IoTエンジニアは、家電製品やモバイルデバイスに対し、IoTを組み込むエンジニアの総称です。IoTの普及が急ピッチで進む今、IoTエンジニアの需要も徐々に伸びています。ただし、IoTエンジニアは組み込み系の技術を要するため、技術習得ハードルが高く他分野からの参入が難しい職種です。もし組み込み系の経験が無い場合は、資格取得によって基礎力の証明をすることが求められるでしょう。ここで、IoTエンジニア志望の方におすすめできる資格を紹介しています。
1. IoTエンジニアとは?
まず、IoTエンジニアの概要と主な仕事内容について解説します。
IoTエンジニアの概要
IoTエンジニアは、家電・自動車・デジタルデバイスなどに対し、IoT機を実装する職種です。センシング対応や無線通信機能の実装、超小型コンピュータ(シングルボードコンピュータなど)での開発など、従来の組み込みエンジニアとは異なる分野のスキルを求められる傾向にあります。
IoTエンジニアの仕事内容
IoTエンジニアの主な仕事内容は、「設計・実装(コーディング)・テスト」であり、大枠としてみれば他分野のITエンジニアと大差はありません。ただし、一般的なソフトウェア開発とは異なり、ハードウェアの知識が必要になります。具体的には、次のような内容です。
連携部分の開発
現在実用化されているIoTデバイスの多くは、温度・加速度などを計測するセンサー機能と、無線通信機能で構成されています。IoTエンジニアは、こうした機能が外部とスムーズにデータをやり取りできるように、連携部分の開発を担います。例えば、IoTデバイスで取得した温度情報をスマートフォンで検知できるように、IoTデバイス側に温度測定用センサーやネットワーク通信機能を実装していきます。
プログラミング
デバイス内にさまざまな機能を付与するプログラミングは「組み込みプログラミング」と呼ばれます。IoTデバイスの多くは、小型のデジタルデバイスであることから、プログラムが使用可能なハードウェアリソースには著しい制限が課されています。組み込みプログラミングでは、「限られたハードウェアリソースを、いかに有効に使いきるか」を念頭に置いたプログラミングが必要です。
回路設計、製作
IoTエンジニアは、回路設計や製作を担当することもあります。物理的な回路を制作するため、電子回路に関する知識が必要です。また、「Arduino」や「Raspberry Pi」など、手のひらサイズの基板上にCPUやメモリなどが組み込まれた「シングルボードコンピュータ」上で回路設計を行うこともあるため、小型デバイスの知識も求められます。
2. IoTエンジニア向け資格3つ
次に、IoTエンジニアを目指す場合に有効な資格を紹介します。2020年時点で、IoTエンジニア向けの資格は以下3つです。
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・IoT検定制度委員会「IoT検定」
・MCPC「IoTシステム技術検定」
・IPA「エンデベットシステムスペシャリスト試験(ES)」
それぞれの試験概要や、費用・難易度・勉強方法・現場での評価などを見ていきましょう。
IoT検定
IoT検定制度委員会が主催する検定試験です。IoT検定制度委員会は、複数の業界団体・企業・有識者で構成される、IoT・AI・ビッグデータ等の技術やマーケットについての知識やスキルに関する検定をおこなう民間団体です。
IoT検定ユーザー試験パワー・ユーザー(IoT-PU)
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試験概要
IoTシステムを使うビジネスパーソンに向けた試験です。開発者向けの検定ではないため、技術的内容よりも戦略立案やIoTプラットフォーム上での実務など、一般的なビジネスパーソン向けの内容が出題されます。試験時間は40分で全48問、CBT方式で行われます。費用は税込み8800円です。なお、合否判定はなく、正答率に応じた「グレード制」を採用しています。
グレードA…正答率86%以上
グレードB…正答率76~85%
グレードC…正答率66~75%
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出題範囲
出題範囲は大きく「マネジメント領域」と「テクノロジー領域」に分類され、IoTを用いた戦略や産業システム、法令、ネットワークやデータ分析、IoTプラットフォームに関する知識が出題されます。
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難易度
試験自体の難易度はIT系資格試験の中でも優しい部類に入ります。ITスキル標準(ITSS)のレベルに換算すれば、レベル1~2に相当するでしょう。
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勉強方法
まずは、IoT検定制度委員会が公開しているスキルマップを読み込み、記載してあるキーワードを独学で理解できるレベルを目指しましょう。また、IoT-PU対応の公式テキストも販売されているため、こちらの利用もおすすめです。
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現場での評価
IoTに関する基礎的な知識・スキルの証明にはなりますが、エンジニアとしての評価には結び付きにくい試験です。IoTエンジニアを目指すのであれば、後述のIoT-PC取得を目指していきましょう。
IoT検定レベル1試験プロフェッショナル・コーディネータ(IoT-PC)
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試験概要
IoTを用いたシステム開発において、IoTに関する技術全体を俯瞰し、プロジェクトを主導できるレベルを目指す試験です。純粋な開発者向けの試験ではなく、現場のリーダークラスを想定しています。しかし、前述IoT-PUよりも技術的な内容の比重が高いという特徴があります。試験時間は60分で全70問、CBT方式で行われ、正答率60%以上が合格、費用は税込み11,000円です。
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出題範囲
出題範囲は「戦略とマネジメント」「産業システム」「法務」「ネットワーク」「デバイス」「プラットフォーム」「データ分析」「セキュリティ」の全8カテゴリーです。また、各カテゴリーから特に重要な項目として「IoT関連の産業システム」「PAN(Personal Area Network)」「電子工学」「機械学習および人工知能に関する知識」が挙げられています。
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難易度
試験自体の難易度はIT系資格試験の中で平均的なレベルです。ITスキル標準(ITSS)のレベルに換算すれば、レベル2相当と考えてよいでしょう。
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勉強方法
IoT-PUと同様に、IoT検定制度委員会が公開しているスキルマップを読み込みましょう。そのうえで、公式テキストやIoT系の技術テキストを用いて、知識を深めていく方法がおすすめです。
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現場での評価
情報システム部門のリーダーやマネージャーなどにはおすすめです。本格的な技術者向け試験としては、IoT検定レベル2、3が予定されています。(2020年11月現在、準備中)
IoTシステム技術検定
官民連携で設立されたモバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が主催する試験です。難易度別に3つグレードが設けられています。
IoTシステム技術検定 基礎(IoTアドバイザ)
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試験概要
IoTを扱うビジネスパーソン向けの試験であり、IoTに関する基礎知識の理解が目的です。試験時間は60分で全60問、CBT方式で行われ、合格に必要な正答率は非公開です。ただし、一般的には正答率65~70%が合格ラインと言われています。費用は税込み11,000円です。
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出題範囲
IoTに関する専門用語が出題されます。カテゴリーは「構成と構築技術」「センサーとアクチュエータ技術と通信方式」「データ活用技術」「IoTセキュリティ」「IoTシステムのプロトタイピング」などです。
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難易度
試験自体の難易度はIT系資格試験の中ではやや易しいレベルです。ITスキル標準(ITSS)のレベルに換算すれば、レベル2相当と考えてよいでしょう。
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勉強方法
公式テキストの活用やITベンダーが主催する対策講座を用いた学習がおすすめです。
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現場での評価
基礎レベルの資格であるため、エンジニアとしての評価には直結しないでしょう。中級・上級の取得を目指したいところです。
IoTシステム技術検定 中級(IoTエキスパート)
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試験概要
IoT構築に関する基礎レベルの技術的知識を問う試験です。試験時間は90分で全80問、CBT方式で行われ、合格に必要な正答率については、IoTアドバイザと同様に正答率65~70%が目安となります。費用は、MCPC会員が税込み11,000円、協力団体会員が税込み13,200円、一般受験者は税込み15,000円となっています。
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出題範囲
IoTシステムの構築に必要な基本技術についての内容が出題されます。カテゴリーは「構成と構築技術」「センサーとアクチュエータ技術と通信方式」「データ活用技術」「IoTセキュリティ」「IoTシステムのプロトタイピング」などです。
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難易度
試験自体の難易度はIT系資格試験の中では平均的なレベルです。ITスキル標準(ITSS)のレベルに換算すれば、レベル2相当と考えてよいでしょう。
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勉強方法
公式テキストの活用やITベンダーが主催する対策講座を用いた学習がおすすめです。
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現場での評価
実際のIoTシステム構築に必要な内容が多いため、IoTエンジニアとして一定の評価に結び付くと考えられます。実務経験を積みながらの受験がおすすめです。
IoTシステム技術検定 上級(IoTプロフェッショナル)
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試験概要
IoTを用いた専門的なサービス構築に必要な知識が問われる試験です。システム企画・設計などを行う上流工程を担当するエンジニアが対象になるでしょう。合格のためには1.5日の専門技術講習の受講と、3時間におよぶ論文作成試験の受験が必要です。費用は、中級検定合格者が税込み55,000円、情報処理学会のCITP有資格者および早稲田大学スマートエスイー修了者が税込み33,000円です。
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出題範囲
専門技術講習に含まれる「IoTビジネスモデルの設計」「IoTセキュリティ」「AI活用によるIoTアプリケーション」「最新技術動向」などが対象です。また、論文試験では、業界ごとにIoTシステムを用いたサービス構築を想定し、顧客の課題や技術的な訴求点を述べる内容が求められるようです。
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難易度
試験自体の難易度はIT系資格試験の中でも平均より上のレベルでしょう。論文試験が課されるためITスキル標準(ITSS)に換算すれば、レベル2~3相当と考えられます。
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勉強方法
独学は非常に難しいため、ある程度の実務経験と専門技術講座の受講が必須です。
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現場での評価
比較的大規模なIoTシステムを構築するプロジェクトであれば、知識とスキルの証明に成り得ます。ただし、こちらも実務経験は必須です。
エンデベットシステムスペシャリスト試験(ES)
IPAが主催する高度情報処理試験のひとつです。現状のIoTエンジニア向け試験の中では、最も難易度が高いです。IPA主催の公的な資格であることから、高い認知度を誇ります。
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試験概要
午前・午後それぞれ2部制で行われ、午前は選択式、午後は記述式の試験です。午前午後の各試験で正答率が60&を超えれば合格になるといわれています。費用は5700円です。
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出題範囲
テクノロジー・マネジメント・ストラテジーの各分野から満遍なく出題されます。IPAの公式情報などを参照しながら、対策を立てていきましょう。
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難易度
ITSSではレベル4に位置しており、国内のIT系資格試験の中で最も難しい水準です。直近5年ほどの合格率は16~17%でとなっています。
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勉強方法
午前の選択式は、過去問や市販のテキストを用いた独学でも対策が可能です。ただし、午後の記述式試験は、10ページ以上におよぶ長文を読み込んだ後に記述式で回答していきます。そのため、ある程度の「慣れ」が必要になるでしょう。特に実務未経験の場合は、予備校の対策講座などを駆使した対策がおすすめです。
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現場での評価
IT系資格の中でも最難関レベルに位置し、合格率も低いことからエンジニアとしての評価に結び付きます。実務経験があれば、この資格の取得が転職・キャリアアップのきっかけになることは十分にあり得ます。
3. まとめ
世間的なIoTの普及に伴い、IoTエンジニアの需要も右肩上がりで増加しています。IoTエンジニアには、他のITエンジニアと比較して組み込み系の知識が求められます。組み込み系の実務経験がない場合は、資格を取得することによって基礎的な知識があることをアピールすることで、転職活動を有利に進められるでしょう。
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