エンジニアによる大手企業への転職は福利厚生が充実し、年収が上がる傾向にあるため非常に人気です。しかし、中小企業やベンチャー企業と大手企業の働き方は大きく異なるので転職前にしっかり調べる必要があります。この記事ではエンジニアが大手企業へ転職する際のポイントやメリットデメリットを徹底的にご紹介しています。給料や福利厚生だけを見て転職すると失敗や後悔する可能性があるため、転職前に調べて自身に適しているかを確認しましょう。
大手、中小、ベンチャーIT企業のそれぞれの特徴
まず大手、中小、ベンチャーIT企業のそれぞれの定義、及びメリット・デメリットを一般論として整理しましょう。
大手企業 | 中手企業 | ベンチャー企業 | |
---|---|---|---|
安定感(福利厚生・倒産のリスク) | 大手企業高 | 中手企業中 | ベンチャー企業低 |
仕事の自由度 | 大手企業低 | 中手企業中 | ベンチャー企業高 |
給料 | 大手企業入社年数が浅いうちが少ないが、年功序列で毎年上がる | 中手企業大手と比較すると少なくなりがち | ベンチャー企業スキル・能力によって給料アップを狙いやすい |
大手企業
大手企業は、実は法的に定義されていません。一般的には「中小企業基本法第二条」(※)で制定されている、中小企業の基準値を超える企業を指します。従って、下記のような条件を満たす企業が「大手企業」に分類されます。業種によって条件が異なるので、ご注意ください。
業種 | 資本金・出資総額 | 従業員数 |
---|---|---|
製造、建設、運輸、その他 | 資本金・出資総額3億円以上 | 従業員数300人以上 |
卸売 | 資本金・出資総額1億円以上 | 従業員数100人以上 |
サービス | 資本金・出資総額5000万円以上 | 従業員数100人以上 |
小売 | 資本金・出資総額5000万円以上 | 従業員数50人以上 |
メリット
-
・年功序列で毎年給料が上がりやすい
・福利厚生・社内制度が整っている
・ネームバリューから社会的信用を得られる
デメリット
-
・入社年数が浅いうちは給料が上がりづらい(給料テーブルが画一的)
・年功序列が強く、昇進に時間がかかる場合が多い
・分業されているケースが多く、業務上の自由度が低い
・独立に必要なスキルが身につきにくい
中小企業
中小企業は、「中小企業基本第二条」という法律で定義されています。具体的には下記のような条件を満たす企業です。こちらも業種によって条件が異なります
業種 | 資本金・出資総額 | 従業員数 |
---|---|---|
製造、建設、運輸、その他 | 資本金・出資総額3億円以下 | 従業員数300人以下 |
卸売 | 資本金・出資総額1億円以下 | 従業員数100人以下 |
サービス | 資本金・出資総額5000万円以下 | 従業員数100人以下 |
小売 | 資本金・出資総額5000万円以下 | 従業員数50人以下 |
メリット
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・業務上の自由度が比較的高い(裁量が大きい)
・任せてもらえる業務範囲が比較的広い
デメリット
-
・ワンマン社長が多く、会社の方針が頻繁に変わることがある
・残業が多くなりがち
・大手と比較すると、給料が低くなる傾向がある
ベンチャー企業
ベンチャー企業も大手企業と同様、法的に定義されていません。「ベンチャー」は英語で「投機的・冒険的」という意味があることから、一般的には「独自の技術やアイデアで革新的な新事業を展開している中小企業」と考えられています。その他にも、下記のような共通点がある場合が多いです。
-
・創業から15年以内(5年、10年説もあり)・社員の平均年齢が20〜30代と若い
・大手企業が参入しにくい分野で活躍している
メリット
-
・業務上の自由度が非常に高い
・柔軟な働き方に対応している(リモートワーク・週3勤務など)
・任される業務範囲が広く、独立に必要なスキルが身につきやすい
・スキルや成果に応じた柔軟な給与体系で、若くても高い給料を得やすい
デメリット
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・倒産のリスクが高い
・福利厚生・社内制度が整っていない
大手企業へ転職するメリット・デメリット
次に大手企業へ転職する際のメリット・デメリットを確認していきましょう。
メリット
まずは大手企業に転職する際のメリットを3つご紹介します。
-
・中小企業に比べて給与が高い・大規模プロジェクトの経験が得られる
・比較的安定している
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
中小企業に比べ給与が高い
大手企業の給料は中小企業と比べて高い傾向にあります。具体的には約100~300万円ほど差があり、同じプロジェクトに参加しても上流工程の大手企業の方が給料は高くなります。SEとしての知識や経験が豊富でも必ず稼げるわけではないので、給料を上げたい場合は大手企業がおすすめです。
大規模プロジェクトの経験が得られる
大手企業に転職すると、中小企業では参加できなかった規模のプロジェクトを経験できる可能性が上がります。大手企業は銀行などの障害が発生した際の影響範囲が大きいプロジェクトを任されています。中小企業では得られない経験は自身にとってプラスになるでしょう。
比較的安定している
大手企業は金融などの継続案件などがあるため、中小企業と比べて業績が安定する傾向にあります。しかし、近年では大手企業でも将来が安定しているとは限りません。大手企業だからといって業績を無視しないようにご注意ください。
デメリット
大手企業に転職するメリットを確認したところで、ここからはデメリットをご紹介します。当然、大手企業に転職することは良いことばかりではありません。ここでは3つご紹介します。
-
・自由が利きにくい・仕事の成果を実感しにくい
・テクニカルスキルが身につきにくい
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
自由が利きにくい
大手企業のプロジェクトは大規模になることが多いため、承認フローが多くなりがちです。そのため、簡単な許可を得るだけでも数日かかることがしばしばあります。また、大組織で秩序を守るために、中小企業では良しなにできたことがルールで縛られてしまうことなどがあります。
仕事の成果を実感しにくい
大手企業のプロジェクトは関係者が非常に多いため、個人の成果をなかなか感じられません。そのため仕事でやりがいを感じにくいかもしれません。また、プログラミングの機会も少なく、資料作成や書類確認の時間が増えます。中小企業やベンチャー企業のほうが、即戦力として活躍できる機会が多いため、仕事の成果は大手企業のほうが実感しづらいこともあるでしょう。
テクニカルスキルが身に付きにくい
大手企業のプロジェクトは例年案件が多いため、前年踏襲を繰り返し非常に古い技術を使用している場合もあります。なぜなら、大規模な金融システムなどは1からの開発が難しく、不測の事態が発生した際の影響範囲が大きいからです。そのため、最新技術などを身につけづらく、エンジニアとしてスキルアップしていくには自助努力が必須となるでしょう。
後悔しないために!大手企業に転職する際の注意点と対策
注意点
まずは大手企業に転職した際にギャップを感じないための注意点を確認していきます。ここでは以下の4つをご紹介します。
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・自分のやりたい仕事に就けるとは限らない・中小企業、ベンチャー企業と比べると営業職寄りの仕事になる
・物事の決定に時間がかかる
・得られるスキルに偏りが出る場合がある
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
自分のやりたい仕事に就けるとは限らない
大手企業には、様々な企業で実績を残した有能な社員が集まります。そのため自身のスキルがどんなに優れていても、優遇されてやりたい仕事に就けるとはかぎりません。
大手企業では割り当てられた仕事で成果を出し続けて評価される必要があります。なかなかプラスアルファの領域に挑戦できないこともあるでしょう。
中小企業、ベンチャー企業と比べると営業職寄りの仕事になる場合も
大手企業の業務は中小企業やベンチャー企業と比べて細分化されています。そのため、自身で担当できる仕事が限られており、これまでの経験やスキルが活かせない可能性もあります。また、希望のプロジェクトに参加できた場合も、下請け企業への指示ばかりで自身はプログラミングなど技術的な内容に触れられないこともあります。全体の傾向として技術職ではなく営業職寄りの仕事になる可能性もあることを頭に入れておきましょう。
物事の決定に時間がかかる
大手企業になるとプロジェクトや業務の意思決定に様々なフローが絡み合い、多くの時間がかかります。そのため、中小企業やベンチャー企業と比べて仕事のテンポは落ちるでしょう。場合によっては物品の購入や各手続の申請など、なかなか承認が通らず煩わしく感じることも。
得られるスキルに偏りが出る場合がある
大手企業では大規模の案件に長期間関わることが多いため、得られるスキルや経験に偏りが出る場合があります。また、中小企業やベンチャー企業と比べて古い技術を使う傾向にあるため、AIやVRといったトレンド技術に触れる機会が減ります。一方で特定分野のスペシャリストになりたい方は大手企業が向いていると言えるでしょう。
大手企業への転職対策
大手企業に転職する際の注意点を確認したところで、ここからは転職対策を確認しましょう。大手企業の中途採用では、中小企業やベンチャー企業とは見られる部分が異なる傾向にあります。大手企業に転職する際の対策として以下の2つを確認しましょう。
-
・コミュニケーションスキルの重要性が増す・特定の分野に特化する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
コミュニケーションスキルの重要性が増す
前述の通り、大手企業の仕事は中小企業・ベンチャー企業と比べて営業職寄りの仕事が多いです。そのため、下請け企業や協力会社を取りまとめるコミュニケーション能力が求められます。また、指示を出したり全体の流れを組む機会も多いため論理的思考力も必要です。
特定の分野に特化する
大手企業の業務は偏ることが多いため、広い範囲の経験より何かに特化したエンジニアが評価される傾向にあります。例えば特定の業界に長年勤めている、専門知識を有しているなどをアピールすると選考に通りやすくなるでしょう。
まとめ
中小企業やベンチャー企業で勤めている方の中には大手企業への転職を検討されている方も多いでしょう。転職活動は、きちんと情報収集や分析を行うなどして慎重に進めなければ失敗や後悔に繋がる恐れがあります。大手、中小、ベンチャーのそれぞれの特徴を把握し満足度の高い転職を実現しましょう。
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