社内SEが「楽な職種」と言われる5つの理由

最終更新日:2023年1月16日

社内SEは、IT企業に勤めるSEよりも「楽」というイメージを持たれている方も多いでしょう。実際の社内SEの業務は、一概に楽とはいえないのですが、自社内が仕事相手であることがイメージ形成に大きく関わっていると思われます。

クライアントのシステム開発に関わる全ての業務を請け負うSIerやシステム開発会社のエンジニアと比較すると、社内SEは残業時間が短く業務負荷が低い傾向にあります。しかし、このような条件は企業により異なります。また、業務時間以外の要素でも楽と感じるかどうかは変わってくるでしょう。そのため社内SEが楽な職種であるとは、一概には言えません。

この記事では、社内SEが「楽な仕事」と言われる理由や実際の仕事内容、社内SEを目指す前に知っておくべき注意点を解説します。仕事についてのやりがいやつらい点についても記載しているため、社内SEの仕事に興味がある方、キャリアパスの選択肢として検討している方、転職希望の方は、ぜひ参考にしてください。

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社内SEが「楽」と言われる5つの理由

社内SEが「楽」だとする説の元となっている、5つの理由を紹介します。

1.定型業務が中心で残業が少ない

社内SEの業務は、定型業務が中心で、深夜までの急な残業や徹夜作業は少ない傾向にあります。SIerやシステム開発会社のエンジニアのような、厳しいスケジュールの開発作業は社内SEには少ないため、作業計画の見通しも立てやすいです。

ただし、企業の案件によっては、大掛かりなシステムのリプレイスや改修案件で、社内SEが夜遅くまで対応することもあります。また、トラブル対応などでの残業もあるため、勤務先企業によっても大きく変わってくるところです。

2.事業への貢献度が比較的明確でモチベーションが維持しやすい

客先常駐のSEやSlerの開発チームのように勤務地が変わることは、社内SEの場合は少ないです。社内SEは基本的に、自社内での仕事がメインになります。

自社内で業務をするため、事業への貢献度が比較的明確になります。業務への貢献度が目に見えやすいことは、仕事に対するモチベーションを維持しやすくなることにもつながります。

3.自社との関係だけで済むため精神的なプレッシャーが小さい

社内SEが日頃接する人は、基本的に自社の社員です。客先常駐のSEやSlerの開発チームのように、常に客先で仕事をするわけではありません。自社の社員と接して仕事をするほうが、顧客と接しながら仕事するより楽だと感じる人が多いようです。

また、社内SEは転勤や転属が少なく環境の変化は少なめです。そのためプロジェクト毎に勤務地や仕事内容、仕事をする人間関係が変わるSIerのSEと比較すると、ストレスやプレッシャーは少ないといえるでしょう。

4.課題解決に必要なコミュニケーションコストが小さい

社内SEの仕事には、自社のITシステム関連のサポートやトラブルシューティングなども含まれます。このような仕事は、コミュニケーションコストの大きさが、解決までの労力に関係します。

社内SEは社内にユーザーがいるため距離が近く、コミュニケーションを取りやすい環境にいます。そのため、社内で信頼関係を築いてしまえば継続的に同じ相手と仕事をすることになるため、SIerや開発会社のエンジニアに比べて仕事が進めやすくなります。

5.納期やコストに縛られにくい

社内SEは納期へのコミットも、SIerや開発会社のエンジニアと比較すると楽なことが多いといわれています。契約ベースで仕事をするSIerや開発会社とは違い、プロジェクトのコミットも厳しくありません。また、外部に対して売上が発生するわけではないため、個人の売上目標やコストに関しても、SIerや開発会社のエンジニアほどシビアに追われずに済みます。

これらのことから、社内SEは「ワークライフバランス」を実現しやすく、「楽な仕事」と考えられています。ただし社内SEの業務の負担は、企業の体制や社内での立場によって変わるため、一概には楽であると決めつけることはできません。

関連記事:社内SEが「人気の職種」である7つの理由

社内SEの仕事は「楽じゃない」「やめとけ」という意見もある

社内SEの仕事は「楽じゃない」「やめとけ」という意見もあります。ここでは、社内SEを目指す前に知っておくべき注意点を解説します。

本当に楽かは、企業とプロジェクト次第

社内SEが楽と言われる理由には、業務負担の低さや高い技術スキルが要求されない、精神的なプレッシャーが小さいなどがあります。しかし、システム開発を内製化している企業の場合、社内SEの業務負担が高いことも十分に考えられます。

BtoC企業が自社ECサイトを運営している場合、夜間や休日でも障害対応が必須になります。また、社内の重要なシステム(基幹システムなど)の導入・改修・リプレイス案件の場合、社内SEの責任は重くなります。システム開発は外注が担当していても、業務要件や仕様の確定、外注管理、大規模なテストの主導などは社内SEが担当します。

また、反対に小規模な企業の場合は、ひとりでヘルプデスクから開発、運用まで対応することもあります。このような幅広い業務をひとりで担うには、幅広いスキルが必要になることも少なくありません。

先端技術を扱う企業ではスキル要件が高い

AIやIoTを自社サービスに組み込み、PoC(実証実験)を頻繁に実施する先端技術を扱う企業では、社内SEにも高いスキル要件が求められることが多くあります。「社内SEの仕事に高度な技術的スキルは不要」という考えは、通用しないケースが増えています。PoCをする企業が増えているため、今後スキル要件が高くなる可能性もあります。

企業や案件によっては忙しさに波があることも

社内SEは自社業務の内容によって、業務の忙しさが大幅に変化します。例えば、期末や年度末には決算や予算を確定する必要があり、そのためのシステムサポートが必要となるケースや、観光業などでは年末年始やGW、お盆休みが繁忙期となるため社内SEも対応が発生するといったケースです。

また、自社内のシステムリプレースや改修、新規プロジェクトのカットオーバー時などには発注元として立ち合いや確認が必要となります。現行業務に影響を与えないよう、業務繁忙期を外し、他の社員の休日の作業や夜間対応をする場合もあるでしょう。

さらに、社内システムの管理者としての役割も持っており、社内システムで障害が発生し業務に影響が出るような場合には、最優先での対応が必要となります。トラブル対処には時間のかかるケースもあり、忙しくなるタイミングが予測できない点もつらいところです。

企業の根幹を支えるシステムを扱うため責任が大きい

社内SEの主な業務の一つとして、社内のシステム運用があります。その重要度も場合によって幅があり、基幹系のシステムや業務の現場で必須となっているシステムは、企業の運営の根幹をなすものです。停止してしまった場合には、業務への影響が大きく企業の利益を損なう重要性の高いシステムも存在しています。

社内SEはこれらのシステムを停止させることなく稼働させるミッションを持っており、やりがいと同時に責任を強く感じるケースもあります。

活躍しても感謝されにくい

社内SEは、ユーザーである社員からの問い合わせ対応が多くなります。例としては、社員が日頃使っているパソコンが動かなくなった場合に、トラブル対応しても社員は「動いて当たり前」と思っていることが多くあります。つまり、問題が解決しても当然と思われてしまうため、期待したほど感謝されないことも多々あります。この「減点主義」のような環境が、不満やストレスのもとになります。

スキルの維持、向上が難しい

これまで培ってきたエンジニアとしてのスキルを使う場所や機会がなく、スキルの維持や向上が難しいケースもあります。

ヘルプデスク業務が中心の社内SEの場合、技術的スキルを活用する機会が少ないため、スキルの維持・向上が難しくなる可能性も考えられます。業務負荷やスキル要件が低く楽であることが、身につけたスキルを活かす場所を無くしてしまうことにつながるのです。

転職活動でスキルをアピールしにくい

前述したように、社内SEは技術的スキルを磨くことが難しい傾向にあります。Slerや開発会社に転職する場合、会社側もこのような実態をある程度把握しています。そのため転職対策として、携わったプロジェクトの詳細などを整理し、技術的スキルの維持・向上による実績を明確にアピールできるようにしましょう。

スキルの向上と整理が上手くできない場合は、次の転職の際にスキルをアピール材料としづらいため注意が必要です。

昇進や昇給が難しい

社内SEが所属する情報システム部門は、企業内では管理部門に位置します。いわゆる「コスト部門」として評価する企業も多いです。そのため、営業部門や人事部門などと比較すると昇進や昇給が少ないという結果に繋がっていることがあります。

関連記事:社内SEのメリット・デメリット

立場によって異なる社内SEの仕事内容

社内SEは、業務範囲によって4つの立場に分類することができます。ここでは、各社内SEの立場と仕事内容について解説します。

なお、これらの分類の複数を兼務することも珍しくありません。

関連記事:
社内SEとは|仕事内容や必要なスキル、役立つ資格も解説
社内SEに必要なスキル|SEとの違いや役立つ資格も解説

業務システムの運用・保守を行う社内SE

運用が開始されている社内の業務システム(基幹システムや人事給与システムなど)の運用・保守を主に担当します。また、企業によってはプログラミングで既存システムの改修を担当することがあります。

現行システムの運用・保守をスタート地点として、リプレース案件や新規システムの企画、管理に仕事を広げるのがステップアップへのルートとなります。

自社システム開発を行う社内SE

社内の業務システムやツールの開発業務を主に担当します。納期や仕様の融通がききやすいため、SIerや開発企業のエンジニアと比較すると精神的なプレッシャーが少ない傾向です。また、それまで培った技術力を活かしやすい立場です。運用・保守がメインの社内SEと比較すると、自社システム開発をする社内SEのほうが業務負担は大きい傾向があります。

ITサポート・ヘルプデスクを担当する社内SE

社内のパソコンやIT機器の管理、社内システムの問い合わせ対応などを主な仕事とするケースです。この立場の社内SEは、パソコンの起動やネットワークの接続などの初歩的な問い合わせのほか、コピー機のような周辺機器の問い合わせ対応もしています。パソコンのキッティングなども、業務に含むケースが多いでしょう。

関連記事:社内SEとヘルプデスクの違い

ネットワーク・インフラ監視系の社内SE

社内ネットワークやサーバーなどの、社内インフラの監視・障害対応が主な仕事です。この仕事は基本的に外注になることが多いのですが、稀に社内SEが担当するケースがあります。

社内SEの1日のスケジュール例

社内SEの仕事は、楽だと考えている方もいるかもしれません。

社内SEの業務例から、どのような1日を過ごしているのかを確認してみましょう。ここでは、社内SEの1日のパターンを紹介します。

基本となるスケジュール

大きなトラブルがなく、進行中のプロジェクトが落ち着いている時期は、情報収集をしながら新規プロジェクトの検討などを行います。必要に応じて、メーカーに資料を請求したり、メーカーの担当者の話を聞くこともあります。

時刻 タスク
9:30 メール返信、タスク整理
10:30 ウェブサイトや社内SE向けのメルマガなどから情報収集
12:00 昼休憩
13:00 今後使用する可能性が考えられる製品やツールの調査
15:00 上司と製品やサービスの打ち合わせ
17:00 進行中の社内プロジェクトの進捗確認
18:30 業務終了

問い合わせが多い日

問い合わせや不具合が重なり、少し忙しい日になったスケジュールの例です。対応しなければならない業務に対し、優先順位を付けて対応することが普段以上に重要になります。

時刻 タスク
9:30 メール返信、タスク整理
10:30 社内PCの基本操作などの簡単な問い合わせ対応
12:00 昼休憩
13:00 周辺機器との接続エラーなどの簡単な問い合わせ対応
15:00 販売管理システムの不具合をヒアリング
17:00 PCトラブルの対応、他社営業と会話
18:30 社内向けに今後の対応策も含めた障害報告
19:30 業務修了

システムの不具合があった日

社内の業務管理システムの不具合に対応し、それが1日で完了したケースのスケジュール例です。保守会社やメーカーの対応速度によっては残業が発生することもあります。また、トラブルは一日で片付かない場合もあり、トラブルの重要度によっては最優先で解決まで取り組まなければならない場合もあります。

時刻 タスク
9:30 メール返信、タスク整理
10:30 業務管理システムの不具合の検証、業務管理システムの保守会社にその旨を報告
12:00 昼休憩
13:00 アプリケーションのセットアップなど簡単な問い合わせ。業務管理システムの保守会社から原因報告を受けて、対応策を策定
15:00 業務管理システムの保守会社とテスト環境で確認
16:30 社内ネットワークの接続エラーなどの対応。社内ユーザーに業務管理システムの対応が完了したことを報告
18:00 エラーが起きていないか再度チェック
18:30 業務修了

外出する予定がある日

情報セキュリティ関連の展示会に行くことを想定したスケジュール例です。ITのなかでも、情報セキュリティは日進月歩の分野であるため、情報収集や知識のアップデートは欠かせません。

時刻 タスク
9:30 展示会へ直行
10:00 ブースを一通り回りながら資料を貰う
12:00 昼休憩
13:00 ゲストセミナーを聴講
15:00 午前中に集めた資料を確認。気になったセキュリティソフトのブースに行き、担当者に説明を受ける
17:30 展示会終了。会社に戻るには微妙な時間のためそのまま直帰

社内SEの仕事は楽しい?働くメリット

社内SEの仕事は楽とは一概にはいえないことを、ここまでは多く記載してきましたが、もちろん社内SEとして働いて楽しいことやメリットも多く存在しています。以下に、社内SEとして働く楽しさとしてよくあげられるポイントを紹介します。

企業・担当案件によっては上流工程に携われる

所属する企業や担当する案件によって変わってきますが、社内SEの立場は比較的上流工程に携わりやすいといえます。

SIer等のIT企業では、元請けや業務経験の豊富な一部のエンジニアが上流工程を担当することが普通です。スキルが高くとも経験年数や職責により上流工程に携われないというエンジニアも珍しくはありません。

社内SEの場合は、仕事は基本的に自社業務であり、システムの企画段階からプロジェクトに参画することが可能です。要件定義や基本設計といった上流工程にも必然的に携われ、システムという大きな仕組みを作ることができる点は、多くのエンジニアにやりがいと捉えられています。

さまざまな部署と関われる

社内SEのクライアントは、自社内のあらゆる部門です。必然的に様々な業務を行う部署と携わることができます。

IT企業のエンジニアの場合、対象の業種、業界や扱うシステム、ソフトウェアといった専門領域を持ち、仕事の範囲は限られていることが一般的です。幅広い業務に触れ、知見を広げることが好きなエンジニアにとっては、社内SEの幅広い業務対象は大きな魅力となります。

楽をしたいから社内SEを目指すのは危険

安易に楽をしたいという理由から社内SEを目指すのは、転職に失敗する可能性が高くなり危険です。

社内SEの仕事内容だけで判断して、転職してしまうと企業によってはミスマッチが発生します。その理由は企業の規模や業務によっては、社内SEの業務負担には大きな幅があるためです。また、企業も楽をするために社内SEになりたいエンジニアを雇いたくはないでしょう。

ミスマッチが起きないためには、転職しようと考える企業の希望や業務内容をチェックすることが重要になります。

関連記事:社内SE転職の難しさと、目指したい人が身につけるべきスキル

社内SEに関するQ&A

社内SEに関する、よくあるQ&Aを紹介します。

Q1. 社内SEが「楽」だと言われる理由はどのようなところでしょうか?

社内SEは、定型業務が中心で、深夜までの急な残業や徹夜作業は少ない傾向にあります。また、自社の社員を相手にするため、プレッシャーやコミュニケーションコストが小さいことが理由とされています。

Q2. 社内SEはどのような仕事を行うのですか?

業務システムの運用・保守、自社システム開発、ヘルプデスク業務、インフラの監視・障害対応などを担当することが多いです。

Q3. 社内SEを目指す前に知っておくべき注意点はありますか?

システム開発を内製化している企業の場合、業務負担が重くなる傾向があります。また、先端技術を扱う企業ではスキル要件が高い場合があります。

Q4. 社内SEとして働く場合、スキルの向上は可能ですか?

ヘルプデスク業務やインフラ監視が中心の社内SEの場合、技術的スキルを活用する実務が少ない場合があります。このような場合には、スキルの維持・向上が難しくなることもあるため、自発的に業務領域を広げスキル向上を実現していくことが必要です。

関連記事:社内SEへの希望者必見!志望動機の書き方のポイントを例文付きで解説

まとめ

この記事では、社内SEが「楽な職種」と言われる理由や、その実態について解説してきました。社内SEは、SIerのSEと比較すると楽といえる側面もあります。しかし、SIerのSEよりも業務範囲が広くなるケースも多く、社内SE特有の苦労もあります。

また企業によっては、業務負担が重くなることもあり、求められるスキルレベルや労働時間もまちまちです。社内SEへの転職を成功させるには、どのような働き方をしたいのかしっかり明確にして、自分の希望に合った企業を探すようにしましょう。

関連記事:社内SEになるにはどうしたら良い?求められるスキルや資格を解説

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