AWS Lambdaとは?概要のほかメリットや導入事例を紹介

最終更新日:2024年3月12日

新たなクラウドサービスとして「FaaS (Function as a Service)」が注目される中、その代表格ともいえる「AWS Lambda」を採用する企業が増えています。クラウドサービスとして世界で最もシェアがあるAWS(Amazon Web Services)で提供されているAWS Lambdaは、サーバーレス環境でプログラムの単体稼働が可能なことから、開発・運用効率の向上が期待できるサービスです。

この記事では、AWS Lambdaを学ぶべきか検討している若手エンジニアに向けて、AWS Lambdaの概要やメリット、具体的な導入事例などを紹介しています。

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この記事のまとめ

  • AWS Lambdaとは、クラウド上のサーバー環境で素早くプログラムを稼働できるサーバーレスコンピューティングサービスのこと
  • AWS Lambdaでできることは、ファイル処理やリアルタイムのストリーム処理、ウェブアプリケーション構築、バックエンド処理などがある
  • AWS Lambdaのメリットは、サーバー管理コストの最小化や開発効率の向上、料金面のコスト削減、選択できるプログラミング言語が豊富などがある

AWS Lambdaとは

AWS Lambdaは、Amazonが提供しているFaaSです。FaaSの中でも特にメジャーなサービスとして知られています。

AWS Lambdaは、任意のプログラムを定義しておき、インターネットを通じてクラウド上からプログラムを実行できます。プログラムの実行は、Lambda上から設定する「実行トリガー」によって開始されます。実行トリガーにはさまざまな関数が登録できるようになっており、この関数の豊富さがAWS Lambdaの特徴のひとつです。

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FaaSとは

FaaSは、サーバーレスコンピューティングの一種であり、プログラム実行に必要な環境や前後の処理をクラウド上から提供するサービスです。サーバーレスコンピューティングをさらに細かく突き詰め、純粋な処理実行以外のすべてをサービスとして提供しています。

サーバーレスコンピューティングサービスとは

サーバレスコンピューティングとは


サーバーレスコンピューティングとは、サーバーを管理することなく、特定の処理を実行できる環境を表しています。つまり「サーバーレス」とは、「サーバー自体が不要」という意味ではなく「サーバーの管理が不要」という意味で使われています。

サーバーレスコンピューティングでは、物理的なサーバー筐体のみならず、ミドルウェアの管理も不要です。したがって、ユーザーはプログラムの開発と実行のみを担当すれば良く、極めて小さいコストで開発が進められます。

FaaSの特徴

一般的にプログラムは、「1.何らかのリクエストを受信」「2.プログラムにリクエストが渡される」「3.プログラムがリクエストを受信して処理を実行する」「4.実行結果をレスポンスとして返信する」といった動きをします。

FaaSでは3の部分以外のすべてをクラウドサービスとして提供します。つまりユーザー側は、純粋な処理の実行のみを負担すればよく、環境構築・管理・運用の手間から解放されます。

FaaSは、マイクロサービスアーキテクチャをサポートするサービスとして広まりました。

マイクロサービス・マイクロサービスアーキテクチャとは

マイクロサービスとは、アプリケーションが持つ機能を細かいサービスに分割したものです。マイクロサービスアーキテクチャは、マイクロサービスをいくつも組み合わせることで、サービスを連携してシステムを動かすという考え方です。アーキテクチャは直訳すると構造や構成といった意味合いです。

FaaSの強み

FaaSは、重厚長大な単体のプログラムを作るのではなく、関数レベルの機能のみを持ったマイクロサービスをいくつも組み合わせることで、開発・保守作業を単純化しようという狙いがあります。

ただし、マイクロサービスは使用頻度にばらつきがあり、個別に管理・運用するためには相応のコストが必要です。そこで、FaaSによるマイクロサービスの管理が普及していきました。FaaSを使用すれば、開発者は単純に機能の中身だけを実装すればよく、起動・レスポンスなど前後の処理はFaaSにすべて委託することができます。

Lambdaの制約

Lambdaを使用するにあたって、いくつかの制約があります。そのひとつがプログラム実行が1件あたり、起動時間が15分までという制限があります。15分以上必要になる場合は、15分の制限内になるように処理を並列化しなくてはいけません。

また、同一アカウントの同一リージョン内での処理実行数が1000回までに制限されています。所持実行数が1000回を超えてしまうと、関数の呼び出しに制限(スロットリング)がかかります。特に上述した処理の並列化をした場合は、処理実行数の制限に達する可能性に注意が必要です。スロットリングを避ける方法としては、リトライ処理の組み込みやLambdaの同時実行数の上限緩和申請が考えられます。ただし、上限緩和申請は必ずしも認められるとは限りません。

サーバーレスアプリケーションを構築する際、Lambdaだけでなく他のサービスの制限も重要です。特に、API GatewayとLambdaの組み合わせでは、API Gatewayが最大29秒でタイムアウトするため、この時間内にLambdaからの応答と非同期処理の調整が求められます。

なお、LambdaではPython、Ruby、Java、Node.js、Go、PowerShell、C#が使用できます。それ以外の言語の場合は、カスタムランタイム機能を活用することで実装できます。

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AWS Lambdaでできること

AWS Lambdaは、サーバーやミドルウェアなどを管理することなく、純粋にプログラムのみを実行できます。定義した機能、関数からリクエストがあったときだけ実行されるため、「常時起動するプログラム」よりも「頻繁には使われないが必ず備えておくべきプログラム」に適しているでしょう。

AWS Lambdaは、プログラムの定義さえ完了していれば、どのようなタイプの処理も実行可能です。さらに、プログラムの実行に必要なリソースの割り当てなども必要ありません。コードをZIPファイルやコンテナイメージでAWS Lambda上にアップロードするだけで準備が整います。

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ファイル処理

AWS Lambdaでできることの1つとして、ファイル処理があります。具体的には、Amazonが提供するクラウドストレージであるAmazon S3にデータをアップロードすると、裏側で自動的にLambdaがさまざまなファイル処理をします。

例えば、Amazon S3に画像をアップロードすると、Lambdaがそれを感知して、自動で画像サイズを小さくしたり、ファイル形式の変更をするなどが可能です。このような画像サイズを小さくするようなファイル処理は、Webサイトの表示速度向上などに役立ちます。

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リアルタイムのストリーム処理

Lambdaとデータ分析サービスであるAmazon Kinesisの組み合わせは、リアルタイムのデータストリーミング処理に非常に効果的です。

これを利用することで、アプリケーションのユーザー活動の追跡や、オンラインでの取引の注文処理、ユーザーのクリック行動の分析、不要なデータを取り除く作業、ログデータの選別や整理、検索用のインデックスの作成、ソーシャルメディアのトレンド分析など、さまざまな処理を行えます。

ウェブアプリケーション構築

LambdaとAWSの他のサービスを組み合わせて、高い可用性と安定性を持ったウェブアプリケーションを構築することもできます。アプリケーションに必要なリソースに応じて、自動的にリソースの増減を行うなどがこの組み合わせで可能です。

具体的には、ユーザーの数やアクセスの多さに応じて、必要な処理能力を確保しつつ、無駄なコストを抑えることができます。このアプリケーションは複数のデータセンターに分散して動作するため、一つのセンターに問題が発生しても、他のセンターが動作を継続します。

バックエンド処理

Lambdaを活用することで、サーバーを持たない効率的なバックエンドシステムを構築することができます。ウェブサイトやスマホアプリ、さらには家電などのIoTデバイスからの情報を受け取って処理する際に役立ちます。

また、他のサービスやアプリケーションからのAPIリクエストも迅速に処理する能力もあります。具体例としては、IoTセンサーが送信するデータを受け取ると、それをデータベースに保存したり、他のシステムに渡したりする作業などです。

データの抽出・変換・ロード

AWS Lambdaでできることとして、データの抽出・変換・ロードがあります。具体例としては、各店舗の売上データが確定してS3に保存されると、Lambdaがそのデータを自動で確認、変更、保存を行います。S3とAWS Athenaを使ってデータを分析します。そして、S3と分析ツールであるAWS Athenaを使ってデータを分析します。このように、Lambdaはデータを効率的に扱うための強力なサポートをしてくれます。

AWS Lambdaを使用するメリット

AWS Lambdaを使用することで、開発・保守・運用コストなどが低減されます。具体的には、サーバー管理コストの最小化や開発効率の向上、処理コストの削減、料金面でのコスト削減、AWSのサービスとサービスを疎結合につなげやすい、疎結合で障害の影響を極小化できる、関数が豊富なこと、対応するプログラミング言語が豊富などがあります。以下では、これらのAWS Lambdaを使用するメリットについて解説します。

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サーバー管理コストが最小化される

開発用の実行環境構築では、専用のサーバーを用意することが多いです。このサーバー管理にかかるコストは意外に大きく、開発コストの増大を招く遠因になっています。AWS Lambdaを使用することで、こうしたコストをほぼ全てカットできる点がメリットのひとつです。

開発効率の向上が期待できる

AWS Lambdaを使用するメリットとして、開発効率の向上が期待できる点があります。サーバー管理の手間がなくなることで、コア業務(コーディングやテストなど)にリソースを集中することができます。

任意の処理を自動化し処理コストを削減できる

AWS Lambda上に定義されたプログラムは、前提となる関数などからのリクエストを受けて実行されます。また、処理が終了した後のレスポンスもLambdaから送信されるため、一連の処理を自動化することができます。さらに、実行回数に対しても自動スケールが働くため、実行回数の調節も必要ありません。

料金面でのコスト削減も期待できる

AWS Lambdaは、「定義された処理が実行された回数」と「処理が実際に動いた時間」で料金が決定します。処理が動かない限りはコストが発生しないことから、最小限のコストで維持できます。ちなみに、毎月100万リクエスト(実行回数100万回)および、40万GB/秒までの無料枠が設けられています。スモールスタートなサービスやテストフェーズ中のサービスであれば、無料枠の範囲内でも開発を進められそうですね。

AWSのサービスとサービスを疎結合につなげやすい

AWS Lambdaの大きなメリットのひとつは、AWS内のさまざまなサービスを疎結合(直接的な依存関係を持たせずに接続)で結びつけることが容易である点です。

疎結合することで、システムの柔軟性を高め、変更や拡張がしやすくなります。具体的な例として、S3やDynamoDBといったサービスでデータが更新されると、その更新を感知してLambdaを自動的に起動できます。

疎結合で障害の影響を極小化できる

疎結合をすることで、障害が発生してもその影響を最小限に抑えることができる点もAWS Lambdaのメリットです。一部のコンポーネントに変更や問題が生じた場合でも、システム全体への影響を極小化することが可能となります。

Lambdaを使用することで、システムがより堅牢で、変更やトラブルにも柔軟に対応できる構造を持つことができます。

実行トリガーとなるサービスが豊富

AWS Lambdaは、単独で動作するわけではなく、他のサービスやリソースからのトリガーが必要です。Lambdaは、特定のイベントが発生した際に、事前に設定されたプログラムを自動的に実行するサービスとして設計されています。

そのため、AWSのさまざまなサービスと連携して、様々なタスクを自動化するのが一般的な利用方法です。多くの実行トリガーとなるサービスが豊富なこともLambdaのメリットです。

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選択できるプログラミング言語が豊富

AWS Lambdaは、利用できるプログラミング言語が豊富な点もメリットといえます。選択できるプログラミング言語は、PythonやRuby、Java、Node.js、Go、PowerShell、C#が選択可能です。その他のプログラミング言語を使用する場合は、カスタムランタイム機能を使用することでLambda上で動作可能となります。

AWS Lambda使用時の注意点

AWS Lambdaは利便性の高いツールですが、使いこなすのにはある程度の学習が必要です。特にLambda関数の使用経験がない場合、まずはツールに慣れる必要があるでしょう。またLambda関数の最大実行時間は15分という制限があります。

AWS Lambdaの使い方例

AWS Lambdaを使ったWebアプリケーションやサービスの具体例としては、電子版新聞における紙面ビューア表示処理やオンラインゲーム内での特定の処理パフォーマンス改善などがあります。以下では、これらのAWS Lambdaの使い方例について紹介します。

電子版新聞における紙面ビューア表示処理

大手新聞社が運営している電子版サービスでは、PC・スマートフォンなどから記事を読むための「紙面ビューワ」を提供しています。この紙面ビューワに対しては、毎日膨大なアクセスがあるうえにアクセスの増減が激しく、負荷調整に手間がかかるのだそうです。そこでAWS Lambdaを導入した結果、負荷に応じたインスタンス増減の手間が小さくなり、コスト削減につながったとのことです。

オンラインゲーム内での特定の処理パフォーマンス改善

国内最大手のゲーム開発企業では、オンラインゲームの運営において、スマートフォンアプリとの連動時に発生する負荷処理への対策が課題だったそうです。具体的には、年に数回発生するスパイクアクセス(突発的なアクセス増)のために、高価なインフラ設備を投入すべきかどうか判断しかねていたとのこと。そこで、リクエストに応じて自動的に実行回数がスケールされるAWS Lambdaを導入しました。AWS Lambdaの導入後は、オンラインゲームとアプリケーションの連動にかかる時間が数時間から10数秒にまで短縮され、コストもオンプレミス比で20分の1程度にまで圧縮されたそうです。

AWS Lambdaに関するよくある質問

AWS Lambdaを学ぶべきか検討している方には、AWS Lambdaに関するさまざまな質問があるでしょう。以下では、これらのAWS Lambdaに関するよくある質問について回答します。

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Q1. AWS lambdaは何に使うもの?

AWS Lambdaは、サーバーの設定や管理をすることなく、イベントに基づいてアプリケーションやバックエンドのコードを実行できるサーバーレスのコンピューティングサービスです。

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Q2. AWS lambdaとはどういう意味?

AWS Lambdaは、サーバーの詳細な設定や面倒な管理をせずに、簡単にプログラムを動かすことができるサービスです。安定して動作する環境でプログラムが実行され、Lambdaが裏側の技術的な部分を全て管理をします。

Q3. AWS lambdaの読み方は?

AWS lambdaの読み方は「ラムダ」が正しいです。AWS lambdaは、全世界で広く使われているクラウドプラットフォーム、AWSの中で提供されているサーバレスのFaaS(ファースまたはエフアース)のサービスになります。

まとめ

この記事では、AWS Lambdaを学ぶべきか検討している若手エンジニアに向けて、AWS Lambdaの概要やメリット、具体的な導入事例などを解説しました。

クラウドサービスの中でも、特に注目されているのが「FaaS (Function as a Service」であり、その代表格として挙げられるのが、「AWS Lambda」です。AWS Lambdaは、サーバーレス環境で迅速にプログラム単体を稼働させられることから、開発効率の向上に寄与します。AWS Lambdaの学習を検討している方は、この記事を参考にAWS Lambdaの仕組みを理解することをおすすめします。

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