社内SEとは
社内SEとは、主に企業の情報システム部門でITに関する仕事を行う職種、または自社内で使うシステムや自社サービスの開発に携わる人材を指します。ただし、業務の範囲や対象に一般的な定義があるわけではなく、企業によって任される仕事は大きく異なります。
このような事情から社内SEへの転職を希望しているエンジニア自身も、入社後の仕事内容を正しく把握できていないことは珍しくありません。まずは、社内SEの代表的な仕事内容を確認しておきましょう。
社内SEの仕事内容
社内SEは、主に社内システムやネットワーク、ハードウェアの管理を担当し、社内インフラを整備します。具体的には、アカウントやライセンスの管理、ソフトウェアなどの更新、インフラのメンテナンスを定期的に行い、業務が効率よく回るように適切な維持管理をするポジションです。
もちろん、社内システムに問題があった場合のヘルプデスクの役割や、社内の問題・課題に対し、業務効率化のためのサービスや仕組みの導入を提案する役割も担います。
また、自社開発を行う企業においては社内SEがプロジェクトの企画・開発に関わることも少なくありません。そのほかにも、企業によってさまざまな業務を担当する場合があるため、そのことを念頭に置いておくと良いでしょう。
関連記事:社内SEの仕事内容とは?必要なスキル、役立つ資格も解説
社内SEの年収
2024年11月18日時点でレバテックキャリアに掲載されている社内SEの求人情報から、上位表示されている30件の上限年収と下限年収をもとに、社内SEの平均年収を計算しました。その結果、社内SEの平均年収は約586万円と推定できます。
これは、国税庁の令和5年分 民間給与実態統計調査における給与所得者の平均年収460万円を大幅に上回る結果となっています。
したがって、他の一般的な会社員と比較した場合、高い年収が望めるといえます。
社内SEの求人・転職情報>
社内SEへの転職が難しい理由
社内SEへの転職は、エンジニア経験がある人でも難しいといわれており、転職を考える際には、応募者の競争倍率、仕事内容、スキルレベルなど、さまざまなことを考慮する必要があります。また、社内SEの担当業務は幅広く、企業によって業務内容が違う場合もあるため、転職先候補を絞ることも容易ではありません。
あらゆる要因が重なり合って社内SEへの転職を難しくさせています。しかしながら、これらの要素を1つずつ理解し、適切に対策できれば社内SEへの転職活動もしやすくなるでしょう。社内SEの転職はなぜ難しいのか、その具体的な理由を以下で解説します。
関連記事:社内SEとSEの違いは?仕事内容や必要スキルを徹底比較
職種としての人気が高いため、競争が激しい
社内SEは、転職先候補として人気が高く、第2候補または第3候補として考えている人も多いため、競争率が非常に高い職種です。また、求人があったとしても、企業が設ける募集枠は少人数であるケースが多いです。
少ない枠に多くの人材が殺到するので、社内SEへ転職するには、スキルや経験など数々の厳しい条件をクリアする必要があるでしょう。
関連記事:社内SEが「人気・勝ち組の職種」と呼ばれる9つの理由
年齢に伴い、求人企業の採用条件が厳しくなる
今後のポテンシャルに期待できる20代〜30代前半は経験が浅くても採用される可能性もあります。一方で実務経験が豊富で即戦力となれる場合を除いて、経験の浅い30代後半、40代が採用される確率は低いといえます。
企業は社内SE育成のためのコストと期間を捻出できない背景から、採用後すぐに現場で活躍できる人材を求めるケースが多いです。また、実務経験がある場合においても、現場から離れている期間が長い場合や、直近での実務経験がない場合は採用されにくい傾向があります。
業務内容が入社企業によって異なる
社内SEのメイン業務は社内のITシステムの企画、導入、管理、デバイスやネットワーク機器などのインフラの管理、ITに関連するトラブルへの対処などですが、すべての企業で業務が統一されているわけではありません。企業によって社内SEが担当する役割は異なることが多いため、転職活動をする上で候補とする企業の選別が難しいと感じる人もいます。
仕事内容が異なれば、それに見合ったスキルや条件も変わります。このような要因で転職活動がスムーズに進まないことも、難易度が高く感じられる理由の1つでしょう。
■レバテック キャリアアドバイザーからの一言
もともと非IT企業の社内SEで働いていた私の所感として、社内SEへの転職は難しいイメージがあります。
社内SEは、需要がそこまで大きくないことから、採用枠が少ない企業が多いです。なかでも非IT事業会社の社内SEは特に少なく、大手の企業でも新卒で10名ほどしか取らないケースもあります。
また、社内SEから別のITエンジニア職へと転職する方がそこまで多くない点も、求人の募集が少ない理由の一つになっていると思います。
別の職種へ転職する方が少ない理由としては、主に下記が挙げられます。
-
・クライアントワークが基本ないため、リモートワークを採用している企業が多い。・勤務地が固定されていることが多く、ライフプランを設計しやすい。
・関わる人が社内の方なので、融通がきく場合が多く仕事をしやすい。
こうした理由から、働きやすさを感じている方が多い傾向にあると考えられます。
社内SEが人気の理由
なぜ社内SEはエンジニアの転職先として人気が高いのでしょうか。これまでの業務経験が活かせる、働き方が一定でライフワークバランスが取りやすい、将来性が高いといったメリットがあるのは確かですが、社内SEとしての経験がない人にとってはイメージしにくいかもしれません。
ほかの職種とも比較しながら、社内SEが人気の理由について詳しく説明します。
Slerからの転職先としての魅力
客先常駐で働くSIerが社内SEへの転職を志望する理由としてよく挙がるのは、次のような内容です。
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・社内SEだと勤務場所が変わらないから・ユーザーとの距離が近いから
・応募先の企業や業界そのものが好きだから
プロジェクト単位で常駐先が変わることや、自分の手掛けたシステムがどのように使われているのか分からず仕事の手ごたえが感じられないことから転職を考える方は多いです。また、SIerは顧客からの発注に対してシステムを開発するので、なかなか自分でスケジュールをコントロールしにくい部分があります。
一方、社内SEであれば、開発するのは自社内のシステムなのでスケジュール調整がしやすく、残業も少ないのではないか、というイメージがあるようです。
また、応募先の企業・業界そのものが好きで事業の成長に貢献したい、という理由で志望する方も一定数います。この理由は採用を行う企業側も納得感を得やすく、良い印象を持ちやすい傾向があります。
SESからの転職先としての魅力
SIerと同様に、SESからの転職先としても社内SEは人気です。プロジェクト単位で常駐先が変わる点や、エンドユーザーや市場からの反応が見えにくい、スケジュールをコントロールしにくいといった点からSIerと同様の志望理由が考えられるでしょう。
また、SESは上流工程に関わる機会が少なく、開発やテストといった下流工程が主になります。そのため、要件定義や基本設計などの上流工程の経験を積むためにキャリアアップしたい、責任と裁量を持って事業の成長に貢献したい、などの理由でSESから社内SEへの転職を志望する方も多いです。
関連記事:未経験から社内SEになるには?転職に役立つ資格やスキルも紹介
DX推進のためエンジニアを必要とする企業が増え、将来性がある
IT化・デジタル化を迫られる企業が多く、DXの推進を企業の経営課題としている場合も多いです。DX推進においては、社内のシステム有識者として社内SEの活躍が期待されており、社内SEの人気が高まる理由の1つとなっています。
企業側の意向として、IT活用への投資を積極的に行うことで知見のある人材を確保し、独自のノウハウを蓄積していきたいという傾向が強まっています。ノウハウを蓄積して役立てる人材として社内SEの活躍が期待されているため、将来性のある職種といえます。
DXではAIなどの最新の技術を取り入れる機会もあり、エンジニアにとってもやりがいにつながるでしょう。
リモートワークに向けた環境やルールの整備なども、社内SEの対応範囲となっているため、その点からも社内SEの活躍できる場面は多くなっているといえます。技術力の高い人材は重宝され、評価も上がっていくことから、収入面での高待遇も期待できるでしょう。
関連記事:社内SEの将来性は?仕事内容や平均年収とキャリアパスも紹介
幅広いスキルや経験が身につく
社内SEの業務対象は企業内のITに関わる業務全般です。さまざまな業務が企業の中では発生し、社内SEはこれらのあらゆるところで対応にあたるため、広い業務知識を得ることができます。
また、社内へのITシステム導入の際には、システム企画の立案や業務部門へのヒアリングにより要件を検討する段階から、外部ベンダーへの依頼と管理、受け入れ、運用テスト、ユーザー教育など幅広い工程を経験することができます。エンジニアとしての活躍範囲を広げるために役立つ経験ができるでしょう。
技術領域でも、新たな技術への知見を得続けることが可能です。DXに伴うシステム構築では、AIやデータサイエンスなどの先端技術を用いる機会があり、業務の中で技術的な知識とスキルを向上させることが期待できます。
社内SEが活躍する業界
社内のITインフラを担う社内SEは、特定の業界に限らず幅広く必要とされる職種です。とはいえ、業界や事業内容によって求められる仕事内容が異なるのも事実です。
そこで、分かりやすい例として「製造業」「金融・保険業」「Web・IT系」の3つを取り上げ、それぞれで働く社内SEの仕事内容や役割などを紹介します。
製造業
製造業は、ほかの業界に比べ「ITを取り入れるハードルの高さ」「経営視点と現場視点での課題が異なり折り合いを付けるのが難しい」という理由から、IT化・デジタル化やDXの推進に時間がかかる場合も多いです。そのため、既存システムと向き合いつつ企業のペースに合わせた社内のITインフラ改善・運用を推進していくことになるでしょう。
製造業で主に導入されているシステムは、「ERP(統合管理システム)」「SCM(流通管理システム)」「CRM(顧客管理システム)」の3つです。一方でグローバル化(海外拠点など)が進んでいる業界でもあるため、ほかの業界では身につけにくいスキルを得られる点も特徴です。
金融・保険業
ここでいう金融とは、大分類した銀行や証券会社などです。金融業界や保険業界は直接的にユーザーのお金を取り扱う業種であることから、1つの不具合が会社の社会的信用に大きな影響を与えます。
そのため、設計や開発のフェーズでは慎重さや綿密さが求められる一方で、運用保守におけるトラブル時にはスピード感を持って解決にあたることが求められます。社会インフラを支えるという責任感ややりがいがあり、社内SEの中でも、金融・保険業の社内SEは比較的高い年収を得やすい傾向にあります。
Web・IT系企業
一部の企業では、「自社サービスの企画・開発」も社内SEの仕事に含まれますが、このケースによく該当するのがWeb・IT系企業の社内SEです。社内インフラに関する業務が社内SEの仕事と認識している方からすると、入社後の仕事内容にギャップが出ることがあるので、求人を見る際には注意しましょう。
また、Web・IT系企業は基本的にIT投資に積極的であることが多いです。そのため、最新のシステムに触れる機会が多く、社内でIT投資への提案もしやすいというのが特徴です。一方で技術トレンドを追い続ける必要性が高くなるため、この点を苦に感じない方に向いています。
社内SEへの転職で求められるスキル・経験
社内SEの業務範囲は広く、対応する工程も企業によってさまざまです。したがって、志望先の企業により転職で求めらえるスキルや経験も異なってきます。転職先企業の求める社内SE像や具体的な業務内容にあわせた求人を探しミスマッチを防ぐことが重要です。
一般的には、業務範囲が広いことから、一部の専門的な知識を深く身につけるというよりも幅広く対応できるオールラウンダーなスキルの保有が好まれます。
また、社内SEとして強いアピールポイントとなる経験もあります。社内SEに求められるスキルや経験をチェックしていきましょう。
関連記事:社内SEに必要なスキル!SEとの違いや役立つ資格も解説
コミュニケーションスキル
社内SEは、社内外の関係者とのコミュニケーションが多い職種です。社内システムの開発では、ベンダー企業の担当者との交渉が必要となります。
また、ヘルプデスクとして自社の社員からの問い合わせにも対応しなければなりません。さらに、社内調整の役割も担うことがあるため、円滑な調整業務にはコミュニケーションスキルが不可欠です。
開発スキル
社内SEはエンジニアとしての技術力も求められます。社内SEになると自分で手を動かすことは少なくなりますが、要件定義書や設計書の作成のほか、開発業務を外注した際のベンダーコントロールなども担当します。社内SEになるには、上流から下流までの一通りの開発スキルと経験が必要です。
予算管理スキル
上位の社内SEの業務となるのが、企業のIT投資に関する予算をたて、管理することです。
ITへの投資は多くのコストがかかりますが、経営戦略としても非常に重要な施策です。また、既存のITシステムやデバイスは事業に組み込まれ欠かせない存在となっているため、稼働状況を維持することも必須となります。これらの予算立案を、年間やさらに長期的な計画をたて、コストに対してメリットが得られるようにIT側の立場として経営層を支援します。
また、システム開発などのプロジェクトで予算を消費する際、その管理をすることも社内SEの業務となります。社内のリソースと外部への発注などを振り分け、予算内にコストを納めることが達成すべき目標です。
予算をたて、管理するために、社内SEには予算管理のためのスキルも必要となります。財務知識やリソースマネジメントなどのスキルを身につけることで、社内SEとして上位の仕事を担当することに近づけるといえるでしょう。
特定の業界に対する興味・関心
志望理由の話にもつながりますが、社内SEの採用ではさまざまなスキルだけでなく、「企業が属する業界への興味、関心があること」も求められます。たとえば小売系企業だと、エンジニアであっても一定期間店舗に立って販売の仕事をする場合がありますが、これは現場への理解を深めて欲しいという希望から実施されるものです。
現場への理解があれば、社内システムを設計するときにも、どのような機能が役に立つのかを自分で考えることができるため、必然的にアウトプットの質も変わってきます。入社前の時点で業界や事業に詳しくある必要はないですが、興味を持てない人は社内SE向きとはいえません。
上流工程の経験
社内SE求人ではスキルとマインドが求められるので、前職で以下のような職種・ポジションを経験していた人であれば、比較的転職もしやすくなります。
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・ITコンサルタント
・プロジェクトマネージャー(PM)
・システム開発における上流工程
社内SEの業務には社内折衝やベンダーコントロールが発生するため、それに近い業務経験であるITコンサルタントやPM、システム開発における上流工程の経験があると有利になります。これらの経験がある人は、たとえ社内SEとしての経験は未経験であったとしても求められるスキルが似ているため、企業側も入社後に活躍できるイメージを持ちやすいです。
社内SEの転職に役立つ資格
社内SEの転職においては、業務と関係のある資格を持っていると、転職時のアピールに有効です。社内SEを目指すのであれば、資格取得も成功率を高める方法の一つとなります。
資格の保有は、自身のスキルを対外的に証明することが可能です。スキルや知識のレベルをアピールすることができるため、資格を保有していない人に比べると有利となります。
資格を持っていることで、ある程度の業界知識があることも証明できます。入社後にどのような業務に携わるかによって評価される資格も変わってくるので、自身の望むキャリアに合わせて取得を目指すことをおすすめします。
資格の例として、下記があげられます。
資格名 | 役立つシーン |
---|---|
ITストラテジスト試験 | 企業のIT戦略の策定 |
情報処理安全確保支援士試験 | セキュリティ関連業務 |
システムアーキテクト試験 | システムの上流工程 |
ITサービスマネージャ試験 | 社内システムの運用管理 |
システム監査技術者試験 | システム監査への対応 |
ただし、社内SEに限ったことではありませんが、中途採用で重視されるのは資格ではなく実務経験です。資格があるからといって必ずしも採用されるわけではないため、あくまでも+αのアピールポイントと捉えておくと良いでしょう。
関連記事:社内SEの仕事・転職に役立つおすすめの資格を分野別に紹介
他職種から社内SEへの転職事例
社内SEが未経験である場合、特に「自分のキャリアやスキルで希望する企業に転職できるのか」という不安を感じる方が多いでしょう。しかし、未経験から社内SEへの転職事例はあり、決して不可能ではありません。
社内SEへ転職できた方はどのような対策をしていたのか、成功事例をいくつか紹介します。また、キャリアアドバイザーが転職成功のポイントを解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:社内SEの志望動機の書き方!パターン別の作成ポイントや例文を紹介
【社内SEへの転職成功】Aさん29歳・男性
【転職前】SIer(サーバーサイドエンジニア)
【転職後】不動産(社内SE)
現職で自分の裁量による仕事をコントロールしにくいことから、働き方の改善を希望していました。また、保守フェーズの役割が多く、上流部分を経験できないことも理由でした。自分で仕事をコントロールでき、企画フェーズから携わりたいとの思いがあり、社内SEへの転職活動を始めました。
転職成功のポイント:スキルの棚卸し・キャリア形成のパターン提示・念入りな面接対策
【担当したキャリアアドバイザーのコメント】
開発エンジニアとしてC#の使用経験やデータベース周りの知見があり、さらに20代ではあるものの小規模のPM経験もあり、折衝能力やマネジメントスキルもアピールできる点でした。
ご本人のやりたい軸「開発よりも上流工程のスキルを磨いていきたい」、「ワークライフバランスを維持しながら市場価値もあげていきたい」を踏まえ、企業の選定を行いました。社内SEの中でも上流工程が中心で、DXに力を入れたい・IT投資をおしまない企業といった観点で、転職先の企業をご紹介いたしました。
面接前には十分な情報提供とともに面接対策を行い、最終的に不動産系企業の内定を獲得することができました。
【社内SEへの転職成功】Bさん38歳・男性
【転職前】SIer(PM)
【転職後】化学(社内SE)
現職で慢性的に人が足りず、一年以上も土日出勤を頻繁に続けていたことから、ワークライフバランスを整える働き方を希望していました。また、PMだけでなく技術の部分にも携わりたいとの思いから、社内SEへの転職活動を始めました。
転職成功のポイント:スキルの棚卸・叶えたい希望条件の深堀り・念入りな面接対策
【担当したキャリアアドバイザーのコメント】
大規模基幹系システムのPM経験をもち、技術スタックもJava(Spring)をメインに、クラウド周りの知見もある方でした。
当初は、残業時間の抑制のみを重視されていましたが、残業を抑制したその先にご本人のやりたい軸が何なのかを棚卸し、単にPMをやるだけではなく、アーキテクチャ領域にも触れていきたいといった思いをお持ちでした。そのため、企画やベンダーコントロールのみを行うのではなく、技術領域にも触れられる企業をご紹介いたしました。
面接前には十分な情報提供とともに面接対策を行い、最終的に化学系企業の内定を獲得することができました。
社内SEへ転職したい人がやるべきこと
ここまで社内SEの仕事内容や求められるスキル・経験、年収など、転職を考えている人が気になるであろうポイントについて解説してきました。ハードルが高いといわれる社内SEへの転職ですが、それでも目指したいと考えるエンジニアは、具体的にどのようなアクションを起こせば良いのでしょうか。社内SEを目指すためにやるべきことをまとめました。
関連記事:社内SEになるには?求められるスキルや資格を解説
プログラマーは、上流工程を経験することがファーストステップ
ITコンサルタントやPMの経験が既にある方であれば、そのまま転職活動を進めても問題ないでしょう。しかし、これまでプログラマー経験しかなく、上流工程を経験したことがないという方であれば、まずは「大手SIerやプライムベンダーにおける上流工程の経験」あるいは「システム開発プロジェクトにおけるリーダー経験」を積む必要があります。
これらが経験できる企業に転職をするか、現職でPMやPLなど、プロジェクト全体を見渡せるポジションに就くためのアクションを起こしましょう。
ITを活用した「コスト削減」の実績を作る
社内SEの転職では「コスト削減」に成功した実績のある人は強いです。担当プロジェクトのコストを把握した上で、より安く質の高いものを作るためにどんな工夫をしたのか、自分の言葉で語れるようになっておくと良いでしょう。
コスト削減には以下2つの観点があります。
-
・生産性の向上・運用費用の削減
「生産性の向上」であれば、「RPAを活用した業務効率化」や「クラウド化による既存システムの見直し」などの実績があれば評価の対象となります。
「運用費用の削減」は「パソコンやスマートフォンなどのIT資産の運用コスト削減」や「基幹システムの運用・保守にかかる固定費用の削減」などがそれにあたります。後者は現職が社内SEでなければ経験しづらい内容ですが、クライアント企業に運用コスト削減を提案し採用された経験などがあれば、立派なアピールになるでしょう。
需要の高いスキルを身につける
社内SEの採用傾向では、スペシャリストやサービス開発経験者など、DX推進を目的とした採用が増えています。そのため、AIやクラウド、データサイエンス、セキュリティなど、需要の高いスキルを習得しておくと転職活動の際に大きな武器になるでしょう。
ただし、IT業界の動向は変化が激しいため、業界の需要を常にキャッチアップし、対応できるスキルを身につけていくことが大切です。
社内SEになればやりたいことができるのか確認することも大切
転職後も長期的にキャリアを積むためには、実際の業務内容と求職者の志向性がマッチしているかどうかが大切なポイントです。そのため、社内SEの仕事内容や役割を今一度確認し、社内SEになることで自分のやりたいことが実現できるのか考えてみましょう。
転職後のギャップが小さければ小さいほど、やりがいをもって長く働けます。転職前の不明点や悩みは早めに解決し、将来のビジョンを具体的に計画できればミスマッチを防げるでしょう。
社内SEの求人で見る3つのポイント
社内SEの転職活動においては、働き方・仕事内容・組織風土など、重点を置くポイントによって選択すべき求人が異なります。事前に社内SEについての理解を深めておき、自分のイメージを固めておくと求人も探しやすいです。
ここでは、社内SEの求人を探す場合に、どういった点に注目すべきかを3つのポイントにまとめました。1つずつチェックしていきましょう。
1. 社風が合っているか
企業の経営方針や雰囲気を知り、自分に合うかどうかを判断することも大切です。たとえば、社内SEは企業によって残業が多いところもあればほとんどないところもあります。
ワークライフバランスを重視して働きたいのであれば、残業が少ない求人や年間を通じた働き方が想像がしやすい求人がおすすめです。この場合、大手金融機関や官公庁などの求人がマッチするといえます。
求人情報をチェックすることはもちろんですが、社風を感じるための情報が少ない場合があります。転職を希望する企業のWebサイトを見ることも社風を感じるための参考の1つになるでしょう。
2. 業務内容は希望のものか
開発やインフラを希望する場合は、担当業務として携わることができるか、求人内容をよく確認しましょう。大企業になればなるほど各種の基幹業務用のシステムやWebアプリケーションを活用しているケースが多く、これらのアプリ・ツールの開発が必須となります。
また、社内SEは社内システム開発や保守運用、改善も担います。システム運用では、安定性のあるもの、セキュリティに優れたものが求められます。
大企業となれば複数部署から要望が出るため、その対応で他部署との連携を求められることもあり、業務の難易度が高くなることもあります。さらに、社内ネットワークや情報インフラ保守も社内SEの仕事です。
このように社内SEの業務内容は多岐にわたるため、社内SEの求人であっても業務内容が希望にそぐわないことも想定されます。求人を1つずつ順に見ていくのではなく、まずは自分がやりたい業務に絞って探してみると良いでしょう。
3. ITへの投資意識があるか
IT戦略によって、生産性や競争力を高めていきたい企業が増えてきています。それに伴い、社内SEはIT戦略を立案し推進していく役割を担います。
たとえば、情報システムを活用して効率化を提案したり、ITシステムについて経営層からの相談に乗るなども社内SEの重要な仕事です。
企業がITへの投資に消極的だと、社内SEとしての業務や提案も制限され、自分が思うように業務を進められない可能性があります。そのため、転職先企業の将来性を見据えた「経営陣のIT投資への意識が高いか」という観点も大事なポイントです。
社内SEの求人例
転職時の社内SEに求められるスキルや人物像をより具体的にイメージできるよう、以下にいくつか求人例を紹介します。応募段階ではないという人であっても、実際の求人を見れば現時点での経験やスキルと比較することによって新しい発見があるかもしれません。
求人によって求められるスキル・経験にも幅があるので、応募前には必ず確認するようにしましょう。
社内SEの求人・転職情報>
ヘルプデスク業務がメインの求人例
老舗化学メーカーの社内IT業務全般やヘルプデスクを主な業務とする社内SEの求人例です。
【想定年収】
330~540万円
【業務内容】
・社内IT業務全般及びヘルプデスク
・サーバーおよびネットワーク運用、管理
・社内システムの運用・保守
・社内ITコンサルティング
・クライアントPCの運用、管理
・システム課内庶務業務(備品発注、管理や書類作成等)
【求められるスキル・経験】
・企業でのIT部門勤務経験者、もしくは、ITベンダーでのSE担当経験者
・WAN‐LANネットワーク構築運用経験
・クライアントPC500台以上の運用管理経験
・オンプレミスからクラウドへの移行経験
・臨機応変に対応できる方
・さまざまな職種の人と関わり、やり取りができる方
基幹システムの運用と業務プロセス改善がメインの求人例
社内情報システム部門にて、社内基幹システムの運用、開発および業務プロセス改善を行う社内SEの求人例です。
【想定年収】
560~840万円
【業務内容】
・社内基幹システムのシステム運用保守、改善に向けた開発
・社内の業務システムとプロセスの最適化
【求められるスキル・経験】
・Python / TypeScriptいずれかの言語での設計~開発経験
・法人向け業務システムのインフラ構築~運用経験
・Salesforceなどの法人向けSaaSの選定・導入・運用の経験
社内システム開発・管理がメインの求人例
社内SNS・社内ブログ等の情報共有システムや、社内向け業務システム、自社パッケージとの連携システムなど、新しい自社サービス、自社パッケージ関連の開発を中心とする社内SEの求人例です。
【想定年収】
400~1,600万円
【業務内容】
・社内情報共有システム社内SNS、社内ブログの開発
・社内向け業務システムの開発
・自社パッケージ連携サービスの開発
・新規自社サービスの開発
【求められるスキル・経験】
・Webアプリケーション開発実務経験1年以上
・積極性、向上心のある方
・新しい技術に興味・関心がある方
・チームワークを大事にされる方
IT戦略などの上流工程がメインの求人例
グループの社内SE担当としてIT戦略を担い、要件定義前の事前検討などから幅広くシステム開発を行うSEの求人例です。
【想定年収】
480~900万円
【業務内容】
・グループ企業の社内システム開発
・システム化事前検討、要件定義
・上流工程中心
【求められるスキル・経験】
・Javaを用いた開発経験
・要件定義等、上流工程の経験
・外部設計~結合テストまでの経験
社内SEへの転職のアピールポイント
社内SEへの転職において、強くアピールできるポイントについて紹介します。
基本的にはもとの職場であげた実績をアピールするのですが、その中でも高い評価に繋がるのがチームで業務に取り組み成果をあげた実績です。社内SEの業務の中でも、一人ですべてを対応するわけではなく、外部のリソースなどを活用することが前提となるためです。
また、自分以外による評価を伝えられれば、客観性があるためこちらも強くアピールできます。転職先でどのように活躍できるか、ビジョンを伝えることも有効です。
関連記事:
社内SEが「楽な職種」と言われる5つの理由
社内SEとヘルプデスクの違い
チームであげた成果をアピールする
個人のスキルや成績は重要ですが、それ以上に重要なのはチームの成果です。チームでの成果をアピールできれば、適切なコミュニケーションがとれることやプロジェクトに必要とされる技術や知識についても盛り込めるため、企業の注目を引きやすいです。
また、チームリーダーの経験があれば、リーダーとして解決した課題や成果についてもアピールできると効果的でしょう。
社外評価・上司評価をアピールする
「現在の上司や顧客から高く評価されているのか?」という点は採用担当者の評価の参考になります。そのため、書類選考や面接では社外評価や上司評価など、客観的な評価も含めるようにしましょう。
たとえば、社外評価ではイベントでの登壇実績、社内評価では社内表彰・昇進のスピードなどについてアピールできると良いです。
転職後に活躍できることをアピールする
採用担当者は「高いスキルを自社で発揮できる人」を採用したいと考えています。特に即戦力を期待している場合はその傾向は顕著です。
これまでの成果は、会社の看板や仕組みで上手くいったのではないことを説明できるようにしましょう。スキルや経験をアピールするだけでなく、入社後に具体的にどのような貢献ができるかもあわせて伝えられるとより評価されやすいです。
関連記事:社内SEが簿記を取得するメリットは?勉強方法なども紹介
社内SEへの転職で失敗する人の共通点
社内SEは人気の職種である一方で、転職に成功しても入社後に早期退職してしまう、思っていた職務内容ではなく意欲を喪失してしまうなど、結果的に失敗してしまう人も一定数います。
転職の失敗によってその後のキャリア形成にも悪影響を及ぼしかねないため、転職を検討する際は、下調べをした上で覚悟を持って望むことが大切です。以下に社内SE転職で失敗する人の共通点をまとめました。
関連記事:社内SEはやめとけと言われる理由は?メリット、キャリアアップ例を解説!
想定していたよりも残業が多く、疲弊してしまう
「残業が少ない」と考えられることが社内SEの人気の理由の一つでしたが、実際は必ずしも「社内SE=残業が少ない」とはいえません。
自社システムであっても納期前に稼働が上がることはよくあることであり、企業によっては社内SEの業務範囲が広いために業務過多になり、残業が多くなるケースもあります。結果的に前職よりも残業が多くなってしまい、疲弊して退職する方も中にはいます。
入社前イメージと実際の業務内容にギャップがある
社内SEの役割や裁量の大きさは企業によって異なります。現職の主な業務内容が下流工程の場合、IT戦略や社内システム開発の企画立案といった「上流工程が経験できること」を社内SEの志望理由として挙げる方もいますが、これらの業務を担当できるかどうかは各企業の方針や社風によります。
実際に、システム開発の上流工程に携われると思っていたのに、入社してみたらヘルプデスクや社内調整などの業務がメインで早期退職してしまったという方も少なくありません。
業務内容を求人票だけで判断するのは難しいのが実情です。求人票内で「AI活用」や「DX推進」など先端の技術やビジネスモデルへの取り組みを掲げていたとしても、社内の実態と乖離していることがあるからです。
業務内容について不明点がある場合は、採用面接の場で「平均的な1日の業務スケジュール」や「社内SEが担当する主な業務内容やミッション」などを質問してみると良いでしょう。
社内SE以外の業務でやりたい仕事が圧迫される
転職先によっては社内SEは体制上の理由で総務などの部署に配属されることも多いです。その場合、切れた電球の取り換えや設備保全といった、IT以外の業務に大きな時間を割くことがあります。総務としての仕事が常にあるため、社内SEとしての仕事が思うようにできず満足しにくい場合もあるでしょう。
また、エンジニアが自分1人もしくは少人数だと社内のインフラ整備やシステム開発、ヘルプデスクといった幅広い業務を任されるので、希望している業務だけをすることはできません。社内SEとして1つの仕事だけを極めるのは難しいといえます。
コミュニケーションを上手くとれない
業務によっては、ITの知見が少ない人へシステムについて説明をする機会もあります。専門用語を分かりやすく説明することは簡単ではなく、折衝能力が必要です。不具合が発生したときも、納得がいくように説明しなければなりません。
SEは黙々と業務をこなすイメージがあるかもしれませんが、一般的なSEと比べて社内SEは人を相手にする業務が多いです。コミュニケーションが苦手な人だと精神的な負担を感じやすく、1人で仕事をしたい人にはあまり向かないでしょう。
将来のキャリアプランが見えない
社内SEは稼働中のシステムの保守や運用などを行いますが、自ら開発に携わる機会は少ないです。そのため、新しい技術やスキルが身につきにくい傾向にあります。
また、業務範囲が多岐にわたることから、一般的なシステムエンジニアよりも技術的な知識、スキルを学ぶ機会が減ってしまいます。転職後のキャリアプランもある程度イメージしながら転職活動を進めていけば、入社後のギャップも少ないでしょう。
関連記事:社内SEのキャリアパス!具体例やキャリアアップ転職のコツを解説
社内SEに関するよくある質問
社内SEは転職のハードルが高いがゆえに、興味はあっても不安になり諦めてしまう人も少なくありません。不安になる人の傾向としては、社内SEについての理解が足りなかったり疑問点を残したままである点が原因の場合が多いです。社内SEになれるスキルや実務経験を持っているのであれば、そのような理由で転職を諦めてしまうことは惜しいです。
そこで、疑問が解決できるよう社内SEについてよくある質問をまとめました。疑問を1つでも多く解決し、社内SEの転職活動をスムーズに進めていきましょう。
Q1. 社内SEの仕事内容は何ですか?
自社システムの構築・保守やネットワーク機器などの社内インフラの整備を担当し、ITを活用しながら社内業務の効率化を図る業務や提案を継続的に担うことが社内SEの仕事です。システムの不具合があった場合も社内SEが対応します。専門性の高い知識と技術、コミュニケーション能力などが求められます。
Q2. 社内SE一年目で習得したほうが良いスキルは何ですか?
社内SEで評価されるのは、オールラウンドなスキルを持つエンジニアです。システム開発スキルのみならず、早いうちにステークホルダーとの折衝能力やコミュニケーション能力を身につけておくと良いでしょう。
また、業界動向をチェックし、需要に合わせた資格取得も積極的に検討するとキャリア形成に役立ちます。
Q3. 社内SE転職でよく見る失敗理由は何ですか?
早期退職につながる理由として多く挙げられるのは、「就労時間が予想以上に長い」「想定と転職後の業務内容のギャップが大きい」ことです。この2つの失敗を避けるためには、転職前の情報収集が非常に重要です。転職における疑問点や不安点がある場合もなるべく早めに解消しておきましょう。
関連記事:社内SEのメリット・デメリットは? 院内SEも含めて解説
Q4. 30代未経験から社内SEになることはできますか?
エンジニア経験のある方であれば、30代未経験でも社内SEへ転職できる可能性はあります。しかし、エンジニア未経験の場合は実務経験がない上にポテンシャル採用を狙う場合もアピール材料が少ないため、現実的に厳しいです。時間はかかりますが、まずは関連職種にて経験を積み、段階的に目指すことがおすすめです。
Q5. 社内SEの給与相場はいくらですか?
レバテックキャリアに掲載されている、社内SEの求人情報(2024年11月18日時点)の上位表示30件をもとに算出したところ、社内SEの平均年収は約586万円でした。これらの数字は参考程度とし、希望する求人がある場合は随時自分の目で確かめる必要があります。
まとめ
社内SEは、企業の中で利用するITシステムの企画、開発、運用やITインフラやデバイスの導入、管理、ヘルプデスク業務などを担うエンジニア職種です。DX推進においても重要な役割が期待されているため、将来性も高いといえます。
ほかのエンジニア職に比べて、ワークライフバランスが調整しやすいと考えられていることなどを理由に、転職の競争倍率が高く、狭き門となりがちです。
また、社内SEの業務範囲は企業によって異なり、広範にわたる場合もあります。したがって社内SEへの転職を目指している場合には、自分が社内SEとしてしたい仕事を明確にし、それにあった求人を見極めることが重要です。その上で、本記事でも記載しているポイントなどの対策を行いましょう。
より転職成功率を上げるために、的確なアドバイスがもらえたり面接対策ができる転職相談サービスを活用するのも良いでしょう。社内SEは転職難易度が高いので、事前にとれる対策は多いほうが有利です。
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