COBOLは1950年代に登場し、主に汎用機で使われてきた言語です。企業の情報処理システムが汎用機からC/S(クライアント/サーバー)、さらにはERPやCRMパッケージ、クラウドへと移行するにつれ、需要が減少しています。しかし、新しいサーバー環境への移行や改修作業では必須となることが多く、現在でも一定の需要があります。ここでは、COBOLエンジニアの需要や将来性、年収などについて解説します。
1. COBOLとは?
COBOLの正式名称は「Common Business Oriented Language」であり、各単語の頭文字をとってCOBOLと呼ばれています。1959年に、米国のデータ組織言語協議会(Conference on Data System Languages-CODASYL)で開発されました。COBOLの特徴は「拡張性の高さ」「可読性の高さ」にあります。構文がシンプルで読みやすく、英語をある程度理解できれば高度な専門知識を持たない人間でも理解しやすいことが強みです。
2. COBOLでの転職は可能?需要と将来性
次に、COBOLエンジニアの需要と将来性について解説します。
国内開発プロジェクトの13%で使用されるCOBOL
COBOLは現在でも日本国内において根強く支持されています。IPA(情報処理推進機構)が公表している「ソフトウェア開発分析データ集2020(※1)」によれば、国内の開発プロジェクト5066件のうち、COBOLは15.3%のプロジェクトで使用されています。この比率は1位のJava(40.6%)に次ぐものであり、日本のレガシーシステムの多くが、未だにCOBOLで支えられている実情が垣間見えてきます。
かつて日本企業を支えていた汎用機・メインフレーム・ホストコンピュータの一部は、現在でも稼働し続けています。汎用機の多くは2000年代までにオープン系のC/S(クライアント・サーバー)システムに置き換わっているものの、金融機関・官公庁・交通系機関などの一部では、未だにCOBOLを中心としたシステムが存在するほどです。
こうしたシステムはレガシーシステムと呼ばれ、長年にわたって稼働し続けるシステムの中には、COBOLによって作成されたプログラムが蓄積されています。つまりCOBOLは、日本企業が持つ業務ノウハウを最も多く具現化している言語のひとつなのです。
ちなみに大手金融機関であるみずほフィナンシャルグループでは、新システムにおいて汎用機を継続採用する決定(※2)を下しました。その背景には、COBOLベースで作成された無数の情報資産を有効活用する意図が感じられます。またCOBOLベースの情報資産は、業務プロセスの変更や法改正に対応するため、改修・機能追加などが必要です。そのため、新規開発の案件こそ減ったものの、保守・改修案件を中心にCOBOL人材の需要は根強く続いています。
※1参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2020」P.13
※2参考:日経クロステック「謎解き「みずほシステム統合」、19台あったメインフレームは何台に減った?『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』プロジェクト」
コスト面を考慮したCOBOL回帰
汎用機のような一極集中型の巨大コンピュータで構成されるシステムは、移行コストが高いことでも知られています。そのため、大規模なマイグレーションには二の足を踏む企業も少なくありません。このことから、機能を細かく区切って部分的な移行を進めつつCOBOL資産を再活用する企業も増えているようです。実際に基幹システムをオープン系C/Sシステムからメインフレームへと回帰させた例もあります。
さらにクラウド環境で既存のCOBOL資産を流用できるソリューションも登場しています。つまり、プラットフォームが変わったとしても、当面の間はCOBOLを扱える人材の手が必要になるというわけです。
COBOLエンジニアの将来性
一方、COBOLエンジニアは定年退職やマネジメント層への昇格により、すでに一線を退いているケースが少なくありません。また、若手エンジニアの多くはJava・Pythonといった先端分野で活用される言語にスキルの軸足を置くため、COBOL人材は不足気味であるのが実情です。
したがって、COBOLによる新規開発案件が減少し続けたとしても、5年程度はCOBOLエンジニアの需要が続くでしょう。
3. COBOLエンジニアが身に着けておきたいスキル
次に、COBOLエンジニアが身に着けておきたいスキルについて解説します。
プログミングスキル
これからのCOBOLエンジニアに求められるのは、「オープン系システム上で動作するCOBOLプログラミング」のスキルです。汎用機上にあるCOBOL資産をオープン系システムに「移植」するスキルとも言い換えられます。基本的な文法に差はありませんが、文字コード・DB構造・画面仕様(CUIもしくはGUI)などに対応できるようなコーディングが必要になるでしょう。
例えば、オープン系システムでは汎用機のようにオペレーターが現場に存在しないことが多いため、専用コンソールからの入力を想定したプログラミングは不要です。また、CUIベースではなく、GUIを前提としたコーディングが求められます。
要件定義、基本設計スキル・経験
マイグレーションや機能改修案件がメインとなるCOBOLエンジニアは、既存の機能を理解したうえで作業を行います。したがって、要件定義フェーズから参画するケースも少なくありません。要件定義、基本設計の経験・スキルは、重要な評価ポイントです。詳細設計スキルは重要な評価ポイントです。
特定分野の業務知識
COBOLの需要は、金融・保険業界や官公庁に集中しているため、こうした業界の業務知識も重要な評価ポイントです。COBOLは「業務が分かればプログラムが読める」と評されることもあるほど、業務ノウハウを忠実に反映させる言語だからです。金融・保険業界の専門的な業務知識をシステムに落とし込むスキルがあれば、付加価値の高い人材とみなされるでしょう。
マネジメントスキル・PM経験
COBOLエンジニアは、エンジニア経験が長いこともあり、マネジメント能力を期待されることが少なくありません。自身のタスク(設計・開発・実装)を進めつつ、進捗管理やチームマネジメントまでカバーできるスキルがあれば、評価の対象となるでしょう。特に、PMやTLとして「プレイヤー兼マネージャー」のような役割ができれば、年収が上がりやすくなります。
4. COBOLエンジニアとして転職したときの年収例
最後に、実際の求人からCOBOLエンジニア求人の年収を紹介します。
生産管理、製造業系のシステム開発子会社(PM)
【想定年収】550~700万円
【業務内容】要件定義、基本設計、マネジメント
【求められるスキル・経験】・SEとして数名規模のメンバーマネジメント経験、
要件定義・基本設計などの上流工程における経験
医療・公共機関向けシステム開発企業(システムエンジニア)
【想定年収】350~650万円
【業務内容】医療、公共サービスにおける基幹業務システムの開発・保守
【求められるスキル・経験】何らかのシステム開発経験
COBOLエンジニアの年収は400-600万円程度がボリュームゾーンであり、先端分野のITエンジニアに比較するとやや低い印象があります。一方、金融・製造・公共・医療など独自システムを採用する業界でマネジメント経験を積むことにより、年収があがっていく傾向もあります。COBOLのスキルとともに、上流工程の経験、運用・保守チームのリーダー経験などがあれば、600万円以上の年収を狙いやすくなるでしょう。
5. まとめ
COBOLの需要は、企業の情報処理システムが汎用機からC/S、さらにはERPやCRM、クラウドへと移行するに従い、減っているといわれています。その一方で、マイグレーションや改修作業ではCOBOLが必須となる場面も見られることが多いことも事実です。今後も5年程度は一定の需要が見込めると予想できます。リーダー経験のある方であれば、比較的高年収も期待できます。
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