社内SEとは
社内SEとは、自社の情報システム部門で働くシステムエンジニアのことを指します。自社システムの開発・運用・保守およびIT資産の管理などが主な仕事内容です。
また企業によっては、社内のIT環境に関わる予算管理や、社員からのシステム周りに関する問い合わせ対応といったヘルプデスク業務を行います。
社内SEには、企業全体のITインフラを最適化し、社員がスムーズに業務を行えるようサポートする役割があるといえるでしょう。
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大手も含め採用ニーズが増えている
社内SEは、大手企業を含めて近年急激に採用ニーズが増えています。採用ニーズが増える背景にはDX・IT化の急速な推進の影響があるといえるでしょう。IPA(情報処理推進機構)が発表している「DX白書2023」によると、「DXに取り組んでいる」と答えた企業は、2021年は55.8%だったのに対し、2022年は69.3%へと増加しています。
こうしたDX・IT化に向けて、大企業を筆頭に自社内で大規模なIT部門を設ける企業が増加し、社内SEのニーズが高まっています。
また、社内SEの採用ニーズが高まっている理由のなかには、リモートワークを導入する企業が増えていることも挙げられるでしょう。リモートワーク環境を整え、維持するには社内SEなどが社内のIT環境を整備・管理していく必要があります。
社内SEの楽しさや魅力、やりがい
社内SEは人気職種であり、SE(システムエンジニア)からのキャリアチェンジの目標にされるケースも多くあります。社内SEのどのような点が、魅力と思われるのでしょうか。
楽しさや魅力、やりがいを知っておくと、自分のスキルと合致しているか、将来のキャリアパスとして適切かどうかを判断する材料になります。また、入社後の目標を明確にすることができ、モチベーションを高く維持できるでしょう。
ここでは社内SEの人気の理由となる、楽しさややりがいについて詳しく解説していきます。
関連記事:社内SEが「人気・勝ち組の職種」と呼ばれる9つの理由
上流工程に携われる
社内のヘルプデスクなどの業務ではない場合、社内SEはプロジェクトの最上流を担当することが多いです。プロジェクトの要件定義や企画までを自社で行い、開発のみを外部に委託するケースが多くあるため、自身のディレクション能力の向上を図れます。
大企業の場合、分業化によって全体の一部しか関われないこともありますが、中小企業の場合はプロジェクト全体に携わるため、PM・PL的な役割を求められることもあります。
また、社内の他部署や経営層などとの交渉が多いため、経営陣や他部署のキーパーソンとの関係性も深くなるでしょう。
自身の業務による達成感を得やすい
社内SEは、自社の業務フローや業務の課題などを把握しやすい環境にいます。また、社外向け自社サービスの開発をする社内SEではない場合、システムを利用するユーザーは自社社員です。そのため、自身が手掛けたシステムの成果を実感しやすいです。
社内のバックオフィスを担当する社内SEは、現場の声を直接聞く機会も多くあります。現場の不満や要望などを活かして、システムの改善やリニューアルを実施することも可能です。全体的な視野を広く持てる人なら、より高い達成感を得られるでしょう。
SEよりは残業が少なめ
SE(システムエンジニア)は、スケジュールが厳しく納期が近くなると残業をしなければならない企業もあります。
一方で、社内SEはクライアントが自社内のため、開発スケジュールを無理なく作成でき納期には追われにくいです。もちろん急なシステムトラブルやプロジェクトの進捗状況によっては定時で帰れないことはありますが、それでもSEと比較すると残業が少なめで、仕事と生活のバランスが取りやすいといわれます。
また、自社内にユーザーがいるため、コミュニケーションが取りやすい点も残業が少ない理由の一つです。社内ユーザーから直接要望を汲み取りやすく、システムが差し戻される手間も少ない傾向があります。これにより、残業する要素が少ないといえるでしょう。
関連記事: 社内SEが「楽な職種」と言われる5つの理由
社内SEの仕事内容
社内SEの主な仕事内容は、経営戦略に基づいたシステムの企画、自社内のシステム開発、運用・保守などが挙げられます。また、社内の問い合わせに対応することも業務の1つです。社内SEは、企業のIT環境を安定させるために欠かせない役割を担っています。
企業によっては、システム部門の予算管理やヘルプデスク業務、セキュリティ対策も任される場合があるため、社内SEを目指す際には、仕事内容が希望する業務であるか事前に確認しましょう。
ここでは社内SEの仕事内容について解説していきます。
関連記事:社内SEへの転職は難しい?人気の理由や転職のポイントを解説
システム部門の予算作成・管理
社内SEの仕事の1つに、自社のシステム部門の予算作成および管理があります。社内でシステム開発をする場合は、あらかじめ年間または期末ごとの予算作成が必要です。
また、開発業務を外部委託するケースでは、開発プロジェクトの概算費用から予算を立案しなければなりません。作成した予算と実際に発生したコストを比較して、コストが超過している場合は、是正措置をするなどの予算管理も行います。
システムの企画
経営戦略やIT戦略に基づいて、経営課題を解決するシステムの企画も社内SEの仕事の1つです。
仕事の流れとしては、社内SEがシステム化する業務の分析を行い、システム化の範囲を決めます。そして、スケジュールや予算を作成し、決裁者に提案(稟議)をします。決裁者に企業の利益になると理解してもらうため、システム化の目的と効果を明確にすることが重要なポイントです。
システム開発
社内SEとしてシステム開発する場合は、システムの設計・開発・テストなどを行います。システム部門の人数が少ない企業では、システム開発をすべて外注に任せるケースも少なくありません。
また、AIシステム開発など専門性の高い技術力を要する場合も、システム開発を外注することが多くなります。開発を外注する場合、社内SEは進捗管理や品質管理などのマネジメント業務を担当します。
システムの運用・保守
社内システムに障害が起きないように、保守・運用をすることも社内SEの仕事です。サーバーやネットワークを監視して、問題が起きた場合はトラブルシューティングやシステム修正をします。さらに、システムを使用する社員からの要望があった場合、システムの改善・修正作業を行うのも業務の一つです。
また、社内のミドルウェアやハードウェアの使用期限を管理し、必要に応じて、製品の買い替えやアップデートも行います。
ヘルプデスク(問い合わせ対応)
社内システムやオフィス機器、パソコンやOffice製品の使い方など、社員からの問い合わせ対応も社内SEの仕事です。社内システム上で起きたトラブルやバグなどへの質問や対応を行います。
また、PCのセットアップ、OSのインストール、メールの設定など、社員がIT機器を快適に利用できるようにサポートすることも業務の一部です。
関連記事: 社内SEとヘルプデスクの違い
セキュリティ対策
企業のシステムには、個人情報など重要な情報が保有されているため、セキュリティ対策は不可欠です。個人情報漏洩などのセキュリティ事件は、増加の一途でセキュリティリスクは高まり続けてます。セキュリティソフトの進化とともに、不正アクセスなども巧妙化が進んでいるため、厳重な注意が必要です。
社内SEは、セキュリティソフトの導入やパスワード管理、定期的な診断サービスの利用や社員へのセキュリティ意識への啓蒙など行い、社内のセキュリティ強化を促す役割もあります。
社内SEが扱う代表的な社内システム
社内SEが扱う社内システムは、「基幹システム」「業務システム」「情報システム」の大きく3つに分類されます。社内SEは、このような社内システムを開発したり、運用したりするのが仕事です。
ここでは、この3つのシステムの概要やどのような業務に用いられるのか解説します。
基幹システム
基幹システムとは、企業の基幹となる業務を管理するシステムです。基幹業務とは、事業の中心になる業務のことで、会計・販売・在庫・人事・給与・生産管理などが挙げられます。
基幹システムを構築・運用することで、このような業務を効率化できるでしょう。近年はERPシステム(統合基幹業務システム)として、業務の統合管理化が進んでいます。
業務システム
業務システムとは、その名の通り業務に使用するシステムのことです。例として、営業支援・BI/DWH・電子商取引・個別原価管理システムなどが挙げられます。業務システムは、特定の業務に特化したシステムの開発が可能です。
また、基幹システムも業務に使用するシステムであることから、混同して表記される場合もあります。
情報システム
情報システムとは、社内外のコミュニケーションや情報共有をスムーズにするために利用されるシステムです。また、総務や人事のバックオフィス業務に扱われるシステムも含まれます。たとえば、社内チャットツールやグループウェアなどです。
情報システムは基幹システムと異なり、システムが停止しても業務が停止することはありません。あくまで、業務を効率化・円滑化するものとして存在します。
社内SEとシステムエンジニア(SE)の違い
社内SEとSE(システムエンジニア)はどちらもエンジニアですが、自社のシステム開発や運用をする社内SEと顧客が求めるシステム開発を行うSEでは、違いが多々あります。
ここでは、社内SEとSE(システムエンジニア)の違いについて解説します。職種の定義や業務範囲、携わる期間など、多角的な視点で違いを比較しているので参考にしてみてください。
関連記事:社内SEとSEの違いは?仕事内容や必要スキルを徹底比較
職種の定義
社内SEは、企業に所属して社内システムの開発や運用、保守を行うSEを指します。一方SEは、SIerなどに所属しクライアントのシステム開発や運用、保守を担う職種です。また、SIer企業の中には自社パッケージ製品を持つ企業もあるため、SEはクライアントのシステム開発だけでなく、自社サービスの開発も行う場合があります。
業務範囲の違い
社内SEは、自社のシステムを専門に扱うため、その範囲は自社に密着しています。自社システムの開発、運用、保守、管理などが主な仕事内容です。また、社員からのITに関する問い合わせにも対応します。
SEは、さまざまな企業のシステム開発に関わるため、業務範囲は非常に広いです。顧客の要望ヒアリングやシステム設計、開発、プロジェクトの管理などを行います。
社内SEとSEは、業務範囲の広さに大きな違いがあるといえるでしょう。
業務に携わる期間の違い
社内SEは、自社システムの運用・保守に携わるため、長期的に同じシステムに関わるのが一般的です。一方、SEは、受注したプロジェクトが終わると別の顧客の案件を担当します。
SEの案件は、短ければ数ヶ月で変わることが珍しくありません。長期的に同じプロジェクトに携わりたいと考えている方は、社内SEがおすすめです。
SESやSIとの違い
社内SEは自社内のシステム開発や運用保守を行いますが、SESやSIはクライアント企業から委託されたシステム開発などを担います。
SESはシステムエンジニアリングサービスの略で、クライアントにSEを派遣するサービスです。SIはシステムインテグレーションの略で、顧客が使うシステム構築を請け負うサービスのことをいいます。
SESやSIのエンジニアは客先常駐などもありますが、社内SEとは属している企業が違います。
社内SEに必要なスキル
社内SEの業務は多岐にわたるため、幅広いスキルが求められます。
たとえば、IT戦略に関するシステム導入を行う際には、企画に関するスキル、システム開発や運用業務にはプログラミングやテストのスキルが必要です。システム開発を業務委託する場合はマネジメントスキルなどが求められるでしょう。また、分業か兼業かによっても求められるスキルは変わります。
ここでは、需要の高いスキルに絞り込み説明をします。社内SEへの就職や転職を目指す方は、これらのスキルを身につけることがおすすめです。
関連記事:
社内SEに必要なスキル!SEとの違いや役立つ資格も解説
社内SEになるには?求められるスキルや資格を解説
予算管理に関するスキル
社内SEは、自社のIT環境を管理するだけでなく、システム導入や開発にかかる費用を管理する役割も担うため、予算管理に関するスキルは必要です。特に基本的な簿記の知識があると良いでしょう。予算管理は、B/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)、C/S(キャッシュフロー計算書)などの財務諸表を理解していることが前提です。その上で、費用科目と資産科目に分けて予算管理をします。
関連記事:社内SEが簿記を取得するメリットは?勉強方法なども紹介
企画に関するスキル
社内システムの企画をするには、対象となる業務の調査・分析を行う必要があります。そのため、関連する業務知識と社員から課題を聞き出すコミュニケーションスキルが必要です。費用対効果の計算やプロジェクトの進行案や企画書の作成も行うため、ITコンサルタントに近いスキルも求められます。
また、リーダー職になると、業務課題の解決方法の計画・立案を任せられることもあるでしょう。スキルを身につけるには、ITコーディネータ試験などを活用するのも一つの手です。
システムの開発・運用・保守に関するスキル
システム開発をするためには、設計、プログラミング、テストのスキルが必要です。自分自身に開発経験・スキルがないと、開発を外注する場合でも見積もりや納品物のチェックができません。
運用・保守の場面では、システム監視ツールやセキュリティソフトを扱うスキル、インフラやネットワークの運用・保守スキルが必要になります。
ヘルプデスクに関するスキル
自社システムを扱うスキルも、社内SEには必要です。また、社員からの問い合わせに対応するため、Windows OSやOffice製品、グループウェアなどを扱うスキルも必要になります。ユーザーが使う操作に詳しいだけでなく、アカウント管理など管理者機能も把握しておくとより市場価値の高い社内SEに近づくでしょう。
顧客対応やマネジメントのスキル
顧客対応やマネジメントのスキルがあれば、社内SEの仕事に役立ちます。社内SEといえど、社外の人間と関わらないわけではありません。開発を外注する際のベンダー対応、自社の経営層対応、システム部門の人材のマネジメントなどに使えるでしょう。社内SEはコミュニケーションやマネジメントを積極的に行う必要があります。
業務知識・業界知識
社内SEの目的は、経営上の課題解決であるため、業務知識や業界知識を持つことは非常に重要です。自社が行う業務の知識があれば、的確に改善・修正すべきポイントが分かるでしょう。また、業界の知識があれば、取り巻く環境やビジネス構造を理解し、適切に経営戦略をシステムに落とし込めます。
深い業務知識・業界知識を持つ人は、重宝されるでしょう。
社内SEに向いている人
社内SEに向いている人の特徴として、「相手のレベルに合わせて丁寧かつ分かりやすく説明できる」「フットワークが軽く多種多様な作業を並行して処理できる」が挙げられます。
社内SEの場合、クライアントとなる相手のITリテラシーが一定とは限りません。そのため、社内SEに向いている人は、PCやネットワーク、IT関連の専門用語を相手のレベルに合わせて丁寧かつ分かりやすく説明できる人や、それが面倒だと感じない人が当てはまります。
また、所属する企業や職務領域によっては、「ITのなんでも屋」になることがあります。社内インフラの整備やPC設定・マクロ作成など多種多様な依頼を受けなくてはなりません。そのため、さまざまな業務を行うことが好きな人は、社内SEに向いているといえるでしょう。
社内SEに不向きな人
社内SEに不向きな人の特徴は以下の3つが挙げられます。
-
・相手のレベルに合わせて説明するのが面倒
・さまざまななことをやりたいと思っていない
・開発をメインにしたい
まずシステムに慣れていない人に対しての説明を避けたい人は社内SEに不向きです。
また、開発をメインにしたい人にも社内SEは合わないでしょう。社内のシステムはベンダー企業に依頼して開発する場合が多いため、自分で手を動かして開発してスキルを身につけていきたい人は、社内SE以外のエンジニアを選んだほうが良いでしょう。
社内SEの業務や転職に役立つ資格
社内SEの仕事に資格は必須ではありません。しかし、資格取得を通じて、体系的に知識やスキルを身につけられます。また、資格取得によりスキルを客観的に証明することが可能です。
ここでは、社内SEの業務や転職に役立つ資格について、企画業務、開発・運用・保守業務、ヘルプデスク業務の3つの面から紹介します。社内SEへの転職を目指す方は、是非とも取得を検討してみてください。
関連記事:社内SEの仕事・転職に役立つおすすめ資格27選
企画スキルの習得に役立つ資格
社内SEは、経営戦略に基づいたIT戦略を企画、提案する仕事です。企画スキルが上がれば、社内で高く評価される可能性も上がります。企画に関連する資格の習得に向けて勉強することで、IT戦略に関する知識などを体系的に学ぶことができるでしょう。
企画スキルの習得に役立つ資格は、「ITストラテジスト試験」や「ITコーディネータ」などです。以下で詳しく説明していきます。
ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する高度情報処理技術者試験の1つです。ITスキル標準のスキルレベル4に相当する難関資格で、経営戦略に基づいたIT戦略の策定やプロジェクト化する知識が問われます。
この資格を取得することで、自社の戦略に基づいてIT企画を作成する際に役立つでしょう。難関資格のため、リーダー職レベルの経験を積んでから受験するのがおすすめです。
ITコーディネータ
ITコーディネータは、経済産業省が推進してITコーディネータ協会(ITCA)が実施する資格です。IT経営の基礎的な知識から経営戦略、プロジェクトマネジメントまで専門的な知識を「IT経営推進プロセスガイドライン(PGL)」に沿って問う試験になっています。この資格を受験することで、IT戦略やIT企画などのスキルを体系的に学べるでしょう。
開発・運用・保守スキルの習得に役立つ資格
自社システムの開発・運用・保守は、社内SEの代表的な業務の一つといえます。社内SEの業務には、システム開発・運用・保守のスキルは必要不可欠です。
開発・運用・保守スキルの習得に役立つ資格は、「ITパスポート試験」「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」「ITサービスマネージャ試験」「情報処理安全確保支援士」などが挙げられます。基礎的な試験から専門的な試験まで順に紹介するので参考にしてみてください。
ITパスポート試験
ITパスポート試験はIPA (情報処理推進機構)が実施する国家試験です。国家試験といっても難易度は低く、ITの基礎中の基礎の内容が問われます。後述する基本情報技術者試験とは内容的に重複する部分も多いでしょう。基本情報技術者試験はITパスポート試験に思考が伴う問題をプラスしたイメージです。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、IPA (情報処理推進機構)が実施する国家試験です。コンピュータやシステムの仕組み、データベース、ネットワーク、セキュリティなどの基礎知識などが問われます。IT業界で従事する方やIT業界を目指す方に人気の試験です。
この試験を受験することで、ITエンジニアにとって、必要な基本的な知識を体系的に学習できます。社内SEを目指す方は、まずこの資格を取得すると良いでしょう。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、IPA (情報処理推進機構) が実施する国家試験です。基本情報技術者試験をさらに一歩踏み込んだ内容になっています。1つひとつの問題は基本情報技術者試験よりも難易度が高いですが、問題を選択できる余地が大きいです。基本情報技術者試験は満遍なく回答する必要がありますが、応用情報技術者試験は得意分野を選んで回答できます。
ITサービスマネージャ試験
ITサービスマネージャ試験は、IPA (情報処理推進機構) が実施する国家試験です。スキルレベル4に該当する難関資格で、高品質なITサービスを安定的に提供するための知識が必要です。システムの運用・保守における、障害対応やシステム改善などの場面で役立ちます。
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験は、IPA (情報処理推進機構)が実施する国家試験で、スキルレベル4に該当する難関資格です。もともと情報セキュリティスペシャリストだった試験が情報処理安全確保支援士試験になりました。
試験内容としては、情報セキュリティマネジメントやセキュリティインシデントに関する専門的な知識が問われます。挑戦することで、セキュリティ対策の業務に役立つ知識を身につけられるでしょう。
ヘルプデスクのスキル習得に役立つ資格
社内SEは、社員のシステムに関する問い合わせなどに対応するヘルプデスク業務を行う場合もあります。システムへの問い合わせだけでなく、PC環境や周辺機器に関しても質問されることがあるため、社内で使用している機器への理解が必要です。
ヘルプデスクのスキル習得に、「マイクロソフトオフィススペシャリスト」などの資格が役立つでしょう。以下で詳しく解説します。
マイクロソフトオフィススペシャリスト
Microsoft Office Specialist(MOS)は、オデッセイコミュニケーションが提供している民間資格です。マイクロソフトのOffice製品のスキルを証明することができます。業務において、Office製品を活用している企業は多く存在します。社員からのOffice製品の質問は日常的にあるため、ヘルプデスク業務をする場合は役立つ資格です。
社内SEのキャリアパス
社内SEへの転職を検討している方は、その先のキャリアパスについて知っておくと、より明確に自身の将来を設計できるでしょう。
ここでは、社内SEのキャリアパスについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。また、社内SEから他企業の社内SEとして転職するキャリアパスは割愛しています。
関連記事:社内SEのキャリアパス!具体例やキャリアアップ転職のコツを解説
マネージャーとしてキャリアアップする/転職する
社内SEのキャリアパスには、マネジメントスキルを身につけて、マネージャーへキャリアアップする道があります。システム部門のマネージャーがいない企業も多くあるため、このキャリアパスはマネージャーとしてのポジションがある企業に所属していることが前提です。
マネージャーへのキャリアアップは、プロジェクトマネジメントスキルやIT戦略、IT企画スキルを身につけることをおすすめします。
ほかのエンジニア職へ転職する
社内SEは、ネットワークやデータベース、サーバーなどさまざまな領域のITを扱います。そのため、インフラエンジニアなどほかのエンジニア職へ転職しやすい職種です。
しかし、社内SEはエンジニアの中でも、専門的なスキルを求められる職種ではないため、ほかのエンジニア職へ転職するためには、シェアの高いベンダー資格などでスキルを補うと良いでしょう。
ITコンサルタントを目指す
ITを活用して企業の経営課題を解決する専門家であるITコンサルタントも、社内SEのキャリアパスの1つです。社内SEはITスキルだけでなく、業務知識やプロジェクトマネジメントスキルなども業務を通して身につきます。
そのため、ITコンサルタントは社内SEにとって、目指しやすい職種です。ITコンサルタントになるには、IT戦略の立案や企画などの実務経験を積むと良いでしょう。
レバテックキャリアアドバイザー 原から一言!
社内SEの業務内容は企業によってさまざまですが、開発は外注し、自分でコードを書かなくなるケースが多いです。そのため、自分で手を動かして開発を進めるような業界へのキャリアチェンジは比較的難しくなります。
対して、管理やマネジメントの経験は早期から積むことができるので、その経験を活かしてSIerやITコンサル系の企業に転職するケースは比較的存在する印象です。
事業会社の社内SEの場合、業界知識が得られるので、例えば金融系の社内SEから金融系の案件に強みのあるITコンサルに転職する、といったキャリアが考えられると思います。
社内SEに就職・転職するために知っておくべきこと
社内SEは人気職種であるため、就職・転職の競争倍率も高い傾向にあります。社内SEへの就職・転職を成功させるには、スキルの習得や資格の取得、一定レベルの実務経験が重要です。実務経験としては、プロジェクトマネジメントやシステム開発の上流工程などの経験が望ましいでしょう。
ここでは、社内SEに就職・転職するために知っておくべきことについて解説します。
社内SEは人気職種であり倍率が高い
SIerがSEを大量募集するケースは多くあります。しかし、社内SEは企業内のIT関連業務をカバーするために必要な人数しか設けられないので、大量募集がほぼありません。また、社内SEは自社内で働くため、雇用が安定している傾向にあることや、社内のさまざまな業務に関わることで幅広いスキルを習得できることなどの理由から人気な職種といえます。そのため、需要に対して求人数が追いつかず、競争倍率は高いのが現状です。
未経験から社内SEへの転職は難しい
IT業界やエンジニア未経験から社内SEに転職することは、非常に厳しいでしょう。社内SEの求人には「未経験可」の記載があるケースも多くありますが、この場合の未経験は「社内SEは未経験だが、エンジニアとしての経験はある」という意味です。
さらに、社内SEはIT業界でも人気のある職種であるため、現役エンジニアの転職希望者も多く存在します。そのため、IT未経験・エンジニア未経験の人が、社内SEへの転職を成功させることは非常に厳しく、努力が必要です。
関連記事:未経験から社内SEになるための6つのポイントとは
未経験で社内SEになる方法
未経験で社内SEになる方法には、以下のような準備や活動があります。
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・ITの基礎知識や社内SEの仕事に必要な最低限のスキルを身につける
・基本情報処理技術者などの資格を取得する
・未経験可の求人情報に応募する
・自社に情報システム部門があるなら異動希望を出す
基礎的なIT系の知識を備えていても、社内SEの仕事に必要な知識やスキルが不足していれば、それを補う勉強をしましょう。
文系や新卒で社内SEになれる
文系や新卒でも社内SEになれます。社内SEには技術的な知識、スキルだけでなく、コミュニケーション能力などの対人スキルも重要です。対人スキルがあれば、学生時代のうちから業界知識やIT知識を身につけることで社内SEに必要な知識とスキルをある程度網羅できます。
しかし、社内SEは募集が少なく、新卒での採用は難しいことを理解しておきましょう。
新卒におすすめの企業
社内SEといっても、所属する企業の特徴はさまざまです。おすすめの企業は、その人が何を求めるかによって変わってきます。たとえば、新しいことにチャレンジしたい人はベンチャー企業が良いでしょう。働きやすさを重視する人は福利厚生が整った企業が良いです。
高収入を目指すなら大手企業をおすすめします。社内SEになるならどのような企業が良い、という決まりはありません。また、企業そのものだけでなく、システム部門がどのような状況か、どのような人が働いているのかも当然重要です。外部から把握しきれない部分も多いですが、可能な限りリサーチするのがおすすめです。
社内SEの転職求人例
社内SEへの転職を検討している方は、実際に募集されている求人をチェックすることをおすすめします。実際の求人を見ることで、求められる業務内容やスキル・経験を把握でき、自分が希望する業務内容や持つスキルと比較が可能です。
ここでは、社内SEの転職求人例を紹介します。社内SEに転職を目指す方は、参考にしてみてください。
社内SE経験者向けの求人例
社内SE経験者の方は、より良い条件を求めてキャリアアップ転職へ挑戦する方が多い傾向にあります。現職の状況などと比較し、精査していくと良いでしょう。また、経験やスキルなどは満たしている場合が多いので、実績などを踏まえてアピールすることが可能です。
社内SEの経験者向け求人には、以下のような求人があります。
【社内SE】社内SEの専門部署の新規立ち上げとマネジメント
社内SEの新規部署の立ち上げとマネジメントに従事する求人例は以下の通りです。
【想定年収】
600~800万円
【業務内容】
・拠点内の共有資産(PC/サーバ/NW)の運用管理
・事業部および本社からの意見聴取/要望取り纏め/支社内のIT施策の決定、実施
・上記業務における業務改善の立案/実行
・情報セキュリティ委員会の統括チームに参画し、認証しているISMS(ISO/IEC27001)審査対応
ゆくゆくは下記もお任せします。
・組織マネージャとして、拠点の情報システム部門を立ち上げる役割
・組織拡大を検討しているため、組織の新たな要員の採用も担当
【必須条件】
<経験>
・マネジメント経験
・社内SEとして企画立案、改善活動のアイデアを持って推進できる方
・社内SEとして自社環境の運用設計のご経験
<マインド>
・コミュニケーションを円滑に取れる方
【社内SE】社内ネットワークの構築、運用
社内ネットワークの構築や運用に携わる社内SEの求人例は以下の通りです。
【想定年収】
400~650万円
【業務内容】
・社内ネットワークの運用
・ヘルプデスク、問い合わせ対応
・アカウント管理(G Suite/Office365など)
・PC、モバイル端末のセットアップ
・IT資産管理
・手順書、ドキュメント作成
【必須条件】
<経験>
・社内ネットワークの構築、運用経験(1年以上)
・ヘルプデスク経験(1年以上)
<マインド>
・誠実な方
・業務に必要なコミュニケーションをしっかり取れる方
社内SE未経験でも応募できる求人例
社内SEの募集求人の中には未経験可の求人も存在します。中途採用の場合の未経験とは、「IT業界経験/エンジニア経験はあるが、社内SEは未経験」を指す場合が多いので注意が必要です。社内SE未経験でも必要なスキルや意欲があれば、採用される可能性は十分にあるので、まずは募集要項をしっかりと確認しましょう。
社内SE未経験でも応募できる求人には、以下のような求人があります。
【社内SE】ネットワーク再構築PJ推進
社内ネットワークの再構築や社内システムにおけるプロジェクトマネジメントを担う社内SEの求人例は以下の通りです。
【想定年収】
500~800万円
【業務内容】
・新規NW構築案件におけるベンダー選定、技術選定、プロジェクトマネジメント
・運用設計 など
今回のプロジェクトをはじめ、今後の事業基盤変革にも携わっていただく予定です。
【必須条件】
<経験>
・事業会社やSIerなどでの、ネットワークの設計構築経験5年以上
<マインド>
・責任感を持って業務に取り組める方
・コミュニケーション力がある方
【社内SE】ポテンシャル採用/事業成長に必要なシステム開発やテクノロジーの新規導入
ポテンシャル採用における、社内システムの開発やテクノロジーの新規導入を担う社内SEの求人例は以下の通りです。
【想定年収】
400~600万円
【業務内容】
主な業務は、社内システム開発です。エンジニアとして、事業成長に必要なシステム開発やテクノロジーの新規導入はもちろん、データ分析基盤の構築と分析に基づくシステム改善までをリードするのがミッションです。
業務は企画立案~設計・開発・技術サポートまで含めて、ビジネスメンバーと二人三脚で行っていただくものもあれば、基幹システムの一機能の開発を同時並行で担当していただく場合もあります。
【必須条件】
・何らかのオープン系言語(Java・C#・PHPなど)を用いたシステム開発の経験2年以上
・開発/実装だけでなく、サービスそのものを成長させることに意欲的な方
・課題解決のために必要な領域の技術を積極的に学習し、取り入れる意欲のある方
・単に与えられた要件で完結するのではなく、自ら必要なことを考えて実行できる方
社内SEの給料・平均年収
レバテックキャリアの求人によると、社内SEの平均年収相場は635.5万円になります。社内SEは業務範囲が広いため、それに伴い年収の幅が広いです。自身のスキルに合った求人を参考に、想定年収を確認すると良いでしょう。
システム開発の上流工程や経営に近いポジションであれば、年収1000万円を超える高年収が期待できます。一方で、保守運用やヘルプデスクがメイン業務の社内SEの求人は、年収が低めに設定される傾向があるでしょう。
「社内SEは辛いからやめとけ」といわれる理由
社内SEは人気職種ですが、転職した人が全員成功するとは限りません。理想と現実とのギャップが原因で苦しみ、「社内SEはやめとけ、おすすめしない」と主張する人もいるでしょう。ここでは転職で失敗をしないように、社内SEのデメリットといわれる部分について解説します。転職を検討する前の参考にしてみてください。
関連記事:社内SEのメリット・デメリットは? 院内SEも含めて解説
社内調整でストレスを感じることがある
社内SEは、自社の社員がクライアントになることが多いです。仕事を進めるにあたって、関連部署へ協力を仰ぐことも多くあり、利害関係の調整や折衝がある場合には、根回しが必要です。
そのため、高いコミュニケーション能力が求められます。開発業務だけに向き合いたい人が社内SEになると、社内調整がストレスになる可能性があるでしょう。
業務で新しいスキルを身につける機会が少ない
大規模なシステム開発は、社内SEがいる会社でもSIerなどに外部委託することが多くあります。その場合、社内SEの役割は、プロジェクトマネジメントやベンダーコントロールが中心です。
この経験は、ディレクション能力やマネジメント能力を磨けるメリットがあります。その一方で、新しい開発に関する技術を実務で身につける機会が減ることがデメリットです。
楽さを求めると後悔する可能性も
開発スケジュールがタイトになりにくいため、残業が少なめです。社内SEに楽さを求めて転職を望む人も多くいますが、社内SEは決して楽な仕事ではありません。
特に中小企業の社内SEは、兼業でヘルプデスクやセキュリティ対策、システム開発のプロジェクトマネジメントなどの複数業務を担当することがあります。そのため、業務範囲がSEよりも幅広くなります。
自分のやりたいことや適性が求人内容と一致するかを見極めて、転職後に後悔がないように転職活動をしましょう。
社内SEに関するよくある質問
社内SEは転職市場において、非常に人気の高い職種です。社内SEへの転職を検討している方や興味を持つ方の中には、人気の理由や役立つスキル、システムエンジニアとの違いや年収について知りたい方が多いようです。
ここでは社内SEに関するよくある質問について回答しています。類似の疑問を持つ方は参考にしてみてください。
Q1. 社内SEは「楽しい」「勝ち組」といわれる理由は何ですか?
社内SEが「勝ち組」といわれる理由として、一般的なSEと比較して残業が少なく、ワークライフバランスを取りやすい点があります。大手企業の社内SEは雇用や給与の面でも安定しているという点も、理由として大きいです。ただし、社内SEの仕事は決して楽ではないことは認識しておきましょう。
Q2. 社内SEへの転職に英語力は役立ちますか?
英語力を必要とする求人であれば役立つでしょう。英語力が必須要件になっている求人として、海外に拠点を持っているような大手企業や製造業、外資系メーカーなどの社内SEの求人があります。また、英語でのコミュニケーションが得意なエンジニアは、まだまだ少ないため、選考の際の差別化要素として武器になります。
Q3. 社内SEとシステムエンジニア(SE)の違いは何ですか?
社内SEは主にIT以外の業界のシステム部門で働くエンジニアを指します。エンジニアといっても開発が中心ではなく、社内のシステム整備などの業務が多いです。一方で、SEはベンダー企業でシステム開発を行います。社内SEがシステム開発を行う場合、ベンダー企業に依頼し、SEが開発するといった関係性です。
Q4. 社内SEの平均年収はいくらですか?
レバテックキャリアの求人によると、社内SEの平均年収相場は635.5万円程度です。社内SEは業務範囲が広いため、担当する業務によって年収に幅があります。スキルが高ければ高いほど、高年収を目指せるでしょう。自身のスキルに合った求人を参考に、想定年収を確認することをおすすめします。
まとめ
この記事では、社内SEの仕事内容や必要なスキル、役立つ資格、キャリアパスについて解説しました。社内SEの仕事内容は多岐にわたり、年収も異なります。社内SEは転職市場において非常に人気な職種で、競争倍率が高いです。
人気職種でありますが、もちろん社内SEにも仕事の大変さや精神的な負担が存在します。そのため、自分の希望が求人内容と一致するか見極めることも重要です。メリットだけでなくデメリットも踏まえた上で、社内SEへの転職活動を進めましょう。
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