API(Application Programming Interface)とは、特定の機能を外部に提供するための「接続口」です。現代のシステム開発は、巨大なシステムを単体で構築・運用する時代から、小~中規模のシステム・アプリケーションを連携させる時代に移行しています。こうした流れの中でAPIが重宝されるようになり、その開発に力を入れる企業が増えています。API開発の知識とスキルを身に着けることで、ITエンジニアとして活躍の場を広げることができるでしょう。ここでは、API開発のメリットや種類、活用事例などを解説します。
1. APIとは?
まず、APIの概要を紹介します。
API(Application Programming Interface)とは
APIは、ソフトウェア/アプリケーションの機能を外部に提供する「口」を指す言葉です。一般的にインターフェースは、「接続口」や「共有口」、「境界面」を指す言葉として使われます。
アプリケーションは通常、異なるシステムに存在する他のアプリケーションが持つ機能を利用できません。しかし、APIを使って他のアプリケーションに接続することで、あたかも同じシステム内にあるかのようにその機能を利用できるようになります。近年はAPIといえば「Web API」を指すことが増えました。しかし、元々はオフライン環境で活用されていた技術です。
2. API開発の基礎知識
次に、API開発の基礎知識について解説します。
API開発の基礎知識
以前のAPIは設計思想が共通化されていませんでした。しかし近年はAPI活用の広まりから共通の設計思想が生まれています。そのひとつが「REST」です。RESTとは「REpresentational State Transfer」の略称で、広く普及したWeb上の資産をそのまま活用し、小さな手間でさまざまなWebサービスへアクセスできる仕組みを指します。このRESTに従って作られたWeb APIは「RESTful API」と呼ばれ、近年のAPIのスタンダードになりつつあります。したがって、RESTを知ることはWeb APIの設計原則を知ることにつながるわけです。
RESTの設計原則
RESTは「分散システム上で複数のアプリケーションを連携させることに適した設計手法」を集めた考え方です。その原則は、以下4つに要約できます。
-
・アドレス可能性があること…アドレスが指定できるURIが公開されていること
・統一インターフェースであること…情報の取得(GET)、更新(PUS)、作成(POST)、削除(DELETE)といった操作がHTTPメソッドを利用して行われること
・ステートレスであること…すべてのHTTPリクエストが分離しており、状態管理が行われないこと
・接続性を持つこと…ある情報に他の情報へのリンクを含めることができ、その情報へ接続できること
API開発手順の概要
実際のAPI開発では、まず「どのユーザーに対して何を提供するか」を念頭に置いてAPI設計を開始します。そのうえで、以下3つのステップに沿って開発が進められます。
API仕様の設計
APIの種別(シンプルで単機能なAPIか、システム統合の一部か、バックエンドの一部かなど)を特定します。また、データフロー(両方向通信、一方向通信)やセキュリティ要件も確定します。
API開発
プログラミングによってAPIプログラムを開発します。
検証とエラー処理
開発したAPIプログラムを設置し、動作検証とエラー処理のチェックを行います。
3. APIを使用するメリット
APIを利用するメリットとしては、主に以下3点が挙げられます。
開発効率の向上と低コスト開発
APIを上手く活用することで、複雑な機能を持った仕組みを素早く・低コストに開発することが出来ます。例えば、機能Aを持ったシステムをAPIなしで構築する場合、アプリケーションを新規に開発しなくてはなりません。一方、APIを活用すれば、機能Aを持った外部アプリケーションとの連携により、求める仕組みが実現できるようになります。また、機能Aは外部アプリケーションから提供されるため、不具合修正やチューニングの手間もほとんど必要ありません。
セキュリティコントロールが容易になる
ログイン処理などをAPI連携で行えば、連携先の認証システムによるセキュリティチェックを利用できるため、セキュリティコントロールが容易になります。近年よく使われるSNS連携によるログイン認証などが良い例です。
自社が持つ技術資産の価値を上げる
APIの開発と公開は「アプリケーションが持つ価値を外部に広める」効果があります。既存の自社開発アプリケーションにAPIを設けることで、社内外の再利用性が向上します。さらに仕様を標準化して公開すれば、より多くの企業・顧客に利用されるようになるでしょう。
また、より多くの人々に利用してもらうことで良質なフィードバックを得ることができ、改良や改修を経てアプリケーションの価値がさらに上がっていきます。これら一連のプロセスが、自社の技術資産の評価につながっていくわけです。
4. APIの種類と活用事例
最後にAPIの種類と活用事例を紹介します。ここでは、近年特に利用頻度が高いWeb APIを中心に見ていきましょう。
利用形態による分類
まず利用形態による分類では、以下4種類のAPIが挙げられます。
Open API
「パブリックAPI」とも呼ばれる外部公開型のAPIです。接続仕様が広く公開されており、第三者が比較的自由に接続できるようになっています。例えば銀行業界では、自社が保有する顧客情報をOpen APIとして公開し、金融サービスを行いたい企業に提供している事例があります。また、配車サービスの「Uber」も配車リクエストボタンをOpen APIとして公開しています。このAPIを使うことで、ホテルやレストランが自社アプリに配車リクエスト機能を付与できるようになっています。
パートナーAPI
特定のビジネスパートナー・顧客にのみ公開されたAPIです。Open APIよりも制限が厳しく、特定の条件を満たした相手だけがAPIの機能を活用できます。活用事例としては、大手ECサイトにおけるセラー会員向けのAPI情報提供サービスなどがあります。
内部API
特定の組織内(閉じたネットワーク内)のみで公開されるAPIです。プライベートAPIとも呼ばれます。企業内における部門間のデータ連携や情報共有ツール、システム連携などに用いられることが多いでしょう。
複合API
複数のシステムに対して連携・結合を行うAPIです。分散したシステムに存在する複数のアプリケーションを連携先として設定することが出来ます。マイクロサービス同士をつないで、ひとつの大きなソリューションを構築する場合などに使用されます。
使用するプロトコルによる分類
Web APIは、使用するプロトコルによる分類も可能です。
REST
RESTでは一意なURIで情報資源を表現し、HTTP技術での操作を行います。最近では、REST APIを利用してサーバーとネットワーク機器に設定変更依頼をかけ、ITインフラの運用を自動化するといった事例が増えてきました。
RPC(Remote Procedure Call)
RPCは、あるシステムから別のシステムの関数を呼び出す手法です。Web APIとしての歴史は最も古く、動作がシンプルであることから現在も活用されています。Webブラウザやモバイルアプリのサーバー間通信などに使われることが多いでしょう。
SOAP(Simple Object Access Protocol)
XMLを使い、異なるシステム同士の通信を行う手法です。メッセージ送受信型のAPIとも呼ばれます。金融や医療など、レガシーシステム上で使われることが多いでしょう。
5. まとめ
近年APIが重宝されるようになってきた背景の一つとして、巨大なシステムを単体で構築・運用する時代から、小~中規模のシステム・アプリケーションを連携させる時代への移行が進んでいる点が挙げられます。ITエンジニアとしてAPI開発の知識とスキルを身に着けることは、活躍の場を広げることにもつながるでしょう。
ITエンジニア・Webクリエイターの転職ならレバテックキャリア
レバテックキャリアはIT・Web業界のエンジニア・クリエイターを専門とする転職エージェントです。最新の技術情報や業界動向に精通したキャリアアドバイザーが、年収・技術志向・今後のキャリアパス・ワークライフバランスなど、一人ひとりの希望に寄り添いながら転職活動をサポートします。一般公開されていない大手企業や優良企業の非公開求人も多数保有していますので、まずは一度カウンセリングにお越しください。
転職支援サービスに申し込む
また、「初めての転職で、何から始めていいかわからない」「まだ転職するかどうか迷っている」など、転職活動に何らかの不安を抱えている方には、無料の個別相談会も実施しています。キャリアアドバイザーが一対一で、これからのあなたのキャリアを一緒に考えます。お気軽にご相談ください。
「個別相談会」に申し込む