最近、スマートフォンやパソコンなどでECサイトの決済をすることも多くなりました。これらの多くはクラウド上のシステムであり、クラウドにはAWSのシステムが使われていることが多いです。このようなクラウドエンジニアとしてAWSに携わりたいと考える人もいることでしょう。
当記事では、未経験でAWSのエンジニアに興味がある人向けに、AWSエンジニアの概要や仕事内容、必要とされる知識・スキル、未経験からAWSエンジニアになる方法、知識・スキルの習得方法、AWS認定資格、将来性や年収などについて解説します。
- AWSエンジニアとは
- AWSエンジニアの仕事内容
- AWSエンジニアに必要とされる知識・スキル
- 未経験からAWSエンジニアになるための方法
- 未経験からAWSの知識・スキルを習得する方法
- AWS認定資格でステップアップを目指そう
- AWSエンジニアの将来性と年収
AWSエンジニアとは
まず、AWSやAWSエンジニアの概要について解説します。
AWS(アマゾン ウェブ サービス) は、Amazon社が提供しており、世界で最も高いシェアを持つクラウドプラットフォームです。世界中のデータセンターから 200 種類以上のサービスを提供しています。大企業、主要な政府機関、スタートアップなどの多くが AWS を使用しています。
AWSエンジニアは、このAWSに精通したエンジニアのことを指し、AWSの設計・構築・運用などを担います。AWSエンジニアはクラウドエンジニアの一種で、広義ではインフラエンジニアとも呼ばれます。
AWSエンジニアの仕事内容
次に、AWSエンジニアの仕事内容について具体的に解説します。
設計
顧客のヒアリングを行い要件定義書にまとめます。クラウドではクラウドサービスの特性である拡張性・可用性・セキュリティなどを意識した設計が求められます。
具体的には、クラウド上のAWSで動作させるDBサーバー、Webサーバー、LDAP、DevOps基盤などの設計を行います。
設計詳細については、AWSのクラウド設計のガイド「AWS Well-Architected Framework」 を参照するとよいでしょう。
構築
設計書に基づきAWS上にインフラ構築を行います。クラウド上にシステムがあるため物理的なハードウェアに関する作業はありません。
具体的には、EC2と呼ばれるAWSのクラウド仮想システム上に、データベースのRDS(Relational Database Service)やDynamo DB、ストレージの S3(Simple Storage Service)、ロードバランサのELB(Elastic Load Balancing)、ネットワークのVPC(Virtual Private Cloud)、セキュリティのAWS Shieldなどのサービスを使って構築していきます。
運用
AWS上に構築したインフラの運用を行います。
具体的には、サーバー増設やセキュリティパッチ適用、ソフトウェアのアップデート対応、OS・ミドルウェアの設定変更、チューニング、インスタンスの監視、障害対応などを行います。オンプレミスサーバーと異なりハードウェアの監視は必要なく、AWS上のシステムの監視・運用となります。
開発
AWS上で業務用のWebアプリケーションやモバイルアプリケーションなど、さまざまなアプリケーションを開発します。プログラミング言語はPHP、JavaScript、Pythonなどを使用することが多いです。
AWSエンジニアに必要とされる知識・スキル
次に、AWSエンジニアが身につけておくべき知識・スキルについて解説します。
AWSに関する知識とスキル
どんな仕事も同様ですが、関係する分野の知識・スキル・専門性が求められます。
AWSにはサービスが200種類以上あるため、どのサービスがクライアントに最も適しているかを判断するには、それぞれのサービス内容を知っておく必要があります。AWSは他のクラウドシステムに比べて種類が豊富なため、基本的な知識から仕事に役に立つスキルまで幅広く身につける必要があります。
具体的には、前述した仮想クラウド環境のEC2、データベースのRDS・ Dynamo DB、ストレージの S3、ネットワークのVPC、セキュリティのAWS Shieldなどは、最初に必要とされるAWSの知識・スキルと考えてよいでしょう。
インフラに関するスキル
AWSエンジニアは、一般的にはサーバー・ストレージ・ネットワークなどのインフラシステムをクラウド上に構築することが主な仕事なので、インフラエンジニアやネットワークエンジニア同様のインフラシステムに関する知識やスキルがベースとして欠かせません。
加えて、基幹システムや業務Webアプリケーションの開発をする際には、データベースなどのミドルウェアの知識・スキルが必要とされます。
関連記事:インフラエンジニアに求められるAWSスキルとは
未経験からAWSエンジニアになるための方法
次に、未経験からAWSエンジニアになるための方法についてキャリアプランなども含めて解説します。
インフラエンジニアとして経験を積む
インフラエンジニアとして経験を積むことは、未経験からクラウドエンジニアを目指す上で、効率的なキャリアプランといえます。
インフラエンジニアとして、サーバー・ストレージ・ネットワークなどに関するインフラ構築に携わると、環境がオンプレミスからクラウドになったとしても、基本的な考え方はほとんど同じなためスキルを活用できます。
その後にAWSの知識・スキルを身につける必要はありますが、インフラエンジニアとしてベースができていれば近道になるといえます。現在インフラエンジニのスキルがある人は、AWSエンジニアへの道は比較的容易であると考えてよいでしょう。
プログラマーとして経験を積む
プログラマーとしてWebアプリケーションの開発経験を積んで、AWSエンジニアになるというキャリアプランも考えられます。プログラマーからクラウドエンジニアになる場合、開発言語はPython、PHP、Ruby、Java、Java Scriptなどが親和性があるでしょう。インフラエンジアと同様に、プログラマーの後、
AWSの知識・スキルを身につける必要がありますが、Webアプリケーションに携わっておくと、スキルとしてクラウドに近くAWSエンジニアに進みやすいといってよいでしょう。
未経験で応募可能なAWSエンジニアの求人に応募する
求人サイトを確認すると、未経験でも応募が可能なAWSエンジニアの募集もあります。未経験可能な募集のなかには、初心者でもOJTなどでスキルを習得しながら仕事ができると記載されています。ただし、全くの未経験だと募集は少なく、年収も低めの求人が多いため、インフラやプログラミングなどの経験を積んでからの方がよりキャリアアップしやすいといえるでしょう。
未経験からAWSの知識・スキルを習得する方法
次に、未経験からAWSの知識・スキルを習得する3つの方法ついて解説します。
スクールで習得する
AWSやクラウドエンジニアに関するスクールは数多くあります。対面やオンラインなど受講方法を選ぶことができ、なかには自分専用のカリキュラムを用意してくれるところもあります。現役エンジニアなどが講師として実践的な内容を教えてくれるため、習得も早いでしょう。またAWSの認定資格の攻略コースなどを用意しているスクールもあります。
ただし費用が数十万円などと必要になるところは留意しましょう。
独学による習得
AWSの公式サイトには基本的なことから上級者向けまで、さまざま学習用のコンテンツが用意されており、入門者向けのハンズオンや実践演習もできるようにもなっています。
AWS公式サイトの「AWS 初学者向けの勉強方法 6 ステップ!2022 年版!」に未経験者向けの勉強方法が記載されていますので、以下に概要を紹介します。
ステップ1:AWS やクラウド自体について知る
まずクラウドのメリットは何なのか、AWSで何ができるのかなどを事例ベースで学びましょう。これらを理解することによって、なぜAWSを習得すべきかという学習動機に繋がります。
ステップ2:サービスの全体像を掴む
AWSには200種類以上のサービスがあるため、初心者・未経験者は必要以上にハードルが高く感じてしまいます。まずは全体像としてどのようなカテゴリやサービスがあるかを掴むことが重要です。
ステップ3:AWS の各サービスに詳しくなる
全体像を掴むと、インフラ系、AI系、小売などの業務サービス系など、仕事に必要なサービスやよく使われるサービスが見えてきます。まず、自分に必要なサービスについて習得を始めるとよいでしょう。
ステップ4:知識・スキルを深める
AWSにはハンズオンが用意されています。一通り理解したらハンズオンを使って手を動かして知識・スキルを深めてみましょう。
ステップ5:最新情報をキャッチアップする
AWSではクライアントの声に応えるため、常に最新技術を取り入れるなどバージョンアップが行われています。そのため、最新の技術をキャッチアップすることが求められます。
ステップ6:中級レベルの情報を身につける
これまでのステップでAWSの知識・スキルのベースが固まれば、さらに中級レベルへステップアップが可能です。AWSが用意している現場寄りハンズオンなど、より高度な情報にアクセスしてレベルを上げましょう。
勉強会への参加
企業や個人が主催して、さまざまなAWSの勉強会が開催されています。SNSやconnpassなどで募集されることも多いです。オンラインのものもオフラインのものもあり、オフラインであれば、エンジニア同士のコミュニティでスキルを共有できる機会もあります。また、Amazonが主催している勉強会もあるので公式サイトは確認するようにしておきましょう。
関連記事:AWSの勉強手順を公開|クラウド初心者なら知っておきたい!
AWS認定資格でステップアップを目指そう
AWS認定資格は、Amazonが運営するAWSンジニアとしての知識・スキルを認定する資格です。クラウドの専門知識を身につけていることを証明し、AWS を使用するスキルのあるプロということを、レベル・専門ごとに細かく認定します。
すべてがオンライン受験可能で、トレーニングや受験の準備も充実しており、学びやすい環境が用意されています。
(以下に紹介する内容は2022年12月現在の情報です。)
初心者向け(Foundational)
AWS Certified Cloud Practitioner(クラウドプラクティショナー)
-
・受験対象:クラウド初心者/IT未経験者/営業/マーケティング/ビジネスアナリストなど
・時間:90分、費用:100USD
・内容:AWS クラウドの IT サービスおよびその用途のベーシックな知識など
経験1~3年向け(Associate)
AWS Certified Solutions Architect - Associate(AWS認定ソリューションアーキテクトアソシエイト)
-
・受験対象:AWSテクノロジーに関する経験、オンプレミスITの経験、オンプレミスとクラウドのマッピングの理解などがある人
・時間:130分、費用:150USD
・内容:コンピューティング、ネットワーク、ストレージ、データベースのAWSサービス、 AWS のデプロイと管理サービスに関する知識・スキルなど
AWS Certified Developer - Associate(AWS認定デベロッパーアソシエイト)
-
・受験対象:少なくとも1つの高度なプログラミング言語の深い知識を持つ開発者として勤務した経験、AWS テクノロジーに関する経験、オンプレミス IT の経験、オンプレミスとクラウドのマッピングの理解などがある人
・時間:130分、費用:150USD
・内容:AWS 責任共有モデル、アプリケーションライフサイクル管理、開発プロセスにおけるコンテナの使用を含む、AWS のコアサービス、サービスの使用、ベーシックな AWS アーキテクチャベストプラクティスの理解など
AWS Certified SysOps Administrator - Associate(AWS認定SysOpsアドミニストレーターアソシエイト)
-
・受験対象:システム管理者のロールとしての業務経験、AWS テクノロジーに関する経験などがある人
・時間:180分、費用:150USD
・内容: AWS 上でのワークロードのデプロイ、管理、オペレーションについてとセキュリティコントロールとコンプライアンス要件の実装のハンズオン経験など
経験2年以上向け(プロフェッショナル)
AWS Certified Solutions Architect – Professional(AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル)
-
・受験対象:AWS でのクラウドアーキテクチャの設計とデプロイにおいて 2年以上の実践的な経験を持つ人
・時間:180分、費用:300USD
・内容:複雑な問題に対する複雑なソリューションの提供、セキュリティ、コスト、パフォーマンスの最適化、および手動プロセスの自動化などにおける高度な知識とスキルなど
AWS Certified DevOps Engineer – Professional(AWS認定DevOpsエンジニアプロフェッショナル)
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・受験対象:AWS 環境のプロビジョニング、運用、管理において 2 年以上の経験を持つ人
・時間:180分、費用:300USD
・内容:AWS プラットフォーム上の分散アプリケーションシステムのプロビジョニング、運用、管理に関する技術的専門知識など
経験5年以上、専門分野向け(Specialty(スペシャリスト))
AWS Certified Advanced Networking – Specialty(ネットワーキング)
-
・受験対象:複雑なネットワークタスクを実行し、ネットワークソリューションのアーキテクチャの設計と実装に5年間の実践的な経験がある人
・時間:170分、費用:300USD
・内容:幅広いAWSのサービスに対応するネットワークアーキテクチャの設計と維持に関する専門知識など
AWS Certified Data Analytics – Specialty(データアナリティクス)
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・受験対象:AWS のサービスを活用した分析ソリューションの設計、構築、セキュリティ強化、保守に関する経験と専門知識を持つ人
・時間:180分、費用:300USD
・内容:AWS データレイクと分析サービスを利用して、データからインサイトを得るための専門知識など
AWS Certified Database – Specialty(データベース)
-
・受験対象:オンプレミスと AWS クラウドをベースにしたリレーショナルデータベースと非リレーショナルデータベースを扱う経験と専門知識を持つ人
・時間:180分、費用:300USD
・内容:最適なAWS データベースソリューションを推奨、設計、維持するための専門知識など
AWS Certified Machine Learning – Specialty(機械学習)
-
・受験対象:開発またはデータサイエンスの担当者で、AWS クラウドでの機械学習(ML)/深層学習ワークロードの開発、アーキテクチャ設計、実行において1年以上の実践経験を持つ人
・時間:180分、費用:300USD
・内容:AWS で機械学習 (ML)モデルの構築、トレーニング、チューニングおよびデプロイに関する専門知識など
AWS Certified Security – Specialty(セキュリティ)
-
・受験対象:最低 2年間の AWS のワークロードの保護に関する実務経験を持つセキュリティ担当者である人
・時間:170分、費用:300USD
・内容:AWS クラウドにおけるデータやワークロードのセキュリティ確保に関する専門知識など
AWS Certified: SAP on AWS – Specialty(SAP on AWS)
-
・受験対象:SAPとAWS 両方に関する経験が必要とされる役割を担う人
・時間:170分、費用:300USD
・内容:AWSでのSAPワークロードの設計、実装、移行、および運用に関する専門知識など
関連記事:AWS認定資格で年収アップは可能?転職における市場価値とは
AWSエンジニアの将来性と年収
現在、地方自治体では国の政策のもと、ガバメントクラウドといわれる市町村のITシステムのクラウド化が始まっています。ガバメントクラウドでは2025年を目処に、国が一括してクラウドシステムを全自治体に提供する予定となっており(※1)、このクラウドでいち早く採用されたのがAWSです。
また、民間でも着実にオンプレミスからクラウド型への移行が進んでおり(※2)、クラウド全般の市場がますます拡大すると考えられます。したがって、AWSに限らず、GCPやAzureなどの求人も増えると予想されます。
AWSのスキルがあると他のクラウドサービスのスキルの習得も容易であることから、キャリアプランが立てやすくなり、将来性はあるといってよいでしょう。
多くの企業がクラウドエンジニアの募集をしているため、AWSエンジニアとしてキャリアアップを目指す人は、エンジニア転職サイトや転職エージェントを使って探してみることをおすすめします。
また、AWSエンジニアの年収は、インフラエンジニアなどの職種と同等かやや高い傾向にあり、レバテックのサイトによると約500万円〜700万円程度が多くなっています。さらにステップアップするためには、プロジェクトマネージャーや大規模なAWSプロジェクトなどの経験を積むことでより高い年収につながるといえるでしょう。
※1参考:デジタル庁「地方自治体の ガバメントクラウド活用に関する 検討状況」
※2参考:総務省「クラウドサービスの利用動向 」
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