インフラエンジニアとは
インフラエンジニアとは、ITインフラの設計、構築、運用・監視などを行うエンジニア職種です。
ITインフラとは、ITシステム、サービス、ソフトウェア、アプリケーションを利用するための土台となるサーバーやコンピューター、デバイス、ネットワーク、クラウドなどの基盤環境です。
各種のシステムやサービスを稼働させる上で、インフラは必須の存在です。企業の根幹を支える業務を成り立たせるために欠かせない仕事でもあります。
関連記事:インフラエンジニアとは?仕事内容や年収、将来性を解説
インフラエンジニアの仕事内容
インフラエンジニアの主な仕事は、クライアントのニーズにあったインフラ環境を設計・構築し、運用・整備することです。基本的な工程としては、要件定義、設計、構築作業、運用・保守業務の4つに分けることができます。
さらに細かく仕事内容について詳しく知りたい方は、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:インフラエンジニアのやりがいは?仕事内容や年収も紹介
要件定義
要件定義とは、クライアントが求めるITインフラをヒアリングやシステム構成などから形作る工程です。どのような機能・性能を実装する必要があるかを定義し、要件として落とし込むことを目的としています。
クライアントはインフラの納入先企業や同じシステム開発プロジェクトのアプリケーションチームなどが該当し、システムやサービス全体に望まれる機能が実現できるインフラ環境を提案します。
設計
設計工程では、要件定義に沿ってインフラの詳細を定めます。ハードウェアやクラウドといった動作環境の構成、物理的な配置や結線、OSやミドルウェアなどの各種パラメータの設定、バックアップや冗長性の確保に関する仕組みなど、定めた内容を設計書に記載します。
構築作業
構築作業とは、作成した計画書に基づいてITインフラを構築する作業です。
物理的な構築作業では、サーバーやネットワーク機器の搬入や設置、組み立て作業などを行います。近年では、ITインフラにクラウドサービスを適用するケースも多く、この場合にはクラウドサービス上にインフラ環境の設定を行います。
ミドルウェアなどをインストール・設定し、サーバー上のアプリケーションサービスを構築する作業も重要な業務の1つです。線引きは所属企業やプロジェクトなどで異なるものの、アプリケーションサーバーのインストール設定やプログラミング言語の実行環境までを担当することもあるでしょう。
また、プラットフォームの構築後は、設計通りにITインフラが構築されているかテストし確認します。起動停止の動作テスト、バックアップやレストアの運用に関わる機能のテスト、負荷テストなどを実行しながらチェックします。
運用・保守業務
運用・保守業務では、リリース後のインフラに向けた稼働の支援、監視、チューニング、トラブル対応などを行います。継続的にインフラが稼働する状態を提供することがミッションです。
システム上に不具合が生じた際には、インフラ環境が通常通りに復旧するよう、早急に問題を追求しなければなりません。運用や管理と聞くと駆け出しのエンジニアが担うイメージがありますが、障害対応はインフラエンジニアとしての腕が試される場面でもあります。
また、ファームウェアやOS、ミドルウェアなどのアップデート適用などもしばしば発生する作業です。
関連記事:インフラエンジニアの運用・保守業務とは?詳しい仕事内容を紹介
インフラエンジニアになるには|未経験からでも大丈夫!
インフラエンジニアに限らず、ITエンジニアは人手不足の傾向が慢性的なため、IT未経験者が応募可能な求人が存在しています。つまり、インフラエンジニアに未経験者からなることが可能です。しかし、専門性が高い職種であるため、経験はなくとも知識やスキルは求められます。
インフラエンジニアになるためのステップとして、事前に行っておける準備は下記です。それぞれ解説していきます。
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・インフラエンジニアに必要な基礎知識/スキルを身につける
・インフラエンジニアに関連する資格を取得する
・まずサーバーに関連する仕事に就く
関連記事:
インフラエンジニアの志望動機の書き方|例文付きでポイントを解説
【2024年最新】インフラエンジニアの転職で知っておきたいポイントや需要状況を解説
インフラエンジニアのスペシャリストになるには
基礎知識・必要なスキルを身につける
インフラエンジニアの土台となるのは、IT・コンピュータに関連する基礎的な知識です。ハードウェアやOS、ソフトウェアなどのITの構成要素について、広く知識を持つ必要があります。
また、インフラ内の専門分野としてサーバーやネットワーク、クラウド、セキュリティといった各分野についても知識、スキルの習得が必要です。独学やスクールを利用して、実際に環境を構築しながら学習し理解を深めると良いでしょう。
インフラエンジニアに関連する資格を取得する
インフラエンジニアに資格の取得は必須ではありませんが、ぜひ取得しておくことをおすすめします。なぜなら、資格取得を目指すことで必要な知識を網羅的に学べるだけでなく、転職で資格保有をアピールすれば有利になりやすいからです。興味がある分野の資格は取得しておくべきでしょう。
未経験の場合まずサーバー関連の仕事に就くのがおすすめ
未経験からインフラエンジニアになるには、まずはサーバーエンジニアなどのサーバー関連業務から始めるのがおすすめです。
ネットワークやクラウド、セキュリティなどの領域でもサーバーおよびOSに関する知識とスキルは必要となるため、サーバーに関する知識はインフラエンジニアにとって基礎的なスキルとなります。他分野に専門分野を変更するキャリアチェンジでも役立つものです。
未経験からインフラエンジニアになれる理由
インフラエンジニアは専門的なスキルと知識が必要となるエンジニア職種です。とはいえ、未経験から目指せる職種でもあります。
実際にインフラエンジニアの需要動向やIT業界全体の人材不足、学習環境の豊かさなどの理由から、努力次第でチャンスをつかみやすい状況です。また、ほかのエンジニア職種の経験があれば、IT知識・スキルのベースがある状態なので、転職の難易度はさらに下がるでしょう。
ここでは、未経験からインフラエンジニアになれる理由について説明します。
IT業界は人材不足で需要が高いため
IT業界の人材不足が挙げられます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表したDX白書2023のP.21,22では、日本国内企業のDX人材の質・量に関する充足度合いについてまとめられています。2022年では83.5%の企業が量的な不足を感じており、86.1%が質的な不足を感じている結果でした。DXを推進するIT人材が大幅に不足していることは顕著です。
出生率低下などによる労働者人口の減少も影響し、ITに限らずさまざまな業界で人材不足が発生しています。これに加えて、IT業界ではDXの推進や業務のデジタル化、既存のシステムの維持、更新などにおける需要が増加傾向にあるため、需給ギャップが拡大する傾向が見られます。
クラウド化に伴いインフラエンジニアの需要が高まっているため
企業や組織がDXを推進する上で前提となるのがクラウド化の促進です。各種の業務システムをSaaSの利用に置き換えたり、組織の持つITシステムの基盤をクラウド上に置いたりするクラウド化は、デジタル技術の活用を促進するための足がかりとなります。また、インフラの維持コスト削減やBCP対策としてクラウド化を進める組織も少なくありません。
クラウド化では、既存のオンプレミス環境からクラウド環境へインフラの移し替えが発生するケースも多く、知識とスキルを持ったインフラエンジニアが必要とされています。既存のインフラ技術に加えてクラウドに関する知見も持つことで、業務は未経験でも需要のあるエンジニアとなれるでしょう。
独学でスキルを習得できる環境が充実しているため
かつてはインフラ分野の学習にはサーバーやネットワーク機器などを用意する必要があり、独学には大きなハードルがありました。しかし、近年のクラウド環境の普及により、その前提は大きく変化してきています。クラウド環境と仮想化技術を利用することで、安価にどこからでもインフラ環境の構築、利用ができる状況になりました。
インターネット上にはインフラに関するテキストや動画の学習コンテンツが豊富で、書籍の情報も充実しています。インフラに関して、独学をしやすい環境が整ってきているといえます。
インフラエンジニアの担当領域別の職種4種
インフラエンジニアとは、インフラを扱うエンジニア職の総称です。そのため、職種名は同じインフラエンジニアでも、業務内容が異なるケースが多々あります。また、複数の領域を兼ねるインフラエンジニアも存在しており、分類は企業やプロジェクトによっても変わってきます。インフラエンジニアを目指す場合はこれらの点を理解し、どの領域を担当したいかまで絞りこんでおくと良いでしょう。本項では、専門領域別の職種について紹介します。
サーバーエンジニア
サーバーエンジニアは、サーバーの設計、構築、運用監視などを主に扱うインフラエンジニアです。サーバーとはハードウェアまたはソフトウェアにより、サービス提供を行うコンピューターを指す言葉で、近年では仮想化環境もサーバーの構築に含まれます。
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアはコンピュータネットワークの設計、構築、運用監視などを行うエンジニアです。ネットワークに関する理論とネットワーク機器に関する専門的な知識が必要とされます。ソフトウェアによりネットワークを構成するネットワーク仮想化技術も利用する機会が増えています。
セキュリティエンジニア
サーバーは企業や組織にとって重要な資産であるデータの格納先であり、ネットワークは外部との境界です。さまざまなサイバー攻撃の脅威からITインフラを守る必要があり、そのための診断や対策を行うのがセキュリティエンジニアです。システム構成上の脆弱性やセキュリティソフトの導入などのインフラ領域の対策、ソフトウェア開発における安全性の確保、企業内のセキュリティに関する体制・ルール作り、教育なども担当するため、幅広い知識とスキルが求められます。
クラウドエンジニア
ネットワークで接続されたコンピュータやサービスを利用するクラウドに関して、サービスの選定、環境の設定、構築などを行います。サーバーエンジニアやネットワークエンジニアの技術がベースとなり、それに加えてクラウドサービスに関する知識やスキルが必要とされるエンジニア職です。インフラ領域の中でも、クラウドサービスは近年利用が拡大しています。
インフラエンジニアになるために重要なスキル
インフラエンジニアとして活躍するためには、さまざまなスキルが求められます。サーバーやネットワークなど担当する領域によって異なる場合はありますが、大別すると技術系とヒューマンスキルに分かれます。これらのスキルをより多く持ち、さらにそのレベルが高いほどインフラエンジニアになるには、有利でしょう。本項では、それぞれの重要スキルについて詳しく解説します。
関連記事:インフラエンジニアに必要なスキルは?知識、資格まで徹底解説
技術系の知識・スキル
技術系の知識およびスキルについて、代表的なものを挙げています。自己学習により習得できる知識・スキルと、業務経験の中で身につけるスキルがあります。
ITインフラの必須知識と技術
インフラの設計および運用保守業務を担うインフラエンジニアになるには、ネットワークやサーバー、ソフトウェアなどの知識・技術は必須です。
物理サーバと仮想サーバ、運用、ミドルウェアなどのスキルを身につけておけば、所属組織に適したより良いプラットフォームの構築を目指せます。
サーバの構築・テスト・運用管理・監視など、一連の作業工程を幅広く対応できることが理想とされます。ただし、すべてを習得するには時間がかかるため、一般的にはインフラエンジニアは運用保守業務からスタートし、順次構築や設計のスキルを身につけるステップが多いです。
設計スキル
インフラエンジニアの基本的な業務の1つが、要件定義書をもとに設計書を作成することです。要件として提示された内容を実現するために必要な構成、設定を定める設計業務には、インフラに関する知識と経験が必要です。
設計した内容は設計書に記載します。目的が明確かつシンプルで、誰が見ても理解できるような設計書を作成しなければならないため、設計スキルは必須です。
障害対応スキル
大規模なインフラ環境ほど、システム障害のリスクは高くなります。障害発生の際、インフラエンジニアは速やかにシステムを正常に復旧させなければならないため、負荷軽減や障害対応などのスキルは必須です。
障害を未然に防ぐのも重要ですが、障害が起きた際に迅速な対応ができるインフラエンジニアが企業にとって重宝される傾向にあります。ハードウェアやミドルウェア、クラウドサービス、アプリケーションなどの障害の原因を切り分けるための幅広い知見が障害対応スキルに含まれます。落ち着いて障害と対峙できる冷静さも重要です。
仮想化に関する知識
インフラの構築において、大きな進歩をもたらした技術が「仮想化」です。仮想化とは、ソフトウェアによってコンピュータ上に別の環境を生み出す技術です。OS環境(サーバー)やアプリケーションの動作環境となるコンテナが作成できます。クラウドサービスとの親和性も高いため、今後も活躍する技術です。
プログラミングスキル
プログラミングに対応できるインフラエンジニアになるには、軽量プログラミング言語(LL言語)やC言語の知識を身につけておくと活躍の幅が広がります。
そのほかにも、OS(Linux・UNIX・Windowsなど)コマンドとそれをまとめて実施できるシェルプログラミングなどのスキルを習得しておけば、強みとして活かせるでしょう。
関連記事:インフラエンジニアもプログラミングスキルが必要な理由を解説
ミドルウェアに関する知識
サーバーエンジニアの場合、ミドルウェアのインストールや設定が業務範囲に含まれることがあります。Webサーバーやアプリケーションサーバー、データベースなどのミドルウェアについて、インストールやパラメータに関する知識を持っていると広く活躍することが可能です。
クラウドの知識
従来はオンプレミス(自社内にサーバーやネットワークなどITインフラを構築する)環境が主流でした。しかし、最近ではインターネットを介してクラウドサービス上にITインフラを構築するクラウド環境が当たり前になっています。そのため、インフラエンジニアになるにはクラウドの知識も求められます。
クラウドサービスは数多くありますが、主流であるAWS(Amazon Web Service)、GCP(Google Cloud Platform)、Microsoft Azureのいずれかは知っておくと良いでしょう。
関連記事:インフラエンジニアにAWSスキルが求められる理由
セキュリティの知識
サーバーやネットワークをただ構築するのではなく、高いセキュリティ性能を実現する設定を行うことが非常に重要です。たとえば、クラウドサービス上に環境を構築したものの、セキュリティの設定が誤っていたために重要な情報が誰でも見られる状態になっていた、というインシデントが発生した例もあります。
オンプレミスでも、ネットワークの設定が誤っていると外部からの攻撃によりサーバーダウンなどの被害を受ける可能性があります。インフラの停止はそこで動く業務アプリケーションなどの停止も意味しており、状況が深刻だと業務を中断せざるを得ないケースもあるでしょう。
このようなインシデントを回避するためには、環境を構築する段階でセキュリティを十分意識した設計・構築を行うことが大切です。インフラエンジニアになるには、最低限セキュリティの知識は得ておきましょう。
ヒューマンスキル
技術的な知見やスキルの高い人材が優秀なITエンジニアと考えられがちですが、あわせてヒューマンスキルも持ち合わせていることが大切です。たとえば、クライアントとのコミュニケーションをスムーズに行うためにはヒューマンスキルが重要です。では、インフラエンジニアになるには、技術系以外にどのようなスキルが求められるのか紹介します。
統率力
チーム単位で業務を遂行するインフラエンジニアにとって、複数のエンジニアをまとめ上げる統率力は重要です。1つのプロジェクトで利用するインフラでも、多数のサーバーが存在したり、ネットワーク構築の対象となるデバイスが多かったりする場合があります。その際は複数のメンバーによって構成されるチームで仕事にあたります。
ヒアリング力
クライアントからの要望を正確に把握し、システム構築に活かすためにもヒアリング力は重要な要素です。ヒアリング力が低いと、クライアントやアプリケーション開発者が求めるインフラとはまったく異なるものが完成し、クレームに発展したり、仕様変更に伴い納期遅れにつながったりするケースもあります。
提案力
システム開発の要件定義では、クライアントから状況を正確にヒアリングした上で、具体的な解決法を提案しなければなりません。話を聞くばかりではクライアントの課題を解決することはできないため、さまざまなアイデアを組み合わせて提案する力が重要です。
顧客からの要望や質問に対して臨機応変に提案したり、代替案を提示したりするためには、実務経験を蓄積し、自身の中で知識の引き出しを多く持っておく必要があるでしょう。
コミュニケーションスキル
インフラエンジニアとして顧客の課題を解決しようとした場合、ときには実現が難しい要望を提示されることもあります。そのとき、伝え方によっては顧客との間に亀裂が生じクレームに発展する場合もあるため、コミュニケーションスキルを身につけておく必要があります。
たとえば、単に「それは無理です」と伝えるのではなく、「この方法であれば実現できます」といったように具体的な解決策や代替案を提示することが重要です。インフラエンジニアは折衝や他部署と関わる機会が非常に多いため、柔軟な対応力が必要でしょう。
体力
ITインフラは企業や組織の基幹的な業務を支えているため、インフラが停止すると業務の停止につながり経営上の被害までも発生することがあります。システムによっては24時間365日の稼働が前提の場合もあり、これを支えるインフラエンジニアは昼夜問わず業務を求められるケースもあります。その際には、体力や精神力が問われます。
所属企業やプロジェクトによっては、IT機器の導入や障害対応、納期内でのプロジェクト遂行など、体力を要求される場面が多いこともあります。
関連記事:インフラエンジニアに夜勤がある理由とは|回避方法も解説
英語力
ネットワーク機器やサーバー向けソフトウェアは、海外製品が多いため、英語力が求められるケースがあります。たとえば、構築時やトラブル時に製品マニュアルを参照する場合に英語のマニュアルを見ることも少なくありません。ソフトウェア製品であればサポートとのやりとりに英語スキルが必要な場合もあるでしょう。
また、ソフトウェアのバージョンアップなど製品に関する最新情報は海外から発信される場合もあるため、英語を身につけておくと最新情報をいち早くキャッチアップできます。特に英語での情報発信のスキルまでは身につけなくとも、英語を読む力を身につけておくと、インフラエンジニアの仕事に大いに役立ちます。
関連記事:インフラエンジニアが英語を使えることで得られるメリット
インフラエンジニアになるための勉強方法
インフラエンジニアになるには、どのような勉強方法でスキルや知識を身につけるのが良いのか悩む人もいるでしょう。しかし、人それぞれに合う勉強方法は異なります。書籍をじっくり読み進めながら勉強する方法が合う人もいれば、分からなくてもとにかくトライしてみて手を動かしながら勉強する方法が合う人もいます。
ここでは、インフラエンジニアになるための効果的な勉強方法をいくつか紹介するので参考にしてください。
関連記事:インフラエンジニアの勉強方法は?未経験・初心者にもわかりやすく解説
資格を取る勉強の過程で学ぶ
インフラエンジニアになるには、必須の資格はなく、実務経験や高いスキルが身についていれば誰でも業務に従事できます。しかし、未経験者がインフラエンジニアの業務を体系的に学ぶためには、資格取得に向けた学習をするのがおすすめです。
ネットワークやサーバー、セキュリティといったインフラの基礎から応用までを網羅できるため、実務に役立つスキルが効率的に身につきます。資格の保有もインフラエンジニアへの就職・転職でアピールポイントとして役立ちます。
実際の機器に触れてみる
たとえばサーバーやスイッチといったネットワークの機器を操作するためには、特定のコマンドを理解しなければなりません。しかし、どのコマンドを入力すれば目的とする動作が起こるのかは、参考書などを読んでも十分理解できない場合が多いです。
実際の機器に触れてコマンドを入力すると、自分自身の体験として知識が定着しやすくなります。実際の機器を所有していなくても、PC上で同様の動作が再現できるシミュレーターもあるため、さまざまな方法を試してみると良いでしょう。
クラウドサービスの普及により、PCとインターネットへの接続があれば環境構築がしやすくなりました。無料で利用できるサービスや無料枠を設けているサービスもあるため、学習に役立ててください。
書籍で学ぶ
インフラエンジニアの業務内容を網羅した書籍を読んで知識を身につける方法もあります。ネットワークやサーバーといった特定のジャンルに特化した書籍を別々に読むのも良いですが、下記ではインフラエンジニアの業務全般に関した書籍を紹介します。
『改訂新版 インフラエンジニアの教科書』(シーアンドアール研究所、佐野 裕)
『インフラエンジニアの教科書2 スキルアップに効く技術と知識』(シーアンドアール研究所、佐野 裕)
インフラエンジニアとはどのような職種なのか、従事する業務の範囲や内容を中心に網羅したシリーズです。ある程度の知識が身についている方よりは、IT業界が未経験で0からインフラエンジニアを目指したい方に向いている教科書といえるでしょう。
Webサイトを利用して学ぶ
手軽な勉強方法としては、Webサイトで情報収集しながら学ぶことです。自宅で今すぐに始められるため、自分に合う勉強方法かどうか確かめやすいでしょう。また、メインの教材とせず、補足的にWebサイトの学習コンテンツを利用するのもおすすめです。今回は代表的なWebサイトを紹介します。
ネットワークエンジニアとして
「ネットワークエンジニアとして」は、ネットワークエンジニアが押さえておきたい基本的な知識を網羅したWebサイトです。いずれのコンテンツも無料で閲覧でき、本格的な技術書にも匹敵するほどの膨大な情報量を誇ります。
わざわざ分厚い本を開く手間もなく、スマートフォンやタブレット端末で手軽に閲覧できるため、スキマ時間などを勉強に充てたい方におすすめです。
3分間NetWorking
「3分間NetWorking」は、インフラエンジニアにとって不可欠なネットワークの基礎を、細かい単元に分けてまとめてあるサイトです。1単位あたり3分程度の短時間で閲覧できるため、通勤時間や就寝前の時間を効果的に活用しながら継続的な学習に充てられるでしょう。
エンベーダー
「エンベーダー」は、環境構築やインフラに関する独学のための学習サービスです。ゲームの形式を取っており、楽しく学ぶことに重点が置かれています。Linuxやデータベース、プログラミング環境構築、資格試験LinuCの対策、セキュリティなどのコースが提供されており、目指すキャリアに合わせてコースを選択できます。
プログラミングスクールに通う
ITスキルを身につける方法としてプログラミングスクールに通うのは大変有効な手段です。特にIT未経験者は、何から始めるべきか右往左往しがちです。いざ勉強を始めても、何を、どのくらい、いつまでになど、すべて自己管理で計画的に進めていくのは困難といえます。プログラミングスクールなら、用意されたカリキュラムに沿ってメンターから指導を受けながら効率的に学習できます。
また、独学で勉強を行うと、分からないところで詰まって挫折したり、モチベーションが続かず効果が上がらなかったりする場合も少なくありません。そういった面でもプログラミングスクールは学習のサポートが得られるだけでなく、スクールによっては給付金や転職サポートも得られるところもあります。
しっかりしたスキルを身につけたい方は、プログラミングスクールを検討してみると良いでしょう。
勉強会に参加する
インフラエンジニアは専門スキルが求められますが、その専門スキルを学ぶための勉強会に参加すると良いです。たとえば、ネットワーク機器やデータベースソフトウェアを販売するメーカー、クラウドベンダーが自社サービスを学ぶための勉強会を開いていることもあります。また、著名な有識者が定期的にコミュニティで勉強会を開いているケースもあります。
勉強会ではインフラエンジニアとして活躍している人との交流も得られ、スキルを学べるだけでなく人脈も広がりやすいです。近くで勉強会が開かれている場合やオンライン勉強会があれば、積極的に参加してみると良いでしょう。
職業訓練に通う
就職に役立つ技術が学べる公的な制度として、職業訓練があります。職業訓練でインフラエンジニアに必要なスキルを無料で受講可能です。
主に、失業保険を受給している求職者を対象とする「公的職業訓練」と、失業保険を受給できない退職者を対象とする「求職者支援訓練」の2つがあります。利用するにはハローワーク窓口で申込手続きを行います。
インフラエンジニアの仕事で活かせる資格
インフラエンジニアを目指すために、就職や転職で役立つ資格に挑戦したいと考えている方も多いことでしょう。ITインフラに関連する資格を多く持っているほど知見があると認められやすく、スキル向上の意欲も示せるため転職時は有利といえます。
そこで、IT業界未経験からでも挑戦できる資格をいくつか紹介します。インフラエンジニアの仕事で活かせる資格は多くありますが、自身の目指す領域につながるものを優先して取得すると良いでしょう。
関連記事:インフラエンジニアに役立つ資格11選!各難易度と概要も紹介
ITパスポート試験
ITパスポート試験は、経済産業省が認定する国家資格「情報処理技術者試験」のうち、ITの入門レベルのカテゴリです。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営しています。主にITを利用する立場の人材をターゲットとしており、ITパスポートを取得したからといって必ずしもインフラエンジニアの業務がマスターできるとは限りません。
しかし、少なくともIT関連の基礎的な知識やスキルを保有していることは証明できます。まずはITパスポート試験に合格しさらにレベルの高い資格に挑戦すると良いでしょう。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、経済産業省が認定する国家資格「情報処理技術者試験」の1つで、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施しています。エントリレベルのエンジニアに向けた試験といえます。
ITに関する幅広い分野を対象に基礎レベルの知識が求められる内容です。ハードウェアやソフトウェア、プログラミング、システム開発に関する知識、プロジェクトマネジメントなどを試験範囲に含むため、難易度は低くありません。令和5年よりCBTで受験ができるようになったため、取得に向けたハードルは下がったといえます。
ORACLE MASTER
ORACLE MASTERとは、オラクル社が運営している商用データベースOracleについてのベンダー試験です。インフラエンジニアになるにはデータベースの知識が欠かせません。業務の中でデータベースの運用に関わる場面も多いため、取得しておくと就職や転職に有利に働くでしょう。
ORACLE MASTERは難易度別にブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナまでのランクがあるため、未経験者はまずブロンズから挑戦してみましょう。
Linux技術者認定(LPIC)
LPICとは、オープンソース技術者向けにNPO団体LPIが運営しているLinuxのスキルを証明する資格です。Linuxは主にサーバーに用いられることが多いOSのため、インフラエンジニアとしてLPICを取得することはスキルを証明する上で効果的といえるでしょう。
LPICは難易度に応じてLPIC-1からLPIC-3までのランクがあり、未経験から取得を目指すのであれば、はじめはLPIC-1がおすすめです。
シスコ技術者認定(CCNA)
シスコ技術者認定は、ネットワーク機器の販売を手掛けるシスコシステムズ社が運営するベンダー試験です。シスコシステムズ社はネットワーク機器で高いシェアを誇っており、インフラエンジニアの仕事の中でシスコ製品を扱うことも少なくありません。そのためこの資格は価値が高いといえます。
CCNAは4段階の認定の中でも下から2番目のエントリーレベルで、ネットワークエンジニアに向けた内容となっています。この資格を取得しておくとネットワーク構築における一定以上のスキルを示すことが可能です。CCNAの上位資格としてCCNP、CCIEなどがあるため、ステップアップすることで自身のスキルを高められます。
AWS認定試験
AWS認定試験はクラウドサービスでトップクラスのシェアを誇るAWS(Amazon Web Service)についてのスキル・知識を問う認定試験です。AWSサービスを活用したインフラ構築における、設計や構築に必要な知識・スキルが問われます。
2024年5月14日時点で試験は専門知識ごとに13の試験分野に分かれています。各試験の認定の種類は「FOUNDATIONAL」「ASSOCIATE」「PROFESSIONAL」「SPECIALTY」の4つです。
インフラエンジニアに有用な資格としては「Cloud Practitioner」「Solutions Architect - Associate」「Solutions Architect - Professional」「Advanced Networking - Specialty」「Database - Specialty」「Security - Specialty」などが挙げられます。AWSは国内外問わず多くの企業で扱われており需要が高いため、資格を取得しておくと転職や年収アップに有利です。
ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験は、IPAが運営している情報処理技術者試験の中でも高度なネットワーク技術者向けの試験です。主にネットワーク技術の専門家として主導的な役割を果たす人を対象としています。CCNAのようなベンダー資格ではないため、ネットワーク技術全般が問われます。
直近の2023年春期の合格率は14.3%と難易度は高いですが、それだけ価値は高く、インフラエンジニアやネットワークエンジニアを目指す人はぜひ取っておきたい資格の1つです。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験は、IPAが運営している情報処理技術者試験の中でも高度なデータベース技術者向けの試験です。ネットワークスペシャリスト試験と同様、特定技術の専門家を対象としており、主にデータベース分野について問われます。
同じデータベース関連資格にORACLE MASTERがありますが、ORACLE MASTERがオラクル社製品に関する資格であるのに対し、データベーススペシャリスト試験は特定製品によらない一般的な知識が問われます。直近の2023年秋期の合格率は18.5%と、難易度の高い資格です。
レバテックキャリアアドバイザー 田頭から一言!
どの資格も、それを取得することで一定のスキルを証明することができます。ただし、単一の資格だけでなく、複数の資格を組み合わせることで、より高い評価を得ることができます。近年は、AWS認定資格が注目を集めており、プロフェッショナルレベルのソリューションアーキテクトやDevOpsエンジニアの認定を持っていると、企業からの評価が高まる傾向にあります。
インフラエンジニアの市場
インフラエンジニアは需要が高く、市場価値が高い職種です。背景として、以下が考えられます。
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・IT人材の慢性的な不足
・専門的なスキルが求められる
・Webサービスを展開していくためにITインフラは必須
・クラウドサービスや仮想化技術など、新しい技術が急速に普及
これまではオンプレミス上にWebサービスを構築して展開する上でインフラエンジニアが求められていましたが、今後はクラウドサービスの普及でクラウドのスキルも必要です。オンプレミス、クラウド両方に対応できるインフラエンジニアは、需要が高まっています。
関連記事:インフラエンジニアの需要・将来性は?今後、役立つスキルも解説
インフラエンジニアの将来性
今後はDX(デジタルトランスフォーメーション)の展開により、クラウドサービスやIoT、AIの利用が急速に広まると予想されています。これらのサービスを展開するにも、ITインフラが必要であり、インフラエンジニアが求められます。
そのため、今後もインフラエンジニアの需要が高い状態が継続するでしょう。また、まだオンプレミスのシステムも残っているため、オンプレミス、クラウド両方のスキルが求められる状況も継続すると考えられます。
関連記事:
インフラエンジニアの将来性は?キャリアアップに役立つ資格
インフラエンジニアのキャリアパスは?将来性や役立つスキルと資格も解説
インフラエンジニアの平均年収
厚生労働省の職業情報提供サイト(日本版O-NET)によると、インフラエンジニアが含まれるシステムエンジニア(基盤システム)の平均年収は660.4万円です。令和4年賃金構造基本統計調査の職業分類「ITシステム設計技術者」をもとにしています。
また、2024年5月14日時点でレバテックキャリアに登録されている職種インフラエンジニアの求人・転職情報より30件を抽出し平均年収を算出すると、インフラエンジニアの平均年収は約707万円となります。
これらの平均年収に関するデータは、インフラエンジニアと一口にいっても求められるスキルの幅が広いため、経験やスキルによって年収は大きく変動することが予想されます。あくまで参考程度に見ると良いでしょう。
関連記事:
インフラエンジニアの年収は?さらに年収を上げるポイントも紹介
インフラエンジニアに関するよくある質問
インフラエンジニアに関するよくある質問と回答をまとめました。インフラエンジニアになるには、どのようなスキルが求められるか、どのような人に適性があるのかに関する質問が多いです。どの質問も、転職活動を本格的に始める前に解消しておくべき疑問といえます。自身が納得した上で理想のキャリアを築くためにも、ぜひ参考にしてください。
Q1. インフラエンジニアに必要なスキルはなんですか?
インフラエンジニアには、技術的・ヒューマンスキルの両方が求められます。具体的なスキルの例をいくつか挙げます。
技術的なスキル
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・ITインフラの知識と技術
・仮想化の知識
・プログラミングスキル
・ミドルウェア/クラウド/セキュリティの知識
ヒューマンスキル
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・統率力
・ヒアリング力
・提案力
・英語力
Q2. インフラエンジニアに向いているのはどんな人ですか?
インフラエンジニアはITについて幅広い知見と専門的なスキルが必要となるため、IT全般に興味がある人が向いています。新たな技術にも興味を持ち、学習を続けられる好奇心があればより活躍できるでしょう。またインフラエンジニアが対峙するトラブルにおいては、冷静かつ論理的な思考ができる人が適性があるといえます。
Q3. インフラエンジニアでつらい・きついことはなんですか?
インフラエンジニアが「つらい、きつい」と感じやすいポイントとして下記が挙げられます。
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・組織のインフラを支える重責
・ユーザーに動いて当たり前と思われ、問題が起きたときには風あたりが強い
・継続的に学習が必要
・昼夜問わず緊急のトラブル対応がある
まとめ
IT業界においては慢性的な人手不足が大きな問題となっています。これを背景として人材を広く募っているため、未経験からでもインフラエンジニアになることは十分可能です。
インフラエンジニアの場合、基本的に運用保守業務から担当するケースが多いため、その間に技術的な専門スキルを身につけることもできます。今回紹介した内容を参考にしながら、インフラエンジニアへの就職や転職に向けて行動を起こしてみましょう。
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