IoT技術とは?活用事例・周辺技術などをわかりやすく解説

最終更新日:2023年2月27日

IoT(Internet of things)とは、インターネットを介して人間とモノがつながる状態を指す概念です。小型デバイスや高速・広域通信の発達で、今後はIoTが生活の中に浸透していくと予想されます。ITエンジニアとしてのスキル・経験を活かしてキャリアの選択肢を増やすためにも、IoT技術の動向は必ず押さえておきたいところです。ここでは、IoTを構成する技術的な要素や活用事例、周辺技術、課題などを解説しています。

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この記事のまとめ

  • IoTで技術でデバイスの自動認識や自動制御、遠隔操計測などを行うことが可能となる
  • 生活家電や医療現場、農業など様々なシーンで活用されている
  • プライバシー問題や電力供給問題など様々な課題も抱えている

IoT技術とは?

まず、IoTの概要と主要な技術要素を紹介します。

IoTとは

IoT(アイオーティー)とは「Internet of things(モノのインターネット)」を略した言葉です。一般的には「デバイスに装着されたセンサーが検知したデータをインターネット経由で収集・分析し、活用する仕組み」をIoTシステムと呼びます。日本では2015年頃から急速に広まった概念で、デジタルデバイス・産業機械・自動車・家電・その他さまざまなモノがインターネットを介して接続されるようになってきました。

IoTという言葉は、1999年にマサチューセッツ工科大学のケビン・アシュトン氏が用いたことで知られるようになりました。しかしその後は、機械同士がつながる「M2M(Machine to Machine)」や、ネットワークとデータの遍在を表す「ユビキタス」といった概念が台頭したこともあり、それほど注目されていなかったようです。

ちなみにIoTは、デジタルデバイスやネットワークがあらゆる場所に存在するという点で、ユビキタスと似ています。しかし、データ収集と解析・活用も視野に入れている点で、IoTはユビキタスとは異なる概念だと言えるでしょう。

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IoT技術の基本的な仕組み

Iotの仕組みをわかりやすく説明すると、センサーによってデバイスやその周辺の状況を感知し、インターネットや通信を経由することで、取得したデータをアプリケーション上で活用するシステムです。IoTの仕組みを利用することによって、自動認識や自動制御、遠隔操計測などを行うことが可能となります。

IoTの仕組みには、以下の4つの要素が大きく関わります。

IoTの構成要素 役割
デバイス 実際に駆動する「モノ」にあたる部分です。スマートフォンや、車、家電、重機など、あらゆるものが対象になります。
センサー デバイスやセンサー周辺の状態を感知する装置です。温度、重さ、光などさまざまなものを感知し、データとして読み取ります。
ネットワーク センサーが感知した情報をデジタルデータとして送信する役割です。
アプリケーション 社内システムの運用管理

「ネットワーク」や「アプリケーション」と聞くと、よくあるインターネットとどう違うのか疑問に思う方もいるでしょう。インターネットなどのネットワーク通信では、人がデバイスを操作しアクセスすることで、システムの実行や制御を行うことができます。

一方、IoTは人が直接的に働きかけずとも、デバイスに設置したセンサーがあらゆる情報をいつでもリアルタイムに集約する状態であることが大きな違いです。

IoTを構成する技術要素

IoTは複数の技術で構成される仕組みです。「無線通信」「SoC搭載の小型デバイス」「センシング技術」「ソフトウェア(アプリケーション)」の4つによって構成されています。

無線通信

IoTの各デバイスをローカルネットワークやインターネット接続するために、無線通信が使われています。無線通信の規格としては、モバイル回線にも使用される長距離向けの3G・4G・5G回線や、近距離向けのWi-fiなどが一般的です。しかし近年は、通信速度よりも距離・安定性・コスト(省電力性)を重視したIoT向けの通信規格「LPWA」も普及し始めました。

SoC搭載の小型デバイス

IoTで使用されるのは「SoC」と呼ばれる組込み型の技術です。SoCにはCPUをはじめとした各種コントローラが集約されており、超小型でありながら単体で動作するデバイスを構築する際に使用されます。

センシング技術

センシング技術とは、センサー(感知器)を使用して種々の情報を計測し、定量化(数値化)する技術を指します。IoTで使用されるセンシング技術としては、超長距離での活用を視野に入れた「リモートセンシング」と、温度・光・衝撃といった人間の感覚に即した情報を検知する「スマートセンシング」の2つが代表的です。

IoTではデバイス上に何らかのセンサーを配置し、センサーが検知した情報を収集・分析することが多いです。したがって、センシング技術の向上はIoTの進化に直結していると言えます。

アプリケーション

IoTでは、センサーを搭載したデバイスから収集した情報を専用のアプリケーションで分析し、活用につなげていきます。また、デバイスをリモートで操作するためのアプリケーションも必要になります。そのため、「可視化」「通知」「制御」などの機能を持つアプリケーションが開発されています。

IoT技術の最新動向・トレンド

IoT化は、私たちが気づかないうちにさまざまなサービスやプロダクトに広がっており、あらゆるモノがネットワークにつながっているデジタル社会になってきています。集積された膨大なデータを処理する方法として、IoTと共に急速に発展しているAIや機械学習を活用したビッグデータ分析に更なる期待が高まっています。

また、今後も需要が高いのは、IoTの遠隔操作への活用です。コロナウイルス感染症が流行して以降、現場に行かずともパソコンや機器の制御をしたいというニーズは引き続き高い状態です。

そのほか、今後のトレンドとして押さえておきたいのは、IoTデバイスセキュリティです。IoTデバイスはあらゆる場所への設置が広がっているため、比例してセキュリティ対策の重要性が高まっています。ネットワークにつながっているIoTデバイスは、マルウェアなどの攻撃に対するサイバーセキュリティにさらされるリスクがあり、セキュリティの実装が不可欠です。

IoT技術の活用で実現できること

次に、IoT技術を使ってどのようなことが実現できるのか、具体的な導入事例をみていきましょう。

モノを遠隔で操作

IoT技術の活用で代表的なものは遠隔操作です。離れた場所にあるモノを、ネットワークを通じてリモート操作することができます。イメージしやすい例としては、外出先から自宅のエアコンや照明の電源を入れたり、ドアやシャッターの開閉をするなどです。自宅以外にも、ビルや学校などさまざまな場所で活用されています。

モノの状態を遠隔で確認

IoT技術では、センサーを用いて遠隔地にあるモノやその周辺の状況を確認することができます。例えば、工場が問題なく稼働しているかを監視したり、危険が伴う遠隔地の点検をするなど、人に代わってIoT技術が活躍しています。家庭用であれば、IoT機能がある首輪をペットに装着して、健康状態や活動状況をモニタリングできるプロダクトなどがあります。

モノや人の動きを遠隔で検知

人感センサーや位置情報などを用いて遠隔地にある状況を検知することができます。モノや人の動きを検知できる自動安全装置や追跡システム、温度や照度の変化を検知して自動で最適化させる調整機能など、さまざまな場面にIoT技術が活用されています。

モノ同士の通信

IoT技術を使えば、モノとモノの間で通信を行い、複数のデバイスや電子機器を自動的に連携させることができます。代表的な事例はスマートホームシステムで、AIスピーカーと連携して口頭で指示を出すだけで、エアコンや照明、お風呂の給湯などの複数の電子機器を動かすことができます。そのほか、自動車の自動運転もモノ同士の通信による技術で、信号機のデータや道路の混雑状況をリアルタイムに受信して走る速度を変えるなどしています。

家庭で見られる身近なIoT技術の活用事例

一般家庭においてもIoT技術の活用が浸透してきています。身近な事例をいくつかご紹介いたします。

IoT家電

IoTの技術は、テレビやエアコン、冷蔵庫、照明、スピーカーなどのあらゆる家電をWi-FiやBluetoothで接続し、暮らしを便利にしています。スマートフォンアプリによる遠隔操作や、「Siri(シリ)」や「Alexa(アレクサ)」などのスマートスピーカーへの音声操作など、さまざまなプロダクトが登場しています。電気ポットや冷蔵庫の使用状況を用いた高齢者の見守りシステムなども広く知られています。

また今後、電力会社が各家庭へのスマートメーター導入を推進していく予定となっています。家電と電気設備を連携させて電気使用状況をモニター画面で見える化し、省エネに繋げていくことが期待されています。

スマートロック

玄関扉やシャッターにIoT機器を取り付けることで、開閉をスマートフォンなどで管理することができます。ハンズフリーで鍵の開閉ができるので、いちいち鍵を取り出す煩わしさがなくなります。また、スマートフォンを使って外出先から鍵の開閉状態を確認することができるので、閉め忘れを防ぐ防犯対策にもなりセキュリティを高めることにつながります。

ウェアラブルデバイス

腕時計型やメガネ型など、身につけることができるコンピュータ端末「ウェアラブルデバイス」にもIoT技術が導入されています。

センサーによって体温や振動、位置情報などを感知し、健康管理やスポーツ、ゲームなどに活用されています。

産業別・IoT技術の活用事例

では次に、産業別にIoT技術の活用事例をご紹介いたします。

医療:遠隔医療や着用型ウェアラブルデバイスに導入

医療業界でのIoT活用事例はさまざまありますが、代表的なものは手術時に着用するメガネ型のウェアラブルデバイスです。医師の目線での動画撮影や、リアルタイムでのサポートが実現できるようになりました。

そのほか、医療スタッフにスマートウォッチを導入し、医療用手袋を装着している状態でも通話ができるようにするなど、救急医療の現場でも活用されています。

製造:不具合監視やエラー予兆監視に利用

製造業の分野においては、機械の故障や生産ラインの停止を防ぐために、異常を検知または予測する「稼働監視」にIot技術が用いられています。カメラやセンサーを工場内に設置し、ネットワークを通じて遠隔で稼働状態をモニタリングします。

物流:倉庫管理や物流管理に導入

物流業界ではスマートロジスティクスによる技術革新が進んでおり、多くの企業においてIoTをはじめAIやロボットなどの最新技術が導入されています。

情報伝達の迅速化や輸送中の温度管理、在庫や配車計画の最適化など、物流管理の効率化を実現しています。慢性的な人手不足である物流業界において、IoTは課題解決と業界成長に欠かせない存在となっています。

交通:渋滞対策や運行計画の最適化に利用

交通渋滞の緩和にもIoT技術が活用されています。GPS搭載の自動車から得られる緯度・経度、時刻、移動軌跡情報などを元に、道路の混雑状況の表示や、迂回路への誘導によって交通渋滞の緩和が行われます。

電車やバスなどの公共交通機関にもIoTは利用されており、車両の走行位置や乗車率などが随時インターネットやアプリを通してリアルタイムでユーザーに共有されます。また、交通状況によって遅延が起こりやすいバスの定時運行を支援し、運行計画を最適化させるシステムも開発されています。

農業:スマート農業への活用

農業の収穫効率の向上にも、IoT技術が活用されています。後継者不足が深刻化している農家において、先端技術を駆使した「スマート農業」への注目が高まっています。

センサーやカメラによって作物の生育状況や病害の発生状況のモニタリングを行い、肥料のコントロールや、農薬散布の自動化などを行います。テクノロジーの力によって、人の手で行う作業を極力減らすことが期待されています。

飲食業:オーダーや予約管理に利用

飲食業界にもIoT技術が取り入れられ、業務効率化が図られています。

ホール業務の効率化の事例でいうと、グラスの底に埋め込んだLEDをコースターで読み取り、お客様がグラスを置いた際に人を介さずに飲み物のおかわりを自動オーダーするといったことができます。

そのほか、センサーによって店内の空席状況を検知し、リアルタイムで予約を受け付けるシステムなどもあります。

BtoC領域におけるIoT技術の活用事例

次に、BtoC領域におけるIoT活用事例をピックアップしました。BtoC領域では、紛失防止や見守りなど「可視化」「通知」などの機能を持つIoT技術が多く活用されています。

コロナ禍における商業施設内の混雑状況を事前に可視化

東京都内のある商業施設では、IoT技術によってコロナ禍に対応した混雑回避のための仕組みを実現しています。消費者自身が来店前に商業施設の混雑状況を知ることで、三密を回避できる仕組みを目指したとのこと。

具体的には、AIを搭載した小型カメラの映像をクラウドシステムへ送信し、施設内の混雑状況をイラストで表示します。ここで注目したいのは、消費者のプライバシー保護の観点から、小型カメラで撮影した映像をそのまま使用せず、イラストを用いた画像に置き換えている点です。

小型カメラ側では、撮影した映像をベースに来店者の「位置」や「数」を数値化し、クラウドシステムへ送信します。クラウドシステム側では、受信したデータをイラストへ変換し、疑似的な館内情報をリアルタイムに提供しています。数値化⇒イラスト化という過程を経ることで、プライバシー保護と、リアルタイムな情報の可視化を両立しているのです。

このように、一定の処理能力をもったIoTデバイスを「エッジコンピューティング」や「エッジIoT」と呼びます。エッジコンピューティングを用いることで、情報を吸い上げるクラウドシステム側の負担が軽くなり、低コストで遅延の少ない仕組みを構築することが可能です。

タグ型の紛失防止デバイス

IoT技術を「紛失防止」に役立てている企業もあります。ICチップを内蔵した小型タグと、タグを検知するアプリケーションによって、小型タグの場所を通知する仕組みを構築しました。

ICチップ内蔵の小型タグを所持品に装着すると、スマートフォンにインストールした専用アプリケーションが存在を認識するようになっています。移動前にアプリケーションから小型タグの存在を確認することで、忘れ物の発生を防止できるわけです。

また、紛失の際には、他のスマートフォンや任意の場所に設置されたセンサースポットなどと連携し、小型タグを添付したモノを探すこともできます。

電球内のIoT SIMを遠隔見守りに活用

IoT技術を用いた電球を、遠隔見守りに活用する事例もあります。この事例では、センサーと通信機能を内蔵した電球から「照明の利用時間」をクラウドシステムへ送信し、屋内の照明利用時間が不自然に増減していないかを監視することができます。

この仕組みの特長は、照明の利用時間(電球のON/OFFデータ)から生活リズムの変化を検知しつつ、対象者のプライバシーも保護できる点です。カメラによる映像情報を使用せずに、照明の稼働状況を活用することでプライバシー保護を実現しています。

電球に内蔵されているIoTデバイスには、LTE通信機能が搭載されており、照明の利用状況をAPI経由でクラウドシステムへ送信します。また、クラウドシステムから見守り対象者の家族へと通知が行われる機能もあります。電球という昔ながらの生活家電の中にIoT技術を組み込むことで、生活の中にテクノロジーをうまく浸透させた事例と言えるでしょう。

血糖値を管理できるコンタクトレンズ(名古屋大学)

名古屋大学では、世界最小クラスの発電・センシング一体型血糖センサーを新たに開発し、コンタクトレンズ方式の持続型血糖モニタリング装置の試作に成功しました。

糖尿病の治療や予防には、血糖値を持続的にコントロールすることが大切です。これまでは、患者自身が血糖値の測定や把握をするために、皮下にセンサーを埋め込むデバイスが利用されてきました。

今回、外部からの無線給電が不要なコンタクトレンズ型のセンサーが開発されたことによって、装着するだけで糖尿病患者が持続的に血糖値をモニタリングできるようになるといいます。

BtoB領域におけるIoT技術の活用事例

toB領域では「予測」「観測」の精度向上に向けた活用が進んでいます。予測や観測の精度を向上することで、安全性を高めたり、システムの運用方法を最適化するといった使われ方が多くみられます。

AI+IoTによる故障確率予測システム

国内の大手保険会社では、AIとIoTを組み合わせたシステムが開発されました。また、同システムで検知した予兆に基づいた対応への補償なども提供しています。

例えば石油化学プラントでは、プラントを構成する機器が正常に動作していても、石油の流量・圧力・温度など複数の要因が重なってプラントが停止してしまうことがあります。こうしたトラブルは個別の機器からは判断しにくく、プラント運用者の経験に頼ることが多かったそうです。

しかし、熟練のプラント運用者の確保が年々難しくなり、デジタル技術による効率化が求められるようになりました。この課題を解決するのが、IoTを利用した故障確率予測システムです。

このシステムでは正常稼働時の各種データ(圧力、水位、流量、温度など)をAIが学習し、新規に取得したデータが正常なカテゴリに分類されるかを判断します。各種データの取得にはIoTデバイスが使用されており、各種データを定量化して送信できるようになっています。

IoT+クラウド活用による気象観測システム

国内のIoTシステムベンダーでは、IoTデバイスとクラウドを組み合わせた気象観測システムを提供しています。このシステムでは、複数のIoT技術を活用した気象センサーで風速・風向・雨量・湿度・温度などを計測し、クラウドシステムへと送信します。クラウドシステム側では送信されたデータをグラフなどで可視化し、利用者はいつでも詳細な気象状況を把握できます。

従来の気象観測システムでは設置が難しかった場所にもセンサーを置けるようになったことで、柔軟な気象観測が可能になりました。また、小型デバイスを中心としたシステムであるため、コストパフォーマンスも向上しました。こうした強みを活かし、工事現場による安全対策や宅地造成前の事前環境調査、地域の防災・減災対策などでの活用が期待されています。

気象観測データでダム運用の効率化

国内の大手電力会社が中心となって開発された、ダム運用の改善にIoTシステムが活用された事例があります。IoTデバイスで気温・雨量・積雪量などを計測し、これに予測結果を加味することでダムに流入する水量や時期の予測精度を向上させます。

ダムの運用では、流入する水の量や水位を動的に計測し、発電運用計画に役立てる方法が一般的でした。これに気象観測データを加えることで、ダムの発電量を向上させる狙いがあります。

IoTを支える周辺技術

IoTはいくつもの技術に支えられている仕組みです。ここではその中でも特に重要度が高いものをピックアップして紹介します。

5G(第5世代移動通信システム)

IoTではデータの伝達速度が重要です。5Gは4Gの20倍の通信速度(20Gps)を誇り、同時接続可能な機器数も10倍(1㎢あたり100万デバイス)に増加しています。また、遅延速度は4G比で10分の1(1ms)まで低下していることから、高速・大容量・低遅延なネットワークに大量のIoTデバイスを接続することが可能です。

IoTシステムでは、デバイスから吸い上げる情報量が多くなると遅延や通信速度の低下が発生し、リアルタイム性が維持できなくなるという課題がありました。しかし5Gが普及すれば、こうした課題が改善されていきます。

LPWA(Low Power Wide Area)

LPWAは無線通信規格のひとつで、その名のとおり「低消費電力かつ広域での通信」を想定しています。また、長距離でも安定した通信状況を保ちやすいというメリットもあります。5Gや4Gに比べると通信速度は大きく劣る一方、ボタン電池レベルの低電力で数km~数十kmレベルの長距離伝送を年単位で継続できるため、IoTシステムの構築に欠かせない技術です。2021年時点では、無線通信免許が必要な「ライセンスバンド」と、免許が必要ない「アンライセンスバンド」があり、それぞれに複数の規格が紐づいている状態です。

LPWA規格の注目株としては、SONYが中心となって開発した「ELTRES(エルトレス)」が挙げられます。ELTRESは100km以上の長距離伝送に加え、時速100kmを超える状況でも通信が可能だとされています。

電子タグ(RFID)

IoTシステムでは情報収集を電子タグによって行うことがあります。電子タグに関する仕組みとしては「RFID」が挙げられます。RFIDは、リーダー/ライターから発する電磁波/電波を動作電力とし、任意の信号を送受信できることが特徴です。RFIDは交通系電子マネーの「Suica」や「ICOCA」にも採用されており、数十cm~数十m程度の近距離通信を得意とします。

M2M(Machine to Machine)

M2M(Machine to Machine)とは、マシン(機械、デバイス)同士がネットワークで直に接続され、相互に情報をやり取りしながら自動的に制御を行う仕組みを指す言葉です。ネットワークでデバイス同士が接続されるという点では、IoTに似ています。しかし、IoTは機械以外のあらゆるモノから情報を取得し、なおかつインターネットを活用するという点がM2Mとは異なる概念です。

ただし、M2Mによる「機械と機械の接続・制御」はIoTにも活かされています。例えばビルの照明をリモートから監視・制御する仕組みでは、ビル内の人感センサーを制御機器でコントロールします。この状態はM2Mですが、人感センサーをインターネット経由でクラウドへ接続し、クラウド上の制御コンソールでコントロールする場合は、IoTシステムになるわけです。このようにM2MとIoTは明確な線引きが難しく、関係性の高い技術のひとつと言えます。

エッジコンピューティング

エッジコンピューティングとは、エッジ(システムの末端、先端)にあるデバイスに一定の処理能力を持たせる仕組みや考え方のことです。

IoTシステムでは、多数のIoTデバイスから収集した情報をクラウドシステムに送信し、クラウドシステム側で分析・可視化などを行うケースが一般的でした。しかしこのケースでは、クラウドシステムに負担がかかるほか、データを送信するネットワークにも相応のスペックが求められます。つまり、全体的に高コストな仕組みになりがちで、なおかつ負荷による遅延や不具合の発生も懸念されるわけです。

エッジコンピューティングを積極的に採用することによって、IoTデバイス側に数値化・定量化処理を担当させ負荷を分散します。また、処理完了後に本当に必要なデータのみを送信することで、低速で安価なネットワークであってもリアルタイム性に優れたシステムを構築しやすくなるわけです。

IoT技術のメリット

IoTを利用するメリットは以下の5つです。それぞれ具体的にご紹介します。

作業効率の向上

IoT技術を利用する最大のメリットは、作業効率の向上です。センサーによる検知や監視、ネットワークによる迅速な情報伝達、アプリケーションによる情報処理・可視化など、人の手で作業を行うよりも時間やコストをはるかに効率化することができます。

業務の定量化

これまで人の手によって行われていた業務プロセスがIoTによって数値化され、定量化することが可能になりました。熟練者の経験や知識によって調整されていた細かな加減や操作を、IoT機器が状況に応じて再現します。

業務の省人化

監視や点検などの巡回業務をセンサーで賄うことで、業務の省人化につながります。IoT機器の導入によって業務が自動化し、人間でしか稼働できない業務の割合を減らすことができます。

予知保全の強化

センサーで対象の機器・設備の状態を常に監視することで、不具合や故障の予兆を検知することが可能です。これまで一律で定期的に行ってきたメンテナンスや部品交換のスケジュールを、最適化することもできます。

人的ミスや事故の防止

IoTセンサーを用いてアラート通知するシステムを構築すれば、大きなトラブルを未然に検知することができます。

どのような現場であっても、ヒューマンエラーを完璧に防ぐことは難しいでしょう。ミスを発生させないためにはチェック体制の強化が不可欠ですが、生産効率の低下にもつながりやすい側面があります。IoT技術を駆使することによって、常に一定の基準に則った事故防止体制を構築することができます。

IoT技術の課題とは?

IoT技術が抱える課題についても解説します。技術的な課題や運用面の課題など、主に以下4つが挙げられます。

ネットワーク負荷の増大

IoTデバイスを多数配置することで通信拠点が増加し、それにともなって通信量(トラフィック)も増加することから、ネットワークが常にキャパシティオーバーに晒されます。これを解決するためには、分散型かつ自律的に負荷調整を行うネットワークの普及が必要になるでしょう。ただし、現時点でもLPWAやエッジコンピューティングの活用で、ある程度は緩和することができるようです。

ネットワークセキュリティ

IoTデバイスから送信されるデータを保護するにあたって、デバイスごとに暗号化技術を実装する必要があります。しかし、IoT機器側の処理能力や電力が不足し、暗号化技術を稼働させることができないこともあるようです。小さなリソースでも十分なデータ保護能力を発揮する暗号化技術の登場が期待されています。

プライバシーの問題

IoTセンサーによって取得される情報には、個人のプライバシーにも関わるパーソナルデータが含まれる場合があります。人感センサーに映る顔画像や、家電の稼働時間や使用履歴からわかるその人の生活リズムや興味関心などがその一例です。また、技術が進歩することによって、高解像度カメラが意図せず指紋情報まで映してしまうケースなど、さまざまな問題が起こり始めています。

一般の個人は、自分のパーソナルデータが取得されていることに気づいていないことも多く、個人情報保護は開発者側の責務でもあります。

電力供給の問題

ほとんどのIoT機器はワイヤレスを前提に設計されているため、電力供給問題はIoT普及を阻む課題の一つとなっています。

バッテリー交換では人的コストがかかってしまうため、増え続けるIoTデバイスに対して安定的な電力を供給する手段が模索されています。非接触型の電力伝送や、環境中にあるエネルギーを電力に変換するエナジーハーベスティングなどの新技術に期待が高まっています。

IoT技術に関するQ&A

IoT技術に関するよくある質問をご紹介します。

Q1.IoTとはどのような技術ですか?

IoT(Internet of Things)とは2015年ころから急速に広まった概念で、インターネットを介して人間やデバイスがつながる状態を指します。小型デバイスや高速・広域通信の発達によって、IoTが生活の中にますます浸透していくことが予想されます。

Q2.IoTの身近な例はありますか?

IoT技術は、私たちの暮らしのさまざまな場面に活用されています。最も身近な例は家電で、センサーで鍵を開閉する玄関ドアや、冷蔵庫内の食品の在庫を把握するシステムなどがあります。

Q3.IoT技術のメリットは何ですか?

IoT技術を利用する最大のメリットは、作業効率の向上です。検知したデータを活用して予測や自動化をするなど、業務や暮らしの最適化に役立っています。IoT技術はさまざまなデバイスへ応用しやすいことが特徴で、流通業や製造業、医療、交通などの業界から一般家庭まで、ありとあらゆる場面への導入に期待が高まっています。

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