40年以上にわたり日本のITを支えたSIerは本当になくなるのか?楽観論、悲観論を紹介SIerの将来性は?今後10年でSIerは本当に凋落するのか

最終更新日:2021年2月18日

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日本国内では、現在も大手SIerが企業のITシステム開発の多くを担っています。近年、このSIerの将来性について悲観的な声が挙がっています。SIerの将来性は果たして本当に低いのでしょうか。ここでは、SIerの将来性をさまざまな角度から整理・分析していきます。

1. SIerとは?

まず、SIerの定義について簡単に解説します。複数のハードウェア・ソフトウェアなどを用いて、部門横断型の汎用的なITシステムを生み出す業務のことを「SI(システムインテグレーション)」と呼びます。そして、そのSI業務を提供する事業者のことを指す言葉が「SIer(システムインテグレーター)」です。SIerは特定の技術に依存せず、顧客要望にマッチするシステムを創出するために、さまざまな技術を用います。

また、開発のみならず、本番稼働後の保守・運用フェーズまでを含むこともSI業務の特徴です。そのため、日本国内におけるSIerは、主に中~大規模なITシステム開発案件を一括受注し、顧客要望に沿ったシステムを独自に開発しています。しばしば建築業界の「ゼネコン」に例えられることからもわかるとおり、IT業界におけるコントラクター(受託者)と言えるわけです。

2. SIerの将来性が「ない」と言われる理由

次に、SIerの将来性について解説します。ここ数年の間に、SIerの将来性を疑問視する声が増えてきました。その理由としては、次のようなものが挙げられます。

クラウドの普及

クラウドサービスの成熟は、SaaS、IaaS、PaaSといったプラットフォーム・インフラ構築をサービス化しました。また、実際のサービス開発もクラウドで賄えるようになり、ゼロベースでのスクラッチ開発を選択する理由が無い時代に突入しています。日本のSIerが最も得意としていた「独自仕様のスクラッチ開発」の需要自体が低下しているわけです。

慢性的な高コスト体質

Slerは大手になればなるほど発注コストが高くなり、一定以上の規模感を持つプロジェクトでなければ採算が合わないのが実情です。しかし、多大なコストを投じて作り上げたシステムが、それに見合った効果を発揮してくれるとは限りません。

むしろ現代は、小さく作って頻繁に試行し、状況に応じて組み替える「スモールスタート」「マイクロサービス」がトレンドです。こうしたトレンドとSIerのビジネスモデルがマッチしていないことも、将来性を危惧される要因のひとつでしょう。

「創発型」の高付加価値な提案がしにくい

これまでの国内SIerが最も得意としていたのは「顧客要望を忠実に実現する」ことです。要望を忠実に再現するだけの正確さ、技術力、動員力を持っていました。その一方で、顧客のビジネスモデル転換のきっかけになるような「高付加価値型」「創発型」の提案はあまり行われていませんでした。これはSIerの問題というよりも、日本社会全体の慣習というべきかもしれません。

エンジニア不足による「動員力」の低下

SIerの強みのひとつに「動員力」があります。これまではITエンジニアをスピーディーかつ大量に調達できていたため、大規模な案件をいくつも抱えることができました。しかし、現代はITエンジニア不足が深刻化しています。

みずほ情報総研の調査によれば、2030年時点で、最もIT需要の伸びが小さい場合でも16万人のエンジニア不足が発生すると予測されています。さらにIT需要が2~5%伸びる中位シナリオでは45万人、3~9%伸びる高位シナリオでは79万人が不足するとの試算もあるほどです。こうした調査結果の影響からか、SIerはこれまでのように「動員力」を発揮できなくなり徐々に優位性を失っていく、という見方が強まっています。

参考:みずほ情報総研株式会社「 IT人材需給に関する調査」

リカーリングビジネスの減少

リカーリングビジネスとは、「継続的な収益をもたらすビジネス」を指します。IT業界は華やかな開発フェーズのみに目を奪われがちですが、本当の旨味は開発終了後の「運用保守フェーズ」にあると言えます。

SIerは自らが手掛けたシステムの運用保守を担い、継続的な収益の柱としていました。つまり、リカーリングビジネスがSIerの収益基盤を支えていたのです。しかし、クラウドサービスやパッケージソリューションが普及すれば、運用保守は内製化されていき、リカーリングビジネスのパイは減少していくでしょう。これは、SIerの収益基盤の弱体化につながりかねません。

3. SIerの将来性は「ゼロ」ではない

このように、SIerの将来性については、確かに不安材料が多いです。しかし、現時点でSIerの業績は好調であり、5年程度のスパンで見れば明るい材料があることも事実です。

大型案件はSIerの独壇場

政府系機関や公共性の強い事業者、金融機関などの大型プロジェクトはSIerでなければ受注できないのが実情です。また、こうした大型案件はほぼ毎年と言ってもよいほど発生するため、常に一定の需要が見込まれます。

「2025年の崖」に代表される旧システムの移行問題

経済産業省が公表した「2025年の崖」にもあるように、レガシーシステムの老朽化は経済損失をもたらすリスクを孕んでいます。こうしたリスクを避けるように、今後数年で基幹システムや業務システムが新システムへと移行していくでしょう。システムのマイグレーション作業は大規模プロジェクトになることが多く、各種調整を行いながら豊富な人員を投入できるSlerの力が不可欠です。

DX需要の増加

今、多くの企業が高効率・高付加価値経営を目指すため「DX(デジタルトランスフォーメーション)対応」を実行に移しています。DX対応では、CRM・MA・SFA・ERPなど、比較的規模の大きな企業向けパッケージソリューションが導入されることから、SIerの持つ力が発揮されやすい状態です。

また、こうしたパッケージソリューションは、スクラッチ開発の独自システムに置き換わっていくでしょう。つまり、既存の独自システムを導入したSIerが、当時のノウハウを活かして再度パッケージソリューションの導入も担う、というケースが想定されるわけです。

プラットフォーマーへの転換

国内事業とは別に、海外で新たなビジネスを立ち上げるケースもあるようです。例えば、海外で決済システムのプラットフォームを構築し、プラットフォーマーを目指しているSIerもあります。これまでの「受託者」とは全く別のポジションを狙い、収益を確保しようという試みです。

4. SI業界の将来を踏まえエンジニアがとるべき対策

最後に、SI業界で働くエンジニアがとるべき対策を紹介します。IT業界は人材不足が叫ばれる一方で、「2030年には従来型IT人材が10万人余る」という試算もあります。人材不足が叫ばれているのはあくまでも「先端IT人材」であり、受託開発・保守運用などに携わる従来型IT人材は、そこまで不足していないという実情があるようです。

つまり、今後はスキル習得によって「先端IT人材への転換」を目指していくことが、年収・キャリア向上の鍵を握っていると言えます。

今後のITエンジニアが身に着けるべきスキル

自動化、仮想化対応スキル

これまで手動で行っていたネットワーク・セキュリティ設定、ネットワーク機器のコンフィグなどの作業を、コーディングによって自動化するスキルです。

IoT関連

組込みエンジニアであれば「センシング対応」や「無線通信機能の実装」などを身に着けることで、IoTエンジニアへの転身が可能です。

UI・UX対応スキル

UIはユーザーの使い勝手、UXは体験・経験に寄与する部分です。特にUXに関連するスキルは既存のITエンジニアにはさほど求められませんでした。どちらかといえばデザイナーの領分だったからです。しかしWebサービスの競争が激化する中で、「使いやすく快適なサービスは何か」という視点の獲得は必須です。

AI、機械学習関連スキル
ここ3年ほどで、業界業種を問わずAI・機械学習ソリューションの導入が進んでいます。「省人化・省力化・高品質」を同時に達成するには、AI・機械学習ソリューションの持つ力が不可欠だからです。AI・機械学習に関するスキルとしては、次のようなものが挙げられます。
 

  • ・Python、R、Juliaなどによるコーディングスキル

    ・AIを動作させるための環境構築スキル

    ・AIに投入するデータのクレンジングスキル(データプレパレーションスキル)

    ・統計学の基礎知識

5. まとめ

SI(システムインテグレーション)というビジネスは40年ほど続いており、日本国内では大手SIerが企業のITシステム開発を担ってきました。従来はスクラッチ開発を典型とする「手作り」型のシステムが求められていましたが、クラウドやパッケージソリューションの普及で状況が変わりつつあります。SIerでなければ受けられない仕事もあるため、全く仕事がなくなるといったことは考えにくいですが、今後はスキル習得によって「先端IT人材への転換」を目指していくことが、年収・キャリア向上につながるといえるでしょう。

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