G検定とE資格は、どちらもディープラーニングに関する知識を証明する資格です。ディープラーニングに関する知識とスキルは、IT業界で特に有望視されています。しかし、日本国内ではディープラーニング関連の資格がまだまだ少なく、G検定とE資格が事実上の双璧といっても過言ではありません。ここではディープラーニングとは何か、G検定とE資格の概要・違い・メリットなどについて解説します。
ディープラーニングとは
ディープラーニング(深層学習)とは、人間の脳神経を真似して作られた機械学習を指します。現在ではAIアルゴリズム技術が発展していますが、その中枢を占める技術です。
これまでのAIでは、人間が考えつく範囲の問題しか解けない、データを記憶させる必要と記憶させるのに時間がかかるというデメリットがありました。一方で、ディープラーニングはこれらのAIの欠点を補えます。
その理由は、AIが「データのどの部分を抽出して学習を行うか」の判断となる“特徴量”を自ら考えてくれるからです。例えば「リンゴを認識する」ことをAIに学習させる場合、特徴量であるリンゴの色や形を学習させないといけませんが、ディープラーニングはリンゴの特徴量を自分で判断できます。従って、学習効率と精度はより高くなり、音声や画像などの複雑なデータ学習も可能となりました。
ディープラーニングの将来性
ディープラーニングと機械学習の違いがよく取り上げられますが、正確にいうとディープラーニングは機械学習の一部です。AIと機械学習をより進化させた形がディープラーニングであるといえるでしょう。
ディープラーニングは2012年にトロント大学が開発したプログラムに使用されており、AIの画像認識精度コンペティションで優勝したことをきっかけに、一気に注目が集まりました。現在では多数の会社が開発を進めており、一部分野では人間を凌駕する性能が発揮されています。
ご紹介したように、複雑な計算や照合が可能であり人がAIに記憶させる手間が省けるため、ディープラーニングの発展は今後加速していくことが考えられます。
ディープラーニング関連資格「G検定」「E資格」
日本ディープラーニング検定協会が実施しているディープラーニング検定には、G検定(ジェネラリスト検定)とE資格(エンジニア資格)の2種類が存在します。
G検定はディープラーニングを”活用”するビジネスマン全般を対象としており、E資格はディープラーニングを”実装”するエンジニア・技術職が対象であるという違いがあります。
以下では、G検定とE資格それぞれの概要や違いについて詳細に解説します。
G検定(ジェネラリスト検定)の概要
G検定は一般社団法人 日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する資格です。G検定は、エンジニアよりもビジネスパーソン向けの資格です。
具体的には「ディープラーニングをビジネスモデル改革に組み込むコンサルタント」や「生産性向上対策として活用を主導する管理職」などが対象となるでしょう。つまり、一言で述べると「ディープラーニングを活用する人材」を対象とした資格です。
一般的には、G検定に合格してからE資格へチャレンジするルートを辿る方が多いようです。
「(E資格の受験条件にG検定の合格が含まれているわけではありません)」
G検定の試験時間、試験範囲、難易度
G検定の試験時間、試験範囲、難易度は以下のとおりです。合格率と勉強法もまとめたので、早速見ていきましょう。
G検定の試験時間
G検定の試験時間は120分で多肢選択式、問題数は220問程度です。選択式とはいえ、1問あたり33秒程度で回答する必要があるため、時間的な余裕はそれほど多くありません。また、オンラインによる自宅受験が可能です。
受験費用は、一般が13,200円(税込)、学生が5,500円(税込)となっています。
G検定の試験範囲
G検定の試験範囲は、JDLAの公式サイトでシラバスとして公開されています。下記は、その内容を要約したものです。
人工知能の定義 | 人工知能や機械学習の定義、歴史など |
人工知能をめぐる動向 | 人工知能の基本的な考え方、構造(探索木、意味ネットワーク、オントロジー、 ニューラルネットワーク、ディープラーニングなど) |
人工知能分野の問題 | 諸問題の考察(トイプロブレム、強いAIと弱いAI、シンギュラリティなど) |
機械学習の具体的手法 | ニューラルネットワークとディープラーニング、応用的なテクニックなど |
ディープラーニングの概要 | ディープラーニングの基礎知識と基礎的な技術、活性化関数や更なるテクニックなど |
ディープラーニングの手法 | 深層生成モデル、画像認識、音声処理、自然言語処理、深層強化学習など |
ディープラーニングの社会実装に向けて | AIのビジネス活用、AIプロジェクトの進め方、データ収集や加工・分析・学習について、AIの実装・運用・評価 |
数理、統計 | 統計検定3級程度の基本的な知識問題など |
G検定の難易度
難易度は文系学部出身者が3カ月~半年の勉強期間を経て合格できるレベルといえます。ただし、難易度については個々人のバックボーンや前提知識などに左右されるため、あくまでも目安と考えてください。問題数や試験範囲を見てもわかるとおり、広範な知識と基礎的な数理・統計の知識が要求されるため、付け焼刃の学習で合格することは難しいでしょう。分野ごとに何冊か教材を揃え、インプットとアウトプットを繰り返していくことが合格への近道です。
G検定の合格率
G検定の合格率はこれまで開催されたすべての試験において、公表されています。直近3年分の合格率を見ていきましょう。
開催年 | 回 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年 | 第2回 第1回 |
3917人 4198人 |
62.22% 62.10% |
2021年 | 第3回 第2回 第1回 |
4769人 4582人 3866人 |
64.45% 61.50% 63.77% |
2020年 | 第3回 第2回 第1回 |
4318人 8656人 4198人 |
59.56% 68.96% 66.66% |
出典元:一般社団法人日本ディープラーニング協会【公式】(https://www.jdla.org/news/20220317001/)
合格率は年や回によって多少の上下は見られますが、およそ60%でしょう。ですが、試験内容や純粋な難易度を見てみると決して簡単な検定ではないため、合格率で難易度を判断してはいけません。
G検定の勉強法
G検定に合格するには、一般的に30~40時間程度の勉強時間が必要といわれています。ただし、これは経験者や理系出身の方の場合であり、事前知識がまったくないと40時間以上かかることも珍しくありません。
とはいえ、ディープラーニングを含むIT分野の知識が皆無でも、独学での合格は可能です。G検定ではディープラーニングを活用する力が問われるため、SEとして通常仕事している方でも、一般受験者とほぼ同じ内容の勉強を行わなければなりません。
おすすめの勉強法は人工知能についての講義・講座を受けることです。実装など実習経験がなくても、講義だけで有利になれるでしょう。ただし、出題形式に慣れるためにも講義と合わせて問題集を一通り解いておく必要があります。
以下に、日本ディープラーニング協会から推薦されている書籍をご紹介します。
-
・深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト
・ディープラーニング活用の教科書
・ディープラーニング活用の教科書 実践編
すべて日本ディープラーニング協会が監修しているため、入門者からより活用的な問題に取り組みたい方までさまざまな範囲の受験者に対応しています。
E資格の概要
E資格はG検定と同じく、日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催するディープラーニング関連資格です。AI機械学習エンジニアのスキルを認定する資格で、どちらかといえばエンジニア向けです。一言で述べると「実装する人材」をターゲットにした資格です。2021年時点で、日本国内の民間AI関連資格としては難易度、認知度ともに最も高い資格となっています。
E資格の試験時間、試験範囲、難易度
E資格の試験時間、試験範囲、難易度をご紹介します。合わせてE資格の合格率、勉強法についてもチェックしていきましょう。
E資格の試験時間
E資格の試験時間は120分で問題数は100問、複数の選択肢から正答を選ぶ多肢選択式です。また、G検定とは異なり、各地に設けられた指定試験会場にて受験する方式です。受験費用は一般が33,000円(税込)、学生が22,000円(税込)、会員が27,500円(税込)となっています。1問あたりにかけられる時間は約83秒ですから、G検定の2.5倍以上です。技術的な内容を多く含むことから、難易度はG検定よりも高めでしょう。
E資格の試験範囲
E資格の試験範囲はシラバスの中で公開されています。以下はその内容を要約したものです。
応用数学 | 確率・統計(一般的な確率分布、ベイズ則など)と情報理論 |
機械学習 | 機械学習の基礎、実用的な方法論(性能指標など)、強化学習など |
深層学習 | 順伝播型ネットワーク(ニューラルネットワークの知識、各種関数など)、 深層モデルのための正則化・最適化、生成モデル、深層学習の適用方法など |
開発・運用環境 | 開発や運用環境にまつわる実践的な問題解決(ミドルウェア、エッジコンピューティング、 分散処理、アクセラレータ、環境構築) |
E資格の難易度
合格者を対象としたアンケートによれば、合格までに費やした勉強時間は「100~200時間」が約46%、「200~300時間」約43%です。(※)一般的なITベンダーが主催する経験3年~5年程度の実務者向け試験で「50~150時間」程度が合格までの目安ですから、やはり難易度が高い資格といえるでしょう。
※参考:Study-AI「E資格受験者(2021#1)を対象にE資格の難易度についてアンケート調査(独自)を実施しました。」
E資格の合格率
E資格の合格率は、例年を比較すると7割程度の確率といえます。
開催年 | 回 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年 | 第2回 第1回 |
644 982 |
71.79% 74.00% |
2021年 | 第2回 第1回 |
872 1,324 |
74.53% 78.44% |
2020年 | 第1回 | 709 | 68.04% |
2019年 | 第2回 | 472 | 67.82% |
引用元:日本ディープラーニング協会【公式】(https://www.jdla.org/news/20220916001/)
合格率は高く、「難易度の高い検定」というイメージと反していると感じる方もいるかもしれません。E資格はそもそもソフトウェアや情報系業種からの受験が多く、G検定合格者がより知識を高めるために受験する場合もあります。この点が合格率に影響しているでしょう。
E資格の勉強法
E資格の勉強法をチェックする前に、2022年の第2回試験からシラバスが変更され、勉強範囲が以前のものとは大きく異なる点に注意しておきましょう。市販の例題集などで勉強する場合は、2022年第2回以降に対応している書籍を選ぶのが大切です。
シラバスの大きな変更点は、フレームワークの実装ならびに基礎研究に近い内容が組み込まれたことです。試験内容への入念な確認と、出題範囲の語句や使用方法をきちんと理解しておきましょう。
また、E資格を受験するには日本ディープラーニング協会が認定する「JDLA認定プログラム」を受講する必要があります。プログラムは多数あり、任意のものをいずれか受講するだけで受験が可能ですが、ここでE資格合格に必要な知識を学ぶのがおすすめです。
G検定とE資格の違い
前述したように、G検定は「ディープラーニングを活用する人材、ジェネラリスト向け」の資格です。一方、E資格は「実装する人材、エンジニア向け」の資格となっています。また、受験条件も「G検定は制限なし」、E資格は「過去2年以内にJDLA認定プログラムを修了していること」という違いがあります。さらに、「G検定は自宅受験が可能」「E資格は指定の試験会場での受験」という具合に、受験場所も異なることに注意してください。
ディープラーニング関連資格を取得するメリット
こうしたディープラーニング関連資格を取得するメリットとしては、下記3つが挙げられます。
スキルと知識の証明
G検定やE資格に限ったことではありませんが、資格を取得することで対外的にスキルや知識の証明がしやすくなります。特に実務経験が乏しい時期は、資格による知識の証明を積極的に活用したいところです。
顧客への説明能力が身につく
AI、機械学習、ディープラーニングはここ数年で一気に認知度が高まったワードです。しかし、その内容を語れる人材はまだまだ希少です。説明・プレゼンテーションにおいてディープラーニングをわかりやすく説明することで、顧客の理解と信頼を得られ、ビジネスチャンス創出の一助となるでしょう。
ディープラーニング関連資格が活かせる職種
最後に、ディープラーニング関連資格が活かせる職種を紹介します。
機械学習エンジニア
すでに現役の機械学習エンジニアであれば、E資格の取得で経験・知識を体系化できるはずです。経験と知識の体系化が進むことで技術への理解が深まり、応用的なスキルの習得につながっていきます。
データサイエンティスト
データサイエンティストの場合、リサーチや分析・提案業務が多い場合はG検定が、モデリングや実装作業の割合が多ければE資格が役立ちます。すでに数理・統計を用いた実務経験がある場合は、直接E資格を目指しても良いでしょう。
今後はエンジニア全体の必須スキルに?
2022年時点では、G検定とE資格を活かせる職種として前述の2つが有望です。しかし、今後はディープラーニングが広くビジネスの場で活用されていくことが予想されます。したがって、機械学習エンジニアやデータサイエンティスト以外のエンジニア職についても、ディープラーニングの知識・スキルが求められるかもしれません。たとえ、現在はディープラーニングに直接関係のない業務に携わっていたとしても、取得を検討する価値はあります。
まとめ
ディープラーニングに関する知識・スキルは今後のIT業界で重要なスキルと見なされています。これを証明するための試験はいくつかありますが、特に有望なのは「G検定」「E資格」の2つです。エンジニアとしての実務経験を活かしつつ、ディープラーニングのスキルを身に着けたいのであれば、まずはこの2つの取得を目指してみるのがおすすめです。
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