CADオペレーターとは
CADオペレーターとは、CADを使用して作図や製図を行う職種です。自動車や建築物、電気・水道の配線、室内デザインなどさまざまな分野で活躍しています。
一般的には、CADデザイナーや設計技術者などの指示を受けて図面を作成する職種です。そのため、どちらかといえば上位者の指示どおりに仕事を進める「作業者」としての側面が強い職種といえます。
関連記事:CADオペレーターの将来性は?AI代替への懸念について解説
CADとは
CADは、「Computer Aided Design」の略語で、コンピュータを使って設計や製図を行うこと、もしくはそのためのツールの総称です。CADには、あらゆる業種に対応できる汎用的なものや特定の業種(建築・土木系、機械系)に特化したものなど、いくつかの種類があります。
また、「2次元CAD」と「3次元CAD」の2つに分類することも可能です。2次元CAD(2D CAD)は平面図を作成するために、3次元CAD(3D CAD)はバーチャルな空間に3次元の立体構造を作成するために使用されます。これまでは2次元CADの需要が多かったものの、今後は3次元CADの需要が増えると予測されています。
CADオペレーターの分類
CADオペレーターの仕事は、いくつかの専門分野に分かれており、それぞれ専用のCADシステムを駆使して図面を作成します。代表的なCADオペレーターの分類は以下の4つです。
-
・機械系CADオペレーター
・建築/土木系CADオペレーター
・内装系CADオペレーター
・電気/電子系CADオペレーター
ここでは、これらのCADオペレーターの分類についてそれぞれ詳しく解説します。
機械系CADオペレーター
機械系CADオペレーターとは、自動車や電化製品、精密機械など、さまざまな機械の図面をCADを通じて作成する職種です。また、必要なすべての部品の図面を描いた後、これらを組み立てて部品同士の干渉がないかをチェックすることも業務に含まれます。
最近では従来の2D CADに加えて、立体的な製図が可能な3D CADを採用する企業が増加しています。3D CADを活用することで、部品間の干渉チェックをより効率的に、システム上で行うことが可能になりました。
建築・土木系CADオペレーター
建築・土木系CADオペレーターとは、ビルや家屋などの建造物や、インフラ設備や土地開発といった土木工事の設計図や立面図、断面図などを作成する職種です。建築・土木系CADオペレーターは施工に必要なすべての図面を作成する責任を担っています。
工事現場での進行や安全基準などの工事に関する幅広い知識があると、的確な図面作成が可能になります。
内装系CADオペレーター
内装系CADオペレーターとは、居住空間やオフィスなどの室内デザイン、家具のレイアウト図面などを作成する職種です。内装に関わるCADオペレーターの主な業務としては、室内のデザイン案や家具の配置図の作成、照明や配線に関する図面作成、インテリアの素材や色彩の選定案を図面化するなどがあります。
デザインの細部に至るまでの精密な作業が求められるため、インテリアや照明など空間デザインに関する知識が必要です。
電気・電子系CADオペレーター
電気・電子系CADオペレーターとは、電気設備や電子機器の図面作成に特化した職種です。電気・電子系CADオペレーターは、単線結線図や展開接続図、板金の図面、部品図、端子配列図など、さまざまな種類の図面を作成します。
これらの図面を作成するには、部品の配置や機能に関する基本的な知識が必要です。基本的な知識があることで、より複雑で技術的な設計課題にも対応できるようになります。
CADオペレーターの仕事内容
図面を作成することがCADオペレーターの仕事と思われがちです。しかし、実際には幅広い業務が存在します。CADオペレーターの業務は、設計者やデザイナーとの打ち合わせからスタートし、打ち合わせ内容をもとにCADを使用して作図や製図を行います。
作成した図面のデータ修正や調整などもCADオペレーターの仕事です。以下では、CADオペレーターの仕事内容について解説します。
設計者やデザイナーとの打ち合わせ
CADオペレーターの仕事の1つは、設計者やデザイナーとの打ち合わせです。正確に作図や製図をするためには、打ち合わせ段階で必要な情報を聞き取ることが重要です。設計の意図や目的を理解していないと、最適な図面は作成できないでしょう。そのためには、設計者やデザイナーとの円滑なコミュニケーションが必要です。
CADを使用した作図・製図
作図、製図とは、簡単にいえば「設計図面」や「完成予想図」を作成し、視覚化する作業です。一般的には、設計技術者やCADデザイナーが作成した図面をもとに、CADソフト(SOLIDWORKSやAutoCADなど)を使用して、より具体的な図面を仕上げていくことが多いでしょう。
たとえば、建築・土木設計などでは、クライアントからの発注内容を正確に反映できるように、設計技術者の指示を受けながらCADで設計図面を作成します。作成した図面をもとに工事費用の見積り、材料・資材の調達などを行うため、正確さが必要です。実際に建物が完成した後は、改修などの参考資料として使われる場合もあります。
また、機械設計では、3次元CADで試作品や金型製作などが行われます。3次元CADで大枠となる形状を決定し、何度かの修正を重ねながら試作品や金型を作成することで、実際の製造段階での修正を減らし、効率的に設計を進めることが可能です。さらに、より精緻なシミュレーションを行うために、CAE(Computer Aided Engineering)の基礎データを作成することもあります。
データの修正・調整・管理
CADで図面データを作成したあとは、修正や調整を行います。実際にCADでデータ化すると、それまで見えてこなかった細かい不具合が見つかることがあるからです。一般的にCADデータの作成は一度の作業で終わらず、幾度かの修正・調整を経て完成します。
また、制作途中に仕様変更などが入り、修正を余儀なくされる場合があります。こうした変更に対応する作業もCADオペレーターの仕事です。特に、建築・自動車といった大型の工業製品のデザインは、変更が複数回にわたることも珍しくありません。
さらに、完成した図面データを管理することもCADオペレーターの仕事です。図面データは複数人が長期にわたって使用するため、常に最新化したり、紛失や破損がないようバックアップを複製したりすることが求められます。
未経験からCADオペレーターになるには?
未経験からCADオペレーターになるための方法について解説します。一人前のCADオペレーターになるためには、専門知識やCADソフトウェアの操作スキルなどが必要です。ただし、免許や学歴が必要な職種ではありません。したがって、未経験からCADオペレーターを目指すことは十分に可能です。
一方で、未経験者はCADオペレーターとしての知識・スキルを証明する手段がありません。そこで資格を取得し、基礎知識や意欲をアピールするという方法がおすすめです。
CADオペレーターになるためのキャリアパス
CADオペレーターになるには、建設・土木系の企業や設計事務所、あるいは電気・電子機器、機械・部品、設備などのメーカーに就職するのが一般的な方法です。CADオペレーターになるためのキャリアパスとして、以下が挙げられます。
-
・高校卒業後にメーカーに就職
・専門学校、短期大学、4年制大学などを卒業後にメーカーに就職
・別職種などを経てメーカーに転職
いずれの場合も、最初の一歩は未経験の場合が多いでしょう。学校でCADに特化して学ぶことは少ないと考えられます。ただし建築学科や工業学科などで、学習の一環としてCADを扱うケースはあります。
関連記事:未経験からIT業界に転職するには?難易度や志望動機の例文も紹介
CADオペレーターの未経験者歓迎の求人の有無
CADオペレーターの未経験者歓迎求人は多いです。正社員だけでなく、派遣社員やアルバイトの募集も多く存在します。ただし、未経験といっても業務未経験を指す場合が多いので、就職前に後述するスキルや資格を身につけておくほうが好ましいです。また、年齢的には若いほうが採用されやすいでしょう。
CADオペレーターの年収と求人傾向
CADオペレーターへの転職を目指す方にとって、CADオペレーターの年収と求人傾向などの情報は貴重です。ここでは、CADオペレーターへの転職を目指す方に向けて、CADオペレーターの年収傾向や求人数、労働条件などを解説します。あわせて、レバテックキャリアに掲載されていたCADオペレーターの求人例も紹介します。
関連記事:転職エージェントとは?メリット・デメリットや利用の流れを解説
CADオペレーターの年収傾向
CADオペレーターの年収傾向は、あまり高くないといえます。厚生労働省の職業情報提供サイトjobtag(日本版O-NET)に掲載されているCADオペレーターの平均年収は約452万円です。しかし、3D CADなどの専門的な技術を習得できれば、年収アップも期待できます。そのため、CADオペレーターには常に学習し続けることが必要です。
CADオペレーターの求人数
2024年10月時点でレバテックキャリアに掲載されている求人の中から「CADオペレーター」でキーワード検索をすると、該当の求人は3件のみでした。CADオペレーターのみの職域の需要は少ないと考えられます。ただし、スキル要件から「CAD」を指定して検索したところ、該当の求人は69件掲載されていました。CADのスキルはある程度の需要はありますが、今後はCADスキルにくわえて別の知識やスキルも習得していくことが必要でしょう。
CADオペレーターの働き方
CADオペレーターの求人は正社員だけでなく、派遣労働者や業務委託など幅広い雇用形態の求人があります。また、主な業務内容が設計であるため納期近くは残業が発生する可能性があるようです。
CADオペレーターの働き方は今後もソフトの進化とともに変化するでしょう。最近のCADソフトはクラウドサービスに対応したものも増えているため、リモートワークの求人が増えています。さらにメタバースやVRといった最新技術の設計にも使用されるので、今後は労働条件が好転すると予測されています。
CADオペレーターの求人例
CADオペレーターを目指す方には、実際のCADオペレーターの求人内容は気になる情報です。以下では、レバテックキャリアに掲載されていた、実際のCADオペレーターの求人例を紹介します。CADオペレーターへの転職の参考として、活用してください。
【想定年収】
300〜540万円
【業務内容】
・自動車技術の開発
・自動車部品の設計
・家電用電化製品の開発、設計
・産業用機械のハーネス回路設計補助 など
【求められるスキル・経験】
・機械設計の実務経験
・CADを使用した設計の経験
・機械工学の基礎知識
未経験からCADオペレーターへの転職を成功させるポイント
CADオペレーターの求人に応募するには、まずは履歴書や職務経歴書が必要です。未経験者の場合、特に志望動機や自己PRに重点を置いて作成しましょう。未経験からCADオペレーターへの転職を成功させるポイントとしては、以下の2つが挙げられます。
-
・志望動機や自己PRに力を入れる
・面接対策をする
以下ではそれぞれのポイントについて詳しく解説するので、転職活動を進める際の参考にしてみてください。
関連記事:
エンジニアの転職で欠かせない自己分析のやり方とは
転職エージェントに履歴書を提出する理由とは?作成のポイントも解説
志望動機や自己PRに力を入れる
求人に応募する際には志望動機が問われます。特に、未経験からCADオペレーターへの転職を希望する場合、なぜそのCADオペレーターになりたいと思ったか、なぜその業界・企業に関心を抱いたかを明確に伝えられると良いでしょう。
また、自己PRに力を入れることも重要です。CAD関連の資格を取得している場合、スキルや知識を有していることの証明になるため必ず記載するようにしましょう。業界に関連する資格を取得している場合も、ほかの候補者との差別化につながり選考で有利になる可能性があるため記載すると良いでしょう。
さらに、企業のビジョンや募集要項事前を調べ、それに沿った形で自己PRを職務経歴書に盛り込むことも有効です。未経験者であっても、前職で得たスキルや課題解決に向けた取り組みなど経験を業務でどう活かせるのか、具体的なエピソードを添えて記載することでアピールできるでしょう。
関連記事:
ITエンジニア向け志望動機の書き方とは?【職種別例文あり】
エンジニアの転職理由はなんて答えるべき?面接で使える例文とポイントを解説
面接対策をする
面接対策として、面接でよく問われる質問の答えをあらかじめ用意しておくことが重要です。その際、学生時代や前職での具体的なエピソードをとともに回答できると説得力が増し、自己PRにつながります。
また、業界や企業への関心や向上心を示すためにも、企業への逆質問をいくつか用意しておきましょう。募集要項に記載されている内容や、面接時に聞いた内容についてより詳しく深堀りすると、内容を整理してきちんと把握しようとする姿勢が示せます。
関連記事:
エンジニア面接の逆質問29選!技術面接の質問例や注意点などシーン別に解説
ITエンジニアの面接質問集42選!各種回答例を紹介
ITエンジニアの採用面接 - 自己紹介で見られるポイント【例文付き】
CADオペレーターに求められる知識・スキル
CADオペレーターの仕事には、CAD作成に関連するさまざまな知識・スキルが求められます。CADオペレーターに求められる知識・スキルには、業界に必要なCADソフトの経験や最新ソフトの知識などが挙げられます。
また、集中して作業を行うため高い集中力が欠かせません。さらに仕事の関係者との打ち合わせなどがあるため、コミュニケーション力も大切です。
以下では、CADオペレーターに求められるスキルについて解説します。
業界に必要なCADソフトの経験
ひとことにCADソフトといっても、建設や製造、インテリアなど業界によってCADソフトの種類が異なります。
そのため、自分が就職したい業界に合わせてCADソフトを選択する必要があります。ただし、同じCADソフトなので共通部分も多いです。1つの種類を扱えれば、ほかの種類に応用が利くでしょう。
最新ソフトの知識
CADのソフトは定期的に更新されています。すべての企業で最新のソフトに変更しているわけではありませんが、最新ソフトに変更されることもあります。そのため、最新ソフトの知識は持っておいたほうが良いでしょう。実際に触れる環境ではない場合も多いので、知識を入れておく程度が現実的です。
高い集中力
CADオペレーターは、長時間にわたって画面に向き合うことや、設計における正確さが求められます。そのため、高い集中力が必要です。1つのミスが後の工程で大きな問題を引き起こす可能性もあるため、高い集中力を保ち、作業の正確さと成果物の品質を維持することが重要です。
コミュニケーション力
CADオペレーターのメイン業務はCADの操作なので黙々と作業することが多いですが、仕事はチームで進めます。CADオペレーターは、CADデザイナーや設計者などの指示をもとに図面を作成するので、打ち合わせや疑問点に関する質問など、コミュニケーション力が欠かせません。またクライアントとやり取りする機会もあるので、クライアントから要望をヒアリングするスキルや提案力も必要です。
CADオペレーターへの転職に役立つ資格
CADオペレーターに必須の資格はありません。しかし、CAD関連の資格を取得することで転職の際に有利になる場合があります。客観的なスキル証明や向上心の高さのアピールにつながるからです。
CADの資格は初心者向けから上級者向けまで幅広く展開されていますが、未経験者や初心者がCADオペレーターへの転職するために役立つ資格は以下の4つです。
-
・3次元CAD利用技術者試験
・2次元CAD利用技術者試験
・建築CAD検定試験
・オートデスク認定プログラム AutoCAD ユーザー
それぞれについて以下で詳しく解説するので、資格取得を検討する際の参考にしてみてください。
関連記事:CADオペレーターには資格が必要?役立つ資格9選!
3次元CAD利用技術者試験
3次元CAD利用技術者試験は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が主催するCAD関連の資格試験です。3次元CADに関する知識・スキルを基礎から応用レベルまで幅広く身につけられます。難易度別に「1級」「準1級」「2級」の3段階に分けられており、1級および準1級を受験するためには2級を取得しなければなりません。以下では、主に未経験者を対象とした2級および準1級の内容を紹介します。
3次元CAD利用技術者試験2級
3次元CAD利用技術者試験2級とは、3次元CADシステムオペレーターを目指す方や初心者を対象とした資格試験です。3次元CAD利用技術者試験2級の詳細を、以下の表に記載します。
対象者 | 3次元CADシステムを利用した機械系・ 製造系のモデリング・設計・製図など の業務に従事することを目指す人、 実際に3次元CADシステムの周辺業務 に従事している人 |
受験資格 | なし |
受験料 | 7,700円(税込) |
受験方式 | 筆記試験60分(CBTによる多肢選択方式) |
試験内容 | ・3次元CADの概念 ・3次元CADデータの管理と周辺知識 ・3次元CADの機能と実用的モデリング手法 ・3次元CADデータの活用など |
合格基準 | 各分野5割、総合7割以上の正解で合格 |
3次元CAD利用技術者試験準1級
3次元CAD利用技術者試験準1級とは、3次元CADシステムオペレーターを目指す方や仕事に就いてからまだ間もない人を対象とした資格試験です。3次元CAD利用技術者試験準1級の詳細を、以下の表に記載します。
対象者 | 3次元CADを学び、基礎知識と操作を習得し、 設計補助業務やCADオペレーターを目指す人 |
受験資格 | 2級の合格 |
受験料 | 11,000円(税込) |
受験方式 | 実技試験120分(3次元CADソフトを使用 したモデリングとマークシート記入) ※CADソフトの入ったノートPCの持込 受験での実施 |
試験内容 | ・CADリテラシー ・形状認識能力 ・2次元図面からのパーツモデリング能力 |
合格基準 | 各分野5割、総合7割以上の正解で合格 |
2次元CAD利用技術者試験
2次元CAD利用技術者試験は、同じく一般社団法人コンピュータ教育振興協会が主催する資格試験で、平面図の作成を想定しています。こちらも「基礎試験」「2級」「1級」の3段階にグレードが分かれています。未経験者であれば、まずは「基礎試験」あるいは「2級」を目指していくと良いでしょう。
以下では、基礎試験と2級試験の概要を紹介します。
2次元CAD利用技術者試験基礎
2次元CAD利用技術者試験基礎とは、CADについて本格的に学び始めたい方や、3ヶ月程度の学習経験を持つ方を対象とした試験です。2次元CAD利用技術者試験基礎の詳細を、以下の表に記載します。
対象者 | これからCADを本格的に学ぶ人、 もしくは就学後3ヶ月程度の人 |
受験資格 | なし |
受験料 | 4,400円(税込) |
受験方式 | 筆記試験50分 (IBTによる多肢選択方式および真偽方式) |
試験内容 | ・CADシステムの知識と利用 ・CADシステムのプラットフォームについて ・製図の知識 ・図形 |
合格基準 | 総合7割以上の正解で合格 |
2次元CAD利用技術者試験2級
2次元CAD利用技術者試験2級は、CADオペレーターへの就職を目指している方や、実務経験がまだ浅い方を対象とする試験です。2次元CAD利用技術者試験2級の詳細を、以下の表に記載します。
対象者 | CADシステムを利用した設計・ 製図業務に従事することを目指す人、 従事して間もない人 |
受験資格 | なし |
受験料 | 6,050円(税込) |
受験方式 | 筆記試験60分(CBTによる多肢選択方式) |
試験内容 | CADシステムの概要と機能、製図など |
合格基準 | 各分野5割以上、総合7割以上の正解で合格 |
建築CAD検定試験
建築CAD検定試験は、一般社団法人 全国建築CAD連盟が主催する資格試験です。試験レベルは4級、3級、准2級、2級、准1級の5グレードで構成されており、未経験者は3級および4級に挑戦することをおすすめします。4級試験は高校の団体受験のみ実施されているため、ここでは一般の方が受験可能なグレードの中で最も簡単である3級を紹介します。
建築CAD検定試験3級
建築CAD検定試験3級は、CADの使用者、特に建築業界でCADを使用する方を対象とする試験です。建築CAD検定試験3級の詳細を、以下の表に記載します。
対象者 | CADの使用者、特に建築業界で CADを使用する方 |
受験資格 | なし (建築業界に従事していることが望ましい) |
受験料 | 10,500円 (税込) |
受験方式 | 実技受験120分 |
試験内容 | 建築図面の要素を取り出して作成した 参考図をもとに完成図を試験時間内に作成 |
合格基準 | 200点満点中 140点~150点以上で合格 |
オートデスク認定プログラム AutoCAD ユーザー
オートデスク認定プログラム AutoCAD ユーザーは、AutoCADに関する基本的な知識を有し、知識を実践的に応用する技術を持つことを証明する資格試験です。この試験では、AutoCADの使用経験が重視され、受験者の実践的な技術力を評価することで、その能力を公式に認定します。オートデスク認定プログラム AutoCAD ユーザーの詳細は以下のとおりです。
対象者 | AutoCADの学習を進めている学生 および初級者(実務未経験者) |
受験資格 | 同上 |
受験料 | 7,700円程度(試験センターに要問合せ) |
受験方式 | 選択式 + 実技操作:50分 |
試験内容 | ・基本的な作図スキルの利用 ・オブジェクト作成/編集/整理 ・コンテンツの再利用 ・作図編集機能など |
合格基準 | 7割以上の正解率 |
CAD未経験からスキルを身につけるための勉強法
CADオペレーターへ転職する際のおすすめ資格を確認したところで、ここからはCADスキルを身につけるための学習方法を確認していきましょう。CADに関するスキルを身につけるための勉強法は複数ありますが、代表的なものとしては以下の5つが挙げられます。
-
・書籍などで独学する
・フリーソフトや学習サイトを活用する
・スクールで学ぶ
・職業訓練校で学ぶ
・派遣社員として経験を積む
以下では、CAD未経験からスキルを身につけるための勉強法についてそれぞれ解説します。
書籍などで独学する
書籍などを活用して独学する方法は、よくある勉強方法の1つです。独学でスキルを身につけると、費用を抑えられる、自身のペースで学習できるなどの利点があります。
また、CADに似たフリーソフトも多数あるため、インプットとアウトプットをあわせて行えるでしょう。一方で、実際の図面を利用できないなどのデメリットもあります。
既に建築系や電機機器系企業に就職している方であれば問題ありませんが、図面が手に入らない方は実務を意識するのが難しいでしょう。
フリーソフトや学習サイトを活用する
インターネット上にはCADのフリーソフトや体験版、CADソフトの操作方法を解説している学習サイトが多数存在します。フリーソフトや学習サイトを利用するとコストをかけずに実践的なスキルを磨けるため、未経験者の学習方法としておすすめです。
具体的には、Jw-CADやFreeCADのようなフリーソフトが挙げられます。また、オートデスク社のAutoCADや、Vectorworks Japan株式会社のVectorworksなど、商用ソフトにも体験版が用意されており、一定期間無料で試用できます。体験版は利用期間が限られていますが、ソフトの使用感を確認したい場合や短期間で集中的に学習したい場合には、体験版を活用するのも効果的です。
また、CADソフトの操作方法を解説しているサイトも数多く存在します。独学で習得を目指す場合は、まずはこうしたサイトの情報を参考にすると良いでしょう。中には、練習用の図面を提供しているサイトもあるため、実践的な学習に役立ちます。
専門学校で学ぶ
CADのスキルや知識を身につけるには、専門学校などで教育を受ける方法があります。一般的には、CADオペレーター養成コースを持つ専門学校への入学が近道だといえるでしょう。
また、より深く専門知識を学びたいのであれば、大学の建築学科に入学するという方法もあります。ただし、建築や工学などの専門知識を学ぶ機会が多く、CADはほとんど使用しない可能性も否定できません。入学を検討する際は、まずカリキュラムをしっかりと確認しましょう。
スクールで学ぶ
専門学校とスクールは似ていて、定義上明確な違いがあるわけではありません。ここでは、専門学校は高校卒業後に学歴に載るような形で進学する場所で、それに対してスクールはタイミングに関わらず通学でき、学歴にも載せないような場所、と定義して説明します。
CADのスクールは全国に存在し、中には自宅のパソコンからオンラインで受講できる通信制のスクールもあります。希望の時間に受講でき仕事と両立できるスクールも多いので、自分のライフスタイルに合わせて受講できるのがスクールの魅力です。
職業訓練校で学ぶ
職業訓練校とは、特定のスキルの訓練を実施し、再就職を支援するための公的機関です。受講料がかからず、むしろ失業保険の受給資格者であれば通学期間中に手当を受けられます。安く学習したい人や、就職まで支援してもらいたい方には向いているでしょう。
派遣社員として経験を積む
未経験者の場合、正社員としてCADオペレーターに転職できる可能性はそれほど高くありません。CADオペレーターの求人は「実績・経験重視」のものが多いため、新卒以外の未経験者を採用するケースは少ないのが実情です。
そのため、中途採用で正社員を目指すのであれば、まずは派遣社員として基礎的な業務経験を積んでから正社員として転職する方法がおすすめです。
未経験から効率良くスキルを身につけていくポイント
未経験から効率良くスキルを身につけていくには、要点を押さえて段階的に学習することが重要です。まずは、難易度の低いものから挑戦するようにしましょう。
また、繰り返し練習することや人の製図を見て学ぶことも、CADのスキルを身につけるために大切です。分からないことがあった場合は、経験者に聞くこともおすすめです。そして何より、実際に経験を重ねることでスキルを身につけられるでしょう。
以下では、未経験から効率良くスキルを身につけていくポイントについて解説します。
難易度の低いものから挑戦する
いきなり難易度の高いものから挑戦すると挫折してしまったりモチベーションが低下してしまったりする可能性が高いので、難易度の低いものから挑戦するのがおすすめです。難易度の低いものから挑戦していくことで着実にスキルが身につき、最終的には難易度の高いものもクリアできます。
繰り返し練習する
CADに慣れるには繰り返し練習することが重要です。ノウハウを学ぶことも重要ですが、ノウハウを活かして実践してみることも重要になります。ある程度知識が身についたら、実際に手を動かして挑戦し、分からない部分を調べるやり方がおすすめです。
人の製図を見て学ぶ
人の製図を見て学び、真似してみることもスキルアップに効果的です。最初は自分でやってみることが重要ですが、ある程度できるようになってきたら、より効率的で精度の高い方法を模索し最適化していく必要があります。
自分だけでやっていると、本来もっと良いやり方があるのに非効率なやり方で固定されてしまう懸念があります。そのため、人の製図を見て学ぶことが現状打破に有効です。
分からないことは人に聞く
分からないことを自力では解決できない場合、講師などの有識者に聞いてみるのも得策です。もちろん基本的には自分で試行錯誤したり調べたほうがスキルアップに有効ですが、それでも分からない部分は放置しておくよりも人に聞いたほうが良いです。
実務経験を重ねる
最終的には、実務経験を重ねることが最もスキルアップに有効でしょう。実務では、早く正確な作図が求められます。ただし単に実務をこなせば良いというわけではなく、自身でより良い仕事を追求していくことや、勉強を続けることは重要です。
CADオペレーターが利用するツール
CADオペレーターが利用するツールは、関わる分野や仕事内容によって異なります。CADオペレーターが利用するツールは、高いシェアを誇る「AutoCAD」やフリーの2D CADソフト「Jw_cad」、建築用の「Rebro」や「Tfas」などが代表的です。
ここでは、これらのCADオペレーターが利用するツールについて解説します。
AutoCAD
AutoCADはオートデスク社によって開発された、業界で広く認知されているCADソフトウェアの1つです。建築や土木、電気、電子工学など多岐にわたる分野で利用されており、その汎用性と高い機能性から業界のトップシェアを誇っています。
主な特徴は、3Dおよび2Dの作図が可能であること、そして初心者でも使いやすい優れた操作性です。アドオンも多くあり、特定の業務や業種に合わせたカスタマイズができます。
Jw_cad
Jw_cadとは、インターネット上で無料で入手可能な2D(2次元)汎用CADソフトウェアです。建築士の実務経験とアイデアをもとに開発されたため、建築設計に特化した機能を数多く搭載しています。
また、操作性にも優れており、マウス操作だけで作業を行えます。カスタマイズした設定の共有などもできるなど、無料ながらも多くの企業で活用されているソフトウェアです。
Rebro
Rebroは、建築設備を専門とする3D CADソフトウェアで、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)技術に対応しています。パラメトリックモデリングの手法を採用しており、特定の部品の寸法や形状を変更すると、それに連動して関連するほかの部品も自動で調整されます。
また、設計内容をチームメンバーと簡単に共有できるため、全体の設計検討や改善提案を円滑に進めることが可能です。
Tfas
Tfas(CADWe'll Tfas)は、建築設備専門のCADソフトウェアです。直感的な操作性と、設計の意図を明確に伝える高度な図面作成機能を搭載しています。
ほかのCADソフトウェアで作られた2D図形を3Dの建築要素に変換する機能や、ほかのソフトウェアでも閲覧しやすい形式でのIFC出力機能など便利な機能を備えています。
CADオペレーターに関するよくある質問
CADオペレーターに関するよくある質問には、在宅ワークの可否や業界における年齢制限、女性の転職の可能性などについてがあります。
また、CADオペレーターに向いている人の特徴についての質問も多いです。以下では、CADオペレーターに関するよくある質問に回答しています。CADオペレーターへの転職を検討している方は、参考にしてみてください。
Q1. CADオペレーターは在宅ワーク可能ですか?
CADオペレーターは在宅ワークが可能です。最近のCADソフトはクラウドサービスに対応するなどの進化を遂げています。そのため、CADソフトとPC、インターネット環境さえあればどこからでも働けるでしょう。
Q2. CADオペレーターは何歳までなれますか?
CADを扱うための年齢制限や学歴制限はありません。そのため、何歳からでもCADオペレーターを目指せます。一方で、CADオペレーターの求人は未経験を歓迎している求人が少ないので、早めに挑戦したほうが有利といえるでしょう。
Q3. CADオペレーターは女性もなれますか?
CADオペレーターの主な就職業界は建築や電機機器と男性の多い業界ですが、多くの女性が活躍しています。CADオペレーターの雇用形態は幅広く、結婚や出産を機にCADオペレーターへ転身する女性も多いです。ライフスタイルに応じた働き方が可能なため、CADオペレーターは女性にもおすすめの職業です。
Q4. CADオペレーターに向いている人を教えてください
CADオペレーターは、技術的な専門性が求められる職種であり、個人の適性が大きく影響します。この仕事に向いている人は、ものづくりが好きな人や細部にわたる作業に集中できる高い集中力がある人、コミュニケーション能力が高い人が挙げられます。
まとめ
CADオペレーターになるには、必須の資格はありませんが、CADソフトの操作スキルや知識は必要です。効率的にスキルを身につける方法として、資格取得を通して学習するのがおすすめです。資格を取得することで、自身のスキルを客観的に証明でき、転職にも有利になります。
実際にCADオペレーターとして働くためのキャリアパスとしては、高校や大学を卒業後、もしくは他職種を経験したあとに建設会社や機械などのメーカーに就職・転職するケースが一般的です。雇用形態は正社員に限らず、契約社員や派遣社員として働く選択肢もあり、近年ではリモートとワークの求人も増えています。自分のライフスタイルに合わせて、転職先を検討すると良いでしょう。
ITエンジニアの転職ならレバテックキャリア
レバテックキャリアはIT・Web業界のエンジニア職を専門とする転職エージェントです。最新の技術情報や業界動向に精通しており、現状は転職のご意思がない場合でも、ご相談いただければ客観的な市場価値や市場動向をお伝えし、あなたの「選択肢」を広げるお手伝いをいたします。
「将来に向けた漠然とした不安がある」「特定のエンジニア職に興味がある」など、ご自身のキャリアに何らかの悩みを抱えている方は、ぜひ無料のオンライン個別相談会にお申し込みください。業界知識が豊富なキャリアアドバイザーが、一対一でさまざまなご質問に対応させていただきます。
「個別相談会」に申し込む
転職支援サービスに申し込む
※転職活動を強制することはございません。
レバテックキャリアのサービスについて