VR AR MR…「XR系」の特徴と違い
まず、XR(クロスリアリティ)と呼ばれる技術の背景や特徴、違いなどについて解説します。
XR(クロスリアリティ)とは仮想空間技術や空間拡張技術の総称です。2021年時点では、「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」の3つが代表的な技術とされています。
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VR(virtual reality:仮想現実)とは
VRとは、一定の現実味を持った仮想空間を構築する考え方、技術の総称です。また、現実と完全に切り離された世界の体験を目的としたコンテンツを指すこともあります。
VRの特徴
VRの特徴は、「非現実がベースである」という点です。仮想現実の世界は、主にコンピュータグラフィックスを中心とした映像技術で構築され、ゲームやエンターテイメントの世界で徐々に実用化が進みました。専用ゴーグルやヘッドフォンなどを用いて「視覚」「聴覚」に訴えつつ没入感を増す手法は、VRの典型例といえます。
ただし、VRはあくまでも「仮想・人工の世界」を作り出す技術であり、現実世界への干渉は行われません。この点は、後述のARやMRとの大きな違いです。
AR(Augmented Reality:拡張現実)とは
ARは、仮想的なオブジェクトで現実世界を拡張する技術の総称です。現実世界の「モノ」や「地形」「景色」などに仮想的なデータを重ね、本来なら実現していないモノ・建物・景色などを再現するといった使い方が主流です。現実世界に仮想空間を重ね合わせることで「未来の姿」「理想像」「詳細な情報」などを表現しています。
ARの特徴
ARの特徴は、「現実世界がベースである」という点に尽きるでしょう。現実世界に仮想的なオブジェクトを追加・反映させることで、使用者に新たな体験を提供しています。例えば世界的にヒットした位置情報ゲーム「ポケモンGO」では、モンスターがあたかも現実の世界に出現しているかのように見せることで、プレイヤーの収集欲を喚起しています。VRが「非現実を現実のように見せる」ことを目的とするのに対して、ARは「現実の中に非現実を追加する」ことを目的としているわけです。
MR(Mixed Reality:複合現実)とは
MRは、現実世界と仮想世界をミックスさせる考え方、技術の総称です。現実世界と仮想世界が相互に干渉、影響しあうことをベースとしており、VRやARの進化版といわれることもあります。
MRの特徴
MRは、まず現実世界のデータを取得し、そこに仮想世界のデジタル映像を重ね合わせ、現実世界と仮想世界をシンクロさせることができます。例えば「オフィスの中央に置かれたデスクの上にMRで建築予定の3Dモデルを表示し、その周囲を歩き回りながら確認できる」といったことが出来るようになります。
また、外見上は内部構造が確認できないものについても、中身を詳細に可視化できます。こうしたことから、建築物や自動車、人体標本モデルなどの3D化でMRが使用されています。
VR、AR、MRの主な違いと比較
以上のことを踏まえて、VR、AR、MRの違いを比較してみましょう。
VR | AR | MR | |
---|---|---|---|
世界観 | 仮想空間が基本 | 現実世界が主体 | 現実世界と仮想空間を融合した世界観 |
技術 | 100%のバーチャル空間を作りだし、見たり感じたりといったリアルに近い体験ができる技術 | 現実世界にデジタル情報を呼び起こし、出現させる。現実世界に「ない」ものを存在させて拡張させる技術 | 現実世界に仮想空間を反映させ、仮想空間に近づく・デジタルコンテンツを直接操作する技術 |
得られるメリット | ・遠く離れた人とも同じ空間で体験がシェアできる ・映像やアニメーション、音声や音楽なども同時に楽しめるリッチコンテンツ |
・コンテンツをシェアしやすい、されやすい ・スマートフォンなど端末を使えば誰でも気軽に体験できる |
・デジタルコンテンツによりリアリティを持たせられる ・複数の人間がリアルタイムで同時に体験できる |
主なデバイス | ・VRゴーグル、VRグラス、VR用HMD(ヘッドマウントディスプレイ) ・パソコンなど |
・スマートフォン ・タブレット ・ARグラスなど |
・HMD(ヘッドマウントディスプレイ)型ヘッドセット ・サングラスMRグラス |
コスト | スマートフォン用だと比較的安価、HMD対応のVRだと高い | 比較的安価 | 高度3D開発が必要で現状高め |
利用例 | ・エンターテイメント(ゲーム、映画など) ・スポーツ観戦 ・教育、研修、訓練 ・旅行、不動産 |
・企業マーケティング、PR ・エンターテイメント(ゲーム、SNSなど) ・教育・業務効率化 ・ナビゲーション、インフォメーション |
・シミュレーション ・コミュニケーション・業務効率化・医療 |
技術の基本原理の違い
技術の基本原理は、それぞれ
-
・VR…仮想現実
・AR…現実世界
・MR…仮想現実と現実世界の融合
以上が基軸です。MRは比較的新しい技術であり、VRとARをさらに発展させた形といわれています。
用途や応用分野の違い
VRは100%バーチャルの世界を構築するため、現実にはありえないゲームの世界や創作世界を体験できます。エンターテイメントのゲームや映画・映像分野で活用され、その他仮想スタジアムでスポーツを体験したり観戦したり、教育や研修を受けたりバーチャル旅行にも利用できます。
一方でARは現実世界がベース。遠く離れていても詳細な情報を得るために企業がマーケティングとして活用したり、VRによりリアリティを加えた教育空間などを作る目的で活用されます。
MRはVRとARを融合させた形であり、現実にないものをAR空間に出現させるといった建築物や自動車、人体など医療分野での活用が期待されているものです。
開発・デバイス環境の違い
VRは三次元情報を組み込む必要があり、VRゴーグルやVR用HMDなどを用いることが多いです。ARはスマートフォンでもディスプレイでも現実空間の平面認識、3次元スキャンが可能となったため、タブレットやスマートフォンといった端末も使われています。
MRは市販品のHMDが代表的なデバイスですが、スマートフォンでもMR的な機能が実現されつつあり、今後より手軽にMRを活用できることが期待されています。物理的なコントローラーではなく、手の動きを感知してジェスチャー操作が可能なデバイスも見られます。
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XR(Extended Reality)とは
XRとは上記で解説したVR、AR、MR、新しい概念であるSRなど新しい体験を創造する技術の総称です。
XRの可能性と将来展望
XRが注目される背景には、デバイスやソフトウェアの進化が挙げられます。ディスプレイの高解像度化にともなって処理能力・操作性も大きく向上し、これまでには実現できなかった臨場感を体験しやすくなりました。デバイスも小型化・軽量化することで、気軽に利用できるようになったのもXRの将来性が高まる理由のひとつです。
また、活用できる分野が広く「実際に施設や体験できる場を構築する」よりも手軽に作り、体験できるのもメリットです。コストパフォーマンスも良く、XRは今後活用分野を広げて進化すると予想できるでしょう。
XRの新しい概念「SR(Substitutional Reality:代替現実)」とは?
XR系の新しい概念としてSRがあります。日本語では「代替現実」と翻訳され、過去の映像を現在のように見せる「錯覚」をベースとした考え方です。過去の資料映像をリアルに再現したり、「今」と「過去」を交互に往復しながら新しい現実を表現したり、といった使い方が研究されているようです。
SRがコンテンツとして実用化される場合は、ゲーム・アート・スポーツなどエンターテイメント分野での可能性が高いといわれています。実際にSRは舞台やダンスパフォーマンスの公演で応用されており、より「錯覚」を楽しむための活用が進んでいます。
VR・AR・MRの活用事例
VR・AR・MRそれぞれの活用事例を実際にチェックしてみましょう。
VR(仮想現実)
VRは、現実世界で再現するにはコスト・リスクが大きい事象を再現できるため、シミュレーションの用途で使われています。
例えば製造業では、大型の装置を設置した場合の工数や歩留まりなどを、VRを用いてシミュレーションしています。この時使用されるデータは、過去から現在に至るまでの実績データです。つまり、現実世界を完全にデータ化したうえで、リアルタイムなシミュレーションが行われるのです。このようなシミュレーションを「仮想空間の双子(デジタルツイン)」と呼ぶこともあり、主に製造業の分野で実用化が進んでいます。
また、医療の分野では救急医療の実態を体験できるVRコンテンツなども提供され始めています。救急医療は訓練が難しいため、教育用のコンテンツとしての導入が進んでいます。
AR(拡張現実)
ARはゲーム・エンターテイメントだけではなく、ECの世界でも活用されています。例えば、「現実世界の商品をスマートフォンで読み取ると、カタログ情報(商品説明や仕様など)が表示される」といった仕組みは、ARの典型例と言えるでしょう。
また、建築物の改築・増築を事前に確認したり、筋肉や骨の動きを詳細に再現したりと、現実世界の補完・補強を目的とした使われ方をされることが多いようです。
MR(複合現実)
MRは、主に建築業の世界で実用化が進んでおり、次のような事例があります。
・進行中の建築現場(現実)と製品サンプルの3Dデータ(仮想)を重ねて表示し、それをもとに作業工程を決定す
・現地で作成した図面(現実)と、図面から作成した3Dモデルデータ(仮想)を重ね合わせ、設計を確認する
このように「現実と仮想をミックスさせる」ことで「設計が適切か」「目的を達成するためには何が必要か」を逆算できることがMRの強みかもしれません。
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VR・AR・MRの今後と有望な業界
XR系の技術はゲーム・エンターテイメント業界で実用化が進み、「VR・ARといえばゲーム」と考える方が多いかもしれません。しかし、前述したようにVR・AR・MRはいずれもゲーム以外の産業で活用されはじめています。具体的には、「VRは製造業などモノづくり系」「ARは医療」「MRは建築・医療・製造業すべて」です。
「人間の動きや認識を補完、補強する目的」で使われることが多く、製造・医療・建築・物流などは特に有望な業界といえるでしょう。また、5Gの普及がデータ通信量の制限を緩和し、高精度の仮想現実と現実世界の融合がより容易になることも考えられます。
以上のことから、VR・AR・MR市場は今後も右肩上がりで成長していくと予想されます。実際に矢野経済研究所の市場調査結果では、XR市場は2019年から毎年20~30%代で成長し、2025年には2019年比で約3倍になるとの予測が示されています。
参考:矢野経済研究所「XR(VR/AR/MR)360°動画市場に関する調査を実施」
VR・AR・MRの開発環境・ツール
VR、AR、MRは開発する規模に合わせて環境やツールを揃える必要があります。一般的に用意する開発環境とツールをそれぞれ見ていきましょう。
VR開発の主なツール
VR開発には開発に必要なスペックが搭載されたパソコンを用意します。特殊な映像制作となるため、高スペックパソコンが好ましいでしょう。パソコンには「VR対応」「VR READY」と推奨されたものも販売されてるため、環境を整えるためには専用のものを購入すると安心です。
VR開発に使用するツールはソフトです。Unity、Unreal Engineの2つのソフトが主に利用されており、プログラミング知識があれば複雑な世界を構築することも可能です。
AR開発の主なツール
AR開発は専用ツールが必要ですが、複数種類あるためどれを選べばよいのか迷うことも多いです。
-
・Amazon Sumerian
・ARKit
・Google ARCore
・Spark AR Studio
・Snapchat Lens Studio
・ARToolKit
これら6つのツールはAR開発の主要ツールといわれています。またARアプリを開発するための環境はUnity、Xcode、Android Studioがよく使用されています。3Dゲーム開発エンジンであり先ほどのVR開発環境でも挙げたUnityは立体的コンテンツとの相性が良く、AR開発にも適しています。
MR開発の主なツール
MR開発もUnityで使えるツールを利用します。
-
・MRTK(Mixed Reality Toolkit)
・OpenXR
・Babylon.js
これらのツールを使いMR開発を行うことが多いです。
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VR・AR・MRに関するQ&A
本気記事を総括し、VR、AR、MRに関するQ&Aをチェックしていきましょう。
Q1. VR・AR・MRとは何ですか?
それぞれが根本とする概念は、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)です。また総称としてXR(クロスリアリティ)とも呼ばれます。
Q2. SRとMRの違いは何ですか?
MRは現実世界をベースに「ないもの」である仮想現実を持ち込む複合現実です。ただし、MRは現実世界とは切り離したものであり、体験者も現実と仮想空間の区別がついています。一方でSRはより仮想現実に近い現実世界を表現するもので、「本物かバーチャルかわからない錯覚」がベースです。SRは主にエンターテイメント業界での活用を第一に進められています。
Q3. MR技術のメリットは何ですか?
・デジタルコンテンツによりリアリティを持たせられる
・複数の人間がリアルタイムで同時に体験できる
などが挙げられます。現実にはないものをバーチャル空間で作り出すことにより、詳細な情報をシェアすることも簡単です。
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Q4. ARのデメリットを教えてください。
スマートフォンやタブレットなど手持ちの端末でも体験できる気軽なARですが、このデバイスがないと体験は不可能です。環境によっては高速回線が必要で、回線状態に依存するのもデメリットのひとつに挙げられます。その他、専用アプリのダウンロードが必要などデメリットもありますが、比較的気軽に利用できる身近なXRとしてARの活用は広まっています。
まとめ
先端IT分野の中でも、特に今後成長が見込まれるのがXR領域です。XRは仮想現実の活用や現実世界の補完・拡張を行う技術の総称であり、VR・AR・MRなどが代表的です。こうしたXR系の分野は、エンターテイメント業界のみならず、医療・建築などさまざまな分野で実用化が進んでいます。もし先端IT人材として活躍したいのであれば、今後成長が見込まれるXR系の分野も検討しておくことをおすすめします。
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