ネットワークエンジニアの監視業務とは?仕事内容や役立つ資格を紹介

最終更新日:2024年7月18日

コンピュータネットワークの設計、構築、運用などを担当するネットワークエンジニア。新規のネットワーク設計業務が減る一方、継続して必要とされるのが監視業務です。

この記事では、ネットワークエンジニアが行う監視内容や、監視業務を担う上で必要となるスキルについて解説します。

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この記事のまとめ

  • ネットワークエンジニアは、HUBやルーターなどのデバイスを用いて、最適なネットワーク環境を構築することを役割とする職種
  • ネットワークが問題無く動くためには、ネットワークエンジニアによる継続的な監視業務が不可欠
  • 「単純作業が多い」「夜勤が発生する場合もある」などネガティブな面もある
  • クラウドを活用したシステムに移行する企業が増えてきており、今後もネットワークエンジニアの需要は見込まれる

ネットワークエンジニアの仕事内容

ネットワークエンジニアの仕事内容


ITの世界において「ネットワーク」とは複数のコンピューターや関連機器が相互に接続された状態を指します。ネットワークがなければ、PC間で情報を共有したり、メッセージの送受信ができません。

ネットワークエンジニアは、HUBやルーターなどのデバイスを用いて、最適なネットワーク環境を構築することを役割とする職種です。

ネットワークの規模にもよりますが、ネットワークエンジニアの仕事は、上流と下流で担当者が分かれるケースが一般的です。上流工程では、顧客からのヒアリング、要件分析、提案などを経て、基本設計、詳細設計へと進みます。この上流を担当するネットワークエンジニアを、現場ではビフォアSEと呼ぶことがあります。一方、下流工程を担うネットワークエンジニアは、アフタSEやフィールドエンジニアと呼ばれます。下流工程には、構築とテストのほか、保守や監視、運用が含まれます。

関連記事:ネットワークエンジニアとは|役割や仕事内容、未経験から目指す方法

上流工程

上流工程では具体的にどのようなことをするのでしょうか。

顧客のヒアリング、要件分析、提案

まずは顧客にどのようなネットワークにしたいかの要望をヒアリングします。どのような業務のためのネットワークか、何台機器が接続する想定か、納期はいつまでかなどを確認して、要件として整理していきます。その後、スケジュールや費用の見積もりを提案して顧客とすり合わせを行います。費用や納期はプロジェクトの根幹に関わるため、最初の段階が最も重要といえます。

基本・詳細設計業務

要件定義を元にネットワークの基本設計をしていきます。基本設計では「どこからどこまでのIPアドレスを使うか」、「障害発生時のネットワーク経路はどうするか」、「台数が増えた場合の拡張する余力を残すか」などを決めていきます。基本設計で決めたことをさらに詳しく決めていく業務が詳細設計です。

詳細設計では具体的な機器ごとのIPアドレスや経路、設定値などを決めていきます。これらは設計書などのドキュメントで残すことになるため、資料作成が増えるフェーズです。

関連記事:ネットワークエンジニアの構築業務|流れや必要なスキル・資格を解説

下流工程

下流工程は顧客にネットワークを引き渡したあとの業務です。

保守運用業務

運用面では、新しく接続する端末のためにその端末が持つIPアドレスからの接続を許可するなどの設定が必要になります。また、異動などにより接続端末が減った場合にも設定変更が必要になります。なお、規模の大きい設定変更の場合には設計面から見直す必要が出てくることがあります。

保守では通信障害や機器の故障などの不測の事態に対応します。冗長化しているネットワークであればすぐに停止することはないかもしれませんが、もしネットワークが停止すれば顧客の業務が停止してしまい、機会損失に繋がってしまいます。そのため、夜間帯でも対応に入る必要が出てきます。

また、メーカーの保守期限が切れた機器の交換も業務の一つです。保守期限が切れた場合、メーカーでの修理などができなくなるため、障害発生時などにすぐに対応できなくなります。保守期限が切れる前に顧客に新しい機器の導入を提案します。

関連記事:ネットワークエンジニアの運用・保守業務とは?必要なスキルも解説

監視業務

ネットワークに異常がないかをチェックする業務が監視業務です。基本的には異常があれば監視ソフトが自動的に検知してアラートを飛ばします。アラートはメールやSNMPを用いることが多いです。メールで通知を受信したネットワークエンジニアはすぐに対処する必要が出ることがあります。

また、稀にソフトでは検知できず、実際に機器のランプを確認しないとわからない異常もあります。

ネットワークエンジニアが担う監視業務とは

ネットワークエンジニアの監視業務


ネットワークエンジニアは、ネットワークの設計及び構築の他に、保守、監視、運用を担いますが、中でも、監視はネットワークシステムを維持するための重要な業務です。ネットワークは今や企業にとって大切なインフラとなっており、正常に稼働することが当然とされています。

しかし、ネットワークが問題無く動くためには、ネットワークエンジニアによる継続的な監視業務が不可欠です。トラブルを未然に防ぎ、安定した稼働を実現するための監視業務としては、以下の4つが挙げられます。

死活監視

システムの動作状況を外部から確認する監視業務です。サーバーや周辺機器が正常に稼働しているかを監視するため、定期的に信号を送り、反応を確認します。これまで、監視の対象はルーターやサーバーなど限定的でしたが、ネットワークの複雑化に伴い範囲の拡大が進んでいます。

遅延監視

サーバネットワークのレスポンスを見るのが、遅延監視です。ネットワークが正常に稼働していても、アクセスに時間がかかればユーザーにとっては大きな負担となります。特に企業サイトで遅延が起これば、重大な損失となりかねません。遅延監視では、そのようなネットワークのレスポンスについて遅延が発生していないかをチェックします。アクセス反応をグラフ化して定常的な遅れかを判断する方法が一般的です。

経路監視

レスポンスが遅くなる原因として、ネットワークを利用するトラフィックの集中が考えられます。場合によっては、アクセスができなくなる事態に陥ることもあるため、トラフィックの監視も重要です。

リソース監視

リソース監視とは、ネットワーク内の機器を監視することです。ネットワークが正常であっても、サーバやその他機器に問題が発生すれば、当然サービスの稼働に支障をきたします。リソース監視を行うことで、対象機器のCPUやメモリ状況や、ハードディスクの使用状況などを把握し、ネットワークのパフォーマンス低下に迅速に対応することができるのです。異常があれば、異常箇所を切り分けることでトラブルを最小限に抑えます。場合によってはリモートで復旧を行ったり、エンジニアを派遣して対応します。

監視業務で求められるスキル・マインド

ネットワークエンジニアの監視業務はどんなスキル・マインドが求められるのでしょうか。

スキル

ネットワークの監視業務で重要な役割を担うのが、専用のネットワーク監視ツールです。日立製作所が提供しているJP1や、IBMブランドのTivoliなどが広く普及しています。オープンソースのNagios、Zabbixなども知られていますが、運用には高いスキルが要求されます。即戦力として企業の監視業務に就くのであれば、各種ネットワーク監視ツールについての知見が求められるでしょう。

TCP/IP全般の理解

TCP/IP全般の理解も必要です。TeraTerm、Expingといったツールを使用する場合もあるほか、pingでの監視、TCPポートなどのサービス監視、mibによる監視も想定されます。

SNMPに関する知識

監視の際によく利用されるSNMP(Simple Network Management Protocol)通信についても理解しておくことで、トラブル発生時などになぜ通信が受信できないかなどの手がかりにすることができます。さらに、ネットワーク系資格としてメジャーなCCNAを取得すれば、ネットワークエンジニアとしてのレベルの証明になるのでおすすめです。

マインド

ネットワークエンジニアの監視業務はどんなスキル・マインドが求められるのでしょうか。監視業務を行っていく上で顧客のインフラ環境を担っているという意識とともに、必要となるマインドを紹介します。

集中力

機器のエラーを検知するのが監視業務の目的ですので、監視端末に根気強く向き合う集中力が不可欠です。今日では、24時間稼働するネットワークが当たり前になっていますので、日勤だけでなく夜勤でも監視業務を担当することがあります。単独勤務だったとしても気を緩めず、ネットワークエラーを瞬時に発見する緊張感が求められるでしょう。

ネットワークエンジニアの仕事に役立つ資格

ネットワークエンジニアの業務をする上で持っていたほうが役に立つ資格を紹介します。

関連記事:ネットワークエンジニアになるには?必要なスキルや資格も紹介

CCNA

ネットワーク機器の大手であるシスコシステムズの認定資格であるCCNAを持っていると役に立ちます。ネットワークエンジニアはCisco製のネットワークスイッチなどを日常的に使用するため、ネットワークエンジニアの登竜門的な資格と言われています。

Cisco製品で使用するコマンドなどの勉強になることはもちろんのこと、TCP/IPモデルなどのネットワークの基礎知識も身につけることができるため、まずはCCNAの取得を目指すといいかもしれません。

CCNAについては、「CCNAとは?概要から難易度、取得のメリットまで解説」でも詳しく解説しています。
 

AWS認定クラウドプラクティショナー

クラウドプラクティショナーはAWSを運営するAmazonの認定資格です。最も基礎的なグレードの資格でクラウドの基本的な知識や操作を身につけることができます。今後のネットワークエンジニアはデータセンターでのオンプレミス環境とAWSなどのクラウド環境のネットワークの両方の設計構築ができることを求められます。

ネットワークエンジニアの転職市場

ネットワークエンジニアの転職市場での価値はどの程度あるのでしょうか。需要や将来性、平均年収を紹介します。

関連記事:
ネットワークエンジニアの夜勤について|手当や辛いところを紹介
ネットワークエンジニアの志望動機の書き方は?例文も交えて解説

需要と将来性

まず、需要についてはこれからも増えていくと考えられます。これはクラウドを活用したシステムに移行する企業が増えてきており、今後もネットワークエンジニアがネットワークの設計等の業務を行うことに関する需要が見込まれるためです。

求人情報を見てもエンジニアの中では比較的求人数は多く、現在も価値は高いと考えられます。
また、オンプレミスのネットワークしかできないネットワークエンジニアの将来性は先細ってしまうかもしれません。しかし、クラウドなどの新しい技術に精通したネットワークエンジニアであれば今後も将来性はあるでしょう。

関連記事:ネットワークエンジニアに転職するには?キャリアパスも紹介

平均年収

調査機関によって多少の前後はするものの、概ね450万円ほどがネットワークエンジニアの平均年収となっています。令和2年の民間給与実態統計調査によるとすべての労働人口の平均年収は433万円であるため、ネットワークエンジニアの平均年収は一般的な平均よりも上回っています。

関連記事:
ネットワークエンジニアの残業時間や休日事情について
ネットワークエンジニアの年収相場は?クラウド時代に起こる変化

ネットワークエンジニアで監視業務はやめておけと言われる理由

ネットワークエンジニアの監視業務は以下の理由でやめておけと言われることがあります。


  • ・単純作業の繰り返しで技術・スキルが身に付きにくい

    ・システムが年中無休で稼働するため夜勤があることも

    ・年収が上がりにくい

単純作業の繰り返しで技術・スキルが身に付きにくい

ネットワークエンジニアの監視業務は基本的に単純作業の繰り返しです。マニュアルに従って点検をしたり、バッチを実行したりといった作業が中心です。簡単なバッチを作成するようなことはありますが、構築業務のように自分で考えて実装することは少ないでしょう。

そのため、監視業務に慣れてきたら構築側の業務に回れるように動いた方が良いです。監視業務によってネットワークになれたら、今度は自分で実際に作ってみるということです。そうすることで、技術・スキルが身に付いていきます。

関連記事:
ネットワークエンジニアが習得すべきプログラミングスキルは?おすすめ言語や学習法も解説
ネットワークエンジニアに必要な勉強内容とその学習方法

システムが年中無休で稼働するため夜勤があることも

ネットワークは基本的に年中無休で稼働しています。人間が監視していなくても動いていますが、トラブル回避のために交代で24時間監視している場合が多いです。結果的に、日勤と夜勤の交代制になります。

また、ネットワークの点検作業などは他のエンジニアが稼働していない夜間に行われる場合が多いです。夜間の間に作業を進めるために、通常の日勤夜勤のサイクルにくわえて夜勤が発生することもあるでしょう。

年収が上がりにくい

ネットワークの監視業務に特化していると、年収が上がりにくいです。構築の方が高いスキルが要求される分、年収も高くなります。監視業務だけでは年収が頭打ちになるので、その点からも構築側の業務を目指すのがおすすめです。

年収がアップするように動くということは、単に年収が上がるだけではありません。市場で評価される高いスキルを身に付けることでもあるので、今後AI化が進んでいっても市場で生き残れる可能性が高くなります。

現状維持だけを行うのは年収が停滞するだけでなくそもそも生き残りの観点でも危険なので、向上心を持って上を目指していくことがおすすめです。

ネットワークエンジニアから目指せる職種

ネットワークエンジニアから目指せる職種としてインフラエンジニアが挙げられます。

インフラエンジニアの定義ははっきりしていませんが、ネットワークやサーバを含めてインフラと呼ぶ場合が多いです。つまり、インフラエンジニアはネットワークエンジニアよりも一般的に業務の幅が広いということです。

ネットワークの技術にくわえて、サーバのスキルも身に付けていくことでインフラエンジニアを目指せます。職種の名称は企業によって異なりますが、とにかくスキルの幅を広げていくことで自分の市場価値が上がっていくということです。

市場価値が上がれば年収がアップすることはもちろん、今後のAI化の波にのまれたり、他のエンジニアに競争で負けて市場からドロップアウトしてしまう確率も下がります。

関連記事:ネットワークエンジニアのキャリアパス|キャリアアップの要点も解説

ネットワークエンジニアに関するよくある質問

この章ではネットワークエンジニアに関するよくある質問について回答します。

Q1. ネットワーク監視業務とは何ですか?

ネットワーク監視業務とは、ネットワークやサーバーが正常に操作しているか監視する業務です。基本的にネットワークやサーバーは監視ソフトによってチェックされているため、トラブルが発生した場合に発生事象を確認して対処するのが業務内容になります。
またネットワークの安定稼働のために、監視業務は以下の4つに分けられます。


  • ・死活監視:システムの外部から動作状況を確認する業務

    ・遅延監視:サーバー・ネットワークのレスポンスを監視する業務

    ・経路監視:ネットワークを使用するトラフィックが集中してレスポンスが遅延が発生するのを防ぐ業務

    ・リソース監視:ネットワーク周辺機器を監視する業務

Q2. ネットワークエンジニアの具体的な仕事内容は何ですか?

ネットワークエンジニアの具体的な仕事内容について、大きく4つの業務に分類して説明します。

・ネットワーク設計業務
クライアントが求めるシステムをヒアリングし、要件をまとめて設計します。要件に応じて、ネットワークの構成や使用するネットワーク機器の種類・数、使用する回線などを決めます。またネットワークの維持コストや構築までのスケジュールも検討します。

・ネットワーク構築業務
ネットワーク設計業務に立てたスケジュールに基づいて、実際にネットワーク機器を設置します。構築する時間はネットワークの規模によりますが、多くの拠点を結ぶ大規模なネットワーク構築の場合は、数ヵ月かかる場合もあります。構築後にテストを行い、運用開始となります。

・ネットワーク運用業務
ネットワークシステムは随時機器の設定変更や構成変更などが必要なため、その変更対応を行いネットワークの運用を補助する業務です。

・ネットワーク保守業務
ネットワークシステムに故障やトラブルが発生した場合に、原因を突き止めて対応する業務です。

Q3. ネットワークエンジニアに向いている人はどんな人ですか?

ネットワークエンジニアは多くの場合チームで作業します。またクライアントにヒアリングする機会も多いため、コミュニケーション能力が高い人が向いています。
また学習意欲が高い人にも向いています。ネットワークといったIT技術は日々進歩しています。そのため常に最新の情報を追求し、吸収する意欲を持つことが重要です。

まとめ

ネットワークエンジニアの仕事内容や役立つ資格、需要や将来性を紹介しました。必要な知識を身につけるための勉強は必要にはなりますが、需要があり、将来性ある仕事であることがご理解いただけたと思います。もし、ネットワークエンジニアへのキャリアチェンジを考えていれば求人情報を詳しく見てみてはいかがでしょうか。

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