡せるポジションに就くためのアクションを起こしましょう。
社内SEは人気の高い職種というだけではなく、求められるスキル感も高いことが多いです。本気で目指したいのであれば、まずは上流工程やリーダー経験を積むことをおすすめします。
ITを活用した「コスト削減」の実績を作る
社内SEの転職では「コスト削減」に成功した実績のある人は強いです。担当プロジェクトのコストを把握した上で、より安く質の高いものを作るためにどんな工夫をしたのか、自分の言葉で語れるようになっておくと良いですね。
コスト削減には2つの観点があり、ひとつは「生産性の向上」、もうひとつは「運用費用の削減」です。「生産性の向上」であれば、「RPAを活用した業務効率化」や「クラウド化による既存システムの見直し」などの実績があれば評価の対象となります。
「運用費用の削減」は「パソコンやスマートフォンなどのIT資産の運用コスト削減」や「基幹システムの運用・保守にかかる固定費用の削減」などがそれにあたります。後者は現職が社内SEでなければ経験しづらい内容ですが、例えばクライアント企業に運用コスト削減の提案をして採用された経験があれば、立派なアピールになるでしょう。
コスト削減はあらゆる企業の大きなミッションのひとつであり、社内SEに期待するところでもあります。上流工程を経験する中で、コストと質のバランスを考えて動いてきた経験と実績があれば、企業からも高い評価を得られるでしょう。
需要の高いスキルを身につける
社内SEの採用傾向では、スペシャリストやサービス開発経験者など、DX推進を目的とした採用が増えてきています。そのため、AIやクラウド、データサイエンス、セキュリティなど、需要の高いスキルを習得しておくと転職活動の際に大きな武器になります。
社内SEになればやりたいことができるのか、今一度確認することも大切
ここまで社内SEの転職に関して知っておいてほしいことをお話ししてきましたが、転職後に長く働いていくには、実際の業務内容と求職者ご自身の志向性がマッチしているかが重要になります。
そのため、今回説明した社内SEの仕事内容や役割を今一度確認し、社内SEになることで自分のやりたいことが実現できるのか、今一度考えてみてほしいと思います。
企業ごとに求める人材像も大きく異なりますから、求人票の内容もしっかりチェックした方がいいですね。メイン業務がヘルプデスクの場合と自社システム開発の場合では、同じ社内SEであってもやるべきことは全く違います。
転職後のギャップが小さければ小さいほど、長くやりがいをもって働けるはずです。満足度の高い転職が実現できるよう、私たちも精一杯サポートします。ひとりで転職活動を進めるのが不安な方は、ぜひ一度ご相談にお越しください。
関連記事:社内SEになるにはどうしたら良い?求められるスキルや資格を解説
また、社内SEの転職後のキャリアパスについて知りたい方は、「社内SEのキャリアパス・キャリアプラン例について」の記事もチェックしてください。
社内SEの求人例
業務内容別の求人例を挙げるなら、以下のような内容になります。求人によって求められるスキル・経験にも幅がありますので、応募前には必ず確認するようにしましょう。
ヘルプデスク業務がメインの求人例
【想定年収】
300~450万円
【業務内容】
システム操作方法などの問い合わせ対応業務、IT資産管理、サーバー・ネットワークの運用・保守
【求められるスキル・経験】
システム設計書の理解(実務経験不問)、ハードウェアの基礎知識、社内システムの運用・保守経験、コミュニケーション能力
基幹システム管理がメインの求人例
【想定年収】
300~500万円
【業務内容】
基幹システムおよび社内システムの開発管理・運用保守管理、ヘルプデスク業務
【求められるスキル・経験】
システム管理業務経験3年以上、外部ベンダーや社内スタッフとの調整・折衝スキル、一般的な事務処理能力
社内システム開発・管理がメインの求人例
【想定年収】
400~650万円
【業務内容】
社内システムの開発業務(要件定義、設計、開発、テスト)、外部サービスの選定、外部ベンダーや社内関係者との調整業務
【求められるスキル・経験】
オープン系システムの開発経験2年以上、設計書・テスト仕様書などの作成経験、テーブル定義書・画面設計書などの作成経験、物事をわかりやすく伝える説明力、相手の要望を的確に汲み取る力
IT戦略などの上流工程がメインの求人例
【想定年収】
500~900万円
【業務内容】
IT戦略の企画立案・実行、IT関連業務のプロジェクトマネジメント、ERPの導入・運用・保守、社内システム開発および開発管理
【求められるスキル・経験】
導入コンサルタントとしての実務経験2年以上、ERPの導入経験、要件定義書や基本設計書の作成経験
社内SEの求人で見るポイント
社内SEの求人探しは、働き方・仕事内容・組織風土など、重点を置くポイントによって適した求人が異なります。ここでは、社内SEの求人を探す場合に、どういった点に注目すべきかについてみていきます。
社風が合っているか
社内SEは企業によって残業が続くところもあれば、残業がほとんどないというところもあります。ワークライフバランスを重視して働きたいのであれば、残業が少ない求人を選ぶのが良いです。たとえば、大手金融機関や官公庁などの求人がマッチするといえます。
業務内容は希望のものか
開発やインフラを希望する場合は、担当業務として携わることができるか、求人内容をよく確認しましょう。大企業になればなるほど、各種基幹の業務システムやWebアプリケーションを活用しているケースが多く、これらのアプリ開発やツールの開発が必須となります。社内SEは社内で利用するツールやアプリ開発を担う必要があります。
また、社内SEは社内システム開発や保守運用、改善も担います。システム運用では、安定性のあるもの、セキュリティに優れたものが求められます。大企業となれば複数部署から要望が出されますので、その対応が他部署との連携を求められることもあり、難易度が高くなることもあります。さらに、社内ネットワークや情報インフラ保守も社内SEの仕事です。
ITへの投資意識
IT戦略によって、生産性や競争力を高めていきたい企業が増えてきています。その中で、社内SEはIT戦略を立案し推進していく役割を担います。たとえば、情報システムを活用して効率化を提案したり、ITシステムについて経営層からの相談に乗るなども社内SEの重要な仕事といえます。そのため、経営陣がIT投資への意識が高いかどうかも大事なポイントです。
社内SEに関するQ&Aはこちら
Q1.社内SE1年目で身につけたほうが良いスキルはなんですか?
社内SEで評価されるのは、オールラウンダーなスキルを持つエンジニアです。システム開発スキルのみならず、早いうちにステークホルダーとの折衝能力やコミュニケーション能力を身につけたほうがいいでしょう。
Q2.社内SE転職でよく見る失敗理由はなんですか?
早期退職につながる理由として多く挙げられるのは、就労時間が予想以上に長いことと、携わる業務内容は想定とのギャップが大きいことです。この2つの失敗を避けるためには、転職前の情報収集が非常に重要です。
Q3.30代未経験から社内SEになることはできますか?
エンジニア経験のある方であれば、30代未経験でも社内SEへ転職できる可能性はあります。しかし、エンジニア未経験の場合は、現実的に厳しいといえます。そのため、一度関連職種にて経験を積んだ後に再度、挑戦してみるのが良いです。
まとめ
本記事では社内SEの概要から人気の理由、転職事例、求められるスキルなどを解説いたしました。社内SEは他のエンジニア職に比べて、ワークライフバランスも調整しやすいことから、競争倍率が高く、狭き門となりがちです。しかし、この記事を参考に求人を探し、職務経歴書の作成や面接への準備をしっかりと行えば、転職成功の確率は上がるといえます。社内SEは人気の職業なだけあり、転職先として魅力のある職種です。熟読して、転職活動に向けての参考にして下さい。
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