ユーザー系SIerはホワイト企業?メリット・デメリットを解説

最終更新日:2023年12月4日

ユーザー系SIerはホワイトなイメージも強いため、転職を考えたことがある人も多いでしょう。しかし、必ずしもホワイトとは限らないため、注意が必要です。本記事ではユーザー系SIerの特徴や独立系・メーカー系との違い、ホワイトな企業を選ぶポイントについて解説していきます。また、ユーザー系には「外販中心」と「内販中心」の企業があるため、それぞれの違いやメリット・デメリットについても解説します。
ユーザー系SIerへの転職を視野に入れている方は本記事をぜひ参考にしてください。

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この記事のまとめ

  • ユーザー系SIerとは、企業の情報システム部門が子会社や関連会社として独立してできた企業
  • ユーザー系SIerは上流過程に関わる機会が多く、その業界の専門知識を身につけられる
  • ユーザー系SIerは、親会社に業務内容や労働環境を依存しているため、母体の企業研究も重要

ユーザー系SIerとは?

ユーザー系SIerは、通信、金融、商社などIT業界以外の一般企業を親会社に持つSIer企業を指します。一般企業の情報システム部門が独立して子会社となったケースが多いといわれています。ユーザー系SIerの多くは、プロジェクト管理や要件定義といったシステム開発の上流工程をメインに担当し、システム開発のプログラミング・詳細設計は下請けSIerに外注することがほとんどです。

SIerにはユーザー系以外にも種類があるので、代表的なメーカー系、独立系との違いについても説明します。

ユーザー系とメーカー系の違い

メーカー系SIerは、パソコンやネットワーク機器などハードウェアを提供しているメーカーを親会社に持つSIer企業を指します。大手家電メーカーの子会社などがメーカー系に該当するでしょう。メーカー系SIerはユーザー系と違い、親会社向けではなく他社向けのシステム開発が中心となります。親会社のハードウェアで動くソフトウェアを開発し他社に提供することがメインであり、他社に常駐して働くケースも多くあります。

ユーザー系と独立系の違い

独立系SIerは、親会社を持たず1つの会社として独立しているSIer企業です。独立系SIerは他社に提供するシステムの開発をメインに行い、他社と直接契約して、要望に基づくシステムを一から開発します。独立系SIerの場合ユーザー系と異なり、上流工程ではなくプログラミングやテストなど下流工程を担当することが多いです。

また、顧客が指定する納期に合わせるため、開発スケジュールがタイトな傾向で、企業によっては繁忙期に残業が多く発生するケースもあります。

ユーザー系SIerで働くメリット・デメリット

ユーザー系SIerには、親会社のシステム開発に関わる内販と、他社向けの開発に関わる外販があります。これら2つは企業の性質や仕事内容が大きく変わるので、同じユーザー系でも分けて考えることが大切です。

以下では、それぞれのメリット・デメリットを解説します。ユーザー系SIerへの転職を考えている方は企業検討の要素として参考にしてみてください。

メリット

ユーザー系SIerで働くメリットとして、親会社が大手企業であることが多く、福利厚生がしっかりしている場合が多いことが挙げられます。基本的に親会社からの案件を受けるため、自社内で働けることもメリットになりえるでしょう。

また、親会社のシステム開発に携わるため、自ずと親会社が展開する事業に関する業界知識が身につくこともメリットの一つです。しかし、内販と外販の比率によってメリットも変わるので、確認しておく必要があります。

以下では、内販が中心の場合と外販が中心の場合に分けてメリットを紹介します。

内販が中心の場合

内販中心のユーザー系SIerのメリットは「ホワイト企業が多い」「上流工程に携わることができる」などがよく挙げられます。内販の場合、親会社が顧客であるため「納期を短くして欲しい」など無理な要求がなく、残業が発生しにくい傾向であるのもメリットの一つです。

加えて、親会社から継続して仕事を受注できるため、会社の経営が安定しており安心して働くことができます。また、メーカー系SIerで多い客先常駐がほぼなく労働環境を重視する方にとっても働きやすいでしょう。

また、プログラミング作業自体は外部に依頼するため、ユーザー系SIerは上流工程の業務に集中できます。親会社の業界に特化した上流スキルを身につけたい方にも、ユーザー系SIerは働きやすい企業形態の一つと言えます。

外販が中心の場合

外販中心のユーザー系SIerのメリットは「幅広い仕事に携われる」などがよく挙げられます。内販中心とは逆にさまざまな企業向けにシステムを開発するため、幅広いスキルを身につけることが可能です。Web系などに転職する際にも幅広く身につけたスキルは役立つでしょう。また、内販中心の場合と同様ですが、親会社がいるため会社の経営が安定していることもメリットです。

デメリット

ユーザー系SIerのデメリットとしては、親会社の影響を受けやすいということがあります。親会社の経営状況によっては、子会社として影響を受ける場合もあるでしょう。

また、基本的には案件の上流過程の業務がメインとなります。そのため、開発業務のプログラミング実務は外注することが多くなり、プログラミングなどのITスキルを磨く機会は少なくなりがちです。

以下では、内販が中心の場合と外販が中心の場合で分けて、デメリットを紹介します。

内販が中心の場合

内販中心のユーザー系SIerのデメリットは「携われる仕事の幅が狭い」「出世が難しい傾向がある」などがよく挙げられます。親会社で扱うシステムを専門で開発することに加え、上流工程を担当することが多いため、身につくスキルが偏ってしまい転職で不利になってしまう可能性もあります。

「ユーザー系SIerへの転職はあくまで通過点」と考えている方は注意が必要です。

また、ユーザー系SIerの管理職の多くは親会社からの出向であることも多く、転職時に管理職入社をしていない限り課長クラス以上の出世が難しいというケースもあります。

外販が中心の場合

外販中心のユーザー系SIerのデメリットは「労働時間が増えやすい」などがよく挙げられます。顧客の要望に対応するために急に納期が短くなるなどのケースもあり、残業が発生しやすい傾向にあります。「ホワイトだから」という理由でユーザー系SIerを志望する方は、この点に関して注意が必要でしょう。

また、内販中心の場合と同様に、課長クラス以上の出世が難しい場合があることもデメリットといえます。

ホワイトなユーザー系SIerを選択するポイント

転職活動をしている方にとって、検討している企業がホワイト企業かどうかは非常に気になるところです。転職してから「思っていた感じと違った」とならないようにしっかり見極めることが重要です。

ユーザー系はホワイトなイメージが強いですが、必ずしもそうとは限らない場合もあります。
転職活動のためにホワイト企業の特徴を知っておきましょう。

関連記事:SIerの志望動機の書き方と例文|書く時のポイントと注意点も解説

親会社がどの業界に属しているか

特に内販中心のユーザー系SIerの場合、親会社の業界によって身につけられるスキルの種類が異なります。たとえば親会社が金融会社の場合は、業務の中で金融関連の知識が身につきます。もし金融関連に興味がない場合、仕事をしても楽しくない状況に陥ってしまうかもしれません。そうならないために、自分のやりたいことやキャリアアップを考え、マッチしている業界を選択しましょう。

親会社の経営は安定しているか

ユーザー系SIerの場合、給料・ボーナスは親会社の状況に左右される場合があります。親会社の経営が傾いた場合、ボーナスなどが減少してしまう可能性もあるでしょう。安心して仕事ができるようにするためにも、親会社の現状や将来性に関するリサーチは念入りに行うことをおすすめします。

親会社以外から発注がどの程度あるか

ユーザー系SIerの中には外販を中心に行う企業もあることは解説した通りです。内販を中心にシステムを開発している企業ではなく、外販が中心の企業である場合、クライアントからの要望や納期で、残業時間が比較的増えやすい傾向があります。ホワイトな環境を目指す場合、志望先企業の内販・外販の割合がどうなっているかは確認しておきましょう

業界別のユーザー系SIer企業一覧

ユーザー系SIerは、さまざまな業界に事業を展開しています。各業界と属する企業について紹介します。

業界 代表的な企業
金融・保険 ・東京海上日動システムズ
・ニッセイ情報テクノロジー
・中央コンピュータシステム
通信・ライフライン ・NTTデータ
・NTTコミュニケーションズ
・ソニーネットワークコミュニケーションズ
物流・運輸 ・ヤマトシステム開発
・日立製作所
・JR東日本情報システム
商社 ・伊藤忠テクノソリューションズ
・インフォコム
・兼松エレクトロニクス
製造 ・日鉄ソリューションズ
・豊田自動織機ITソリューションズ
建設 ・コンピュータシステム研究所
・住友林業情報システム
メルカードテクノ開発
その他 ・テプコシステムズ(エネルギー系)
・セブン&アイ・ネットメディア(小売系)
・野村総合研究所(コンサルティング系)

ユーザー系SIerの年収ランキング一覧

ユーザー系SIerの年収ランキングは以下の通りです。
※下記企業の有価証券報告書または公開資料に基づき掲載
※企業ごとの有価証券報告書の提出時期のばらつきにより、日付に若干の誤差がありますが、最新のデータに基づいています。(2023年11月24日現在)

順位 企業名 平均年収
(記載のないものは全て2023年3月31日)
1 野村総合研究所 1242万円
2 電通国際情報サービス 1,128万円 (2022年12月31日)
3 SRAホールディングス 1125万円
4 伊藤忠テクノソリューションズ 1028万円
5 三菱総合研究所 1,024万円 (2022年9月30日)
6 CAC Holdings 1005万円 (2022年12月31日)
7 GMOペイメントゲートウェイ 903万円 (2022年9月30日)
8 Kudan 899万円
9 Al inside 838万円
10 オービック 693万円

ユーザー系SIerに将来性はある?

近年ではシステムのクラウド化が進み、クラウドサービスを利用すれば、一からシステムを構築せずとも業務ができるようになっています。しかし、今すぐにユーザー系SIerの需要がなくなるということはないです。

IT業界全体での人材不足は大きな問題となっており、経済産業省のデータによると、2030年には40~80万人の規模でIT人材不足が起こると懸念されています。そのため、SIerの需要もまだ続いていくでしょう。

しかし、ユーザー系SIerの業務は要件定義など上流工程が多いため、プログラミングなどの技術が身につきにくい傾向があります。今後のキャリアパスを考えて、自身でプログラミングやコンサルティングなどに関するスキルアップをしていく努力が必要です。

関連記事:SIerの将来性は?今後なくなると言われる理由と市場価値

ユーザー系SIerに関するよくある質問

ユーザー系SIerに興味のある方の中には、ユーザー系SIerならではの特徴や強み、そして業務内容が気になる方が多いようです。SIerにはユーザー系、メーカー系、独立系と種類があるため、特徴や強み、業務の違いなどを比較して検討するのが良いでしょう。

下記ではユーザー系SIerに関するよくある質問に答えていきます。類似の疑問を持つ方は参考にしてみてください。

Q1.ユーザー系SIerの特徴には何がありますか?

ユーザー系SIerは、親会社で扱うシステムの開発業務をする内販と、自社システムの開発で培ったスキルを活かした他社向けの開発業務をする外販があるのが特徴です。同じユーザー系でもどちらの比率が大きいかによって企業の雰囲気や特色が変わります。

Q2.ユーザー系SIerの強みは何でしょうか?

ユーザー系SIerの強みとして、システム開発の上流工程から携わることが多いため、業界に対する知識やスキルを身につけられることが挙げられます。また外販の場合、他社からの案件となるため自社の業界だけでなくさまざまな業界に携わることが可能です。そのため多くの業界知識を得られ、将来的に幅広い知識を得られます。

Q3.ユーザー系SIerの業務内容を教えてください。

ユーザー系SIerでは、親会社のシステム構築をするのが主な業務となります。親会社の業務改善につながるシステムのコンサルティングや要件定義をし、下請けの企業に下流工程を依頼します。親会社の業務に関する深い知識と、下請けに依頼するためのプログラミング知識などを持っておく必要があります。

まとめ

ユーザー系Slerとは、一般企業の情報システム部門が独立した子会社で、親会社で扱うシステムの開発などを手がけています。ユーザー系SIer企業はシステム開発の上流過程に関わる機会が多く、その業界の専門知識や業界知識を身につけることができます。そのため、その分野に特化した人材としてステップアップしていくことができるでしょう。しかし、労働環境は親会社に依存している部分が多く、企業理解には親会社のリサーチもしっかり行うことが重要です。

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この記事の監修

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