Dockerとは?特徴やできることを初心者向けにわかりやすく解説

最終更新日:2024年3月12日

IT業界では近年「コンテナ」と呼ばれる技術が注目されています。中でもコンテナ型ソリューション「Docker」は、コンテナ型技術の代表格として急速に普及しました。Dockerは、ITエンジニアのキャリアアップにつながる可能性が高いスキルです。

この記事では、Dockerの学習を検討している若手エンジニアに向けて、Dockerの概要や特徴、メリット、既存の仮想化技術との違い、スキルが活かせる職種などを解説します。

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この記事のまとめ

  • Dockerとは、Docker社が開発したコンテナ型の仮想環境を作成・配布・実行するためのプラットフォーム
  • 仮想化技術には、「コンテナ型仮想化」「ホスト型仮想化」「ハイパーバイザー型仮想化」の3つの種類がある
  • Dockerのスキルが活かせる職種は、プログラマーやアプリケーションエンジニア、インフラエンジニアなどがある

Dockerとは?

Dockerとは、「コンテナ型仮想化」と呼ばれる仮想環境を作成・配布・実行するためのプラットフォームのことです。Dockerを用いることで、1台のサーバー上で複数のアプリケーションを効率的に動かすことが可能となります。その使いやすさと高い便利性から、今後もDockerの人気はさらに高まることが予想されます。以下では、Dockerと仮想化技術との違いやDockerの特徴、Dockerにできることについて詳しく解説していきます。

Dockerと仮想化技術との違い

Dockerと従来の仮想化マシンの違い


Dockerと従来から存在する仮想化技術との主な違いは、どのような点にあるのでしょうか。Dockerは「コンテナ型仮想化」と呼ばれることもありますが、厳密に言えば従来の仮想化とは根本的に異なる技術です。以下では、従来の仮想化技術やDockerによるコンテナ構築について、深く掘り下げて解説していきます。

従来の仮想化技術

従来の仮想化技術は、仮想環境の構築のために「ホストOS」が必須でした。また、ホストOSの上で動作する「仮想化ソフトウェア」や、さらにその上で動作する「ゲストOS」も必要です。

・従来の仮想環境の概略
ホストOS → 仮想化ソフトウェア → ゲストOS → プロセス

例えばあるプロセス(Excelなど)を動作させるためには、仮想化ソフトウェアとゲストOSがスムーズに動作するためのリソースが必要です。したがって、仮想環境の構築には一定以上の計算リソースを持ったハードウェアが必要になります。また、常に仮想化ソフトウェアとゲストOSが動作するため、オーバーヘッドが大きくなりやすいという弱点もありました。

Dockerによるコンテナ構築

DockerはホストOSとプロセスの間に、仮想化ソフトウェアやゲストOSは必要ではありません

・Dockerの概略
ホストOS → (コンテナで区切られた)プロセス

単純に仮想化ソフトウェアとゲストOSが存在しない分だけ、計算リソースが小さくて済むわけです。また、コンテナ内のプロセスはホストOSのカーネルを直接的に利用します。従来の仮想化技術は「ゲストOS上のコマンドやライブラリ」を利用するため、この点でも違いがあります。

Dockerの特徴

Dockerは、Docker社が開発しているコンテナ型の仮想環境を作成・配布・実行するためのプラットフォームです。ホストマシンのLinuxカーネルを利用し、Docker Engineとよばれる独自のモジュールによってコンテナ実行を制御しています。

Dockerではコンテナ型の環境構築が、より小さな手間で実現できるようになっています。また、IaC(インフラストラクチャ アズ コード)の要素も持っており、ミドルウェアのインストールや各種環境設定をコード化して管理できる点も特徴のひとつです。

Dockerにできること

Dockerは、1台のサーバー上で複数のアプリケーションを効率的に動かすことができる技術です。これにより、サーバーのリソースを最大限に活用し、コストの節約ができます。また、Dockerコンテナ(アプリケーションの実行環境)の移転や共有は、従来の方法と比べて手間がかからず、簡単に行えます。

これにより、開発者間での作業の効率化が可能となります。特に、アプリケーションの開発環境をDockerで構築すると、その環境を他のエンジニアとオンライン上で簡単に共有することができ、チームでの開発作業がスムーズに進行します。

仮想化技術に3種類について

Dockerでは、「コンテナ型仮想化」を仮想化技術として採用しています。仮想化技術には、この「コンテナ型仮想化」だけでなく、「ホスト型仮想化」や「ハイパーバイザー型仮想化」といった他の他の技術も存在します。これらの仮想化技術はそれぞれ異なる特性や利点を持っており、適切なシチュエーションでの利用が求められます。以下では、これらの3種類の仮想化技術の特徴について、それぞれを深く掘り下げて解説していきます。

コンテナ型仮想化

コンテナ型仮想化とは、Linuxカーネルが持つ「コンテナ機能」を用いて、他のプロセスから隔離された実行環境を作る技術です。厳密にいえば、コンテナはLinuxカーネルが発行する「プロセス」のひとつです。ただし、システムリソースを隔離しつつ固有の名称と設定を持てるため、外部からは独立したコンピュータに見えることが特徴です。

具体的には、Linuxカーネルが持つ「namespaces」「cgroups」「overlayfs」という機能を使ってコンテナが構築されます。

namespaces

namespacesはコンテナを「独立した仮想マシン」のように見せるための機能です。namespace内のプロセスは、他のnamespace内のプロセスとリソースを共有しません。したがって、namespaceプロセスごとに独立した環境を構築できるのです。また、あるLinux上でnamespaceによって構築された環境は、別のLinux上で再現可能です。これにより、同一の環境を異なるLinux上に移植する労力が削減されます。

cgroups

cgroupは、タスクをグループ化しつつ、各タスクへのリソース割り当てを制御する仕組みです。前述のnamespaceはホスト名やPIDなどを制御するのに対し、cgroupはCPUやメモリといった物理的な計算リソースを制御します。

verlayfso

overlayfsは階層の異なる複数のディレクトリを重ね合わせ、1つのディレクトリツリーを構成する仕組みです。上位層と下位層をマージし、単一のファイルシステムとして見せられるという特徴があります。

コンテナ型仮想化では、Linuxカーネルが持つこれら3つの機能を使い、各コンテナ内にアプリケーションの実行に必要な機能(コマンド・ライブラリ・ミドルウェアなど)を内包し、独立した実行環境に見せます。こうした技術は、Dockerにも応用されています。

ホスト型仮想化

ホスト型仮想化とは、既存のOS上に基盤となる仮想化ソフトウェアをインストールして、その上で仮想マシンを動かす技術のことを指します。ホスト型仮想化で仮想マシンを構築すると、コンピュータ内部で複数の環境が動作することになります。そのため、ハードウェアへの負担が増加し、結果としてシステムの動作速度が低下する可能性があるというデメリットが考えられます。

ハイパーバイザー型仮想化

ハイパーバイザー型仮想化は、ホストOSを必要とせず、ハードウェアを直接操作することができる特徴があります。これにより、システムの処理速度の低下を効果的に抑制することが可能となります。一般的に、ホスト型仮想化と比べて、ハイパーバイザー型の方が高速に動作すると言われています。しかしながら、完全に遅延をなくすわけではないため、ある程度の動作速度の低下は想定する必要があります。

Dockerを利用するメリット

Dockerを利用するメリットとしては、ソフトウェア開発の速度を向上できることやオペレーションの標準化がしやすい、シームレスに移動できる、コストを削減できる、共有しやすく分担作業に向いているなどがあります。以下では、これらのDockerを利用するメリットについて詳しく解説します。

ソフトウェア開発の速度を向上できる

Dockerは従来の仮想化技術とは異なり、ホストOS上でゲストOSを動かさずに軽量で高速な仮想環境を作れます。コンテナ型仮想化のため、起動速度が早く、メモリやディスクの使用量も最小限に抑えられます。Dockerのコンテナ技術は、軽量性と速度の面で優れており、開発者が開発作業により集中し、効率的に作業を進めることが可能となります。そのため、ソフトウェア開発の速度を向上できるメリットがあります。

オペレーションの標準化がしやすい

Dockerイメージを共有することで、開発者間の環境のバージョンの違いを解消し、開発環境のセットアップ時間を大幅に短縮できます。従来、環境のセットアップに関する説明の不足や手順の誤りで、1日を費やすケースも少なくありませんでした。Dockerを導入することで、新しいチームメンバーが参加する際の時間やコストを削減できています。さらに、環境に起因する問題も大きく減少し、オペレーションの標準化がしやすいメリットがあります。

シームレスに移動できる

Dockerを開発プロセスに取り入れることで、Windowsで動作していたアプリケーションがLinuxで動かないといった問題を効果的に回避できます。さらに、Dockerを使用すると開発時に構築した環境をそのまま本番環境にシームレスに移動できるため、環境間の差異が最小限になります。これにより、開発から運用までの一貫性と安定性が向上します。

コストを削減できる

これまでのWebサービスやアプリケーションの開発では、異なるOSやバージョンごとに多くのサーバを準備する必要がありました。しかし、Dockerの登場により、1台のマシン上で複数の開発環境を同時に構築することが可能となりました。これにより、サーバやインフラにかかるコストを大幅に削減できます。これは、開発の効率化だけでなく、コスト面でも大きなメリットをもたらしています。

共有しやすく分担作業に向いている

DockerはDockerfileを使用することで、同じ開発環境の構築が容易になります。チームでの共同作業や新たな開発者の参加時に、Dockerイメージを共有するだけで迅速に同じ環境をセットアップできます。開発環境の構築の手軽さから、Dockerは開発者間の作業の共有や分担を助ける強力なツールとして認識されています。

Dockerのスキルが活かせる職種

Dockerは実行環境の構築が容易で環境移行にも強いことから、複数の分野で活用されています。そのため、インフラエンジニアのみならず、アプリケーションエンジニアやプログラマー、セキュリティエンジニアなどにとっても将来有望なスキルです。以下では、Dockerのスキルが活かせる職種について解説していきます。

関連記事:
アプリケーションエンジニアの仕事内容は?年収・将来性も解説
インフラエンジニアになるには?必要なスキルや資格とは

プログラマーなどエンジニア初心者

プログラマーを含むエンジニア初心者の場合、コーディングよりも「パッケージ間の依存関係」によるエラーに苦労させられることが良くあります。また、開発環境が変わった場合の環境構築作業も無視できない労力です。Dockerは、あらかじめ実績のあるコンテナイメージを流用した環境構築が可能です。したがって、依存関係の解消や環境構築の手間を大きく削減できます。特別な設定を行うことなく、素早く開発に着手できるため、エンジニア初心者の強い味方となってくれるでしょう。

アプリケーションエンジニア

一定以上の経験を持つアプリケーションエンジニアにとっても、Dockerは有用なスキルです。Dockerを使うことで開発環境の構築がコードベースで行えるほか、既存の仮想化技術よりも多くの計算リソースを使うことができます。また、既存の開発環境に全く影響しない新しい環境の構築も容易です。複数の環境を往復しながら開発・検証などを進めるうえで、Dockerのスキルが大いに役立ちます。

関連記事:アプリケーションエンジニアになるには?必要スキルや資格も解説

インフラエンジニア

インフラエンジニアの場合は、Docker関連のスキルを身に着けることでIaCを実行しやすくなるでしょう。コードベースでインフラを管理できるため、インフラ構築・変更・移植などの手間が一気に小さくなります。また、環境間の際を小さくすることでCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)が提供しやすくなるといったメリットもあります。

関連記事:インフラエンジニアのやりがいとは?仕事内容やスキルも紹介

Dockerに関するよくある質問

コンテナ型プラットフォームであるDockerの学習を検討している方にとって、Dockerに関するさまざまな質問があるでしょう。以下では、これらのDockerに関するよくある質問について回答します。

Q1. Dockerでできることは?

Dockerは、コンテナ型のアプリケーション実行環境として開発者から人気があります。Dockerでできることは、1台のマシン上で複数のアプリケーションの仮想環境を同時に構築することができます。また、アプリケーションの開発環境をDockerで構築すると、その環境を他のエンジニアと簡単に共有できます。

Q2. Dockerとは?

Dockerとは、コンテナ型の仮想環境を提供するプラットフォームのことで、従来の仮想化技術に比べて軽量性と速度で優れています。近年、多くの開発現場で採用が増えており、1台のサーバーで複数のアプリケーション環境を効率的に構築できるのが特徴です。

Q3. Dockerの利点は?

DockerはホストOS上で直接動作するため、アプリケーションの実行が高速です。また、アプリケーションは「コンテナ」という軽量な仮想環境に格納されることで、共有や環境構築が非常に簡単になります。この特徴により、開発の効率化とスムーズな共同作業が可能となります。

まとめ

この記事では、Dockerの学習を検討している若手エンジニアに向けて、Dockerの概要や特徴、メリット、既存の仮想化技術との違い、スキルが活かせる職種などを解説しました。

近年、IT業界では「コンテナ型」と呼ばれる仮想化技術が注目されています。その中でも、Dockerはメジャーなコンテナ型仮想化技術として、急速に普及しています。Dockerに関するスキルは、エンジニア初心者はもちろん、アプリケーションエンジニアやインフラエンジニアなど、幅広い職種で役立つものです。Dockerの学習を検討される方は、この記事を参考にDockerの学習を始めてみてはいかがでしょうか。

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