近年、未経験者を対象としたプログラミングスクールなどが増え、プログラマーを目指しやすい時代になりました。プログラマーのキャリアパスは、スキルを磨いてシステムエンジニアにキャリアアップする選択肢や、経験を積んでから他のエンジニア職へキャリアチェンジする選択肢などがあります。
この記事では、今後どのようなキャリアを積み上げていくか考えている若手プログラマーに向けて、プログラマーの主なキャリアパスと、キャリアアップを目指す上で持っておくと評価されやすいスキル、役立つ資格について解説します。
経験年数で見るプログラマーのキャリアパス例
エンジニアというのはスキルや目指す方向性によってキャリアが大きく変化する職業です。
従来は設計者や管理職へのキャリアアップが一般的と考えられてきましたが、近年はプログラマーのキャリアパスは多様化しており、生涯プログラマーとして活躍することも可能です。今回は最も一般的とされるキャリアモデルを紹介します。
1年目
新入社員や未経験からプログラマーになった場合、最初に割り当てられるのはテスト工程や開発工程の作業です。上司や先輩の指導の元で、設計書やテスト仕様書に従って作業を行います。OJTや研修を通じて基礎的な知識や技術力を身に付けていきます。
3~5年目
プログラマーとして一通り開発工程をこなせるようになれば、2名から5名ほどの小規模チームのリーダーやサブリーダーを任されるようになります。チームの進捗管理などマネジメントについての経験も積んでいきます。
より上流の工程として詳細設計や基本設計などを担当するようになると、「システムエンジニア(SE)」と呼ばれる職種になります。
5年目以降
システムエンジニアとして、要件定義からテストまでの全ての開発工程を担当します。プロジェクトマネジャー(PM)の補佐やプロジェクトリーダー(PL)などの立場でチーム全体のマネジメントや進捗管理、品質管理などの管理業務を任されるようになります。
この時期はエンジニアとしてのキャリアの大きな岐路となる場合が多く、大きく分けて次の2つのいづれかの進路を選ぶことになります。従来はマネジメントを目指すのが普通でしたが、最近ではスペシャリストの職位を用意する企業も増えています。
マネジメント職
プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトの計画から予算や工数の見積、要員確保など、プロジェクト遂行に必要な下準備や調整を行います。基本的には開発現場を離れ管理業務に当たることになりますが、状況によりマネジメントを行いながら自らも手を動かして開発するというプレイングマネージャーの立場になることがあります。
プロジェクトマネージャーになると、テクニカルな知識はもちろんのこと、プロジェクトマネジメントのスキル、業務知識、顧客の業界に関する知識、交渉力などが求められます。プロジェクトマネージャーの経験を活かして、さらに上のキャリアとしてITコンサルタントなどを目指すことも可能です。
スペシャリスト
高い技術力や豊富な開発経験を活用して、特定分野の有識者としてプロジェクトを支援します。マネジメントより手を動かしてものづくりをするのが好きな人や、新しい技術を追求したい人は、こちらの道を選ぶ場合が多いでしょう。
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別企業やほかの言語を扱うプログラマーに転職する
プログラマーとして、さらに収入を上げたり、別のプログラミング言語での開発をしたりするために、別の企業へ転職する方もいます。AIやビッグデータなど、IT業界で注目を集めている技術に関するプログラミング言語を使った会社へ転職することで、新しいスキルを身につけたり、年収を増やしたりすることも可能となります。
転職で評価されやすいスキル
プログラマーとしての転職では、当然プログラミングスキルが要求されます。転職で評価される可能性が高いのは開発案件で需要が高い言語です。具体的には、Java 、PHP、C#、Python、Ruby、JavaScriptなどです。
「プログラミング+α」のスキルをアピールできるとより評価が高まり、他の応募者とも差別化できます。システム開発の案件では想定外のエラーなど問題が付き物です。技術的な問題を自分が主体となって解決に導いた経験があれば、問題解決能力としてアピールできます。
また、チームメンバーと協力してプロジェクトを遂行した経験はコミュニケーションスキルとして、工数見積もりや進捗管理の経験はマネジメントスキルとして表現することができます。
役立つ資格
プログラマーに取得をおすすめする資格としては「基本情報技術者試験」があります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営している情報処理資格試験の1つで、経済産業省が認定している国家試験です。特定の言語や製品についての知識を問う試験ではなく、情報処理の基本的な知識・技術について広く評価する試験です。
さらに個別のプログラム言語のスキルを認定する資格を取得することで、プログラマーとして実戦的なスキルが身に付いていることをアピールできます。例えば、Javaの場合は「Oracle認定Javaプログラマ」や「Javaプログラミング能力認定試験」、PHPの場合は「PHP技術者認定試験」などがあります。
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言語別の人材動向
レバテックキャリアが2020年から2021年に新規登録された求職者データ(正社員ITエンジニア)をもとにエンジニアの人材動向を調査した結果によると、メインスキルの割合は、トップがJavaの51.9%、次いでC言語8.8%、PHPが7.6%という結果になりました。
圧倒的なシェアを占めるJavaですが、前年比で見ると、9.2ポイント下落しています。これは2020年からのコロナ禍の影響で、エンタープライズ向けシステムへの投資が減ったことと、みずほ銀行のシステム移行完了などが重なり一時的にJava人材が市場に流出した状況が、いったん落ち着きを取り戻した形となります。
Java割合の減少に対して、C言語の割合が3.8ポイントの上昇を見せました。2021年にかけてIoTや自動車業界での求人が増えており、それに伴いC言語のスキルをもつエンジニアが求人市場に出てきやすくなっている状況が伺えます。
また、JavaScript割合も1.6ポイント上昇。Webサービス業界ではJavaScriptやTypeScriptを使って開発を進めることがスタンダードとなっており、JavaScriptの経験があるエンジニアの需要は今後も高まっていくと考えられます。
言語別の案件動向
レバテックが2019年度にサービス上で新規発生した求人・案件データを調査した結果を元に作成した「プログラミング言語別ランキング」によると、トップはJavaで全体の35%近くを占め、2位はPHPで16.43%、3位はPython、4位、5位にJavaScriptとRubyが続いています。
最も多い割合を占めているJavaは業務系システムの構築やWebサービス開発、アプリケーション開発など幅広く使用されており、今年度では主に業務系システムの需要が高く、主に金融業や製造業、物流業界からの求人が多いと見られます。ランキング2位のPHPはWeb開発の現場で広く使用されており、安定して高い求人需要を維持しています。
3位のPythonはAI・機械学習などのデータサイエンス分野で注目され、世界的にも将来性を期待されている言語です。ただし、AI・機会学習市場は投資としての側面があり、今までの勢いを保持できるかどうかは、今後の景気状況に左右される可能性があります。
JavaScriptは求人数では4位ですが、伸び率1位になっています。フロントエンド、サーバーサイドでの需要増が主な要因と考えられます。JavaScriptの求人割合は、前年度比34.36%増加し、全言語の中でもっとも求人数の割合が増加した言語となりました。
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プログラマーになりたい人におすすめのプログラミング言語とは?
SE(システムエンジニア)にキャリアアップする/転職する
プログラマーとしてある程度経験を積んだら、上流工程である要件定義や基本設計などを担当することがあります。そのようなスキルを身につけることで、システムエンジニアへのキャリアアップや転職が可能となります。
SEの年収
経済産業省の調査ではSE関連の年収は以下となっており、比較的高い年収水準にあります。
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・高度SE・ITエンジニア(基盤設計担当・ITアーキテクト):780万円
・SE・プログラマ(顧客向けシステムの開発・実装): 600万円
・SE・プログラマ(ソフトウェアの開発・実装):570万円
・SE・プログラマ(組込みソフトウェアの開発・実装):600万円
転職で評価されやすいスキル
プログラマーからシステムエンジニアへの転職では、プログラミングのスキルに加えて、データベース設計や構築スキル、データベース操作言語のSQLのスキル、サーバーの設計や構築のスキル、プロジェクトマネジメントのスキルなどがあると評価が上がりやすい傾向にあります。
役立つ資格
システムエンジニアへの転職には、情報処理推進機構が実施している情報処理資格試験の取得が役に立つでしょう。全部で13区分の試験が実施されていますが、まずは「基本情報技術者」を取得し、その後で「応用情報技術者」や「データベーススペシャリスト」、「システムアーキテクト」などの「高度情報処理技術者試験」の取得を目指すと自身の成長に合わせて資格が取得できます。
インフラエンジニアにキャリアチェンジする
インフラエンジニアは、ネットワークやサーバーといったインフラの設計、構築、運用、保守を担当する職種です。近年のプログラマーは、ベンチャー企業を中心にネットワークやサーバーの設定まで担当することも少なくありません。
プログラマーの基礎知識としてネットワークとインフラスキルの教育を行う企業も多いでしょう。よって、インフラエンジニアはキャリアアップを目指しやすい職種と言えます。
インフラエンジニアの年収
厚生労働省の職業情報提供サイト(日本版O-NET)に、インフラエンジニアにあたるシステムエンジニア(基盤システム)に関するデータがあります。システムエンジニア(基盤システム)が属する主な職業分類(システム設計技術者)の統計情報によると、平均年収は690万円(出典:令和2年賃金構造基本統計調査)でした。このデータには設計・構築を担当するインフラエンジニアと運用・監視を担当するインフラエンジニアが混合していることに注意してください。
転職で評価されやすいスキル
インフラエンジニアはサーバーの設計や構築、運用保守、ネットワーク構築スキルなどがあると評価されやすいでしょう。
役立つ資格
システムエンジニアと同様に基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の取得が役に立ちます。さらに「ネットワークスペシャリスト」や「CCNA」、「AWS認定」などがあれば、ネットワークやサーバー構築スキルがあると評価されやすいです。
データベースエンジニアにキャリアチェンジする
データベースの設計、構築、運用、保守を担当する職種です。SEが担当することも多いですが、大規模システムの開発では専門のエンジニアが配置されることも少なくありません。
プログラマーはデータベース接続やデータベース操作(データ抽出、データ更新など)などをプログラミング言語とSQLを使って実装するため、データベースエンジニアも目指しやすい職種です。
データベースエンジニアの年収
2021年10月6日時点で、レバテックキャリアに登録されているデータベースエンジニアの求人・転職情報から30件を抽出し、年収の最小値と最大値の中間値の平均を算出すると、データベースエンジニアの年収は459~755万円と試算できました。これらの求人・転職情報では条件として上流工程のスキル、データ分析のスキル、マネジメントのスキルなどデータベース技術などが求められることに注意が必要です。
転職で評価されやすいスキル
データベースエンジニアは、SQLのパフォーマンスチューニングスキルやデータベース設計スキルがあると転職時に評価されやすいです。
役立つ資格
こちらもシステムエンジニアと同様に基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の取得が役に立ちます。それらに加えて、「データベーススペシャリスト試験」や「オラクルマスター」など、データベースに特化した資格があれば、資格の取得を通じてデータベースの知識を身につけられ、転職活動時のアピールポイントになります。
工程別に見るプログラマーの仕事内容と必要スキル
プログラマーの仕事はプログラミングだけではありません。設計工程やテスト工程などにも携わる場合があります。これから紹介するプログラミング以外の工程もしっかりとできるようになる必要があります。
テスト工程業務
テスト工程業務とは、完成したプログラムが正常に動作するかどうかテストする業務のことです。
仕事内容
SEが設計したプログラムが正常に動作するかテストする工程です。テストにはブラックボックステストやホワイトボックステストなどさまざまな手法があり、目的に応じて使い分けます。テスト後のレポートの作成まで担当することもあります。
必要スキル
テストはプログラミング未経験でも、マニュアルに従って操作するだけでできる仕事です。また複数の方と共同でテストを実施することもあるため、最低限のコミュニケーション能力も求められます。テストはプログラミングに慣れるという目的もあるため、とくに初心者が担当することが多いです。
保守運用
保守運用は、すでに動作しているシステムへのメンテナンスを行う業務です。
仕事内容
保守は、システムにバグやエラーが発生したときに、その問題を解決する仕事のことです。運用は、システムを正常に動作し続ける状態を維持するために行うあらゆる業務のことです。
必要スキル
保守運用もテスト工程と同じように、マニュアルが準備されていることが多く、未経験のプログラマーでもマニュアルに従って操作するだけで、ある程度の保守運用は可能です。プログラミングの未経験者の中には、テスト工程からではなく、保守運用から実務をスタートするケースもあります。
構築
保守運用ができるようになると、次は構築を担当します。構築はプログラマーのメインの業務です。
仕事内容
構築は、SEが作成した仕様書通りに、実際にプログラムを記述する工程です。一つのシステムを一人のプログラマーで構築することもありますが、複数のプログラマーと協力しながらプログラミングすることもあります。自分の書いたプログラムが、ほかの方にとっても読みやすいプログラムになっていることなどに気をつけながらプログラムを記述することが大切です。
必要スキル
構築ではプログラミングのスキルが必須です。実際に稼働しているシステムの保守運用の経験を活かして、メンテナンスしやすいようにプログラムが書ければ、なお良いでしょう。
設計
設計は、構築の前段階の工程であり、主にシステムエンジニアが担う業務でもあります。
仕事内容
開発するシステムに必要な機能や動作を考えて設計する工程です。設計を専門に担うシステムエンジニアが担当することもありますが、経験を積んだプログラマーが設計を担当することもあります。
必要スキル
設計には、プログラミングのスキルに加えて、開発するシステムが使われる業界の知識や、クライアントのニーズを的確に把握するためのコミュニケーション能力が求められます。
プログラマーの転職市場
プログラマーの将来性
システム開発は顧客にとっては設備投資としての側面があり、景気の状態に大きく左右されます。コロナ禍によって景気の動向が不安定になっていますが、それでも世の中のIT化の流れはとどまることなく、むしろ加速し続けています。企業もAIやIoTなどのテクノロジーを活用することで現場業務の効率化や自動化を図るなど、加速する経営環境の変化に対して、素早い対応を迫られています。
この変化に対応するために必要な人材として、多くの企業でプログラマーの需要が高まっています。特にIT業界では多くの求人が発生しています。ただし、顧客のニーズにすぐに対応することが求められるため、現状では即戦力となる人材が重視される傾向にあります。
関連記事:プログラマーの将来性と、今後需要が高まるスキル
プログラマーの需要
転職市場で評価が高いのは、「転職で評価されやすいスキル」で紹介した通り、Java 、PHP、C#、Python、Ruby、JavaScriptなどです。求人としてはオープン系が飛び抜けて多く、なかでもWebシステム開発の求人が増加しています。
また、一つの言語や技術に特化した人材より、複数の言語や製品を組み合わせてシステムを構築できる人材が求められています。
まとめ
今回はプログラマーのキャリアパスについて、解説してきました。最近では、プログラマーのキャリアパスは多様化しており、選択の幅が広がっています。いずれの道を進むにしても、自分の強みがどこにあるか把握し、自分の価値が最大化できる場所を目指すことが重要です。
また、自分の専門分野を極めるとともに専門外のことにも興味を持って幅広く学ぶことが大切です。新しい知識は仕事の幅を広げることにつながり、さらにそこで成果を残せばまた新しいことに挑戦するチャンスが生まれます。ぜひ本記事を参考にご自分のキャリアについて考えてみてください。
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