未経験からデータサイエンティストを目指す方法
近年、生産やマーケティングなどさまざまな領域でビッグデータの活用が進んでいます。ビッグデータ時代の到来に伴い、データサイエンティストなどのIT人材の需要はますます高まってきています。
ハイスキルな技術者が就く職業というイメージがあるかもしれませんが、未経験からでもデータサイエンティストを目指すことは可能です。この記事では、データサイエンティストの概要や年収、仕事内容、求められるスキル、未経験から目指す方法を解説します。
まずは、データサイエンティストの概要について解説します。
データサイエンティストは、データを収集・分析し、ビジネス戦略や施策改善などを立案・実行する職種です。膨大かつ複雑で、一貫性が無いビッグデータを分析し、その結果をもとに問題解決・状況改善に向けた施策立案などを行います。
レバテックキャリアに掲載されている求人情報を見てみると、2018年10月時点でデータサイエンティストの年収は「400万円~1000万円」程度と他の職業と比較して高い年収水準となっています。
また、経済産業省が発表した調査によると、第4次産業革命(ビッグデータ、IoT、AIなどの先端技術による産業構造の変化)における重要課題のひとつが「ビッグデータを扱う人材の育成」と考えられています(※)。
同資料によると、データサイエンティストを含む先端IT人材は、2017年時点で1.5万人が不足しており、2020年までに4.8万人が必要というデータも提示されています。よって、データサイエンティストは今後需要が高まっていく職業のひとつといえるでしょう。現状では、まだまだデータサイエンティスト人材の数は少ないため、売り手市場が続いています。その一方で、関連資格の整備や学習環境は徐々に整ってきていますので、未経験からであってもスキルや知識を身につける事でデータサイエンティストを目指すことは可能です。
※参考:経済産業省「第4次産業⾰命による産業構造の転換と⼈材育成(2016年12月)」
ここでは、データサイエンティストの仕事内容を解説します。データサイエンティストの仕事内容は、大きく「要件定義」「データ収集」「データ変換」「データ分析」「戦略及び施策の提示」に分類できます。
要件定義…ビジネス課題を抽出・整理
データ収集…ビジネス課題解決のために必要なデータを収集
データ変換…収集したデータを、グラフなど見やすい形に加工する
データ分析…収集、加工したデータからビジネス課題の解決策を抽出する
戦略及び施策の提示…データ分析の結果をもとにビジネスに有用な戦略や施策を提示する
IT、数学、機械学習などの知識を用いてデータを分析し、実際の業務に役立つ戦略に落とし込む能力が求められる仕事です。そのため、データを分析する能力に加えて、コミュニケーションスキルや所属している企業の業務知識が必要です。
ここでは、データサイエンティストに求められるスキルを解説します。必要なスキルはデータサイエンティスト協会が定義しており、大きく以下3つに集約されます。
1. ビジネス力…課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力
2. データサイエンス力…情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し、使う力
3. データエンジニアリング力…:データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力
「サイエンティスト」という名称から「研究」「追求」「発見」を連想しがちですが、実際には企画職やマネージャー職と同じように、ビジネスに直結したスキルが求められます。
もちろん、2番目の「データサイエンス力」にあるように、専門的な知識も必要です。ただし、知識の体系化や深化が目的ではなく、「データから企業を成長させるヒントを見つけ出す」のが仕事です。
また、データサイエンティストは、そのスキルレベルに応じていくつかの段階があります。以下、その一部を紹介します。
1. 初級レベル(見習いレベル)
・基本統計量(平均、中央値など)の知識があり、指示されたデータから、抽出・グラフ作成を正しく行える
・表計算ソフト(Excel) や 簡易データベース(Access)等のツールを用い、目的に応じた処理をすることができる
2. 中級レベル(独り立ちレベル)
・学術分野で使われる統計解析手法(SPSS/SAS/R等)が使える
・第三者からの指示が無くてもサンプル抽出と内容の確認ができる
・データクレンジング、分布、単回帰やP値の概念を理解し、活用できる
・大規模なファイルシステム、データベースにアクセスし、大量の構造化データを処理できる(表計算ソフトや簡易データベースで処理できない規模に対応できる)
3. 上級レベル(棟梁レベル)
・多変量解析の概念を理解し、活用できる
・機械学習、自然言語、画像処理のアルゴリズムを理解し、適切に活用しながら問題解決を行える
・モデルを構築、実装できる
・分析のためのデータシステム設計(フォーマット、取得蓄積仕様等)ができる
・問題設定に応じた新規データマート設計ができる
・構造化データ/非構造化データを問わず、分析システムを設計できる
・構築したモデルを実装できる
・データ分析を作ったシステムを自身で構築できる
中級レベル以上は、かなり専門的な知識・スキルが求められる一方、初級レベルは比較的ハードルが低い点に注目です。日常的にデータ集計や簡易データベース・グラフ作成を行っていた経験があれば、初級レベルの一部はクリアできているといえそうです。また、未経験者向けの内容ではないためここでは述べませんが、データサイエンティスト協会の定義では、「業界を代表するレベル」というものもあります。
※参考:データサイエンティスト協会「スキルセット、定義」
ここでは、データサイエンティストを目指す方法を解説します。未経験者は、先ほど紹介したスキルレベルのうち、まずは初級レベルの知識・スキル習得を目指していくことになります。
データサイエンティストの必須知識である数学(統計学、確率、モデリング)や情報処理、機械学習などの知識は、独学でも習得は可能です。ただし、独学ではつまずきや誤解を解消しにくく、モチベーションが保ちにくいというデメリットがあります。
そのため、できればスクールや資格試験を活用しながら知識の習得に努めるとよいでしょう。主な学習方法は以下となります。
データサイエンティスト志望者向けのスクールは現時点では数が少ないものの、少しずつ増えてきています。特に汎用プログラミング言語であるPythonを使った機械学習が学べるコースは、IT業界での経験が統計やモデリングなどに結び付けられるため、未経験者にもおすすめできるコースといえるでしょう。
DataMix(https://datamix.co.jp/)
「データサイエンティスト入門コース」を提供しており、10週間かけて基礎的な知識とスキルを身につけることができます。
KAN(データサイエンティスト塾)(https://www.kan.co.jp/datascientist)
ビジネスアナリティクスの基礎と、Pythonを使ったデータサイエンスを学ぶことができます。ある程度プログラミング経験を持つ人向けの印象です。
データサイエンティストのスキル習得に役立つ資格もいくつかあります。特に以下の4つはデータサイエンティスト協会が推奨しており、未経験からデータサイエンティストを目指す際に役立つでしょう。
統計検定®
一般財団法人 統計質保証推進協会が主催する検定で、統計学に関する知識を評価する統一試験です。5段階の級と2つの資格によって試験が別れており、習熟度に応じた検定が受けられます。
情報処理技術者試験
IPA(情報処理推進機構)が主催するITに関連した資格試験です。習熟度や分野別に試験が分かれています。データサイエンティストを目指すなら「基本情報技術者試験」「データベーススペシャリスト試験」などが役立つでしょう。
アクチュアリー資格試験
日本語では「保険数理士」や「保険数理人」とも呼ばれます。アクチュアリー試験では、1次試験の「数学」が確率、統計、モデリングといったデータサイエンティストの必須知識を磨くのに適しているといえるでしょう。
未経験からデータサイエンティストを目指すうえでは、IT、数学、機械学習の知識をいかに効率よく身に付けるかが重要です。
この記事では、データサイエンティストの概要や年収、仕事内容、求められるスキル、未経験から目指す方法を解説しました。データサイエンティストは、IT、数学、機械学習など複数の専門知識が必要な職業であり、目指すには多くの努力が必要となるでしょう。
一方で、経済産業省が養成に力を入れるほど将来性が期待されている職業でもあります。少しずつ学習環境が整ってきているので、興味がある方はデータサイエンティストへの転身を検討してみてはいかがでしょうか。
レバテックキャリアはIT・Web業界のエンジニア・クリエイターを専門とする転職エージェントです。最新の技術情報や業界動向に精通したキャリアアドバイザーが、年収・技術志向・今後のキャリアパス・ワークライフバランスなど、一人ひとりの希望に寄り添いながら転職活動をサポートします。一般公開されていない大手企業や優良企業の非公開求人も多数保有していますので、まずは一度カウンセリングにお越しください。
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執筆者プロフィール
株式会社アイティベル 代表取締役 野崎 晋平(のざき しんぺい)
1985年生まれ。大学卒業後は東証一部上場のSI企業や小売企業のシステム部門で、多数の基幹システムやECサイト、各種業務システムの設計・開発・導入を担当。プロジェクト管理や要件定義、予算管理等の経験も持つ。2015年に独立し、現在はITサービス領域の記事制作やメディア運営、ITプロジェクト支援のための人材サービスなど、幅広く事業を展開している。
担当コンサルタント
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