面接官から最後に発せられる「何か質問はありますか?」という問いかけは、通称「逆質問」と呼ばれる特別な質問です。基本的に、面接官からの質問に回答していく面接の場において、唯一求職者の方から質問できる機会となります。
面接において、多くの方が何を聞いていいか分からないと苦労する質問の一つではありますが、実はこの逆質問こそが、自分を売り込む絶好の機会なのです。逆質問は企業に向けて就職に向けた熱意やここまでの質疑応答で触れる機会のなかったアピールポイントを伝えるチャンスとなります。もし、何も準備せずに臨むと、うまく自分を売り込むことができず、場合によってはマイナス評価に繋がってしまうおそれもあります。
本記事では、エンジニアの就職、転職に向けた面接の場で有効活用できる逆質問例をご紹介します。これから面接に挑む方や、転職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
- 逆質問とは
- 求職者が逆質問を通して得られるメリット
- エンジニアの面接での逆質問のポイント
- エンジニアの面接で企業との相性を探る逆質問例8選
- エンジニアの面接で熱意のアピールにつながる逆質問例7選
- エンジニアの面接における給与や労働環境に関する逆質問例6選
- エンジニアの面接で避けたほうが良い逆質問4選
- エンジニアの面接で伝える逆質問の準備方法
- まとめ
逆質問とは
就職や転職の面接は、基本的には企業の側から求職者に質問し、求職者はそれにこたえるという流れで進んで行きます。この場合、求職者にできるのは質問への回答内で自分のスキルや経験などをアピールすることです。
しかし、この原則から外れて、求職者が自己のペースでアピールできる唯一の機会が「逆質問」です。面接の終盤に「何か質問はありますか?」といった形で問いかけられる際の応答が逆質問にあたり、面接活動においては定番となりつつあります。
逆質問も意図なく設けられているわけではないことには注意が必要です。企業も逆質問によって、求職者の熱意、価値観や他の質問で得ることができなかったスキルについての情報、今後活躍できる人材かという見極めなどを行っています。従って、求職者は面接に向けて逆質問についても準備をして挑む必要があるのです。
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企業が転職時の面接で逆質問を求める背景
具体的な質問例を紹介する前に、まずなぜ企業が面接の中で逆質問を求めるのかを知っておく必要があります。
冒頭でもお伝えした通り、基本的に面接では、企業からの質問に求職者が回答するという、一方通行な流れになることが多いです。
しかし、それでは企業側は求職者のことを十分に理解できたとしても、求職者側は企業のことをまだ理解できていない部分もあるはずなので、その状態で内定が出たとしても、求職者側には不安が残ってしまいます。それによって、入社後のミスマッチが発生してしまうリスクが高まってしまいます。そのため、求職者側に企業理解を深めてもらう場として、逆質問の時間が用意されているのです。
また、企業側からすれば、逆質問の内容を通して、求職者がどれほど企業の業務や文化に関心を持っているのかを見ることもできます。
したがって、逆質問の時間を設ける主な目的は、ミスマッチを防ぐことですが、求職者の入社意欲を考察する場として使われることもあります。
「特にありません」は避けるべき理由
先に記述した通り、逆質問では求職者の意欲確認の意図があります。逆質問は、企業に対してどれだけ事前に調査、研究をしているのかも問われているため、「特にありません」は事前の準備をしていない、入社に対する意欲は少ないという印象を与えてしまいます。
また、それ以外にもコミュニケーション能力が弱い、消極的な正確といった印象も与えかねないため、事前に逆質問をする準備をしておくことが重要です。
求職者が逆質問を通して得られるメリット
逆質問をすることには、求職者にとってもメリットがあります。以下で紹介する3点が求職者側のメリットとなります。このメリットを得るため、逆質問に対して備えておきましょう。
企業との相性を探ることができる
1つ目のメリットは、企業との相性を探れることです。実際の業務内容や、社風に関する質問をすることで、自分が思い描くキャリアを実現できそうか、自分にとって働きやすい会社なのかを見定めることができます。
熱意をアピールできる
2つ目のメリットは、熱意をアピールできることです。入社意欲の高さがわかるような質問をすることによって、逆質問の場を是非ともこの会社で働きたいという熱意をアピールする場として活用することができます。
給与や労働環境を知ることができる
3つ目のメリットは、給与や労働環境を知れることです。モデル年収や一日の流れに関する質問をすることで、労働環境のイメージが明確になるというメリットがあります。
エンジニアの面接での逆質問のポイント
逆質問では、基本的には企業側からどんなことを聞いても良い機会を与えてくれているのですが、だからと言って深く考えずに貴重な機会を潰してしまってはいけません。エンジニアの面接における逆質問をする際のポイントについて説明します。
調べてわかるような質問にしない
逆質問は事前に準備しておくことが可能です。求職先の企業への事前の調査を行ったうえで、さらに深掘りしたい内容や調査では得られなかった内容を質問する機会として利用しましょう。
調べてわかる内容を逆質問することは、求職先への調査不足を伝える結果となってしまいます。求職先へ興味がない、調査力が不足しているという判断につながるため、避けるべきです。
ポジティブな質問をする
求職先に対して、就業環境や待遇について確認することは問題ありません。前向きな内容の質問であればリアリティを持って転職に挑んでいるという評価につなげられます。
しかし、せっかくの逆質問の機会に、求職先に対するネガティブな質問をすることは避けましょう。面接相手に対してネガティブな質問は、決して高い評価には繋がりません。また、コミュニケーション能力が低いという評価にも繋がってしまいます。
具体的な質問にする
逆質問では自由に質問内容を選択することができますが、質問に対して有効な回答がもらえるかどうかは別の問題です。あまりにも抽象的な質問をしてしまうと、面接官も答えづらく、スムーズなやり取りができず、コミュニケーション能力の評価に悪影響が出ることもあり得ます。具体的で、回答可能な内容の逆質問が推奨されます。
エンジニアの面接で企業との相性を探る逆質問例8選
企業のWebサイトや案件情報からではわかりにくいのが、仕事の進め方や環境などの現場の雰囲気です。
面接時の逆質問では、そういった点をクリアにし、自分とのマッチ度を探ることも大切です。たとえば「新しい技術を使って仕事をしたい」といった理由で転職を希望するエンジニアにとって、現場の技術選定がどのように行われるのかは重要な問題です。この項目では、そういった企業との相性を探るための逆質問例をピックアップします。
1.新しい言語やツールの導入はどのように検討されていますか?
仕事の進め方や考え方を把握し、入社後のギャップを少なくするための逆質問です。
この質問により、トレンド技術を取り入れることに積極的か否か、新しいことに挑戦できる環境であるかどうかを知ることができます。また、技術面への関心が高いことを伝えることもできます。
2.御社で活躍されているエンジニアの方々の特徴を教えて下さい
エンジニアの方にとって、「マネジメントにも関わっていきたいのか」「技術力を突き詰めたいのか」は各々のこだわりがあると思います。応募先の企業で活躍しているエンジニアの特徴を知ることによって、今後どんなキャリアを歩けるのかをある程度把握することができます。また、働く人の特徴から企業文化を推測し、自分との相性を判断することもできます。
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3.どのようなチーム体制で業務を行っていますか?
働き方のミスマッチを防ぐため、個人主義なのか、チームや組織で動くのかを確認してみましょう。ほかにも、「コミュニケーションの取り方」「仕事の進め方」「チームの雰囲気」などを逆質問するのも手です。また、チームの人数を知ることにより、案件の規模感をイメージすることも可能です。
4.若手のアイデアが実際のサービスになった事例はありますか?
地位やポジションに関わらず、新しいことにチャレンジできる風土かを判断できます。逆質問する際に「自分は●●ということをやってみたい」などのアイデアも添えられるとベターでしょう。
5.配属予定先には、どのような企業から来られた方がいますか?
同業他社から中途入社された方が活躍しているのか、また活躍しているのはどのような属性の企業から入社した人なのかを知ることができます。これを知ることで、配属先の雰囲気もイメージすることができるようになります。
ただし、社員の前職は個人情報にも当たるので、「差し支えない範囲で構いませんので」と枕詞を入れて聞くのが良いでしょう。
6.業務の中でやりがいを感じるのはどのようなときですか?
面接官が現場の方の場合、就職後に直属の上司になる可能性が高い相手です。面接官自身が何をやりがいに感じて仕事をしているのかを知ることで、価値観が合う上司と働くことができそうか判断できます。
ただし、この質問は現場の方が出ている場合のみに使えるものであり、人事の方や、役員クラスの方に聞いても欲しい回答は得られない可能性があるので注意してください。
7.この会社に入社した理由を教えていただけないでしょうか?
現場の方が、なぜ今の会社に転職することを決めたのかを知ることで、自分が意思決定をする際の参考となるだけでなく、自分が調べただけでは分からなかった魅力を発見することができるかもしれません。
面接官が新卒入社だとあまり参考にならないので、この質問をする前に、中途入社しているかを確認しましょう。
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8.実際に働いていて感じる、他社にはない強みはありますか?
こちらも面接官が現場の方の場合にできる質問です。企業の強みについては、企業サイトなどに情報が載っていることが多いため、単純に強みを聞くのではなく、働いている人の実感としての強みを掘り下げましょう。企業サイトに記載されている以上にリアリティのある特徴が聞きだせる可能性のある逆質問です。
エンジニアの面接で熱意のアピールにつながる逆質問例7選
面接時の逆質問の場では、疑問に思っていることを尋ねるだけでなく、自分の熱意を伝えることも可能です。「自分がどういうことをしたいのか」などと絡めることで、前向きな姿勢を示すことができます。ここではそういった意欲のアピールを盛り込んだ逆質問例をご紹介します。
1.入社までに準備・勉強しておくべきことはありますか?
「即戦力になりたいという意欲」と「事前準備ができる人材であるという意識」を認識してもらうための逆質問です。もちろん入社後の業務へのキャッチアップにも役立ちます。
2.エンジニアで事業企画に携わっている方はいますか?
将来的にエンジニアリング以外にも関わっていきたいとお考えの方は、面接で確認する価値があるでしょう。自分の熱意を伝えるだけでなく、応募先の企業がエンジニアに求めるものはどういった役割であるかも掴むことができます。
ただし、まずはエンジニアとして成果を出すというスタンスでなければいけません。事業企画をやりたいという思いが前面に出過ぎると、エンジニアとして働くことの意欲が低いと見なされてしまうので要注意です。
3.●●の技術勉強会などの開催は可能でしょうか?
自分の強みと勉強熱心さを伝えることができ、周囲の巻き込み力もアピールにもつながります。ただし、企業のWebサイトなどで公表していることもあるため、事前に調べておきましょう。
4.この領域における新規事業の今後の展望を教えてください
応募先の企業の新規事業やサービスをチェックした上で行う逆質問です。応募先の企業について十分に調べていることが伝えられます。また、自分の考えに対して、フィードバックをもらえるというメリットもあります。
なお、事業展望を聞く際は、現場の方よりも、事業部長や役員クラスの方に聞く方が的確な回答を得ることができます。
5.私と近い年齢の方は、どのような活躍をされてますか?
既に活躍している人に追いつきたいという成長意欲をアピールすることができます。
また、自分に似たキャリアの人を知ることで、入社後にどのように成長することができるのかもイメージすることができるのも、この質問のメリットとなります。
6.私はどのような点で御社に貢献できると思われますか?
転職においてエンジニア自身が利益を得るとともに企業に貢献する意志を伝えられる逆質問です。エンジニアにとってはどの様な活躍が求められているかヒントを得ることができます。企業側も実際に活躍するイメージをすることで入社後のギャップを取り除くことができます。
7.経歴やスキルを見て足りないと感じた部分はありますか?
面接官に求職者の向上心を伝えることのできる逆質問です。長所のアピールだけでなく、弱点についてもフォローすることは自己研鑽への強い意欲が示せます。企業側も指摘しづらいポイントをフォローできるため、メリットのある質問となります。
エンジニアの面接における給与や労働環境に関する逆質問例6選
転職の目的は数々あれど、給与や残業などの労働条件が気になる方もいるかと思われます。ワークライフバランスを重視したい方、家族を養うためにゆずれない給与のラインがある方、事情は様々だと思われます。
とはいえ、デリケートな質問でもあり、聞き方次第では「仕事のやる気がない」「お金にしか興味がない」などと受け取られかねません。そういった労働条件を聞く場合の逆質問例をご紹介します。
1.私と近い年齢の方のモデル年収を教えてください
ストレートに聞くのではなく平均的なモデル年収を尋ねることで、自分と年齢が近い人の情報を収集できます。場合によっては、自分と近い年齢の方の活躍度合いを確認できる可能性もあります。
2.毎日何時くらいまで仕事をされていますか?
入社後は早く企業のペースにあわせたいという意図で勤務時間に関する逆質問をすることが可能です。残業時間についての質問を露骨にすると、「残業をしたくない」と、マイナスに受け取られるおそれがあります。「周囲の方とペースを合わせたい」という、あくまでも前向きな姿勢からの逆質問で、残業時間を推測してみましょう。
3.社員の方々は業務外でどのような付き合い方をしていますか?
業務外の付き合いが多ければ、社員同士の仲がいい職場であることがわかります。一方でプライベートの時間を大事にしたい方にとっては、ネックとなるかもしれません。また、業務外の付き合いが少なければ、ドライな職場であるか、もしくは稼働時間が多いか、などの推測ができます。質問自体は会社の雰囲気を聞く内容ですので、角がたちにくいかと思います。
4.お子さんをお持ちの女性社員の方の活躍事例はありますか?
求職者が女性の場合、抱える事情や将来に向けて確認しておきたい内容です。福利厚生については仕組み上用意はされていても、利用しづらい雰囲気の場合もあります。転職において重要視するポイントの方は早めに確認して、不安を取り除いておきましょう。
5.繁忙期と閑散期では就業時間にどれくらいの差がありますか?
こちらは素直に就業のピーク時期の勤務状況を確認する質問です。労働環境の中でも繁忙期の勤務状況は、継続的に就労する上で確認しておきたいポイントの方も多いでしょう。注意点として、あまり露骨にネガティブな表現は控えて聞くようにしましょう。
6.フレックスタイム制で実際に多い就業時間を教えてください
ITエンジニアの就労環境ではフレックスタイム制が導入されている企業も少なくはありません。制度の実際の運用状況と職場の空気間を確認できる逆質問となります。制度上取り入れられている場合表向きには問題はないのですが、できるだけ遅く出社したいという意図が伝わると印象を損なう可能性がありますのでご注意ください。
エンジニアの面接で避けたほうが良い逆質問4選
逆質問の場では、聞くことを避けた方が良い質問というものがあります。その質問をしただけで、不採用になってしまうリスクが高いので注意が必要です。では、どのような質問を避けるべきなのかを、理由と共にお伝えします。
なお、どうしてもこれらの質問をしたい場合は、内定が確定した後に確認することをお勧めします。
1.御社の有休取得率はどれくらいでしょうか?
休みやすい企業に入りたいのは多くの人が思うことかもしれませんが、面接の場で有休が取りやすいのかを聞くのは避けるべきでしょう。まだ働いてもいないのに、休みのことばかりを気にしていると思われるのは印象が良くない上に、休みやすいから応募をしたのではないかと思われてしまう可能性があります。
2.御社の強みを教えていただけますか?
この質問をしてしまうと、企業のことを何も調べていないと思われてしまいます。企業の強みはほとんどの場合、ホームページに載っているので、企業の強みが知りたい場合は事前に自分で調べておきましょう。
もし、調べても分かりづらかったのであれば、「ホームページを拝見したところ、御社の強みは●●であるとのことでしたが、こちらをもう少し詳しく教えていただけますでしょうか」と聞くことをお勧めします。
3.離職率を教えていただけますか?
離職率に関する質問をすると、業務内容よりも就労環境ばかりを見て意思決定をしていると見なされてしまいます。離職率は気になるところではありますが、あまり内定前に聞くのは得策ではないので避けるべきでしょう。
4.ワークライフバランスは整っていると感じますか?
業務以外についての強い興味を示す逆質問となり、今後の仕事への意識が強いとは判断されません。また、ワークライフバランスが整っているかどうかは個人の判断となるため、具体的とはいいがたく、回答側にとっても難しい質問となってしまいます。貴重な質問の機会なので、別の問いを用意しておくことをおすすめします。
エンジニアの面接で伝える逆質問の準備方法
逆質問の内容について具体例をあげてきましたが、上手に逆質問を行うために必要となるのは入念に準備をしておくことです。本項では逆質問の準備の仕方について記載します。
企業研究をしておく
逆質問に限らず、求職における面談では企業を研究しておくことが必要です。求職先で自分が働くことを想像しながら研究を行いましょう。自ずと気になる点があがってきて、逆質問に繋がります。反対に言えば、逆質問とその応答では研究の度合いが試されているのです。
アピールしたいポイントを考えておく
自分の長所を再確認し、アピール内容をまとめておきましょう。技術的なスキルやエンジニアとしての経験は逆質問の前の質疑で確認される場合がほとんどです。逆質問の際には通常の質疑応答で伝えきれなかったより深掘りした情報を伝えるか、質疑応答では触れる機会のないポイントのアピールを用意しておくのがベターです。
転職エージェントに相談する
逆質問への準備をする際に、企業がどの様な人材を求めているのかが分かっていれば、より有効な質問を備えておくことが可能です。しかし、転職をする個人が企業の求める人材像を深く知る機会はなかなかありません。
このような場合に検討したいのが、転職エージェントの活用です。転職エージェントは業界や転職先企業に精通しており、面接におけるノウハウも豊富に持っています。面接の前に逆質問内容の良し悪しを確認する場合にも、有効なアドバイスが可能です。
まとめ
エンジニアの転職、就職での面接における逆質問は、それまでの質疑応答において伝えきれなかったアピールポイントや意気込み、条件などの確認を行える最後のチャンスです。面接を終えた段階で自己アピールをしきれず悔いを残したり、疑問が残らないような状態を目指すために、本記事を参考にしていただければ幸いです。
なお、自分からは切り出しにくい労働条件に関する質問・交渉は、転職エージェントを通じて行うという手段もあります。ゆずれない労働条件がある場合には、転職エージェントの利用を検討するのも一案です。