社内SEの仕事内容
まず、社内SEの仕事内容を解説します。
一般的に、社内SEが配属されるのは「情報システム部」やそれに準ずる部署(総務部など)になるでしょう。ただし、IT人材の確保が難しかったり、情報システム部門が存在しなかったりという理由から、システム担当者が1名しか配属されない、いわゆる「ひとり情シス」になることも珍しくありません。ひとり情シスは、社内のさまざまなIT関連業務、ヘルプデスク業務などを一手に引き受けることになります。
以下は、こういった事情を踏まえて整理した社内SEの仕事内容です。
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・IT戦略・システム企画・予算管理
・ITシステム導入・開発・運用・保守
・基幹システム構築・運用・保守
・BYOD導入時のポリシー、ルール策定(シャドーIT対策)
・外注管理、ベンダーコントロールなど
・社内で使用するITツール、デジタルデバイスのサポート・ヘルプデスク業務
社内SEには、システム開発や運用、保守に対する横断的な知識とスキルが必要とされます。また、セキュリティインシデントが企業の信用力に与える影響が大きくなっていることから、社内のITセキュリティ全般を支える知識も必要です。特に「シャドーIT」については、小規模な情報システム部の社内SEが、特に注意すべき分野と言えるでしょう。
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社内SEが知っておくべき「シャドーIT」とは
では、シャドーITの定義や問題点などを確認しておきましょう。
シャドーITの定義
シャドーITとは「社内で許可されていない外部サービスやデジタルデバイスを、社員が社内で勝手に使用すること」です。業務用端末から、個人で契約しているオンラインストレージを利用したり、SNSを通じて外部と連絡を取り合ったりといった行為が該当します。
「BYOD(個人用端末の業務利用)」とは異なり、ポリシーやルールが存在していない状態で「勝手に」使用することから、「勝手BYOD」とも呼ばれます。
シャドーITの問題点
シャドーITは、情報漏洩やウィルス感染といった、重大なセキュリティインシデントの温床になり得ます。ポリシーやルールがあってシャドーITを行えてしまう状態は望ましくなく、可能な限り登録されている端末以外は社内ネットワークと接続できないなどのIT統制を行えると良いでしょう。一方、全ての通信を遮断して外部サービス利用を禁止してしまうと、業務に支障が出る可能性があります。そのため、制限の難しさが問題となるケースが多いのです。
このように、従来から必要とされているSEスキルの中でも、昨今は情報セキュリティマネジメントスキルが社内SEに強く求められているのです。
社内SEとしてのスキル向上におすすめの本
ここでは、これまでの内容を踏まえて社内SEが必要なスキル・知識を習得する際に役立つ書籍を紹介します。
上記で触れたように、社内SEにはITについての横断的な知識が求められます。今回は、『基礎を習得するための書籍』、『開発や導入時に参照するための書籍』、『プロジェクトマネジメントをするための書籍』の3つの軸からおすすめの書籍をご紹介いたします。
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基礎を習得するのにおすすめの本
社内SEとして働いている方の中には、システムに関する知識があまり無い状態で突然配属されてしまったという方もいると思います。そういった方には、まずはSEとして身につけておくべき基礎知識の習得をおすすめします。
『この1冊ですべてわかる 新版 SEの基本』(山田 隆太)
SEに求められるテクニカルスキルとマネジメントスキルの両方が解説されている書籍です。
2009年に発行されて以来、エンジニア界隈では読まれ続けている本ですが、IoTやビッグデータ、AIなどで複雑化しているIT業界の最新情報を盛り込んで2022年に新版として発売されています。
この書籍を読めば、SEとして最低限身につけておくべき技術スキルや、どうすればシステム開発をスムーズに進捗できるのかなどの知識を網羅的に身につけることができます。
『若手ITエンジニア 最強の指南書』(日経SYSTEMS)
ITの技術に関する知識を学ぶ「テクノロジー編」、システム開発の基本を学ぶ「エンジニアリング編」と「マネジメント編」、日々の仕事をうまくこなしていくための基本を身につける「ヒューマンスキル編」の4分野で構成されている書籍です。
エンジニアとしての技術、開発フロー、マネジメントスキルを網羅的に身につけたいのであればまずは読んでみていただきたい一冊です。
『小さな会社のIT担当者のためのセキュリティの常識』(那須 慎二、ソシム)
小規模な企業におけるITセキュリティ対策の基礎知識が学べる書籍です。いわゆる「ひとり情シス」な環境で働く社内SEが、小規模な企業内ネットワーク構築する際の参考書籍として活用できるでしょう。
『クラウド・リスク・マネジメント』(PwCあらた監査法人、同文舘出版)
クラウドサービス導入時のリスクマネジメントについて学べる書籍です。クラウドサービスの導入で発生しうるセキュリティインシデントを、事例ベースで紹介しています。業界や業態を問わず、短納期かつ低コストでのITシステムの導入・運用が求められる今、クラウドサービスが「特効薬」のように扱われることも少なくありません。
しかし、クラウドサービスはシャドーITの温床になる可能性もあるため、リスクマネジメントが欠かせない領域です。本書は、クラウドサービスのリスクを学びつつ、BYOD導入時のポリシー、ルール策定(勝手BYOD、シャドーIT対策)のベースとしても活用できるでしょう。
『マンガで学ぶITの基礎 合本版』 (impress Digital Books)
ITの基礎を学びたいけれど、文章での学習が苦手な方は、この本を導入書として選ぶことをおすすめします。漫画の形式であっても、基本的な知識をしっかりと習得できます。
もし、上記の書籍をすでに読んでいる方は、この本を読む必要はありません。しかし、上記の書籍を読んだことがない方でも、この漫画の本なら読みやすいです。
漫画形式なので読み始めるためのハードルも低く、内容が頭に入ってきやすいのが特徴です。何よりも大切なのは前進することですので、挑戦してみることが重要です!
『ソフトウェア・ファースト』(及川 卓也)
現代のIT環境は急速に変化しており、それに伴い、ITに求められる要件も変わっています。ITがビジネスに与える影響と存在感が拡大しています。
社内SEおよび情報システムの役割も変化しており、以前は主にPCの管理やパソコンの専門知識を持つ役割でしたが、今ではビジネスを支えるソフトウェア開発のスペシャリストとしての役割へと移行しています。
時代の変化を積極的に捉え、将来的に求められるITの専門家を目指す方には、この本がおすすめです。社内SEおよび情報システムの基礎から更に進化したスキルを習得できる一冊です。
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開発や導入時に役立つ本
システムエンジニアとしての基礎を習得して、いざ現場で実際に開発を行うとなった場合には、設計やコーディング、テストなどのシステム開発における各工程について深い理解をしておく必要があります。ここでは、開発や導入を初めて担当する方に役立つ本をいくつかご紹介します。
『はじめての上流工程をやり抜くための本~システム化企画から要件定義、基本設計まで (エンジニア道場)』(三輪 一郎、翔泳社)
経営戦略やシステム企画など、ITシステム導入の最上流工程に対する基礎知識を身に付けられる一冊です。特に、要件定義よりも上流にある「IT戦略」「システム企画」の領域を学びたい方におすすめです。
『システム設計のセオリー --ユーザー要求を正しく実装へつなぐ』(赤 俊哉)
システム開発を初めて担当して最初につまづく人が多いのは、ユーザの要件を、システム設計に落とし込む「要件定義」と呼ばれる工程です。人の要求を、システムでどう実現するかは、システムエンジニアの実力が如実に表れる部分と言えます。
この本では、そんな要件定義工程について、システム設計の詳細化していくプロセスを詳細にわかりやすく解説しています。
この本を読めば、初めてシステム開発・導入を行う人でもスムーズに開発工程を進めることができるでしょう。
『【この1冊でよくわかる】ソフトウェアテストの教科書―品質を決定づけるテスト工程の基本と実践』(石原一宏)
システム開発において、システムのコーディングや設計は、具体的な作業イメージがつきやすいですが、そのあとのテスト工程については何を確認すればいいのか、品質を高めるためのテストはどのように実行すればよいのかが分からない人も多いです。
この本では、ソフトウェアテストのフロー、テスト技法、テスト時のドキュメントの作成方法にいたるまで、体系的に学ぶことができる一冊です。
社内SEおよび情報システムの初心者は、通常、システムテストのフェーズでの作業に関与することが多いのです。
言い換えれば、システムテストのスキルを習得することは、初心者からのステップアップに不可欠な要素と言えます。この時期に成功を収め、実力をつけることは非常に重要であり、自信を高めることにも繋がります。
これまでの読書を通じて、どの工程を担当し、システム開発において何を達成しようとしているのかが体系的に理解できるはずです。この一冊を読み進め、実務経験を積むことで、実践的なスキルと知識が身につき、現場で役立つでしょう。
『ITシステムの罠31』(安茂 義洋・栗谷 仁、実業之日本社)
「失敗例」をベースに、ITシステムの導入・開発における勘所を整理した書籍です。システム導入・運用・保守、プロジェクト運営、調達・契約、組織運営といった視点から、失敗例がトピック化されているため、状況に応じて必要な部分を読み込めます。社内SEはこれらすべての工程に携わるため、基幹システムを含めたITシステムの導入・開発・運用・保守について学びたいときに役立つでしょう。
『SEのためのERP入門―SAP導入のポイント』(増田 裕一 、ソフトリサーチセンター)
ERP導入の基礎知識が学べる書籍です。世界シェアナンバー1のERPパッケージ「SAP ERP」をベースとしているものの、ERP導入の汎用的な知識を習得できます。ERPパッケージを使用した基幹システム構築・運用・保守に役立つでしょう。
『システム開発のすべて 上流・下流工程から改善・監査までわかる』(北村充晴)
システム開発の包括的な理解をするには、この本がおすすめです。
この書籍は、基本的な概念から各工程、成果物までを詳細に説明しています。
内容は多岐にわたっており、それぞれの章のボリュームもあるので、プロジェクトで担当している領域を優先的に読むことで、求められる役割で必要な知識を身につけていくような読み方がおすすめです。また、自身の役割が変化するにつれて、さらに深く読み進める価値がある一冊です。
プロジェクトマネジメントに役立つ本
システムエンジニアとしての基礎も身につけ、開発のフローや各工程で何をするべきかも習得できたとして、システム開発では、スケジュール通り、予算内で開発を進めてリリースすることが求められます。
そのためには人的資源、物的資源などのリソースを効率的に配分し、予想外の事態が発生した場合には適切な対処をすることが求められます。
ここでは、そんなシステム開発におけるプロジェクトマネジメントに役立つ本をいくつかご紹介します。
『これ以上やさしく書けない プロジェクトマネジメントのトリセツ』(西村克己)
この本はプロジェクトマネジメントを初めて担当される方におすすめしたい一冊です。
プロジェクトマネジメントというと、スケジュール管理、リスク管理、品質管理など多くの要素が存在します。全てを一気に理解することは難しいので、まずはプロジェクトマネジメントとは何をすべきなのかをざっくりと捉えておくことが重要です。
この本は巨大国際企業から官公庁まで多くのプロジェクトを経験してきたコンサルタントが執筆しており、ストーリーと講義形式で進むため、初心者でもわかりやすいことが特徴です。
また、WBSやガントチャートといった、現場ですぐに使えるツールについても使い方を知ることができるので、現場で即戦力となる力を身につけることができます。
『プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで』(及川 卓也、曽根原 春樹、小城 久美子)
プロジェクトマネジメントと一言で言っても、配属された部署や会社によって扱っている商材やシステムなどは異なります。
この本は、Google、Microsoft、SmartNewsなどのプロダクトマネジメントに携わってきた方々によって執筆されており、事業戦略、IT開発、UXデザイン、マーケティングなどのプロジェクトマネジメントに必要な情報が網羅的にまとまっています。
ITエンジニア本大賞2022において、ビジネス書部門の大賞を受賞している書籍であるため、最新のプロジェクトマネジメントノウハウを得るには読んでおいて損はない一冊です。
『ベンダーマネジメントの極意』(長尾 清一、日経BP社)
いわゆる元請け企業(プライムベンダー)が外注をどう管理するか、について書かれた書籍です。外部委託の目的や、発注側の姿勢、契約書の問題など、外部発注における様々な手続きを実践的に解説しています。事業会社やユーザー企業の情報システム部とはやや視点が異なりますが、外注管理やベンダーコントロールという点では、大いに学べる書籍と言えるでしょう。
『情シス・IT担当者[必携] システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』(田村 昇平、技術評論社)
事業会社の情報システム部門や、ユーザー企業で発生する「発注業務」にフォーカスした書籍です。RFP(提案依頼者)や業務フロー、瑕疵担保責任の設定方法など、発注側の勘所となる項目が具体的に記載されています。外部発注、外注管理、ベンダーコントロールなどに役立つでしょう。SIerや開発会社で、「受注側」として仕事をした経験は豊富でも、発注側に立った経験が少ない方には特におすすめです。
社内SEに関するよくある質問
最後に、社内SEに関するよくある質問について解説していきます。
Q1. 社内SEと情シスの違いを教えてください
「SE」とは「システムエンジニア」の略称で、通常、社内で情報システムに関連する業務を担当するエンジニアを社内SEと言います。一方、「情シス」は「情報システム部門」を指し、その中での「社内SE」は、システムエンジニアが果たす役割や業務を担当する個人や役割を指します。
Q2. 社内SEの平均年収はいくらですか?
2023年10月9日現在でレバテックキャリアに掲載されている社内SEに関する求人のうち、サンプルで30件を抽出して算出した平均年収は533万円です。厚生労働省が2020年に公表している「国民生活基礎調査の報告書」によれば、全世帯の年収中央値は437万円とされています。そのため、社内SEの年収は高めであると言えます。
Q3. 社内SEとSEはどちらが良いですか?
社内SEとSEは異なるポジションで、幅広い業界で活動しています。社内SEは企業のIT部門で働き、その業務をサポートします。一方、SEはシステム開発を専門にするベンダー企業での仕事で、システム開発に従事します。一般的に、社内SEは顧客側に立ち、SEはシステム提供側に位置します。この立場の違いにより、求められる役割やスキルにも一部の違いがあります。
まとめ
この記事では、社内SEの役割を整理しながら、業務に役立つ書籍を紹介してきました。社内SEの業務は、企業規模によって仕事内容に差がある一方、上流工程やベンダーコントロールという普遍的な仕事も多いです。そのため、書籍を有効活用すれば、業務に役立つ知識を習得しやすいでしょう。この記事で紹介した書籍を参考にしながら、社内SEとしての基礎を固めてみてはいかがでしょうか。
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