クラウドを前提としてシステム構築を進める「クラウドファースト」「クラウドネイティブ」の広まりにより、日本でもクラウド人材の需要が増加しています。これに伴い、クラウド関連資格の認知度も上がってきました。今後は、クラウド関連の資格を持つITエンジニアの付加価値が高まっていくと予想されます。ここでは、メジャーなクラウドプラットフォームのひとつである「GCP (Google Cloud Platform)認定資格」を網羅的に紹介していきます。
1. GCP(Google Cloud Platform)認定資格とは?
まず、GCP認定資格について簡単に解説します。
GCP認定資格とは
GCP認定資格は、Google社が提供するクラウドプラットフォームに搭載されている各機能について、一定の知識を持つことを証明する資格です。2020年11月時点で全10種の資格が存在し、試験ではGoogle Cloudに関する知識はもちろん、機械学習やデータ分析などの知識が問われるものもあります。
勉強法について
GCP認定資格を取得するための勉強法は、「書籍」や「公式トレーニング(GCPトレーニング)の受講」が中心になるでしょう。GCPは世界的に知名度の高いサービスであるため、解説書が多数販売されています。
また、日本国内にはGCPのトレーニングを代行する正規代理店が複数存在しており、オンライン講座も開催されていることから、独学以外の勉強方法が豊富です。コロナ禍で外出に制限がある状態でも、比較的スムーズに勉強をすすめることができます。
GCPを取得するメリット
GCPは、AI開発、DevOpsサービス(開発・運用向けサービス)、ストレージサービスなど現代のITシステム開発に必要なツール群をクラウド上から利用することができます。ITシステムのクラウド移行にともない、クラウドプラットフォームの利用が一般的になりました。特にGCP・AWS・Azureの3つは、世界的にメジャーなクラウドプラットフォームであり、業界・業態を超えてさまざまな企業が活用し始めています。クラウド対応型人材を目指すのであれば、これらクラウドプラットフォームについての知識は必須になるでしょう。
GCPは、Googleが提供する無料アプリ(GmailやGoogleドライブなど)との親和性が高く、クラウドベースのコラボ作業がしやすい点が特徴です。また、機械学習やAI開発の分野でも実績があります。GCP認定資格を取得することで、GCPベースの開発プロジェクトに参入するきっかけになるでしょう。
2. ITエンジニアが取得を検討すべきGCP資格
2020年11月現在、10種類のGCP認定資格が設けられています。また、日本語受験可能な認定資格は4つです。それぞれ具体的に見ていきましょう。
GCPユーザー向け
GCPの各機能を使用するユーザー(非開発者)向けの試験です。
G Suite
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・対象:GCP一般ユーザー向け
・概要:G Suiteを利用したことがある個人ユーザー向けの試験です。Gmail、Googleドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、スライド、フォーム、Hangouts MeetなどG Suite関連ツールの使い方に関する内容が出題されます。英語のみの試験であり、選択式試験と実技試験で構成されています。受験費用は75ドルです。
入門レベルの開発者向け
GCPを用いた開発経験が半年~1年程度の初級エンジニア向け試験です。
Associate Cloud Engineer
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・対象:開発者 初級(開発経験6カ月~1年程度)
・概要:GCP内にある各アプリケーションの配置や環境設定、稼働状況の監視と管理などが出題されます。具体的な開発作業についての内容は少なく、環境設定の基礎知識を証明するための試験と言えるでしょう。試験時間は2時間で費用は125ドルです。オンライン受講が可能な有料トレーニングを利用すれば、合格は難しくありません。
実務者レベル
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GCPの各機能を用いて実際のシステム開発を進めるエンジニアに向けた試験です。受験の目安は「GCPにおける開発経験1年以上を含む、システム開発経験3年以上のエンジニア」となっています。また、単に知識を問うだけの試験ではなく、「与えられたビジネス要件を満たすために必要なGCPサービスを選定する」という実務ベースの視点が必要な内容です。
Professional Cloud Architect
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・対象:クラウドエンジニア 中級
・概要:Associate Cloud Engineer認定試験よりも、技術的に深い内容が出題されます。出題範囲は大きく以下6つです。
・クラウド ソリューション アーキテクチャの設計と計画
・ソリューション インフラストラクチャの管理とプロビジョニング
・セキュリティとコンプライアンスを考慮した設計
・技術プロセスやビジネス プロセスの分析と改善
・実装の管理
・ソリューションおよびオペレーションの信頼性の確保
クラウド環境における「システム企画・設計・マネジメント・実装・運用」について、満遍なく出題される傾向にあります。試験時間は2時間で費用は200ドルです。GCPの実務経験がある場合は、足りない部分の知識を書籍やオンライン講座で補う必要があります。
Professional Cloud Developer
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・対象:クラウドエンジニア 中級
・概要:アプリケーション開発者向けの試験であり、「アプリケーションのビルドとテスト」「デプロイ」「スケーラビリティと可用性、信頼性に優れたアプリケーション設計」などが出題範囲です。ただし、2020年11月現在はベータ版のみが提供されています。試験時間は4時間で費用は120ドル、取得条件にはProfessional Cloud Developerの合格が含まれます。
Professional Data Engineer
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・対象:データエンジニア 中級
・概要:データエンジニア向けの試験であり、「データ処理システムの設計」「データ処理システムの構築と運用」「機械学習モデルの運用」「ソリューション品質」などの内容が出題されます。日本語での受験実績が少ないせいか、ケーススタディに必要な情報がネット上にあまり公開されていません。そのため、有料のオンライン講座や公式のチュートリアル動画などを参考にしながら勉強を進めることになるでしょう。試験時間は2時間で費用は200ドルです。
Professional Cloud DevOps Engineer
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・対象:管理者 中級
・概要:開発プロセスの運用や環境整備に従事するエンジニア向けの試験です。出題範囲は「サービスへのサイト信頼性エンジニアリングの原則の適用」「サービスモニタリングの実装」「パフォーマンスの最適化」「サービスインシデントの管理」などです。試験時間は2時間で費用は200ドルです。
Professional Cloud Security Engineer
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・対象:セキュリティエンジニア 中級
・概要:セキュリティエンジニア向けの試験です。「クラウドソリューション環境内のアクセス構成」「クラウドソリューション環境会のオペレーション管理」「ネットワークセキュリティ」など、クラウドベースのシステムにおけるセキュリティ構築についての内容が出題されます。こちらも試験時間は2時間で、費用は200ドルです。
Professional Cloud Network Engineer
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・対象:ネットワークエンジニア 中級
・概要:クラウドシステムに関与するインフラエンジニア向けの試験です。「GCPネットワークの設計・計画・プロトタイピング」「GCPを用いたVirtual Private Cloud(VPC)の実装」「ハイブリッド相互接続」など、仮想ネットワーク環境やネットワークの相互接続に関する内容が出題されます。試験時間は2時間で、費用は200ドルです。
Professional Collaboration Engineer
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・対象:ITシステム管理者、PLなど 中級
・概要:G Suiteを用いてプロジェクト運営やツールのアクセス権利をコントロールし、エンジニアリングとソリューションを結びつける役目を負うアーキテクト向けの試験です。出題範囲は「G Suite の承認およびアクセスの計画と実装」「ユーザー、リソース、共有ドライブのライフサイクルの管理」「メールの管理」「G Suite サービスの制御と構成」「エンドポイント アクセスの構成と管理」「組織運営のモニタリング」「G Suite の導入とコラボレーションの促進」となっています。G Suiteが一般ユーザーを想定しているのに対し、Collaboration Engineerは「設計・実装経験をもつ開発者向け」の試験という違いがあります。試験時間は2時間、費用は200ドルです。
Professional Machine Learning Engineer
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・対象:機械学習エンジニア 中級
・概要:GCPを用いて機械学習の開発を行うエンジニア向けの試験です。「ML(Machine Learning)ソリューションの設計」「MLモデル開発」「MLパイプラインの自動化とオーケーストレーション」「データ準備と処理」「モニタリング、最適化、メンテナンス」などの内容が出題されます。試験時間は2時間、費用は200ドルです。
テクニカルリーダー、アーキテクト向け
一般的な開発者ではなく、開発チームのリーダーやPM、アーキテクト向けの上級試験です。
Google Cloud Certified Fellow
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・対象:ソリューション アーキテクト 上級
・概要:アーキテクトや開発部門のリーダーを対象とした試験です。「セキュリティとコンプライアンスを考慮した設計」「ソリューションインフラのプロビジョニング」「技術プロセス、ビジネスプロセスの最適化」「ソリューションとオペレーションの信頼性確保」といった内容が試験範囲です。ただし、受験のためには資格取得者からの紹介・推薦が必要で、パネル面接も課されます。2020年11月現在の情報によると、Google自体が試験の評価制度に対してフィードバックを収集している段階であることから、試験費用は設定されていません。(Googleが負担)ただし、今後は有料化される見込みです。
3. まとめ
日本のIT業界では、クラウド関連の人材需要が増加しています。特にGCPなどのメジャーなクラウドプラットフォームに関する資格は、ITエンジニアの付加価値を高めるものとして有望視されています。資格を獲得することで、転職活動において優位にはたらく可能性もあるので、まずは自分のスキルに沿った資格を取得していきましょう。
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