- SESとは
- SESを辞めたいと考える6つの理由
- SESを辞める際の懸念点とその対処方法
- SESを辞めたいと感じたときにやるべきこと
- SESからの転職先
- SESから転職する際に身につけておくべきスキル
- SESから転職するための4ステップ
- SESに関するよくある質問
SESとは
SESとは、System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略称であり、ITエンジニアが自らの技術力を顧客企業に提供し、開発・運用などを行う業態を指します。エンジニアは各案件に入り、客先常駐で作業を実施するのが一般的です。ただし、派遣契約とは異なり、指揮系統は常駐先ではなく雇用元にあります。
企業が情報システムを開発する際には、自社で雇用しているエンジニアに任せる、システム開発を請け負うSIer(エスアイヤー)やSES、フリーランスに委託するなどの方法があります。大規模なシステム開発プロジェクトでは、SESを活用することで、必要なときに必要なだけITエンジニアが調達できるため、顧客企業にとって人員計画に柔軟性が得られるのが利点です。
エンジニアの視点では、SESで働くメリットとして、さまざまな案件に携われる点が挙げられます。プロジェクトごとに参画していくため、異なる業界・業務・技術に触れる機会が多く得られるでしょう。積極的に学んでいけば、多様なスキルを習得できます。
SESを辞めたいと考える6つの理由
IT業界には欠かせないSESという業態ですが、そこで働くエンジニアのなかには労働環境に不満を抱く人も見受けられます。SESから転職したい人の理由としては、以下が考えられます。ここでは、SESを辞めたいと考える6つの理由について詳しく解説していきます。SESに興味がある方は、参考にしてみてください。
1.希望するスキルを身につけにくい
どのような技術を扱うかは、依頼される案件次第で決まります。そのため、自分の好みだけで決めるのは難しいのが現実です。毎回異なるスキルを求められることも多く、習熟度が上がらずにスキル不足を感じることがあります。また、特定のスキルしか求められず新たな技術が獲得できないことで、不安を抱くケースも見受けられます。
加えて、SESの案件では実装やテストといった特定の技術サービスを扱うのが一般的なため、要件定義を含めた上流工程に興味があっても、携わる機会が少なめです。開発よりも文書管理を含めた雑務を任される場合もあります。
2.待遇が悪い、改善の見込みが薄い
SESの案件はSIerからの下請けになる場合がある、顧客はできる限り低い単価で人材を獲得したいなどさまざまな理由から、給与が上がりにくいといわれています。個人が成果を挙げても、こうした業界・事業の特徴から待遇の改善につながらないケースが多いです。
また、特定のスキルが身につかなければエンジニアとしてのキャリアアップも難しく、給与も低いままです。特定の技術サービスが中心となるSESでは、プロジェクト管理を担当する場面が少ないため、プロジェクトマネージャーなどへのキャリアパスへ進むのに時間を要する場合もあります。
3.自社からの支援が得にくい
SESでは顧客企業の職場で作業を実施する、客先常駐の案件が多く見られます。客先常駐では、所属元の上司や同僚と会う機会が少なくなるため、支援を受けにくくなってしまう場合があります。案件によっては、一人で客先に向かう場合もあり、上位者から技術的な指導やキャリアに関するメンタリングを受ける機会が得られません。
4.職場環境が安定しない
客先常駐では、人間関係や職場のルール・IT環境を含めて、職場環境は常駐先に依存します。個人の裁量で決められる余地が少なく、割り当てられた案件によっては、職場環境に対する満足度が下がってしまう恐れがあります。数ヶ月ごとに案件が変わる場合もあり、常駐先へなじむのに労力を感じる人もいます。
5.年齢が不利だと感じやすい
SESを辞めたい理由として、年齢が不利だと感じやすいことがあります。年齢の高いベテランは経験の豊富さから給与が高めに設定されるケースが一般的です。そのため、同じ業務内容でも若手の方が安価なため、多くの企業が若手の人材を選好します。案件の取得が難しくなり、SESの退職を考えるようです。
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6.仕事の自由度が低くやりがいを感じにくい
SESはやりがいを見いだしにくいといわれています。その背景には、仕事の自由度の低さが挙げられます。多くの業務は、二次受けや三次受けの業務、または企業内のルーチンワークが中心となります。
大きなプロジェクトの核心部分や、プロセス改革の提案などは、主要なベンダーや専門家が担当することが一般的です。その結果、実際の作業内容が単調になり、やりがいを感じるのが難しくなります。
SESを辞める際の懸念点とその対処方法
SESを辞める際には、いつ辞めるか、誰に退職の意向を伝えるかなど、多くの疑問や不安が頭をよぎるでしょう。希望を受け入れられなかったらどうしたら良いか、退職意向を伝えてからの人間関係が悪くならないかなども代表的な不安要素です。
ここでは、SESを退職するときに抱えるこれらの疑問や不安を解消するための具体的な対処法を詳細に説明します。SESを辞めるか辞めないかの判断基準として活用してください。
辞めるタイミング
SESを退職するのに適したタイミングは、自分が担当しているプロジェクトが終了した時期です。このタイミングを逃さないよう、プロジェクトの終盤には退職の意向を伝えることが重要です。
引き継ぎの手順や新しい人材の配置に時間がかかることを考慮すると、早めのコミュニケーションが求められます。事前の準備とコミュニケーションにより、退職時の混乱や不都合を最小限に抑えられるでしょう。
誰に伝えるか
SESを辞める際には、まずは所属元の上長に退職の意向を伝えます。なぜならば、SESの指揮系統は所属元に集約されているからです。
SES契約を通じてプロジェクトに参加している場合、現地の勤務先と所属元の両方の状況を考慮することが不可欠です。その後は、SES企業が代替人材の手配や常駐先との調整を進める手順となります。
退職理由
退職理由を詳しく説明する義務はないものの、明確な意志が示されないと引き留められることも想定されます。現職の不満点を列挙するよりも、自身のキャリアアップを目指すという前向きな意志を強調することで、同僚や上司からの理解やサポートを得やすくなるでしょう。前向きな退職理由は、退職の際の円滑なコミュニケーションを促進し、双方にとって良好な関係を維持する手助けとなります。
所属した期間
SES企業に所属するエンジニアのなかには、一年や半年で辞める人もいます。これは、就職前の期待と実際の業務内容や職場環境に齟齬が生じ、不満を抱くためです。一般的に、1つの企業での就労期間が短すぎたり、プロジェクト途中で辞める頻度が多すぎたりすると、次の転職時にその理由を聞かれることがあるため推奨されません。
常駐先に問題があるのなら、すぐに辞めるよりも、所属元と交渉して、職場環境の改善を求めるのが望ましいです。
SESを辞めたいと感じたときにやるべきこと
SESの退職を考える際、キャリアの方向性を明確に設定することが第一歩です。大手SIerへの転職を検討するなら、必要なスキルの習得から取り組むことが考えられます。情報収集もキャリア形成には欠かせません。
転職の方法に迷ったら、転職エージェントへの相談も効果的な選択となるでしょう。ここでは、SESを辞めたいと感じたときにやるべきことを紹介します。
ITスキルを身につける
SESではさまざまな技術に触れられるメリットがあるため、各案件で着実にスキルとして身につけるようにしましょう。特定の業界・業務・技術に対する実務経験は、転職の際にも高く評価されます。定期的に過去のプロジェクトを振り返り、自社以外にも説明できるよう準備を進めます。また、PHPやPythonといった需要のある技術に興味がある人は、関連した案件に配属されるよう、所属元の上司と相談する方法もあります。
新卒や未経験からSES企業へ入社し、スキル不足を感じている場合は、業務以外にも自主的に学習するのが望ましいでしょう。資格取得やオンラインコースの受講を通して、最新のITスキルを獲得できます。転職する・しないに関わらず、身につけたITスキルは将来のキャリアアップに役立ちます。
異なる業態から情報収集する
同じIT業界でも、業態が異なれば働き方も変わってきます。自身のキャリアプランを考える上でも、他業態について深く理解できれば、自分にあった環境が見つかるでしょう。SES企業から配属される案件では、SIerで働くエンジニアや、顧客企業に所属する社内SEと触れる機会もあるでしょう。
その仕事ぶりを観察したり、話を聞いたりして、異なる業態での仕事の進め方について理解を深めます。現在のSES企業との違いを理解した上で、転職する・しないを決断すると良いでしょう。
キャリアプランを明確にする
現在の労働環境のどこに不満があるかを明確にして、それを解決する次のステップを選択しましょう。たとえば、案件の内容が毎回異なっていて、扱う技術や職場環境が変わってしまうのが不満であれば、社内SEを目指すキャリアが考えられます。
あるいは、上流工程に携わりたいのであれば、SIerが合っている可能性が高いです。転職活動でも聞かれる内容のため、情報収集を続けるなかで、キャリアプランを明確にしましょう。
転職エージェントに相談する
SESを辞めたいと感じたときには、転職エージェントに相談すると良いでしょう。転職エージェントは、今後のキャリアをサポートしてくれる専門家です。たとえば、SESの経験を活かせる企業や、自分の希望に合う企業を紹介するのが転職エージェントの仕事です。そのため、退職を検討する前に、転職エージェントに相談することをおすすめします。
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転職エージェントとは?8つのメリットやデメリット、利用の流れを解説
転職エージェントに提出する履歴書の必要性|作成のポイントを解説
SESからの転職先
SESからの転職の選択肢として、SIerやWeb関連の企業が一般的です。ITの領域を超えて、社内SEとしての役割を求める企業への移動を考える人も少なくありません。また、働く環境をリフレッシュしたいと考え、異なるSES企業への移籍を選ぶ人も存在します。ここでは、SESからの転職時に視野に入れたい業界や職種について詳しく紹介します。
SIer
要件定義を含めた上流工程に携わりたい人には、SIerが適しているでしょう。顧客企業の情報システム開発プロジェクトに入るため、異なる業界・業務・技術を経験できます。また、案件全体を統括するプロジェクトマネージャーに進みやすいなど、キャリアの可能性が広がる点もメリットです。
ただし、中小規模のSIerでは、大手SIerから一部の開発作業を受託する下請け構造にあるため、SES企業と似た状況に陥る懸念もあります。
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SIerの志望動機の書き方と例文|書く時のポイントと注意点も解説
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Web系企業
エンジニアとして身につけた技術力を活かしたいのであれば、自社サービスを開発・運用するWeb系企業が推奨されます。その会社が運用するECサイトや各種Webサービスに興味を抱き、ユーザーの使い勝手やビジネスの成長に貢献したいと考える人に向いた環境です。
サーバーサイドエンジニアやフロントエンドエンジニアといった職種に進み、実務経験を通じてスキルを高めていけるでしょう。
関連記事:SIerからWeb系企業への転職を成功させるには?難易度や成功例
IT業界以外の企業における社内SE
IT以外の業種で、社内システムの企画や開発・運用を手掛ける社内SEのキャリアパスもあります。社内SEの仕事には、自社のIT環境の運用や、開発を委託する会社の管理、社内ヘルプデスクなど、さまざまなものが含まれます。
特定の業界で専門性を磨き、安定した環境で仕事に取り組みたい人に適しているでしょう。一方で、プログラミングを含めた技術力を活かしたい人にとっては、力を発揮する場面が少なくなる恐れもあります。
関連記事:社内SEの仕事内容とは?必要なスキル、役立つ資格も解説
ほかのSES企業
ほかのSES企業であっても、現在抱えている不満を解消し、キャリアプランを実現できる場合もあるでしょう。転職先としては、興味深い案件を抱え、エンジニアに対する支援が手厚いSES企業が望ましいです。配属された案件で成果を上げていけば、SES企業のなかでもキャリアアップしていくことは可能です。
関連記事:SESの客先常駐|メリット・デメリットやSIerとの違い
SESから転職する際に身につけておくべきスキル
転職活動を有利に進めるには、転職に必要なスキルを習得し、それを実務で証明するのが望ましいです。SESからの転職を考えるなら、ITスキルは欠かせない基盤となります。さらに、学習能力はIT分野でのキャリア形成において鍵となる要素です。そして、社内外でのスムーズな対話のための、コミュニケーション能力も不可欠です。ここでは、SESから転職する際に身につけておくべきスキルを紹介します。
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社内SEに必要なスキル|SEとの違いや役立つ資格も解説
ITスキル
新卒や未経験でSES企業へ入社した場合や、文書作成を含めた雑務が割り振られるケースが多かった場合、転職先の企業が求める水準のITスキルが身についていない可能性があります。そのため、転職を検討するのに合わせて、書籍やプログラミングスクールを通じて、最新のスキルを獲得することが推奨されます。また、資格の取得を通じて、総合的な知識を得る方法も良いでしょう。
ベテランエンジニアだとしても、ITスキルの豊富さは転職成功率を高めます。たとえば、複数のプログラミング言語を習得すれば、担当できる案件の幅が広がり、より良いプロジェクトに巡り合える可能性が高まります。
学習能力
変化の激しいIT業界では、常に新しいプログラミング言語やツールが開発されています。最新技術を率先して取り入れる開発現場も多く、エンジニアに技術の習得を求める企業もあります。そのため、トレンドに目を向け、能動的に学習をする習慣をつけましょう。継続的に学習を続けるエンジニアは、高い評価を得られる傾向があります。
コミュニケーションスキル
チームで作業する場面が多い情報システム開発のプロジェクトでは、コミュニケーション能力が欠かせません。SESでは特定の開発工程の作業を行うことが多く関わる人材も限定的ですが、SIerやWeb系企業など他業態では多様な関係者と仕事を進めるためコミュニケーションの重要性は高いです。業務においては、常に連絡や相談、調整、交渉を積極的にしましょう。
SESから転職するための4ステップ
SESからの転職をスムーズに進めるためには、適切なステップを踏むことが効果的です。最初のステップとして、自身の持つスキルや経験を整理し、それを基にキャリアの方向性を再評価します。次に、適切な求人情報の収集と応募活動を進めます。そして、内定を得た後、SESに対して正式な退職の手続きを行います。ここでは、SESから転職するための4ステップをまとめました。
1.スキル・経験の棚卸し
これまで参加した案件を振り返り、開発プロジェクトで携わった業界・業務ごとに発揮したスキルをまとめます。プログラミングに関連した技術にとどまらず、コミュニケーション能力のようなソフトスキルも含みます。経歴や成長を振り返る意味で、参画した順番に書き出していくと良いでしょう。履歴書・職務経歴書の作成や、面接といった今後の転職活動に必須のステップです。
2.キャリアプランの見直し
現状のSES企業における不満や、これまでに身につけたスキル、これからやりたいことを踏まえ、キャリアプランを明確にします。どのような業態で、何の職種につきたいのかを具体的に検討しましょう。そして、保有するスキルや経験と、目標とする職種にギャップがないかを確認します。スキル不足であれば、それを習得できるよう、現実的な目標を立てる必要があります。
3.求人の調査と応募
転職情報サイトなどを活用し、キャリアプランに合致した求人を探します。転職活動経験が少ない方や自信がない方は、転職エージェントを利用し、職務経歴書やキャリアプランについてフィードバックを受けながら、転職の戦略を見直していく方法がおすすめです。無料で適性・希望に合う求人を紹介してもらえます。また、書類作成や面接対策を受けられ、アドバイスをもらえるのもメリットです。
関連記事:社内SEの志望動機の書き方は?ポイントと例文も紹介
4.内定と退職手続き
転職先から内定を得たら、現在の企業での退職手続きをします。辞めたあとには、所属元のSES企業と常駐先の企業で調整が必要となるため、トラブルを避けるためにも、急に辞めるのではなく適切な手続きをとって進めなければなりません。1ヶ月前に退職の意思を告げるなど、定められている就業規則を事前に確認しましょう。
SESに関するよくある質問
SESを退職したいと考えていても、転職の経験がなく不安を感じている方は多いでしょう。不安のなかには、顧客企業の案件参画中に退職を希望する場合の手続きや、ほかのSESエンジニアが退職を選ぶ主な理由、最適な退職タイミングなどがあるでしょう。ここでは、こうした不安を解消するため、SESの転職に関するよくある質問に対する回答を紹介します。
Q1. SESでの案件契約中に辞めたい場合どうすれば良いですか?
SESでの退職を希望する場合、まず就業規則を確認し、通常1ヶ月前に上司に退職意向を伝えます。その後、自分の担当業務の引き継ぎを行います。そして、全ての業務がスムーズに移行した後、必要な退職手続きを進めて完了となります。
Q2. SESエンジニアが離職する理由は何ですか?
SESエンジニアが退職を考える背景には、将来性への不安が強く影響しています。特に、経験を積んできたエンジニアは、年齢と共に適応できる案件が減少すると感じることが多いです。また、給与が上がりにくい、数ヶ月~数年単位で職場が変わるため環境になじみにくいといった点が理由になる人もいます。
Q3. SESを辞めるタイミングはいつが良いですか?
特に決まりはないものの、参画している案件の終了後だと周囲に迷惑がかからないでしょう。ただし、SESの退職時期は自分で決定できますが、所属しているSESの内部規則の確認は欠かせません。ほとんどの企業では、「退職を希望する際は1ヶ月前に通知する」といった規定が設けられています。
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