2017年にビットコイン、イーサリアムをはじめとした仮想通貨が大暴騰を見せ、基礎技術である「ブロックチェーン」が知られるようになりました。ブロックチェーンは仮想通貨のみならず、フィンテック領域全般で活用される技術です。また、近年は建築や医療、食品など非金融の分野でも実用化が進んでいます。今後10年程度のスパンで考えたとき、ブロックチェーンの将来性は有望であり、ブロックチェーンを学ぶことはエンジニアとしてキャリアを向上させるきっかけになるかもしれません。ここでは、ブロックチェーンの概要や特徴、活用が期待されている分野、将来性、磨くべきスキルなどを紹介しています。
1. ブロックチェーンとは?
まずブロックチェーンの歴史や定義について解説します。
ブロックチェーンの歴史
ブロックチェーンは、2008年1月にSatoshi Nakamoto名義で発表された論文によって、その存在が知られるようになりました。同論文ではビットコインのコア技術を紹介しており、その中核となるのがブロックチェーンという位置づけです。一般的には、ビットコイン開発の中で生まれた技術だとされています。
ブロックチェーンの定義と特徴
任意のデータを格納するブロックとブロック同士をつなぐチェーンを基礎とする分散型データベース技術の総称です。電子署名とハッシュポインタによって耐改ざん性を高めたデータ構造(箱)を鎖のようにつなぐため、「ブロック(箱)+チェーン(鎖)」と呼ばれています。ちなみに、日本ブロックチェーン協会によれば、広義のブロックチェーンは以下のように説明されています。
“「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術」”
出典:日本ブロックチェーン協会 ブロックチェーンの定義
ブロックチェーンには複数のタイプが存在していますが、基本的な仕組みは次のとおりです。
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・暗号署名が付与された取引情報をネットワークに発信する
・同時に複数の分散型台帳(データベース)に書込みを行い、取引情報を管理する
・データベース間の情報を整合させるため、合意形成アルゴリズムで承認処理を行う
・承認された取引情報を別の第三者へ送信する
これら一連の処理は、「P2P」の状態で自動的に行われます。中央管理者が存在しないシステムであっても、自動的に信頼性の高い情報伝達が可能になるわけです。
ブロックチェーンのタイプ
ブロックチェーンは、以下3タイプのタイプに分類されます。
・パブリックチェーン
ビットコインやイーサリアムで使用されている仕組みです。中央管理者が存在せず、誰でもネットワークに参加でき、参加者自体が取引情報の承認者になることができます。一般的なブロックチェーンは、パブリックチェーンを指すことが多いでしょう。
・プライベートチェーン
中央管理者が存在し、ネットワークへの参加は許可制で、なおかつ取引情報の承認は中央管理者が行う仕組みです。「許可型ブロックチェーン」とも呼ばれることもあります。ネットワークへの参加者と承認者を限定することで、秘匿性を高めていることが特徴です。
・コンソーシアム型
プライベートチェーンの発展型で、中央管理者を複数設置し、承認処理の柔軟性を高める方式です。プライベートチェーンでは、承認者の数に比例して承認速度が速くなる傾向にあるため、秘匿性と柔軟性を同時に確保したい場合に使用されます。また、管理者が分散されることで、改ざんや不正への耐性を高める効果もあります。
2. ブロックチェーンの活用が期待されている分野
次に、ブロックチェーンの活用が期待されている分野を紹介します。ブロックチェーンは、「同じ情報を複数の当事者がリアルタイムに共有することで効率化が進む業務」や「経緯、履歴の信頼性を保ち、改ざんを防ぐ必要がある業務」に適しています。具体的には、次のような分野の業務です。
国際送金
国際送金は手数料が高いうえに数日単位の時間を必要とするため、頻繁に送金を行う事業者の負担となっていました。これは、SWIFT(スイフト=国際銀行通信協会)と呼ばれる組織のインフラを使用していることが原因です。国際送金のインフラは40年以上前の仕組みであり、送金データが複数の銀行をバケツリレーのように伝達していくことで送金が実行されます。
これに対し、ブロックチェーンを利用した国際送金では、分散型台帳による自動的な承認処理で取引の正当性が担保されるため、バケツリレーに似た処理が発生しません。その結果、数秒~数十分程度の時間で送金が完了し、手数料も非常に小さい額になります。国際送金はブロックチェーンが注目される大きな理由のひとつでもあり、実用化に向けた試みが着々と進んでいます。
食品のトレーサビリティ
食品業界では、食の安全性を確保するために「トレーサビリティ(追跡可能性)」を高めることが求められています。材料がどこから調達され、どこで加工され、どのように運ばれて売られているかを、しっかりと把握することで食品の安全性を高めようというわけです。しかし、サプライチェーンをつなぐ利害関係者の数があまりにも多いと、情報伝達が正常に行われず、トレーサビリティが確保しにくくなります。そこでブロックチェーンを使い、食品の信頼性をチェックする仕組みが登場しています。
検査プロセスの合理化
建設業界では、工事の出来形(できがた)確認業務の合理化にブロックチェーンを活用する動きがあります。出来形確認では、工事の目的物が発注側データと合致しているか、受注者が提出した検査帳票が正確かなどをチェックする必要があります。
しかし、チェックに必要な情報が膨大であったり、点在していたりすると、確認に要する負担が大きくなりがちです。また、誤差の判定にも時間がかかるでしょう。こうした課題を解決するために、耐改ざん性と合理的な処理機能を持つブロックチェーンを活用する動きが広まっています。
3. ブロックチェーンの将来性
ブロックチェーンは「十分な将来性を持つ技術」と言うことができます。
経済産業省の試算では、ブロックチェーンに関する潜在的な市場規模は67兆円に上るとの結果が示されています。※2ただし、この試算は2015年時点の情報であり、なおかつブロックチェーンの活用が見込まれる分野全体の市場規模を表したものです。したがって、将来的にこの試算どおりの市場規模になるとは限りません。
一方、国内のあるシンクタンクが発表した資料によれば、日本国内におけるブロックチェーンの市場規模は、2019年ベースで170億円強という結果が出されています。これを顕在化した市場規模と考えると、本格的な市場形成はこれからと言うことができそうです。
ブロックチェーンには、24時間無休稼働を前提とした信頼性の高い仕組みを、低コストで構築できるという強みがあります。また、産学連携で実用化が進む分野が多く、世に出ていない仕組みが数多くあります。したがって、市場はますます大きくなると考えて良いでしょう。特に海外では非金融分野での市場が成長するとの見方が強く、日本国内の市場もこれに追随していくのではないでしょうか。
※2 経済産業省 平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料 P9
4. ブロックチェーン関連スキルの習得方法
最後に、ブロックチェーン関連スキルの習得方法を簡単に紹介します。ブロックチェーンを用いたシステム開発に携わるには、まずブロックチェーンの概念と技術的な構成要素を理解する必要があります。
また、ブロックチェーン開発で使われる言語は、JavaやC+、C#、Solidityなどが多いでしょう。したがって、こうした言語を身に着けることも並行して進めてみてください。具体的には、まずブロックチェーンに関する書籍などを読み込んで思想や概念、技術的な構成要素を把握し、次に言語スキルを磨くといった方法がおすすめです。プログラミング言語については、独学にこだわらずスクールや資格制度などを活用して効率よく学習を進めてみてください。
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