ここ数年、社会では働き方改革が推進され、労働環境に対する意識が高まっています。しかし、Slerはまだまだ激務が多いと言われているのも事実です。Slerで働くエンジニアのなかには、「残業が多い」「思うように仕事がまわらない」と労働環境に不満を抱き、転職を検討している人もいるでしょう。ただ、転職先といっても他のSlerやWeb系企業など、さまざまな選択肢があります。そのため、まずは自分がなぜ今の会社を辞めたいのか、転職して何がやりたいのかを明確にするべきです。
当記事では、SIerの仕事について再確認しながら、よくある転職理由、転職を検討する時に重要なポイント、おすすめの転職先などについて解説します。
1. SIerの仕事の再確認
まず、SIerで働くことのメリット・デメリット、将来性について再確認しておきましょう。
SIerで働くことのメリット・デメリット
メリット
SIerでのシステム開発では、コンピューターが普及しはじめた頃から現在に至るまでに長い間で確立された手法や、信頼性の高い汎用的なプログラミング言語を使うことが多いです。そのため、会社を移っても同様のシステム開発であれば、一度覚えた経験やスキルを活かすことができます。また現在はIT関連の開発が多いため、恒常的に仕事があると言えます。
デメリット
SIerでは、企業の業務システムを開発するケースが多く、信頼性が重要視されます。使う技術は、確実性が高い既存のものが多いです。そのためWeb系などに比べると、新しい技術を身につける機会がありません。また、とくに下請けの場合は、システム開発が佳境に入ると納期に追われることが多く、多忙な日々が続きやすい傾向があります。
Slerの将来性
SIerの仕事は、レガシーシステム(業務システム)のクラウド化にともない、将来的には減少すると言われてはいますが、現状ではデジタル化やDXの波が押し寄せているため、減る傾向はありません。また、クラウド移行を支援するSIerも多く、今後も堅調な状況が続くと推測されます。
「SIerはブラック」という声をよく聞きますが、労働環境は企業によって異なります。最近では業界全体の労働環境も改善しつつあり、将来性はあると言ってよいでしょう。
2. 仕事を辞めたいと思った人によくある転職理由
次に、Slerを辞めたいと思った人の転職理由の例をご紹介します。自身がどれに当てはまるのか、辞めたいと思う理由をいま一度確認してみることで、選択すべき転職先が見えてくるはずです。
もっと技術的な仕事をしてスキルアップしたい
「自分はもっと純粋にプログラミングをしたい」「もっと技術をスキルアップできる仕事に携わりたい」という理由が多いです。
プロジェクトの規模にもよりますが、Slerは主にシステム開発のプロジェクトマネジメントとして進捗管理やスケジューリングなどに携わります。また、元請けになると、クライアントの対応を多く求められたり、2次請けの発注先の管理が必要になったりします。技術的な仕事よりも、システム開発の納期・品質・納品物の管理などの事務業務が多くなる傾向がよくあります。
そのため、「プログラミングやIT技術を極めたい」と思って就職した人にとっては、イメージと実際の仕事内容がマッチせず、不満を抱いてしまうことも多いです。
このようなケースでは、より技術力を求められるWeb系企業や独立系SIerなどを検討してみるとよいでしょう。
残業が多い
SIerは、クライアントと契約した納期までに、必ずシステム開発を完了しなければなりません。そのため、テストや修正対応など完成に向けて品質を確保するために、残業や休日出勤もよくあります。納期直前になると、徹夜して仕事せざるを得ない状況も出てきます。
このようなハードな労働環境では、プライベートの時間も取りにくく、仕事を辞めたいという気持ちに繋がることがあります。
この転職理由であれば、比較的スケジュールに余裕があり、残業が少ない大手SIerや社内SEなどがおすすめです。大手SIerでは元請けになることが多く、下請けのSIerに比べると納期が長くなる傾向があります。また社内SEでは、クライアントに相当するのは社内の業務部門となるため、比較的融通がききやすく、長時間残業が続くことは少ないでしょう。
辛抱強さが求められる仕事が多い
システム開発では、設計と開発物のズレが発生すると、クライアントが納得するまで調整が行われます。また、プログラムの品質がよくないと、エラーやバグが多く発生し次々に対応に追われます。テストを何度も繰り返し、すべてのエラーやバグを無くすまで、システムの品質を高めなければなりません。とくにシステム開発の規模が大きいとこれらの量は膨大で、長い時間をかけて根気よく緻密に仕事をこなす必要があります。
このように、すべてのシステム開発で一つのミスもなく完成させるためには、辛抱強さや忍耐力が求められます。この点で「仕事がきつい」と感じる人もいるでしょう。
この場合、とにかく膨大な作業を辛抱強く対処することが多い仕事よりも、クライアントとの会話の中でさまざまなことを企画したり調査をしたりして提案を行う仕事が向いています。発想・考察などが求められるITコンサルファームを検討してみるとよいでしょう。
3. 転職を検討する時に考えるべき重要なポイント
次に、Slerから転職を検討する際に考えるべき、4つのポイントについて解説します。
現時点での自分のスキルやポジションを知る
まず、今働いているSIerの中で、自分のスキルレベルやエンジニアとしての現在地を知ることが重要です。自身のプログラミングや開発手法などのスキルはもちろん、自分がプロジェクト内でどのような立ち位置にいて、どのように貢献しているのかも整理しておきましょう。
SIerでの経験値は日常的に仕事をしているとあまり気づかないものですが、外部の企業からすると貴重なITスキルの可能性もあります。SIerでの経験を自分のストロングポイントとしてアピールできるよう、客観的に把握しておきましょう。
自分が何をやりたいかを明確にする
そして何よりも大切なのが、自分が何をやりたいのかを明確にすることです。「SIerでの経験を活かした仕事をしたいのか?」「新しい経験をしたいのか?」「転職により何を改善したいのか?」などをしっかりと考えましょう。やりたいことが不明確なまま転職に踏み切ると、転職先でも同じような不満を抱えてしまい、また転職を繰り返すことになりかねません。
転職希望先の業務内容をよく知る
転職を検討する際には、当然ながら転職希望先の業務について詳しく調べるべきです。業務内容をしっかりと把握していないと、やりたい業務ではなかった・SIerで培った技術を活かせなかった、というズレがおきかねません。転職を成功させる大きなポイントは、転職前に考えていたイメージと、実際に転職したあとの姿とのズレを少なくすることです。「SIerでの経験を活かせるのか?」「どのような技術を多用するのか?」「本当に自分の興味のある業界なのか?」などできる限り詳細な情報まで確認しましょう。
転職希望先の将来性を確認する
業務内容に加え、転職先の将来性を確認することも重要です。「従業員に対する働き方・従業員満足度・エンゲージメントなどの考え方を持っているか?」「デジタル技術の活用に意欲的か?」などをチェックしましょう。
これらの中で、「そもそも自分が何をやりたいかを明確にする」ことがとても大切です。次章では転職先を選ぶ際に、何をやりたいかによって選ぶ方法と自身のSIerでの経験を活かして選ぶ方法を紹介します。
4. 自分のやりたいことと経験によって転職先を選ぶ
最後に、自分のやりたいことと経験によって転職先を選ぶ方法を解説します。
やりたいことから転職先を選ぶ
IT業界にもさまざまな企業がありますが、やりたいことが明確になると、自ずと選択すべき企業も定まります。まず、やりたいこと別で選ぶべき転職先を見てみましょう。
ITのベース知識を活かして、最新インターネット技術などを使ったWeb系などの方面に進みたい
おすすめの転職先: Web系企業
インターネット上の最新技術を活用するWebサイトなどの仕事に携わりたい方には、Web系企業がおすすめです。Web系企業では、ECサイト・アプリなどで、マーケティングのために最新の技術を使って自社システムの開発を行います。
Webサイトの開発が多く、それに応じたプログラミング言語が必要とされるため、PHP・HTML・JavaScriptなどのプログラミング言語を習得しておくとよいでしょう。
顧客の経営課題などをITの力で解決したい
おすすめの転職先:ITコンサルファーム
クライアントの経営や業務の課題をIT技術で提案し、解決するのがITコンサルタントです。ITコンサルタントは、通常ITコンサルファームに属し、クライアントの悩みに応えるため、幅広い業界・さまざまな業務・ITの知識を活かして課題を解決します。一般的には業務量も多く仕事もハードと言われますが、その分給与は高く、やりがいもあるでしょう。
転職に向けては、IT業界のみならず、各業界のおおまかな知識も必要となります。コンサルタントとしての幅広い知識や知見なども広げるとよいでしょう。SIerと比べて個人の能力が評価や給与などに直結する傾向があるところは留意点です。
自社内のITなどシステム開発にじっくりと携わりたい
おすすめの転職先:社内SE・ユーザー系SIer
社内SEは、一般的には企業内のITシステム部門に所属し、自社のシステムの企画・開発を行います。そのためクライアントに左右されることなく、じっくりと開発に携わることができます。また、ユーザー系SIerでは、主に親会社向けのシステムを開発するため、社内SEと同様の側面があります。
現在のSIerで培った、プロジェクトマネジメントやプログラミング技術などは大いに役立つでしょう。転職先の企業の業務システムや、親会社・系列会社のシステムに携わることが予想されるため、これらの内容をよく確認しておきましょう。
SIerでの経験を活かして転職先を選ぶ
SIerでは、さまざまなスキルが身につきます。転職するなら、せっかくのスキルを活かさない手はないでしょう。ここでは、SIerでのスキルを2つに大別して、おすすめの転職先をご紹介します。
プロジェクトマネジメントなど管理系のスキルを活かしたい
おすすめの転職先:大手SIer・外資系SIer
プロジェクトマネジメントは、文字通りプロジェクト全体を管理し、システム開発を主導します。そのため責任が重く仕事は大変ですが、やりがいもあります。企業規模の大きな大手SIer・外資系SIerなどでは、クライアント・プロジェクトも大規模になる傾向があるため、プロジェクトマネジメントの仕事の機会が多くあります。そのため、プロジェクトマネジメントの経験・スキルを持っていると重宝されるはずです。
転職に向けては、プロジェクトマネジメント手法に関する教材や講習・スクールなどを活用して、さらにスキルを磨くとよいでしょう。
プログラミングなどのスキルを活かして、よりスキルを深めて技術エンジニアとして成長したい
おすすめの転職先:独立系SIer
「さらに技術的なエキスパートになりたい」と思うなら、プログラミングに没頭できる環境が多い独立系SIerがよいでしょう。プロジェクトマネジメントなどの管理系や、クライアントとのコミュニケーションが大手SIerに比べて少なく、プログラミングやテストが多いのが特徴です。
転職の際は、プログラミングの技術スキルが重要視されるため、スキルレベルをさらにアップさせるとよいでしょう。習得には、書籍・オンラインサイト・資格取得・スクールなどの活用をおすすめします。
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