情報社会を迎え、蓄積されていく膨大なデータに価値を見いだせるかどうかは、企業の大きな課題となっています。
データ分析のスペシャリストとして、データサイエンティストの必要性が多くの場で提言されています。そういった時代の流れを受け、データサイエンティストへのキャリアチェンジを希望しているエンジニアも多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、データサイエンティストの年収や転職者の傾向、必要なスキルついて解説します。
1. データサイエンティストのの転職で知っておきたい各業界の需要状況
ビックデータビジネスが盛んである昨今、データサイエンティストの求人ニーズはとても高くなっています。データサイエンティストは、エンジニアとしての開発だけでなく、企画・マーケティングなど様々なフィールドでの活躍を期待されている職種であるともいえます。
データマイニングなどの高度なスキルを持っていれば、転職の選択肢は飛躍的に広がります。しかし、必ずしもエンジニアとして経験豊富で技術レベルが高い人材だけが求められている職種ではないというのが現状です。データベース系言語の経験がなくても、データ分析スキルに長けた人材やITコンサルティング経験者は採用される可能性があります。
データサイエンティストの需要状況は業界によっても異なります。ここでは主な5つの業界におけるデータサイエンティストの需要状況について詳しく紹介します。
不動産業界
不動産業界でデータサイエンティストの需要は高まってきています。特にビッグデータの活用は顕著です。例えば、不動産売買や賃貸の履歴をビッグデータとして収集し、不動産査定価格を決めたり、物件の価格推移のデータを提供したりするサービスなどもあります。
また不動産会社の営業支援にもビッグデータが活かされています。例えば賃貸物件の賃料の査定は、立地や間取り、築年数や仕様など様々な条件を考慮して決められます。経験豊富な営業マンであれば、スムーズに査定できるかもしれませんが、若手の営業マンにとって、適切な賃料査定額をスムーズに決めるのは困難でしょう。
そこで賃貸物件のビッグデータがあれば、その分析結果を活かして、コンピュータによる賃料査定が可能です。Webサイトと連携させれば、物件を探している顧客データも合わせて、より顧客にふさわしい物件を提案することもできます。営業マンが不要になるため人件費も削減できます。このようなシステムを構築できる人材として、不動産業界でもデータサイエンティストの需要が高まっているのです。
金融業界
金融業界のおいてもデータサイエンティストの需要があります。特に金融とITを掛け合わせた「Fintech」と呼ばれる言葉が普及しているように、ITと金融の親和性は高く、ビッグデータやAIを活かしたこれまでにないサービスも展開されています。
2020年では人工知能を活用した投資であるAI投資が注目を集めています。ロボアドバイザーとも呼ばれるこれらのサービスは、多くの証券会社で展開されており、投資に詳しくない個人にとって、少ないリスクで投資にチャレンジできるサービスとして人気があります。
またPOSのデータやクレジットカードなどの決済データ、SNSやニュースサイトのテキストなど、これまで投資判断には使われていなかった様々なデータをビッグデータとして集約し活用する動きもあります。これにより市場や経済の状況を多面的に俯瞰できるようになり、マーケティングやユーザー体験に活かそうとする企業もあります。
製造業界
製造業でも機械学習やビッグデータを活用するデータサイエンティストの需要が高まっています。製造業界の要となる、ものづくりの現場では、製品品質の管理とものづくりの効率化が大きな課題です。
製品品質管理では、これまで目視による確認で品質を見定めていました。しかし製品の画像や動画あれば、それをAIに読み取らせて品質を確認できます。精密機械である半導体などでは、安定した環境での目視による確認が困難でありAIの活用が進んでいます。
また既存の製品の改良や新製品の開発などのものづくりの効率化においては、これまでの開発経験で得られたデータを効率良く分析することで、開発期間の短縮も可能です。
このように製造業界でのデータサイエンスの活用には、現場と一体となって取り組むことが重要です。そのためデータサインティストは自身の専門性に加えて、現場を理解しようとする姿勢と、コミュニケーション能力が必要不可欠です。
コンサルティング
コンサルティングの現場でもデータサイエンティストの活用が進んでいます。
クライアント企業をコンサルティングするときに、営業支援やマーケティング戦略、販売促進活動や広告、アンケート、市場調査など、様々なデータを分析する必要があります。ITやインターネットの普及でこれらを膨大な量のデータとして取得し、ビッグデータとして分析できる環境が整ってきました。
データサイエンティストとしては、直接クライアント企業のコンサルティングを行うことは少ないですが、コンサルティングの支援職種としてデータサイエンティストが求められているのです。
2. データサイエンティストに転職する人の動向
データサイエンティストは近年需要が増加傾向にあります。それでは、どのような人がデータサイエンティストに転職しているのでしょうか?ここではデータサインティストに転職する人の動向について解説します。
大学から機械学習などを学んできた人が圧倒的に多い
データサイエンティストに転職する人の多くが、大学や大学院でAIや機械学習、ビッグデータなどのデータサイエンス関連のスキルを学んできた経験を持つ人たちです。これらスキルにはプログラミングなどのコンピュータのスキルに加えて、高度な数学や物理学などの知識が要求されます。そのため独学するのは難しく、大学や大学院で専門の教員の指導のもと、スキルを身につけるのが一般的です。
データサイエンティスト転職の年齢制限
データサイエンティストに限らず、転職の際に年齢制限にかかり不採用になってしまうことはありえます。例えば同じようなスキルをもつ2人の応募者がいた場合、企業としてはどうしても若いほうの応募者を採用する傾向があります。
しかし、データサイエンティストに必要とされるのは、仕事に必要な専門性です。また現在の職種から、なぜデータサイエンティストに転職したいのか、その理由についてしっかりと答えられれば、面接時のアピールポイントになります。
未経験からの転職可能性は低い
データサーエンティストとして未経験でも転職は可能でしょうか。すでにエンジニアとしてIT関連の仕事をされていた場合と、完全に未経験の場合とでは、転職の可能性が変わってきます。
データサイエンティスト未経験者に求められるスキル
データサイエンティスト未経験で転職した人の場合でも、以下のスキルは身につけているケースが多いでしょう。
・大学で機械学習を習得している
・BIツールやR・Pythonなどの専門知識がある
・データマイニングの知識があり分析ツールを活用できる
・実務ではWebエンジニアとしての経験が1~2年以上ある
このように、データサイエンティストのハードルは高い傾向にあります。
需要が高い職業ですが、未経験でも応募可能な募集は少ない状況です。逆に言えば経験者であれば高い確度で採用される職種であるということですし、未経験の場合は上記のスキルを習得した上で転職活動を行った方がよいでしょう。次の章では、データサイエンティストに求められるスキルについて詳しく解説します。
3. データサイエンティストの年収レンジ
データサイエンティストの需要が高いといっても、求められるスキルや年収が気になるかと思います。ここでは、レバテックキャリアを利用して転職に成功した方の実績を参考に、データサイエンティストの年収を解説します。
高いスキルレベルが求められるデータサイエンティストは、経験者として採用されれば年収は700~800万程度と高い水準です。数年エンジニアとして働いた後、データサイエンティストにスキルチェンジした場合は400万円程度~となりますが、未経験採用という点を考慮すると比較的高い年収が提示されていると言えます。
4. データサイエンティストに必要な4つのスキル
データサイエンティストを目指すには、技術スキル以外にも様々な周辺知識の習得が必要となります。ここでは、データサイエンティストに求められる重要なスキルを3つにしぼって解説します。
プログラミングスキル
実業務を行う上で、特定の言語に対するプログラミングスキルは必須となります。統計解析や機械学習に特化したR、データ分析や解析、機械学習と相性のいいPython、DBの操作や定義を行うのに必要になるSQLなどがそれに当たります。企業によってはSASやSPSSのスキルを求めてくる場合もあります。
Pythonは、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営している資格試験があります。試験は、「Python 3 エンジニア認定基礎試験」と「Python 3 エンジニア認定データ分析試験」の2種類があります。Pythonのスキル証明に活用すると良いでしょう。
データベース系業務ツールの活用スキル
業務ツールとしては、BIツールやETLツールなどを用いた業務がスタンダードである傾向が強いです。Tableauのほか、マイクロソフト社が提供しているPower BIなどが多くの企業から支持を得ています。
統計学/機械学習の知識
データサイエンティストは、統計学/機械学習の深い知識が求められます。統計学においては、近年のBIツールにはあらかじめ統計手法を選べるようになっているものがほとんどですが、実現したいことに応じて最適な統計手法を自ら選ばなければなりません。
また、機械学習に関しても近年はscikit-learnなどの機械学習ライブラリなどが充実しており、アルゴリズムの実行自体は容易となってきています。ただし、既成のライブラリではうまく予測できない事象に直面した際や、ライブラリに組み込まれていない新しい手法の適用などを行う際には専門的な知識が必要となります。
統計学/機械学習ともにある程度数学の知識(主に線形代数や微積分)を持っていないと独学での学習は難しい領域です。統計学については、以下の資格制度がありますので活用してみると良いでしょう。
・統計検定®
・ビジネス統計スペシャリスト
コンサルティングに関するスキル
データサイエンティストの仕事は、企業のデータ活用をサポートする職種であり、提案力が求められます。データ抽出や集計が目的ではなく、データをもとに次のアクションを提案することが役割です。いわば、社内コンサルティングとも言えます。
データから導き出した情報を基にコンサルティングを行うため、ロジカルシンキングなどのビジネススキルが身についていると転職に有利になるでしょう。
5. データサイエンティストとして活躍できるのはどのような企業か?

データ流通が盛んである現代で、データサイエンティストとして活躍できる場は数多くあります。
様々な業種で活躍していますが、主な市場としてはBtoC企業やWEBサービスを提供する企業が多い傾向にあります。海外では、データサイエンティストは既に一般的な職種となっています。今後国内でも需要は伸びていくでしょう。
6. データサイエンティストの求人例をチェック
最後では、データサイエンティストの求人例を見てみましょう。
【業界】
◆IT・通信
◆メーカー
【業務内容】
◆自社ブランドのデータ解析、施策立案
自社アパレルブランドの売上、生産性などを分析し、販売目標を達成するための施策立案を行っていただきます。
特にECサイトの強化には力を入れているため、各ブランドの売上・顧客データ、Webアクセスログなどの情報も分析し、プロモーション企画や広告による集客も担っていただきます。
◆仕事の特色
少数精鋭で活動しているため1人の裁量が大きく、自由な発想で施策を立案することが可能です。
【求められるスキル・経験】
・データ分析の実務経験
・データベースの開発経験
・PHP/Oracle/Python/C言語などの言語スキル
・プレゼンテーション力、コミュニケーション力がある
【想定年収】
450~1,500万円
【福利厚生】
健康保険 / 厚生年金 / 雇用保険 / 労災保険 / 通勤手当 / 残業手当 / 慶弔休暇 / 年末年始 / 夏季休暇 / 有給休暇/住宅手当/独身寮完備/研修参加費補助/書籍購入費補助
【勤務地】
東京都
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7. まとめ
この記事では、データサイエンティストの年収や転職者の傾向、必要なスキルを解説してきました。データサイエンティストは未経験者にとっては敷居が高い傾向があり、転職を成功させるには何かしらの実務経験者であることが求められています。ですが、需要は増加傾向にあり、採用されれば高い年収を提示されやすい職種でもあります。データサイエンティストの教育サービスも増えていますので、本気で目指したい方は勉強を始めてみてはいかがでしょうか。
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