Linuxとは?
まずLinuxの基礎知識を解説します。
1991年、フィンランドのヘルシンキ大学に通う普通の大学生だったリーナス・トーバルズが、授業で渡されたUNIX(Minix)の機能が不足していると感じ、ターミナルエミュレータを自作することにした。最初はMinixを改造したが、結局はゼロから作り直し、それがLinuxとなった。LinuxはUNIXとは異なる別物だが、コマンドなどの点で似ている。リーナス・トーバルズはLinuxの他にも、バージョン管理ソフトのGitを作成し、IT企業に普及している。
Linuxは、1991年にフィンランドのヘルシンキ大学に通う大学生だったリーナス・トーバルズ氏によって開発されたオープンソースのOSです。当時利用されていたMinixというOSの機能が不足していると感じた彼が、ターミナルエミュレータを自作することにして作成されたのがLinuxです。LinuxはUNIXとはソースから全く別物ですが、構築時にUNIXを参考にしていることから、コマンドなどの点で似ています。また、Linuxは商用コンピューターOS「Unix」の互換OSとして開発されたことから、Unixの派生OSとする見方もあります。しかし、歴史的な背景からすると厳密には「Unixを参考にしつつ、ゼロから作り直されたOS」であり、全く別のOSと言えるでしょう。
OSの核であるカーネルが無償で公開されており、誰でも自由に利用することができます。Linuxは、ライセンスに縛られないオープンソース方式を採用したことで1991年にLinux version 0.02がリリースされて以降、爆発的に世界中に広まりました。1995年以降になると、IBMやHP、インテルなどのプログラマーも参加したことや、2000年代になると、欧州で政府機関に取り入れられていく動きもあったことで、徐々に既存OSのシェアを奪い取っていきます。実際、2011年から2014年にかけて、企業でのLinuxの導入率は65%から79%に増加しています。
また、有志がカーネルを利用しながら独自の開発を行うことで、さまざまな派生バージョン(ディストリビューション)が生まれています。主要なディストリビューションとしては、「Redhat系」や「Debian系」などがあります。
Linuxの将来性は?
次に、Linuxの将来性について解説します。結論から述べるとサーバーOS市場は今後も伸び続けると予測されているため、Linuxの将来性は「高い」と言えるでしょう。その理由について詳しくみていきましょう。
伸び続けるサーバーOS市場
IT関連の市場調査を専門とするIDC Japanの調査では、サーバーOS市場は今後も伸び続けるとの結果が示されています。コロナ禍の影響もあり、2020年は前年比で縮小しているものの、これはあくまでも一時的な現象と考えられるでしょう。コロナ禍が終息した後は、2024年まで右肩上がりで市場が拡大していると予測されています。
特にLinuxについては、Windowsに比べて高い伸びが予測されています。2020年8月に発表されたIDC Japanの国内サーバーオペレーティングシステム市場予測によると、Windowsは年平均0.8%、Linuxは6.8%の成長が見込まれています。
クラウド化と親和性が高い
IaaS製品の大半がLinux環境を想定していることからもわかるように、Linuxはクラウドプラットフォームと相性が良いOSです。これは低コストであることや、動作が軽いこと、開発環境を構築しやすいことなどが理由であると考えられます。また、クラウドエンジニアの必須スキルとしてLinuxが挙げられることが多く、今後はLinuxに関する知見を持つ人材が不足するかもしれません。
コストパフォーマンスが高い
起業がITシステムを構築・運用するコストは「TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)で表されます。このTCOを抑制するためには、ライセンス料などランニングコストの削減が欠かせません。Linuxはオープンソースゆえに安価に維持しやすく、コストパフォーマンスが高いOSと言えるでしょう。
柔軟性はサーバーOSの中で随一
Linuxの生みの親であるトーバルズ氏は、Linuxの最も大きな強みとして「柔軟性」を挙げています。無償で公開されているLinuxカーネルを中心としつつ、さまざまな開発者が独自の機能を付与し、誰もが自由に利用できることがLinuxの特長なのです。こうした柔軟性の高さは、変化の激しい現在のビジネス環境にマッチしています。また、オープンソースであることから、特定ベンダーに依存しないこともメリットのひとつです。
Linuxの将来性に対する懸念
このようにLinuxの将来性を評価する材料は複数ありますが、その一方で懸念も存在します。例えばLinuxをターゲットにしたウィルスの増加です。LinuxはWindowsに比べるとシェアが小さく、ターゲットにされにくいOSだと言われてきました。また、Windowsに比べると厳格に「権限(パーミッション)」を管理することから、外部から不正に操作することが難しいOSでもあります。
こうしたことから、Linuxはウィルスに感染しにくいとされてきましたが、Linuxの普及に伴って徐々にウィルスが増加する可能性もあります。そのため、セキュリティ対策コストが上昇していくかもしれません。
さらに、ディストリビューションが独自に提供しているアップデートが終了する、もしくは有償化する可能性もあります。これにより、サーバーOSの変更を余儀なくされたり、ランニングコストが増加したりといった事態が想定されます。
Linuxの特徴、メリット
Linuxの特徴とメリットは以下のとおりです。
Linuxの特徴
Linuxには大きく以下の3つの特徴が挙げられます。これらの特徴がLinuxの将来性を高めていると言えます。ここでは1つずつ詳細に解説していきます。
・オープンソースのOSであること(つまり無料で使える)
・多数のディストリビューションがあること
・軽量・安定で動作すること
オープンソースのOSであること(つまり無料で使える)
1つ目の特徴は、Linuxがオープンソースのオペレーティングシステムであり、誰でも自由に無料でダウンロードして使用することができるという点です。他のOSの場合にはライセンス費用がかかる一方でLinuxでは無料で使用できるため、企業や個人の予算に負担をかけることなく利用できます。このような開放性が、Linuxが多くの人々に支持され、多くの企業や機関に採用される理由の1つです。
多数のディストリビューションがあること
2つ目の特徴は、多数のディストリビューションがあることです。
Linuxは、多数のディストリビューションを持つことで、ユーザーにとって柔軟性と選択肢を提供しています。それぞれのディストリビューションは、異なるハードウェアやアプリケーション、使用目的に合わせた設定がされているため、ユーザーは自分のニーズに合ったものを選択することができます。
また、多数のコミュニティによって開発されているため、セキュリティの問題やバグなどに対する迅速な対応が期待できます。さらに、コミュニティによってアップデートやパッチの提供が継続的に行われているため、安定性と信頼性が高いというメリットもあります。
Linuxのディストリビューションには大きく次の3つに分類されます。
・RedHat系
商用ディストリビューションとして幅広く支持されています。「RHEL:RedHatEnterpriseLinux」が特に有名です。
・Debian系
歴史の長さから派生ディストリビューションも多く、その1つである「Ubuntu」は特に人気が高いです。UbuntuはWindowsとUI(ユーザーインターフェース:使用感などの画面デザイン)が似ているため、Windowsの利用者でLinuxを始めたい人にはおすすめです。
・Slackware系
シンプルさが特徴のディストリビューションがSlackware系です。実績があるソフトウェアのみで構成されているため、安定性、セキュリティ体制、速度が高い点も人気の背景にあります。
軽量・安定で動作すること
3つ目の特徴はLinuxが軽量・安定で動作するという点です。LinuxはOSのコンポーネントが必要最小限に抑えられ、必要な機能だけを実装していることが挙げられます。また、Linuxの開発にはオープンソースのコミュニティが参加しており、多数の開発者が安定性と軽量性を重視したコードを共有しているため、品質が高くなっています。
これらの理由により、Linuxを使用することで、システムが高速で動作し、リソースの消費も少なくなります。
Linuxのメリット
Linuxのメリットは「低コストでITインフラを構築することができる」という点です。多くのLinuxディストリビューションではライセンス料が必要ないため、ランニングコストを節約することができます。また、ハードウェアに要求されるスペックも低いため、イニシャルコストの削減にもつながるでしょう。
コスト面以外では、以下のようなメリットも挙げられます。
安定性の高さ
Linuxはサーバー用途を前提として設計されているため、長期間の連続稼働でも問題が生じにくいという強みがあります。
自由度の高さ
Linuxには多くのディストリビューションが存在しており、必要な機能や特長を備えたディストリビューションを自由に選択することができます。
セキュリティを確保しやすい(Linuxをターゲットにしたウィルスが少ない)
Windowsなどに比べるとウィルスが少ないため、セキュリティレベルを維持しやすいでしょう。ただし、最近はLinuxをターゲットにしたウィルスも増えているため、セキュリティに対する配慮は必須です。
Linuxの学習方法
最後に、Linuxの学習方法を紹介します。Linuxはいくつかの懸念があるものの、将来性の高いOSです。効率よく学習を進め、Linuxのスキルを身に着けていきましょう。
スクールで学習する
プログラミングスクールやエンジニア養成スクールでは、Linuxに関する講座を開講していることがあります。インストール、初期設定、よく使うコマンドなど基本的な操作方法などを短期間で身に着けることができるでしょう。
資格を活用する
日本国内でLinuxに関する業務に携わるならばLPI Japanが提供している「LinuC」の取得を目指しても良いでしょう。仮想環境やクラウド環境など、現代の需要を加味した内容を踏まえてLinuxの基礎を身に着けることができます。
Linux技術者認定資格「LinuC」
Linux技術者認定資格「LinuC」は、Linuxの技術者としての能力を認定する資格です。LinuCはLinuxの知識と技術を実践的に学び、それを証明するために取得することができます。
LinuCには3つの段階があり、それぞれに必要な知識や技術が異なります。LinuCレベル1は、Linuxの基本的な知識とコマンド操作ができることを証明する資格です。LinuCレベル2は、Linuxサーバーの設定や管理、ネットワーク構築などの実践的な知識が問われます。LinuCレベル3は、Linuxシステムの設計や構築、セキュリティなど、高度な知識と技術が求められます。
Linuxに関する基礎的な知識から徐々に身につけていきたい人にはおすすめの資格です。
書籍などで独学
書籍を用いた独学でもLinuxの知識を身に着けることができます。ただし、具体的な構築・操作スキルを身に着けるためには、実機を用いて手を動かしながら学習することをおすすめします。実機の構築にはOSのインストール、初期設定、パッケージアップデートといった作業が必要になるため、初学者にはややハードルが高いかもしれません。IT業界での実務経験を持つ方におすすめの方法です。
[試して理解]Linuxのしくみ ―実験と図解で学ぶOS、仮想マシン、コンテナの基礎知識【増補改訂版】
Linuxの基礎的な仕組みや仮想化技術について解説する入門書です。
初学者にもわかりやすい説明と実践的な内容が特徴です。実際に手を動かしながら学べるように、豊富な図解とサンプルコードが提供されており、Linuxや仮想化技術に関する理解を深めることができます。
また、改訂版では最新のLinuxカーネルや仮想化技術にも対応しており、より実践的な内容が追加されています。そのため、Linuxに興味がある初心者から上級者まで、幅広い読者におすすめできる書籍です。
Linuxをマスターしたい人のための実践Ubuntu
Ubuntuを使用したLinuxの基礎から応用までを学ぶことができる実践書です。
Ubuntuを使って、コマンド操作やシェルスクリプト、セキュリティ対策、Webサーバ構築、仮想化、クラウドサービスの利用など、様々なテーマを扱っています。
また、本書はUbuntuをベースにした内容であるため、Linux初心者でも比較的簡単に理解することができます。また、Ubuntuはデスクトップ版とサーバー版があるため、幅広い読者にとって役立つ内容となっています。
Linuxブートキャンプ サーバ操作/OSのしくみ/UNIXネットワーク
Linuxに関する初心者向けの入門書です。OSの基本的な機能から、コマンドライン操作、ネットワークに関する内容まで、幅広く扱っています。
図解や実際の画面写真が多く用いられており、理解しやすいという点も魅力です。
Linuxのみならず、周辺知識としてサーバ操作やネットワークに関する知識も併せて習得したい初心者にはおすすめの一冊と言えます。
まとめ
この記事では、Linuxの将来性や、それを裏付ける特徴などについて解説した上で、Linuxの学習方法についてご紹介しました。LinuxはオープンソースのOSであり、軽量・安定で動作することが特徴的です。伸び続けるサーバーOS市場やクラウド化との親和性の高さ、コストパフォーマンスの高さなどから、今後もシェアが拡大していくことが期待できるため、システム開発に従事する方はLinuxに関するスキルを習得しておくことをおすすめします。
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