社内SEは、IT企画やシステム開発、ネットワークやサーバーの構築・運用・保守、ヘルプデスクなど幅広い業務を担当します。社内SEの仕事に役立つ資格は数多いため、現在の仕事内容や将来のキャリアパスなどから取得する資格を選択することが重要です。この記事では、社内SEの仕事に役立つ資格を技術系、マネジメント系、IT戦略系の3つに分類して解説し、求められるスキルについても詳しくご紹介します。
- 1. 社内SEの資格は主に3種類
- 2. 社内SEに関する技術系の資格
- 3. 社内SEに関するマネジメント系の資格
- 4. 社内SEに関するIT戦略・経営系の資格
- 5. 社内SEの仕事内容
- 6. 社内SEに必要なスキル
- 7. 社内SEになるには
- 8. まとめ
- 9. 社内SEについてのFAQ
1. 社内SEの資格は主に3種類
社内SEの資格は主に以下の3種類があります。
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・技術系の資格
・マネジメント系
・IT戦略・経営系
それぞれどのようなものか解説していきます。
技術系の資格
技術系は、サーバーやネットワーク、セキュリティ、プログラミングといった技術領域の知識・スキルの習得に役立つ資格です。
具体的には以下のようなものがあります。
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・LinuC(Linux技術者認定資格)
・MCP(マイクロソフト認定資格)
・CCNA
・CCNP
・ITIL
・基本・応用情報技術者試験
マネジメント系
マネジメント系は、進捗管理や課題管理、リソース管理などプロジェクトを成功させるために行うさまざまなマネジメント業務に関する知識・スキルの習得に役立つ資格です。
具体的には以下のようなものがあります。
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・基本・応用情報技術者試験
・プロジェクトマネージャ試験
・PMP
・ITサービスマネージャ試験
IT戦略・経営系
IT戦略系は、マネージャーや経営層の視点を持ち、戦略の立案や実行に必要な知識・スキルの習得に役立つ資格です。
具体的には以下のようなものがあります。
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・基本・応用情報技術者試験
・ITストラテジスト試験
転職に必要な資格(必須の資格)はない
IT業界で働くうえで、必須の資格は存在しません。技術系の職種の中には資格がないとできない業務などもありますが、IT業界に関してはすべての業務を無資格でできます。そのため、転職するうえでも資格が必須になることはないでしょう。
IT業界において、資格はあくまでもスキルを補助したり、客観的に証明するためのものです。重要なのは実務経験と成果物を作った経験なので、資格にこだわりすぎないこともIT業界で生き抜くためには意識すべきポイントでしょう。
関連記事:社内SEとは|仕事内容や必要なスキル、役立つ資格も解説
2. 社内SEに関する技術系の資格
社内SEに関する技術系資格をいくつかご紹介します。技術系の資格は、SEに求められる基礎スキルを証明するものと、ネットワークなど特定の領域に特化してスキル証明するものに分類できます。
関連記事:社内SEが「人気の職種」である7つの理由
基礎スキルを証明する資格
社内SEの基礎スキルを証明する資格として、「ITパスポート試験」「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」が挙げられます。
ITパスポート試験
ITパスポート試験はITの基礎の基礎を問う内容になっています。具体的には、情報システム、ネットワーク、データベースなどです。基礎と言ってもパソコンの使い方などよりは少し難しい内容になっています。
とはいえIT業界で働く人材として十分なレベルではないので、ITのことを知る最初の一歩の資格です。合格率は年度に寄りますが、受験者の50%~60%程度が合格している年度が多いです。開催時期は毎月です。具体的な開催日は地域によって異なります。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験はITエンジニアの登竜門ともいえる資格で、情報処理推進機構(IPA)が運営しています。試験は毎年4月と10月の2回実施されています。
令和2年度の応募者数はおよそ17万人。合格率は25.7%です。試験の難易度としては中級から上級といえるでしょう。
IT業界未経験者にとっては専門的な内容も多く、プログラミングの基礎知識を試す問題も出題されるため、しっかりとした試験対策が求められます。午前は80問、午後は11問の選択式問題が出題され、それぞれ150分の試験時間となります。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験も基本情報技術者試験と同様、情報処理推進機構(IPA)が運営する資格です。試験の開催時期は毎年4月と10月の2回。令和3年度春季の応募者数はおよそ4万人で、合格率は24%です。
その名の通り基本情報技術者試験よりも応用力が問われる問題が多く、ITエンジニアとしてレベルアップを目指す人に最適な試験といえるでしょう。試験問題数は基本情報技術者試験と同様、午前が80問、午後が11問出題され、それぞれ150分の試験時間となっています。
特定領域のスキルを証明する資格
応用情報技術者試験より高度な知識・スキルを証明する資格として、特定領域に特化した試験も提供されています。これらの試験は論述試験もあるため、実務経験を経てからの受験が一般的です。
システムアーキテクト試験
システム開発の上流工程を主導する際に必要となる、要件定義スキル、システムのグランドデザイン設計スキル、アーキテクチャ設計スキルなどを身につけることができます。
試験の開催時期は毎年4月の1回。令和3年度春季の応募者数はおよそ5,500人で、合格率は16.5%です。
ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークの設計や構築、運用、保守、セキュリティなど、ネットワークに特化して高度なスキルを問われる試験です。ネットワークエンジニアに求められる上流工程のスキルを身につけることができます。
試験の開催時期は毎年4月の1回。令和3年度春季の応募者数はおよそ1万3千人で、合格率は12.8%です。
その他ベンダー試験
ネットワークやデータベースなど、各種製品に特化した資格試験があります。中でも、シェアが高い製品の資格を取得していると高い評価を得ることができます。具体的には、データベース資格であるオラクルマスター、ネットワーク資格であるシスコ技術者認定、クラウド技術資格であるAWS認定などが有効です。
関連記事:社内SEのメリット・デメリット
3. 社内SEに関するマネジメント系の資格
リーダー職以上を目指すにはマネジメントスキルが必須です。ここで紹介する資格を活用してマネジメントスキルの習得を目指しましょう。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験はIPAが主催する試験で、プロジェクトマネジメント全般知識を問われます。進捗管理、リソース管理、課題管理、リスク管理、品質管理など幅広い領域の知識を身につけることができます。
試験の開催時期は毎年4月の1回。令和3年度春季の応募者数はおよそ1万人で、合格率は14.4%です。
PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)試験
PMP試験はPMI協会が運営するプロジェクトマネジメントスキルを証明する資格です。PMBOKと呼ばれるグローバルスタンダードのプロジェクトマネジメント手法がベースとなっており、海外でも通用する資格です。
試験の開催時期は毎月。合格率は公表されていませんが、60~80%程度と言われています。
PJM-A(プロジェクトマネジメントアソシエイト)試験
PJM-A試験はPMO協会が運営するプロジェクトマネジメントの基礎知識を証明する資格です。プロジェクトマネージャ試験やPMPと比較して難易度が低いため、はじめてプロジェクトマネジメントを学習するエンジニアに向いています。
試験の開催時期は随時。合格率は公表されていませんが、正解率75%で合格でき、難易度は低めです。
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)認定スペシャリスト
PMO認定スペシャリストはPMO協会が運営する、PMOに求められる知識を証明する試験です。PMOとは、自社などの組織内におけるそれぞれのプロジェクトを横断してマネジメント支援することで、会社全体のプロジェクトの成功率を高める職種です。プロジェクトマネジメントスキルも必要な職種のため、応用スキルの習得を目的に学習してみても良いでしょう。
試験の開催時期は随時。合格率は公表されていませんが、20%程度と言われています。
4. 社内SEに関するIT戦略・経営系の資格
IT戦略に関するスキル習得に役立つ資格を解説します。IT戦略スキルは、IT部門長やCIOなどを目指す上で必須のスキルです。
ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験はIPAが主催する試験で、経営戦略に基づいてIT戦略やIT企画を立案するスキルが求められます。具体的には、情報技術を活用した事業戦略の策定、情報技術を活用したビジネスモデルの策定、情報システム戦略の策定、システム化計画の策定、システム調達などが出題されます。経営視点の習得に役立つでしょう。国家資格の中でも難易度は高めです。
試験の開催時期は毎年4月の1回。令和3年度春季の応募者数はおよそ6千人で、合格率は15.3%です。
ITコーディネータ試験
ITコーディネータ試験は特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が主催する試験で、IT戦略全般やIT戦略に基づいたプロジェクトの立ち上げ、プロジェクトマネジメントに関する知識を問われます。試験合格者は、6日間の研修を通してスキル定着を図る仕組みとなっています。
試験の開催時期は毎年2回。令和3年度冬季の応募者数はおよそ250人で、合格率は64.7%です。
日商簿記2級
日商簿記2級は、簿記試験のなかでももっとも王道の資格試験と言えるでしょう。日商簿記3級だと実務レベルとしてはやや不足していて、逆に日商簿記1級になると難易度が飛躍します。日商簿記1級は会計士や税理士を目指す人レベルの試験と言えます。
日商簿記2級は会計や税務を本業としない職業の人が実務レベルで活用するのにちょうど良いレベルの資格試験です。経理や事務の担当者が取得するケースも多いです。
試験の開催時期は毎年3回。令和4年度冬季の応募者数はおよそ2万2千人で、合格率は17.5%です。
関連記事:社内SEが簿記の資格を取得するメリット
5. 社内SEの仕事内容
社内SEの仕事内容は複数あります。それぞれ紹介していきます。
社内システムの構築・運用・保守
自社の業務を支援するシステムの構築、運用、保守を行います。対象は、業務システムなどのソフトウェア、ミドルウェア、ネットワーク、サーバー、PC、複合機など多岐に渡ります。企業やプロジェクトによっては外注し、社内SEはベンダーマネジメントのみを行う場合もあります。
問合せ対応 (社内ヘルプデスク)
社内システムやパソコンの使い方などのヘルプデスクとして、社員からの問合せに対応します。
IT企画
経営戦略の実現・実行のためにITを活用してどのような施策を行うか立案します。具体的には、社内課題の整理や課題解決アプローチ、予算策定、投資対効果の算出、プロジェクトの進め方などの調整を行います。
関連記事:社内SEになるにはどうしたら良い?求められるスキルや資格を解説
6. 社内SEに必要なスキル
社内SEに求められるスキルをご紹介します。ここでは資格の取得により証明できる技術系スキルと、そのほかのスキルの2つに分類して取り上げます。
社内SEの資格で証明できる技術系スキル
社内SEとして資格の取得で証明できる技術系スキルには以下のようなものがあります。
プログラミングスキル
社内SEにとって基本的なプログラミングスキルは必須です。直接自分がプログラミングを担当しないプロジェクトでも、プログラマーが開発したプログラムを理解できる程度のプログラミングスキルは身に付けておきましょう。
運用・保守に関する知識
社内システムの運用や保守に関する知識も社内SEには求められます。特に基幹システムの運用保守は社内SEにとって、生命線と言えるでしょう。システムの専門家として、定期的なメンテナンスを行いつつ、トラブル発生時の対応など、会社の業務を円滑に進めるためにも、運用保守は重要な仕事です。
システム開発に関する知識
社内SEとしてはシステム開発に関する知識も身に付けておきましょう。たとえばプロジェクトの開発手法だけでも、ウォーターフォールやアジャイルなどさまざまなものがあります。基本情報技術者や応用情報技術者試験の勉強で基礎は身に付けられるため、しっかりと学習することをおすすめします。
プレゼンテーションスキル
社内システムの提案をする上で、プレゼンテーションスキルが欠かせません。システムに必要な機能やコストを適切に把握して、開発に関わるスタッフの協力を得るためには、自分の提案をわかりやすく伝えて理解してもらうことが大切です。要点をまとめて簡潔に話すことを習慣にしていれば、大規模なプレゼンテーションを成功させやすくなるでしょう。
社内SEに必要なそのほかのスキル
社内SEとして資格とは別に必要なそのほかのスキルについてご紹介します。
コミュニケーション力
社内システム開発のプロジェクトを円滑に進めるためには、ほかの社員や外注先とスムーズにコミュニケーションを取れるスキルが欠かせません。社内システムのトラブルや、ほかの社員からヘルプを求められたときに、システムの状態やヘルプの内容などを適切にヒアリングして理解するためにも、コミュニケーション力が重要です。
マネジメント力
社内SEにはマネジメント力も必要不可欠です。社内システムの開発では、プロジェクトを適切にマネジメントして開発を成功へと導きます。小規模なプロジェクトから大規模なプロジェクトまで、参加しているスタッフの能力や性格、開発するシステムの目的や機能など、さまざまなことを考慮しながらマネジメントする力が求められます。
柔軟な対応力
システムのトラブルや社内のスタッフからの質問は予想もしていないときに起こりがちです。そのため社内SEには臨機応変に柔軟な対応力が必要です。複数の対応が同時に求められたときなどは、優先順位を素早く決めて、一つ一つ丁寧に対応することを心掛けましょう。
関連記事:社内SEに必要なスキル|SIに所属するSEとの違いや役立つ資格も解説
7. 社内SEになるには
社内SEになるために必要なことがいくつかあるのでご紹介していきます。
現在の業務を通じて必要なスキルを習得する
新卒で社内SEになるのは難しく、またいきなり社内SEを目指すケースも稀でしょう。現状Web業界やSIerで働いていて、そこから社内SEを目指している方が多いかと思います。社内SEとして働くためには、Web業界やSIerで働いた経験が役立ちます。
面接では確実に前職で培ったスキルについて質問され、それが採用の重要な指標になるでしょう。そのため、今の仕事にしっかり取り組んでスキルを習得することは社内SEに転職するうえでも重要です。
資格を取得してアピールする
IT業界で転職する際、資格は一つの指標になります。それは社内SEも例外ではありません。資格はもっとも客観的に能力がわかりやすいものなので、明確なアピール材料になるでしょう。ただし実務経験やスキルよりも資格が重要というわけではないので、その点はご注意ください。
実務経験、スキルに加えて資格を持っているとよりアピール材料になるということです。
転職エージェントに相談する
社内SEはIT業界全体の中で求人数が少ない傾向にあります。またその中でも、どの企業がベストなのか判断がつかない場合も多いでしょう。転職エージェントに相談すれば、非公開求人を紹介してもらえるメリットもあります。
社内SEになりたいのであれば、オープンになっている求人から応募するよりも転職エージェントに相談する方がおすすめです。
関連記事:未経験から社内SEは目指せる?求人例や向いているタイプを解説
8. まとめ
この記事では、社内SEの仕事に役立つ資格を技術系、マネジメント系、IT企画系の3つに分類して解説しました。さまざまな資格がありますが、社内SEとして効率的にスキルアップするには、今の仕事に必要なスキルと今後のキャリアパスで必要となるスキルを見極めることが第一歩です。そして、資格試験を活用して効率的にスキルアップを図ってみましょう。
また、社内SEへの転職を着実に成功させたいと考えている方は、「社内SE転職の難しさと、目指したい人が身につけるべきスキル」の記事もぜひチェックしてみてください。
9. 社内SEについてのFAQ
Q1. 社内SEに役立つマネジメント系の資格を教えてください。
IPAが主催しているプロジェクトマネージャ試験、PMI協会が運営しているPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)試験、PMO協会が運営しているPMJ-A(プロジェクトマネジメントアソシエイト)試験、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)認定スペシャリストなどがあります。
Q2. 社内SEにはどんなスキルが必要ですか?
社内システムの開発をはじめ、社内のネットワークやサーバー構築、保守・運用、ヘルプデスクにいたるまで業務の幅は広いです。それぞれの業務に対応したスキルが求められます。企業によっても社内SEの定義は異なり、企業ごとに求められるスキルも変わります。
Q3. 未経験から社内SEになれますか?
社内SEとしての業務がヘルプデスクや保守・運用がメインの場合は、未経験からでも従事することは可能です。一方、システム構築や設計がメインの場合は、スキルや経験を積んだエンジニアのみを対象としている企業もあります。
Q4. 社内SEの基礎能力を証明できる技術系の資格は何ですか?
IPAが主催している「基本情報技術者試験」と「応用情報技術者試験」が挙げられます。未経験から社内SEを目指す場合は、まずは基本情報技術者試験への合格を目指し、その後上位資格である応用情報技術者試験へ挑戦してみましょう。
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