食にまつわる問題を解決に導くフードテックで求められる人材とはフードテックとは?注目される背景、目的、実際の事例を解説

最終更新日:2021年11月12日

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フードテックは、食とテクノロジーが結びついたビジネス領域です。食糧問題の解決やSDGs(持続可能な開発目標)達成に有効であるとされ、新しいビジネスが次々と生まれています。既存ビジネス領域と先端ITなどの融合である「X-Tech(クロステック)」の中でも注目度が高く、成長が見込まれる分野です。フードテック業界は、IT業界で得た知見を活かせる可能性が高いため、キャリアパスのひとつとして検討することも有効でしょう。ここでは、フードテックの定義や概要、注目される背景、事例などを紹介しています。

1. フードテックとは?

まず、フードテックの定義・概要について解説します。

フードテックの定義

フードテックとは、端的に言えば「食とテクノロジーが結びついた分野、もしくはそこで使われる技術」を指す言葉です。既存ビジネス領域と先端ITなどの融合である「X-Tech(クロステック)」の中でも、近年特に注目が集まる分野で、次々に新しいサービスが登場しています。

フードテックは、2015年ころから欧米を中心に取り上げられるようになり、2018年頃からは日本国内でもフードテック関連ビジネスが展開されるようになりました。

フードテックは、食品ロスの削減や代替肉の開発など、食料資源の問題やSDGs(持続可能な開発目標)とも深い関りがあります。また、食を中心としながらもIT・農業・ロボティクスなど広い分野を巻き込むことから、ビジネスシーンに与える影響は計り知れません。

こうした事情から、フードテックは人間社会が持続的に成長していくための「キーテクノロジー」として認識され始めています。

2. フードテックが注目される背景と目的

では、なぜここまでフードテックが注目されているのでしょうか。その理由を整理してみましょう。

食料資源に関する問題

現在、世界では食料資源に関する問題がいくつも発生しています。例えば、世界的な人口増加と新興国の発展により食料の生産が追い付かなくなり、食糧不足に陥るのではないかという懸念です。特に、肉類を中心としたタンパク質の需要が高まることは確実であり、世界的に良質なタンパク質の不足が予測されています。

また、単にタンパク質を供給するだけでなく、「おいしさ」をどう担保するかも課題です。食事は一生続くものである以上、消費者ニーズには常に「おいしさ」が含まれます。既存のタンパク質供給は畜産が中心でしたが、今後は畜産だけでなく、代替肉をフードテックの力で積極的に生み出す必要があるのです。このような背景から、植物肉や培養肉に注目が集まっています。

さらに、フードロスへの取り組みにも注目が集まっています。国際連合食糧農業機関(FAO)の発表によれば、農作物が生産されてから消費されるまでの間に、食料全体の3割が捨てられているとのことです。その量は1年あたり約13億トンにも上ると言われ、貴重な食料資源の浪費につながると考えられています。

日本国内でも、平成27年度推計で年間646万トンのフードロスが発生していることが明らかになっています。これは、毎日10トントラック1770台分の食料が捨てられていることと同じです(※1)。フードロスはサプライチェーンの問題でもあるため、フードテックによる加工・流通の変革で改善できる可能性があります。

※1 参考:消費者庁「食品ロス削減関係参考資料

人間の健康に関する問題

人間が一日に摂取するカロリーには適正値が存在し、この値に近づけることが健康を守ることにつながります。しかし、ライフスタイルの多様化や外食・中食産業の発達によって、適性カロリーを継続することが難しいことも確かです。

実際に、ここ15年間ほどは、米や野菜の消費量は徐々に減少し、肉類が大きく増加していることが判明しています。これは、接種カロリーの増加や栄養バランスの偏りを招き、生活習慣病のリスクを増大させることにつながります。フードテックによって、「おいしさ」「食べ応え」を維持しつつ、低カロリーで豊富な栄養素を持つ食品の開発が望まれています。

SDGs達成の一環として

SDGs(エスディージーズ)とは、「持続可能な開発目標」のことであり、2030年までに達成すべき国際社会共通の目標です。SDGsは17の目標によって構成され、その中には飢餓や貧困の撲滅も含まれています。このことから、フードテックはSDGs達成に欠かすことができない技術であると推測されます。

食の安全性

食料は人間の健康状態を大きく左右するため、近年は「食の安全性」を意識する消費者が増えています。産地偽装や原材料の虚偽表示などは、大きな社会問題として報道されることもあります。食の安全性を確保するには「トレーサビリティ(生産から消費、廃棄までを追跡できる可能性)」を高めることが何よりも大切です。このトレーサビリティを高めるための方法として、フードテック関連のテクノロジーが注目されています。
 

3. フードテックに関連する産業領域

フードテックは複数の産業領域で活用されています。2021年時点では、主に次のような領域が挙げられるでしょう。

生産・開発

まず、生産・開発領域では「代替肉の開発」「健康食品の開発」などが挙げられます。前述したようにタンパク質不足を補うために、植物や昆虫などを原材料とする食肉が考案されているようです。身近なところでは、大豆など植物由来の材料で作られた肉などが流通していますよね。また、「1品で1日に必要な栄養素を満遍なくとれる完全食」や「品種改良によって栄養価を高められた農作物」などもフードテックから生まれています。

これら食料そのものに加え、生産工程の自動化や効率化などもフードテックに含まれます。例えば、IoT・センシングによる温度、気候、日照量の管理や生産工程の自動化などが良い例です。近年は、ロボットやIoTを積極的に活用した「スマート農業」や「アグリテック」による農作物生産も誕生しており、こうした農作物生産の技術も広義のフードテックと呼べるかもしれません。

加工、流通

加工領域については、食品の調理を分子単位まで徹底する「分子ガストロノミー」が注目されています。厳密に言えば分子ガストロノミーは「現象から逆算して調理過程のメカニズムを解明するための科学」です。現在は、科学的な視点から調理を再定義したスタイルが分子ガストロノミーと言われています。一般的には、遠心分離機や液体窒素、試験管などを使った化学的な調理法を指すことが多いでしょう。これまでにない味や食事体験を提供できるため、高級料理店を中心に広まりました。フードテックによって「おいしさの再定義」が期待される領域です。

また、流通領域では、ICTによるサプライチェーンの改善やブロックチェーンを利用したトレーサビリティの導入などが挙げられます。

飲食

飲食店などでは、スマホアプリなどを用いた集客、マーケティングが徐々に一般化しています。コロナ禍によってデリバリー需要が高まった結果、ネットとスマホを中心とした集客なしでは生き残れないという状況にまで至っています。

また、近年は「キッチンカー」や「クラウドキッチン」なども広まりを見せています。これらは、飲食用のスペースを省いて移動販売のみを行うという新しい販売チャネルです。

小売

小売領域では「OMO(Online Merges with Offline)」など、オンラインとオフラインの境界を無くしたビジネスモデルが台頭してきました。例えば、「スマホアプリからメニューを選択してもらい、注文・決済・配送までを提供する」というモデルは、OMOの典型例と言ことができます。また、商品を製造する過程で、省人化のために皿洗いロボットや調理ロボットの導入が検討されることもあります。こうした製品を開発する技術も広義のフードテックと捉えることができます。

フードテック領域で求められる人材のタイプとは

ここで、フードテック領域で求められるITエンジニアのタイプを紹介します。フードテック領域はITとの親和性が高いため、フードテックの知識を持たない人材であっても、一定のスキル・経験があれば転職は可能です。具体的には、次のようなタイプの人材が求められるでしょう。

自社サービス開発を行うフルスタック型のエンジニア

フードテックはITベンチャーが多数参入している領域でもあります。したがって、「少数精鋭」でサービス開発・運営を行っているケースが多いと推測されます。そのため、一人、もしくは少人数で開発した経験をもつフルスタック型のエンジニアが好まれる可能性があるといえるでしょう。

Webサービス、アプリ開発の経験が評価される

フードテックに関するサービスは、Webサービスやスマートフォン向けアプリケーションを介して活用されることが多いため、こうした領域で開発経験を持つITエンジニアが評価されるでしょう。また、プログラミングスキルは、PythonやRuby、Java、C言語など幅広い範囲で評価の対象になります。自社でアプリケーション開発も行っている企業であれば、JavaやKotlin、Swiftなどが扱えると有利かもしれません。2021年時点では、プログラミング言語の種類に強い縛りはなく、比較的門戸が広い業界だと言えます。

フードテックの活用領域や理念に関心がある

これまでも紹介してきたように、フードテックには「タンパク質不足」「食糧不足」など社会問題の解決手段として期待されているという側面があります。また、新興企業が多いためにビジネスモデルも発展途上で、エンジニア個人のアイディアや企画力が試されることもあるでしょう。

優れたアイディア・企画を生み出すためにはフードテック活用で何を成し遂げたいかという「理念」が必須です。理念を理解しているからこそ「何が問題なのか」「どう解決していくべきか」が明確になるからです。したがって、技術力もさることながら、フードテックの活用事例なども学習しておくべきかもしれません。

4. フードテックの事例

最後に、フードテックの活用事例をいくつか紹介します。

植物肉

全国に展開している大手スーパーでは、2021年から大豆由来の植物肉を使った商品を提供しています。また、植物肉を使用した春巻き、メンチカツ、がんもなども加工食品にも応用されており、今後は「豚肉や牛肉の代替品」としての地位を確立していくかもしれません。

ちなみにこうした植物肉は国内のスタートアップ企業で開発されており、さまざまな食感を持った肉に変化する製品もあるようです。従来の植物肉は脱脂大豆(油を抽出したあとの大豆)をベースにしていましたが、近年は発芽させた大豆を丸ごと使用する製法が開発されました。この製法は、大豆特有の臭みをおさえつつ、動物の肉のような筋線維を忠実に再現できるという強みを持っています。

また、発芽を経ることによりビタミンやアミノ酸などの栄養価が急激に高まるため、栄養面から見ても付加価値の高い製品と言えそうです。

昆虫加工食材

日本国内のあるスタートアップ企業では、昆虫をベースとした加工食材の開発に取り組んでいます。具体的には、コオロギの粉末から食材を生成し、レトルトカレーなどの原材料として利用しているようです。

一般的に食品加工では、「残渣(ざんさ)」と呼ばれるゴミが大量に発生します。残渣はフードロスの大部分を占めるとされ、残渣の減少や有効活用がフードロス削減につながると考えられています。

この残渣をコオロギの餌にすることで、フードロスを減らしつつ、栄養価の高い食品を生成することができるわけです。コオロギが成長するまでの餌は鳥や豚よりも圧倒的に少なく、なおかつ亜鉛や鉄分、カルシウム、マグネシウム、タンパク質などを含む栄養価の高い素材であることがわかっています。また、コオロギは「陸のエビ」とも呼ばれるほど優秀な食材です。味や風味も良く、「食材としてのおいしさ」を担保しやすいという特徴があります。

一方、現代人にはあまり馴染みがなく、見た目のイメージから抵抗を覚える方も少なくないでしょう。しかし、この企業ではコオロギを粉末にすることで見た目の抵抗感を減らし、栄養価の高い食材として提供しているようです。

フードシェアリングサービス

飲食店から発生する「廃棄」を格安、もしくは無料でシェアする「フードシェアリングサービス」が大都市圏を中心に広がりを見せています。

日本で発生するフードロスのうち、約半分が飲食店や小売店などの事業者から発生しています。ロスが発生する理由は、「予約キャンセル」「受発注のミス」「品揃え上の事情」などさまざまです。食品自体には何ら問題がないにもかかわらず、大量の食品が廃棄されているため、フードシェアリングサービスは徐々に注目を集めています。

フードシェアリングサービスはWebサービスやスマホアプリとして提供されることが多く、定額もしくは格安で食品ロスを食べることができます。また、位置情報を利用して現在地から最も近い店舗を検索する機能など、「利用希望者と食品ロスとのマッチング」を考慮したサービスが多いことも特徴です。

フードロボット

フードテックは、代替肉の開発や食品ロス削減が注目されがちですが、人手不足対策・省力化にも貢献しています。国内のあるロボティクス関連企業では、調理をサポートする人型の協働ロボットを開発。小柄な成人サイズのロボットで、二つの腕を持ち、お弁当のおかずを製造する作業を単独で行うことが可能です。

また、ディープラーニングを活用したAIを搭載しており、バラバラに積まれた食材を認識して、ピッキング・盛り付けを行う機能も備えています。

食品製造工程の中でも、盛り付け作業は特に自動化が難しいとされてきました。対象となる物体の認識が難しいことや、作業自体が煩雑になりやすいことがその理由です。そのため、人手不足対策や省力化のボトルネックになっていたと考えられます。

この協働ロボットを活用することで盛り付け作業を効率化できるほか、異物混入の防止、ウイルスや細菌への感染リスク低減など、さまざまな効果が期待できます。

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