- インフラエンジニアにAWSスキルが求められる理由
- インフラエンジニアがAWSスキルを身につけるメリット
- AWSとは
- AWSでできること
- AWSエンジニアの仕事内容
- AWSを扱うインフラエンジニアに必要な知識とスキル
- AWSのスキルを習得するための学習方法
- AWSエンジニアとして活躍するうえで役立つ資格
- AWSエンジニアの年収・将来性
- まとめ
インフラエンジニアにAWSスキルが求められる理由
これまでインフラエンジニアは、自社内でサーバーやネットワークなどのインフラを構築する「オンプレミス」のスキルが求められていました。しかし近年では、インフラ環境をインターネット上から利用する「クラウド」への移行が進んでいます。特に、Amazonが提供するクラウドサービス「AWS」は高いシェアを持ち、インフラエンジニアにもAWSスキルが求められています。
ここでは、インフラエンジニアがAWSスキルを求められる理由について解説します。
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インフラ環境がオンプレからクラウドへと変化しているため
近年では、インフラ環境がオンプレからクラウドへ変化しています。自社でサーバーを構築してアプリケーションの稼働環境などとして利用するのではなく、クラウドサービスを利用するケースが増えています。その中でも、特に利用されているのがAWSです。
クラウドの業界動向
総務省の「令和3年通信利用動向調査の結果」P.6によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業は2018年に58.7%、2019年に64.7%、2020年に68.7%、2021年には70.4%と年々増加の一途をたどっています。また、クラウドサービスの効果は「効果があった」と回答する企業は88.2%となっており、今後も継続してクラウドサービスの利用が進むことが予想されます。
クラウドサービス事業者のシェアでは、米調査会社Synergy Research Groupの2022年第3四半期の調査では、AWSが約34%でトップ、2位はMicrosoft、3位はGoogleが続いています。クラウド市場は世界でも拡大が拡がる中で、AWSは安定して高いシェアを誇っています。
このことから、IT業界では「オンプレミスからクラウドへ」という動きが続いているなか、AWSは常に高いシェアを維持し続けていることがわかります。このため、インフラエンジニアでもクラウドのスキル、とりわけAWSのスキルが重要視されているのです。
インフラエンジニアがAWSスキルを身につけるメリット
前述のAWSスキルが求められる理由から、AWSスキルを持ったエンジニアは需要が高いことがわかります。さらに、より具体的にAWSスキルを身に着けるメリットについて紹介します。
AWSのスキルを身に着けることは、インフラ構築における有望な選択肢を増やすことに繋がります。インフラの設計では、複数の技術的な選択肢から最も適した組み合わせを行うことが求められます。その際に、クラウドサービスを利用する選択肢を持つことは重要です。
クライアントへの提案においても、クラウドという選択肢を提示することができるようになるため有用です。AWSはクラウドの中でも代表的なサービスのため、クラウドとオンプレ比較などで根拠としやすいメリットもあります。
また、エンジニア自身にとってはスキルを習得することで市場価値を高めることが可能です。AWSはクラウドサービスのシェアNo.1のため、スキルを持つエンジニアが求められるケースが多いためです。
さらに、AWSのスキルを持っていることで企業からのオファーがきやすくなる点もメリットに挙げられます。AWSが採用されるプロジェクトにおける人材として、スキルの保有者という条件で企業がエンジニアを探しているためです。
AWSとは
AWSはAmazonが提供しているクラウドサービスで、2006年にリリースされました。仮想サーバーを提供するEC2やデータベースを提供するRDSなど多岐に渡るサービスがあり、その総数は200を超えています。(2023年2月11日時点のAWSサイトでのすべてのAWSクラウド製品の件数より)
日本国内でも高いシェアを持ち、大規模ウェブサイトや大手家電メーカーの画像認識システムの開発など、さまざまな企業で活用されています。
企業がAWSを利用するメリット
AWSを利用するメリットはさまざまなものがありますが、主に以下のポイントが挙げられます。
-
・小規模システムから大規模システムまで、さまざまなシステムに活用できる
・業界屈指の高機能・高性能を維持している
・世界中にデータセンター(リージョン)があり、BCPの観点から安全性が高い
・世界最先端の開発力を持ち、サービス改善や機能追加が高速
・eラーニングなどの教育コンテンツが充実しており、スキル習得がしやすい
・提携しているSIerが多く、AWSを活用した開発、運用、保守を外注しやすい
・利用者が多いことから技術的な情報を収集しやすい
AWSでできること
AWSのソリューションは非常に多岐にわたります。しかし、これらすべてを知っておくのは非常に難しいです。まずは、インフラエンジニアが担当する仕事内容と関連の深い、以下のサービスを最低限押さえ、AWSでできることを把握しましょう。
AWSが提供するソリューションでは、200以上のサービスが提供されています。ここでは、その中でも主要なサービスについて解説します。
仮想サーバー環境の構築・運用
AWSでは、EC2というサービスを利用して仮想サーバーを構築・運用できます。インスタンスという単位で仮想サーバーを構築し、インフラ環境を構成することが可能です。料金プランは複数あり、立ち上げている時間によって料金が発生する「オンデマンドインスタンス」、事前に稼働期間を決めておく「リザーブドインスタンス」などがあります。
EC2は、物理的にサーバーを構築する時と比べ、大幅に構築時間を短縮できます。また、CPUやメモリ、ディスクなどのリソースを自由に決められるだけでなく増設も簡単にできるため、イベントなどで一時的に増強したい場合にも柔軟に対応できます。
データ保存
AWSではオンラインストレージサービスとして、Amazon Simple Storage Service(S3)が提供されています。S3は99.999999999%の高い可用性、容量無制限でデータが保存可能、使用量に応じて課金される従量課金制という特徴があります。
S3は主にデータバックアップやアーカイブの保存に使用します。例えばオンプレ環境で稼働しているシステムのバックアップ、データの長期保存です。その他、ビッグデータ分析やクラウドストレージ(ファイルサーバー)といった使い方も可能です。
コンテンツの配信
S3に静的コンテンツを保存して配信できるほか、動画やアプリケーションを迅速・安全に配信できるコンテンツデリバリサービス「Amazon CloudFront」があります。
CloudFrontは世界中に設置されているエッジサーバーにより、低いレイテンシーでコンテンツを提供できます。これによりライブ映像などの動画配信もユーザーはストレスなく利用できます。また、トラフィック分散により高い信頼性を実現しています。
CloudFrontは高いセキュリティ機能が備わっています。階層化されたセキュリティによりDDoS攻撃をはじめとした外部からの攻撃に対応できるほか、独自SSL証明書の作成、アクセス制限なども利用できます。
データベース活用
AWSでは、リレーショナル型データベース「RDS」が提供されています。ストレージ使用量に応じて課金される従量課金制のほか、長期利用を想定した「定額制」の料金体系があります。
RDSはソフトウェアの自動パッチ適用、自動バックアップ機能が備わっており、運用の負担を軽減できます。また、読み取り専用のデータベースであるリードレプリカが作成できるだけでなく、マルチAZオプションを利用して複数のRDSを構築して可用性を高めることも可能です。
また、NoSQLデータベースとしてAmazon DynamoDBなどにも人気があります。
AWSエンジニアの仕事内容
AWSエンジニアの仕事内容を工程別に解説します。
設計
AWSインフラの設計を行います。具体的には、クラウド上のAWSで動作させるDBサーバー、Webサーバー、DevOps基盤、LDAPサーバー、仮想化基盤などの設計を行います。
サービスの選定、およびスケーリングや設定値などが設計の対象となります。
構築
AWSを使ったインフラ構築を行います。クラウド上にシステムがあるため物理的な構成作業はありません。EC2などのAWSのクラウド仮想システム上に構築します。
GUIを利用しての作業やスクリプトを利用して実施します。
保守・運用
AWSを使ったインフラの運用を行います。具体的には、OS・ミドルウェアの設定変更、チューニング、インスタンスの監視、障害対応などを行います。オンプレミスサーバーと異なりハードウェアの監視は必要なく、クラウド上のシステムの監視・運用を行います。
開発
AWS上で、Webアプリケーションやモバイルアプリケーションなど、様々なアプリケーションを開発します。言語はJavaScript、PHP、Pythonなどを使用します。インフラエンジニア領域ではないため、アプリケーションエンジニアなどが担当することが多いでしょう。
AWSを扱うインフラエンジニアに必要な知識とスキル
ここでは、AWSを扱う上でインフラエンジニアに必要な知識とスキルを解説します。従来のオンプレミス型のスキルとクラウド型のスキルの両方が求められますので、併せて解説します。
従来のインフラエンジニアに求められる知識・スキル
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・システム開発の知識
・サーバーOSの知識・設計、構築、運用、保守するスキル
・ネットワークの知識・設計、構築、運用、保守するスキル
・セキュリティの知識・セキュリティ製品を扱うスキル
・ハードウェアの知識
AWSを扱うインフラエンジニアに必要な知識・スキル
上記の従来のインフラエンジニアに求められる知識・スキルに加えて、クラウドサービス、AWSに特化した知識・スキルが必要となります。
クラウドサービスの基礎知識
AWSを扱うインフラエンジニアの場合、クラウドサービスについては利用できるレベルを超えて、仕組みを理解し、説明できるレベルの知識を持つことが求められます。
特に上流工程を担当するインフラエンジニアの場合、クラウドサービスを選定し、顧客に選定理由を説明するシーンがあります。なぜクラウドやAWSを選定したのかを説明するために、オンプレミスとの比較とメリットが出る理由について明確な理論を持っておきたいところです。
AWSの基礎知識
クラウドサービスの中でも、AWSに特化して知識を持っていることが求められます。AWSの代表的な製品やAWSを利用して実現できることを把握していることが、実務で活きてきます。
AWSは数多くの製品を持っており、製品を組み合わせることで多様なソリューションを実現することが可能です。全てを覚えることは難しいですが、代表的なサービスや事例を知っていれば応用が効きます。可能であれば、他の代表的なクラウドサービスとの比較についても知識を持っていると、上流工程で活きてくるでしょう。
AWSを使ったサーバー設計から構築、保守までのスキル
AWSを用いてサーバーを設計、構築、保守できるスキルは、AWSエンジニアの基礎とも言えるスキルです。実務では全ての工程に携われるかどうかはケースバイケースですが、ハンズオン学習やAWSの無料利用枠を利用して、環境を設計、構築してみることでスキルを高めることが可能です。
AWSへミドルウェアをインストールするスキル
AWSのなかでもEC2などの仮想マシンは、何らかのミドルウェアやアプリケーションを稼働させるための環境として利用します。このため、ミドルウェアをインストールして動かすための知識とスキルも同時に必要とされます。クラウド環境ではオンプレミスと設定などが変わってくるミドルウェアも存在するため、クラウドでの利用に特化した知識を持つとよいでしょう。
オンプレミスからクラウドへのサーバー移行設計スキル
新規のシステムやサービスの構築にもAWSは用いられますが、もう一つの大きな用途となるのが既存のオンプレミス環境からの移行です。オンプレミス環境の機能・設定を漏らさずクラウド環境に移行するためには、オンプレミス環境への理解とAWSの特徴の両方を知っている必要があります。
AWSのスキルを習得するための学習方法
AWSのスキル習得に役立つ参考書やAWSの提供する学習コンテンツについて紹介します。
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インフラエンジニアが勉強すべきこと|初心者からの目指し方も解説
インフラエンジニアのスペシャリストになるには
書籍
『Amazon Web Services実践入門』(舘岡 守・今井 智明・永淵 恭子・間瀬 哲也・三浦 悟 ・柳瀬 任章、技術評論社)
AWSを使ってインスタンスの構築、データベースの活用などを、書籍の内容に沿って行うことで実践的にスキルを習得できます。基礎的な内容を幅広く解説しており、AWSの入門書として最適な1冊です。
『Amazon Web Services 基礎からのネットワーク&サーバー構築 改訂3版』(玉川憲・片山暁雄・ 今井雄太・大澤文孝、日経BP社)
インフラエンジニアが扱う機会の多い、AWSを使ったサーバーやネットワーク構築の基礎を解説している書籍です。「自分でネットワークやサーバーを構築できるようになる」ことを目的とした書籍であり、インフラを学びなおしたいエンジニアや初めて学ぶアプリケーションエンジニアにも親しみやすい内容となっています。
AWSトレーニング
AWSでは無料から有料のものまで、オンラインで学習できるeラーニングサービスを提供しています。AWSトレーニングでは役割やソリューション別に、セキュリティの基礎やサーバーレスアプリケーションの構築など、トレーニングメニューが細分化されているため、自分に不足しているスキルのみを学習しやすいメリットがあります。
ハンズオン学習はコンテンツに沿って実際に環境を構築しながら学習できるため、理解を深めやすい学習方法です。また、AWSの提供する無償枠を利用して自分の環境を構築してみることで、さらなるスキル向上が見込めます。
AWSエンジニアとして活躍するうえで役立つ資格
AWSエンジニアとして活躍する上で役立つ資格として、AWSのベンダー資格、クラウドに関する資格、Linuxやネットワークに関する資格があります。代表的な資格について紹介します。
AWS認定資格
AWS認定資格は、AWSが提供している公式資格で、技術領域とレベルに応じて大きく4つに分けられています。AWSに関するスキルの保有を明確に示せる資格ですので、AWSエンジニアは積極的に取得を目指しましょう。AWS認定のための学習は、AWSトレーニングや書籍が利用できます。
CompTIA Cloud +
CompTIA Cloud +は、AWSに特化したものでなく、プラットフォームに依存しないクラウドでのインフラ構築スキルを認定する資格です。クラウドの概要からセキュリティまで幅広く学べるので、初学者の知識補填に役立ちます。
LinuC
LinuCはNPO団体LPI-JAPANにより運営される資格試験です。日本国内での利用に特化したLinux技術者としてのスキルを評価する試験内容となっています。LinuCレベル1からLinuCレベル3までの3段階のレベルがあり、LinuCレベル3は混合環境、セキュリティなどの専門分野に分かれています。
AWSエンジニアにとってもLinuxOSを利用する機会は多く、スキルを示せる資格となります。
LPIC
LPICはLinux Professional Instituteという世界的な非営利団体によって運営される、Linux技術者向けの資格試験です。LPIC-1からLPIC-3の3段階のレベルがあり、LPIC-3は仮想化、混在環境などの専門分野に分かれています。
国際的な資格であり、AWSスキルを用いてグローバルな活躍を目指すエンジニアに役立つ資格といえます。
CCNA
CCNAはネットワーク機器大手シスコシステムズ社が運営するネットワーク技術者向けの資格試験です。シスコ社の提供する資格試験の中でもアソシエイトレベルにあたり、5段階の下から2番目のレベルです。
AWSエンジニアとしてネットワークの構築も担う場合、ネットワーク構築のスキルを示せるため役立つ資格です。
AWSエンジニアの年収・将来性
AWSエンジニアの年収と将来性について解説します。
AWSエンジニアの年収
2023年2月12日時点でレバテックキャリアに公開されている求人・転職情報から、職種「インフラエンジニア、ネットワークエンジニア、サーバーエンジニア」キーワード「AWS」にて検索を行いAWSエンジニアの想定年収を算出してみました。30件を抽出し、最大値と最小値の中間値の平均値をとると、AWSエンジニアの想定年収は約595万円となりました。
他のエンジニア職よりもやや高い傾向がみられました。特に、大規模サイトのAWS設計やプロジェクトマネージャーの経験があると1,000万円近い年収になることもあります。
AWSエンジニアの求人・転職情報
関連記事:インフラエンジニアとは?仕事内容や年収、将来性を解説
AWSエンジニアの将来性
クラウド導入は特に先進国ではトレンドですが、日本では導入が遅れており、これからもクラウド導入が進むものと予測されます。したがってAWSエンジニアの需要は今後も堅調と考えられます。また、クラウド全般の市場が拡大するため、AWS以外のクラウドニーズも拡大し、GCPやAzureなどの求人も増えると考えられます。
AWSのスキルを習得しておくと他のクラウドサービスのスキルの習得も容易であることから、幅広いクラウドスキルを持つエンジニアとして底堅いキャリアプランを構築できるでしょう。
関連記事:インフラエンジニアのキャリアパスは?キャリア形成に役立つ資格も紹介
まとめ
この記事では、インフラエンジニアを取り巻く環境をはじめ、AWSの概要やインフラエンジニアに求められるAWSスキル、AWSスキルの習得に役立つ書籍や資格を解説しました。
近年クラウドを活用した開発や運用が非常に増えていますが、今後はクラウド活用が標準になると言われています。よって、インフラエンジニアはクラウドスキルを身につけていくことが、今後も活躍し続けるためのカギとなるでしょう。
AWSは業界大手のサービスであり、AWSを扱えるインフラエンジニアには高い需要があります。eラーニングや書籍を活用してスキル習得を目指してみてください。
ITエンジニアの転職ならレバテックキャリア
レバテックキャリアはIT・Web業界のエンジニア職を専門とする転職エージェントです。最新の技術情報や業界動向に精通しており、現状は転職のご意思がない場合でも、ご相談いただければ客観的な市場価値や市場動向をお伝えし、あなたの「選択肢」を広げるお手伝いをいたします。
「将来に向けた漠然とした不安がある」「特定のエンジニア職に興味がある」など、ご自身のキャリアに何らかの悩みを抱えている方は、ぜひ無料のオンライン個別相談会にお申し込みください。業界知識が豊富なキャリアアドバイザーが、一対一でさまざまなご質問に対応させていただきます。
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