AWSは、Amazon社が提供する世界最大規模のクラウドプラットフォームです。クラウド活用が当たり前になる中でAWSの存在感が増しています。AWSの知識とスキルを磨くための第一歩としては、認定資格制度の活用がおすすめです。ここでは、AWS認定資格の種類や概要、難易度、メリットなどを解説しています。
AWS認定資格の種類、試験内容、難易度
まず、AWS認定資格の種類と試験範囲、難易度について解説します。AWS認定資格は2022年10月時点で全12種類です。認定資格の種類によって難易度や試験範囲、対象となる職種が異なるため、自分の志向にあった資格を把握しておきましょう。
AWS入門レベル
AWSの認定資格の中では最も簡単で、クラウドシステムに関与した経験がない(もしくは浅い)人材を対象とした資格試験です。AWSの基礎知識とともに、クラウド周辺の業界知識も学ぶことができます。
クラウドプラクティショナー
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・対象:初心者が対象(対象職種無し)
・試験の概要
入門レベルの認定資格で、AWSとクラウド全般の基礎知識を身に着けたい個人を対象としています。試験範囲は「クラウドの概念」「セキュリティおよびコンプライアンス」「テクノロジー」「請求と料金」となっており、技術的な内容はそれほど多くありません。顧客に対してAWSの概要を説明する営業職やカスタマーサポート職に向けた試験と言えそうです。
難易度は、AWSを含むクラウドシステムの開発・運用経験を持たない人材であっても、一か月程度の独学で合格できるレベルです。IT系資格全体としてみても、最も簡単な部類に入るでしょう。
AWSアソシエイトレベル
AWSを扱った経験が1年程度ある人材向けの試験です。このレベルから徐々に実務に即した内容が増えてきます。
AWS認定ソリューションアーキテクトアソシエイト
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・対象:クラウドエンジニア 初級(SE、コンサルタントなど)
・試験の概要
AWSを用いた1年以上の実務経験(設計や提案など)を持つ人材を想定した試験です。クラウドとAWSの基礎知識・SSHによるサーバー操作・最適なデータベースを選択するための知識などが出題されます。AWSの認定資格の中では初級レベルに該当し、配属間もない新人エンジニアや経験の浅いSEなどが対象となるでしょう。
こちらも難易度は高くないものの、経験の浅い新人エンジニアが無勉強で合格できるレベルではありません。概ね2~3カ月程度、時間にして50~100程度の学習が必要になるでしょう。
AWS認定SysOps アドミニストレーターアソシエイト
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・対象:クラウドエンジニア 初級(運用担当など)
・試験の概要
AWS での開発・管理・運用といった業務経験が1年以上ある運用担当者を対象とした試験です。試験範囲には「モニタリングとレポート」「高可用性」「配置とプロビジョニング」「ストレージとデータマネジメント」「セキュリティとコンプライアンス」「ネットワーク」「自動化と最適化」などが含まれます。
難易度は、アソシエイトレベルの中では簡単な部類で、ソリューションアーキテクトよりも易しいという印象を持つ方が多いようです。50~100時間程度の学習で合格が見えてきます。
AWS認定デベロッパーアソシエイト
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・対象:クラウドエンジニア 初級(開発担当者)
・試験の概要
AWSをベースとしたアプリケーション開発・保守経験を1年以上持つ人材を対象にしています。開発担当者向けの試験であり、試験範囲には「展開(デプロイ)」「セキュリティ」「AWSサービスを使用した開発」「リファクタリング」「モニタリングとトラブルシューティング」が含まれます。「サーバーレスアプリケーションのコード記述」「APIやSDKを用いたAWSサービスとのやりとり」など、クラウドならでは内容も出題されるため、事前対策は必須です。
ソリューションアーキテクトアソシエイトに合格できるレベルの知識を持っている場合は、50時間程度の学習で合格が見えてきます。ただし、全く知識がない状態から始めた場合は、100時間前後の学習が必要になるでしょう。設計・開発経験の有無で難易度が大きく変わる試験と言えそうです。
AWSプロフェッショナルレベル
AWSを用いた実務経験が2~3年程度ある人材を対象とした、実務家向けのグレードです。
AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル
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・対象:クラウドエンジニア 中級(アーキテクト)
・試験の概要
2年以上のクラウドシステム設計・実装経験を持つ人材を対象とした資格試験です。ソリューションアーキテクトアソシエイトの上位資格で、実務レベルの知識が出題されます。クラウドシステムの設計・移行・コスト管理・改善などについてユースケースを用いた問題が出題されるため、単純な暗記だけでの合格は難しいでしょう。
難易度は、2~3年程度の実務経験を持つ人材が50~100時間前後の学習で合格できるレベルと想定されます。
AWS認定DevOpsエンジニアプロフェッショナル
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・対象:クラウドエンジニア 中級(開発、運用担当者)
・試験の概要
AWSを採用したシステムでの開発・運用経験が2~3年程度ある人材に向けた資格試験です。DevOpsエンジニアは定義が難しい職種ですが、開発・運用双方の経験があれば対象と考えて良いでしょう。試験範囲は「SDLCの自動化」「構成管理およびInfrastructure as Code」「監視とロギング」「ポリシーと標準の自動化」「インシデントおよびイベントへの対応」「可用性、フォールトトレランス、ディザスタリカバリ」などです。
難易度は、ソリューションアーキテクトプロフェッショナルよりも少し易しい程度と言われており、合格までの勉強時間は50~80時間程度が目安になりそうです。
AWS専門知識カテゴリ
専門知識カテゴリは、前述した3つのカテゴリを機能や職種ごとに細分化し、専門性を高めた資格で構成されています。
AWS認定 高度なネットワーキング
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・対象:クラウドエンジニア ネットワーク担当
・試験の概要
クラウドシステムのネットワーク構築・運用業務に従事する人材向けの資格試験です。試験範囲には「大規模なハイブリッドネットワークの設計」「AWSネットワークの設計と実装」「AWSタスクの自動化」「アプリケーションサービスとネットワーク連携の構築」「セキュリティとコンプライアンスの設計と実装」「ネットワーク管理、最適化、トラブルシューティング」が含まれます。一般的なネットワークの知識よりもAWSに特化した内容が多いため、入念に事前対策を行うようにしましょう。
AWS認定データアナリティクス
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・対象:データエンジニア、データサイエンティストなど
・試験の概要
AWSでデータレイクを使った分析サービスを構築、もしくは使用する人材に向けた資格試験です。試験範囲は「データ収集」「データ格納及び管理」「データ処理」「分析と可視化」「セキュリティ」などです。データ分析環境の構築に必要な知識が網羅的に問われる内容となっています。
AWS認定データベース
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・対象:データベースエンジニア
・試験の概要
AWSを用いたデータベースソリューションの設計、提案、保守に従事する人材向けの資格試験です。データベース関連業務に携わった経験が5年以上、かつAWSに携わった経験が2年以上ある人材の受験が推奨されています。プロフェッショナルレベルよりも推奨経験年数が多いことから、中~上級者向けの試験と言えるでしょう。
試験範囲は「ワークロード固有のデータベース設計」「展開と移行」「管理と運用」「監視とトラブルシューティング」「データベースセキュリティ」などです。データベースの構築よりも、データベースを用いたシステム戦略全般に対する知識が問われる傾向にあります。
AWS認定 機械学習
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・対象:機械学習エンジニア、データサイエンティストなど
・試験の概要
主にデータサイエンス業務に従事する人材向けの資格試験です。試験範囲は「データエンジニアリング」「探索的データ解析」「モデリング」「機械学習の実装と運用」となっています。特にモデリングの部分は、技術的な内容も多く含まれるため、重点的に対策する必要があるかもしれません。
AWS認定セキュリティ
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・対象:セキュリティエンジニア、セキュリティ担当者
・試験の概要
最低 2 年間のワークロード保護に関する実務経験を持つセキュリティ担当者を対象とした資格試験です。試験範囲は「インシデント対応」「ログ収集と監視」「インフラセキュリティ」「IDとアクセス管理」「データ保護」となっており、システム全体のセキュリティ対策全般に対して知識が問われる内容です。
AWS認定SAP
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・対象:SAP担当者
・試験の概要
この試験は2022年4月に新たに追加された区分です。SAPとAWS 両方に関する経験が必要とされる担当者を対象とした資格試験です。試験では、AWS クラウドで実行される SAP ソリューションを、AWS Well-Architected Framework で説明されているベストプラクティス、および SAP 認定とサポートの要件に沿って設計する能力の知識が問われます。
AWS資格取得に向けたロードマップ
多くの種類があるAWSの資格ですが、どの資格をどういった順番で取得していけばよいのか、迷う方もいらっしゃると思います。
ここではおすすめのAWSの資格取得順序についてと、おすすめの勉強方法についてご紹介していきたいと思います。
まずは自分の身につけたい専門性に従って資格取得の順序を考えるのが1番ですが、資格ごとに必要な知識レベルにも差があります。難易度に合わせて資格を順番にとっていくことで、スムーズに資格に合格することができ、かつAWSに関する内容の理解を深めることが期待できます。
おすすめの資格取得順序
ではどのような順番で資格を取得していけばいいのでしょうか。
AWSに関する知識をほとんど有していない方が、初めてAWSの資格に挑戦することを前提とした場合、以下の資格を順番に取っていくことをおすすめします。
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1.クラウドプラクティショナー
2.ソリューションアーキテクト(アソシエイト)
3.SysOpsアドミニストレーター
4.ソリューションアーキテクト(プロフェッショナル)
5.自分の習得したい専門知識
クラウドプラクティショナーを一番はじめに取得する理由は、この資格が最も基礎的な内容となっており、これからAWSの資格を取得していこうと考えられている方にとって、難易度的にもAWSの入門としてちょうど良い資格であるためです。
クラウドプラクティショナーを取った後、次に ソリューションアーキテクト(アソシエイト)(SAA)の取得をおすすめします。この資格ではAWSが提供している多くのサービスについて広い知識を問われ、より実践的な内容の習得が求められるためです。AWSのサービス全体を広く理解するために最適な資格といえます。
また、さらに上位の資格を取る際にも、SAAの知識の応用問題が出題される場合が多く、序盤に取得しておくのがよいでしょう。
3番目に挙げているのは、SysOpsアドミニストレーターです。
この試験はAWSを用いたシステムの開発・管理・運用の担当者を対象にした試験とされており、SAAと一部試験範囲が重複しています。そのため、SAAの次に勉強をすると効率的に知識を習得することが可能です。
4番目が、ソリューションアーキテクト(プロフェッショナル)です。これは2番目に取得したSAA
の上位資格です。そのため、出題範囲は似ていながら、さらに広く、深い知識が求められます。この資格取得までできれば、ほとんどのAWSサービスに関する知識は有しているといえます。
あとは、ご自身の専門分野や、習得したい専門知識に合わせて資格を決めていけばよいでしょう。
おすすめの勉強方法
自分が受けるべき資格が決まったところで、AWSの資格取得のためのおすすめの勉強法についてご紹介します。
AWSの資格を勉強するには、参考書を1冊購入し、全て理解できるまで繰り返し勉強するという方法がおすすめです。
AWSの試験資格試験では、過去に出た問題が全く同じ文章選択肢で出題されることがよくあります。そのため資格の合格のみを目的とするのであれば、学習本や過去問などがまとまった本を購入し、それをしっかりと読み込んで理解し勉強することをおすすめします。
一方で資格合格に加えて、業務で使えるような実践的なAWSの知識を身に付けたいのであれば、AWSを実際に触りながら理解を深めるという方法もおすすめです。
書面上でサービスの概要を知っていたとしても、実際に業務に使えるとは限りません。
AWSには年間で使える無料枠が設定されているため、その無料枠を使ってAWSのサービスを試してみることができます。
こうして自分の手を動かして環境を構築したり、AWSの設定を変更してみたりすることによって各サービスのつながりが理解できたり、各サービスで実現できることを把握することができます。
AWSの公式ページにも、初心者向けのハンズオン資料などが公開されているので、これを利用してみるのもよいでしょう。
参考:AWS ハンズオン資料
また、AWSは公式に試験準備のための無料ウェビナーとして、AWS 認定試験ワークショップが毎月開催されています。
AWSの公式テクニカルトレーナーが出題分野の概要や試験問題のポイントを解説しているので、これも非常に参考になると思います。
参考:AWS トレーニングと認定イベントの詳細
AWS認定資格を取得するメリットは?
最後に、AWS認定資格を取得するメリットを整理しておきましょう。AWS認定資格に限らず、IT系の資格は「実務経験や実績を補完するもの」です。経験がある人材ならばそれまで蓄積した知識を体系化し、定着を促す効果があります。また、経験が浅い人材ならば、実績では証明しにくい知識やスキル、志向などをアピールできるでしょう。このほかにも、次のようなメリットが考えられます。
クラウドテクノロジーのトレンドに敏感になる
クラウド関連は伸び盛りの分野であり、日々新しいサービスが提供されています。また、コストカットや開発速度向上に即効性のあるサービスが多いことから、企業側も導入に積極的です。AWSの資格を取得する過程で、こうした技術トレンドの流れに敏感になっていくでしょう。
日本国内で「大企業」「新規システム構築」に携われる
MM総研の調査結果によれば、IaaS導入企業の過半数がAWSを採用しています。(※)
さらにクラウド採用企業は大企業(従業員1000人以上)の87.2%にのぼることも明らかになっています。国内外で活用されているAWSの知識とスキルを身に着けることで、大規模プロジェクトに参画できる可能性を高めることができるでしょう。
※参考:ITmedia NEWS「IaaS導入企業の過半数がAWS採用 MM総研の国内クラウド市場調査」
AWSのサービスを網羅的に把握することができる
AWSでは、2022年10月現在、200種類を超えるサービスが提供されています。これら全てを業務で使ってみることは難しいでしょう。また、そのサービスを知らなければ業務で実装をする上で選択肢となることもありません。結果的に、AWSが推奨しないアンチパターンで構築してしまう可能性があります。
AWSの資格を取得することで、主要なサービスについて網羅的に把握することができるため、こういったリスクを減らすことができます。
まとめ
クラウド活用が当たり前になる中で、世界最大のシェアを誇るクラウドプラットフォーム「AWS」の存在感も年々増しています。今後はクラウド人材の需要が一層高まると予想されるため、クラウド関連の知識とスキルを磨くことは、ITエンジニアとしての市場価値を高めることにもつながるでしょう。AWSは知識とスキルの証明のために認定資格制度を設けているため、積極的な活用がおすすめです。
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