「◯aaS(as a Service)」とは
「〇aaS」とは「〇〇as a Service」の略称で、クラウドコンピューティングサービスの形態の一つです。インターネット上やクラウド上で機能や環境などをパッケージとして提供します。
また、「◯aaS」を「EaaS(Everything as a Service)」または「XaaS(X as a Service)」と表記することもあります。「XaaS」の「X」は未知の値で、そのサービスのジャンルの頭文字をあてはめるのが慣例です。
ここで問題となるのが、「◯aaS(EaaS、XaaS)」の種類が多いことです。意味を知らないと、Baas、IaaS、PaaS、SaaSといった略称だけ見ても何のサービスか分かりません。
さらに、総称であるEaaSは「Exploits as a Service(サイバー攻撃のツールを提供するサービス) 」の略としても使われているので、非常にややこしくなっています。しかし、「◯aaS」はクラウドサービスでは定番の略称となっているので、代表的な「〇aaS」だけでも覚えておきましょう。
本記事内では分かりやすいように「◯aaS」と表記しています。
クラウドサービスとは
クラウドサービスとは、コンピュータにソフトウェアやアプリケーションをダウンロードしなくても、ネットワーク経由で利用できるサービスです。ソフトウェアやアプリケーション以外にも、ストレージやサーバなどさまざまなサービスがあります。
代表例として、GoogleのGmailなどが挙げられます。アカウントさえあれば、インターネット上で、どの端末からでも利用できます。
クラウドサービスのメリット
クラウドサービスを使用するメリットとしては、設備を揃える必要がなく、ネットワークにつながる端末さえあれば良いことが挙げられます。さらに、システムはクラウド上に存在するため、どの端末からでもアクセスが可能という点もメリットです。
また、新しいシステムを導入する際、利用料を払えば始められるため、スピーディかつ低コストです。保守や管理はクラウド側の事業者が担うため、人員コストやリソースの削減にもなります。
臨機応変にサービスの変更やオプションなどの追加もできるため、その時々に合ったサービスの利用が可能です。
クラウドサービスのデメリット
メリットがある一方でデメリットも存在します。クラウドサービスのデメリットは、トラブルやバグが発生した際、復旧を待つしかないことです。サーバーダウンなどが起こってしまうと復旧するまで使用できなくなってしまいます。
セキュリティに関してはしっかりとした対策が取られていますが、オンラインであるため、絶対に大丈夫とは言い切れないでしょう。また、オフライン環境だと利用できないということもデメリットの一つです。
「◯aaS」11種類の概要説明
「〇aaS」には数多くの種類が存在し、代表的なものとしては、PaaS、SaaS、IaaSなどが挙げられます。また、同じ頭文字でも意味が異なるものもあるため注意が必要です。
ここからは、代表的な11種類の「◯aaS」について、それぞれ概要を説明します。以下では、アルファベット順に紹介しています。
1.AaaSとは(Analytics as a Service)
「Analytics」は「解析、分析」という意味で、AaaSはクラウドベースでデータ分析をするサービスです。大規模なデータ分析を行う際に活用できます。
また、「American Association for the Advancement of Science(米国科学振興協会)」の略称もAAASですが、こちらは全て大文字で略しているため、AaaSと表記の仕方が異なります。
2.BaaSとは(Backend as a Service)
「Backend as a Service」は、ユーザー認証、ユーザー登録・管理、プッシュ通知、データ管理などバックエンドでの処理をサポートするサービスです。「BaaS」はモバイルアプリ向けのバックエンド機能を提供するサービスの総称で、「MBaaS(Mobile Backend as a Service)」とも呼ばれています。
たとえば、Googleが提供している「Firebase」はBaaSの一種です。リアルタイムでのアプリデータの保存・同期、バグの検出、クラッシュレポート、ユーザー認証など、さまざまな機能を提供しています。
3.DaaSとは(Desktop as a Service / Data as a Service)
「D」は「Desktop」の略で、クラウド上で仮想デスクトップ環境を実現するサービスです。DaaSではネットワーク上のサーバにソフトやアプリ、データを保存しているため、外出先でも手元の端末から利用することができます。
デスクトップ仮想化やリモートデスクトップとは異なり、クラウド上に仮想デスクトップ環境を構築してネットワーク経由で利用するサービスです。
また、DaaSは「Data as a Service」の略称でもあります。「Data as a Service」はクラウド上でデータを集約・分析できるサービスです。自社のデータベースをクラウドに保管し、データ処理・分析を行うことができます。
4.DBaaSとは(Database as a Service)
「DB」は「Database(データベース)」の略で、ネットワーク経由でデータベースの利用ができるクラウドサービスです。自社でDBMS(データベース管理システム)を用意する必要がないため、構築する手間の省略とコストの節約ができます。また、必要に応じて容量なども変更ができるため、無駄なコストを減らせるでしょう。
5.FaaSとは(Framework as a Service / Function as a Service)
FaaSは「Framework as a Service」と「Function as a Service」の2つの意味があります。
「Framework as a Service」は、後ほど解説する「PaaS (Platform as a Service)」と「SaaS(Software as a Service)」の中間にあたるサービスで、ソフトウェアフレームワークを提供します。
「Function as a Service」は、サーバレスアーキテクチャを提供するサービスです。サーバのプロビジョニングや管理はベンダー(提供会社)が行ってくれるため、利用者はセキュリティアップデートなどのインフラ管理の手間を気にすることなくコード実行ができます。
料金はコード実行に利用したリソース分にのみかかるため、利用していないあいだは料金が発生しません。
「Function as a Service」の代表的な例として、Amazonの「AWS Lambda」、Googleの「Cloud Functions」が挙げられます。
関連記事:AWSとは?特徴や資格、サービスを初心者向けに解説
6.GaaSとは(Games as a Service)
「Games as a Service」は、ゲームを継続的にアップデートすることでサービスとして提供するというものです。従来は製品としてソフトを販売して終わりでしたが「GaaS」はオンラインでソフトをダウンロードし、アップデートを繰り返すことで継続的なプレイを促すことが可能です。
しかし、定期的なアップデートや新コンテンツなどの作成が必要なことから、開発にコストがかかります。
7.HaaSとは(Hardware as a Service)
「Hardware as a Service」は、システム構築に必要な仮想サーバを提供するサービスで、「IaaS(Infrastructure as a Service)」の領域にも含まれます。ネットワーク経由でOS、CPU、メモリー、ストレージなどが利用できます。物理的にサーバを用意する必要がなく、必要な分だけ利用できるというメリットがあります。
8.IaaSとは(Infrastructure as a Service)
「IaaS」は「Infrastructure as a Service」の略で、仮想サーバやネットワークといったデジタルインフラをクラウドで提供するサービスです。IaaSを利用することで、自社にサーバー機器などを設置したり、管理したりしなくても、必要なときだけサーバーやストレージを利用することができます。
代表的な例として「Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)」「Google Compute Engine」などが該当します。
関連記事:AWSのEC2とは?利用するメリット、需要の高さを解説
9.NaaSとは(Network as a Service)
「Network as a Service」は、ネットワーク環境をクラウド上に構築できるサービスです。利用することでネットワーク構築、運用をすることができます。ルータなどのネットワーク機器を用意する必要がないため、ネットワーク環境の管理やメンテナンスなどの手間とコストを節約できます。
10.PaaSとは(Platform as a Service)
「Platform as a Service」は、アプリケーション構築に必要なプラットフォームを提供するサービスです。OS、サーバといったインフラを提供するという点では「IaaS」と似ていますが、「PaaS」ではミドルウェアも含めてプラットフォーム一式を提供します。
PaaSの代表的な例として「Google App Engine」や「Microsoft Azure」があります。
PaaSとIaaSの違い
PaaSとIaaSは似ていますが、クラウドサービスとしてどこまで提供するかの違いがあります。PaaSがインフラに加えてソフトウェアまで提供するのに対し、IaaSはインフラのみを提供します。
利用者側の目線では、PaaSだと開発環境がある程度そろった状態で、IaaSだとサービス利用しているインフラの上に開発用のソフトウェアを導入する必要があります。PaaSは利用のハードルが低い、IaaSは自由度が高いとそれぞれメリットがあります。
11.SaaSとは(Software as a Service)
「Software as a Service」は、従来はパッケージで購入し自身のコンピューターにインストールしていたソフトウェアを、ネットワーク経由で利用できるようにしたサービスです。パッケージ商品とは異なり、インストールされている端末以外でも利用可能で、複数のユーザーでのデータ共有・編集もできます。
EaaSの中でも特に馴染みが深いサービスで、代表的なSaaSは「Google Workspace(旧称:G Suite)」「Dropbox」「Salesforce」などです。
関連記事:SaaSとは何か?エンジニアに必要な知識やスキルもわかりやすく解説
MaaSとは?
「MaaS」とは「Mobility as a Service」の略称で、IaaSやSaaSから派生して生まれた、交通に特化したサービスです。近年はさらに派生して、物流や決済サービスとしても使われています。
代表的な例としては、ルート検索から予約決済までをアプリで完結できる「tabiwa by WESTER」や時間帯や交通状況から最適ルートを作成する「Loogia(ルージア)」などがあります。
「MaaS」は医療や観光、不動産などあらゆる分野に広がりを見せています。
今後も「◯aaS」が増えてくる可能性大
本記事で解説したEaaS(XaaS)はほんの一部で、ほかにも「◯aaS」と略されるクラウドサービスはたくさんあります。しかも今後も「◯aaS」が増えていく可能性が高いので、ますますややこしくなってしまうかもしれません。
全部を覚える必要はないですが、仕事に関わりのあるEaaSは覚えておきたいところです。よく耳にするであろう「IaaS」と「SaaS」だけでも覚えておくと良いでしょう。
関連記事:Microsoft Azure認定資格とは?難易度一覧も
〇aaSに関するよくある質問
「〇aaS(EaaS、XaaS)」について興味がある方、導入を検討している方の中では、「〇aaS」の概要やSaaSとPaaS、IaaSとPaaSの違いなどについて知りたい方が多いようです。
ここでは、「〇aaS」に関するよくある質問に答えていきます。類似の疑問を持つ方は参考にしてみてください。
Q1. 〇aaSとは何ですか?
「〇aaS」とは「〇〇as a Service」の略称で、インターネット上やクラウド上で機能や環境などを提供するサービスです。
また、「◯aaS」を「EaaS(Everything as a Service)」または「XaaS(X as a Service)」と表記することもあります。
Q2. SaaSとPaaSとは何ですか?
クラウドサービスは、提供できる領域によって細かく分類されています。SaaSとは、インフラからソフトウェアまで提供するクラウドサービスのことです。一方で、PaaSはインフラからプラットフォームまでを提供しています。
Q3. IaaSとPaaSの違いは何ですか?
IaaSとPaaSは提供領域に差があります。IaaSがインフラのみ提供するのに対し、PaaSはインフラに加えてプラットフォームも提供します。そのため、IaaSは構築などの自由度が高く、PaaSは初心者でも利用しやすいというメリットがあります。
まとめ
本記事では「〇aaS(EaaS、XaaS)」の概要について説明しました。略称が重複しているEaaS(XaaS)も多いのでややこしいですが、代表的な「IaaS」「PaaS」「SaaS」だけでも覚えておくと良いでしょう。今後もEaaSは増えていくことが見込まれます。業種に関わる分野だけでもおさえておくことをおすすめします。「◯aaS」と略すのは基本的にクラウドサービスなので、それだけでもぜひ覚えておいてください。
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