近年、パソコンやスマートフォンでは、ブラウザを使ってさまざまな情報にアクセスしたり買い物をしたりすることがより身近になりました。これらのサイトの多くはAWSなどのクラウドシステムを使って作られています。このような傾向から、AWSエンジニアとして転職したいと考える人もいることでしょう。
当記事では、AWSエンジニアに転職したいと考えている人向けに、AWSエンジニアの概要や将来性、AWSエンジニアに転職する方法、仕事内容、必要とされる知識・スキル、習得方法、AWS認定資格、年収などついて解説します。
- AWSの概略
- AWSの今後と将来性
- AWSエンジニアに転職する方法
- AWSエンジニアの仕事内容
- AWSエンジニアに求められる知識・スキル
- AWSの知識・スキルを身に付ける方法
- AWSの認定資格
- AWSエンジニアの年収
AWSの概略
まず、AWSの概略を解説します。
AWSはAmazon Web Serviceのことで、米国のAmazon社が2006年にサービスを開始しました。現在では世界中にサービスを提供しており、大きなシェアを持つクラウドプラットフォームです。世界各地にあるデータセンターから 200 種類以上のサービスを提供しており、企業・自治体・政府機関・スタートアップなど、多くの機関が AWS を採用しています。
AWSエンジニアは、クラウド上にあるAWSの設計・構築・運用などを行います。AWSエンジニアはクラウドエンジニアでもあり、インフラエンジニアの一種といわれることもあります。
AWSの今後と将来性
AWSの利用は今後も伸びるといわれており、将来性について解説します。
総務省の調査(※1)では、日本のクラウドサービス市場規模は2021年に比べると2025年にはほぼ倍増し、さらに伸び続けると予測しています。クラウド市場は利便性やコスト面から急成長しており、企業のクラウド利用は今後も増加し続けると考えてよいでしょう。
多くの企業がクラウドへの移行に取り組んでいる中、クラウド市場では米国大手IT企業による寡占化が進んでおり、2021年上期は上位5社(Microsoft、Amazon、IBM、Salesforce、Google)が全体の48.1%を占めています(※2)。そのなかでも、AWSは大きなシェアを持っており、特にシステムの汎用性やセキュリティなどの面で高く評価され、クラウド市場で安定した地位を築いてきました。このような状況から、AWSは今後も多くの需要が見込まれています。
またAWSには、機械学習や人工知能、ビッグデータ解析などの先進技術も組み込まれているため、より幅広い分野で活用されることが予想されます。
このように、AWSの利用は引き続き伸びると考えられ、AWSエンジニアの今後は有望であるといえます。
※1参考:「令和4年版情報通信白書第1部P35」
※2参考:「令和4年版情報通信白書第1部P85」
AWSエンジニアに転職する方法
次に、AWSエンジニアに転職する方法を以下の4つのステップに分けて解説します。なお、既にインフラエンジニアやシステムエンジニアなどを経験済みの人はステップ2からでよいでしょう。
ステップ1:ITインフラの知識・スキルを身に付ける
AWSエンジニアになるためには、まずITインフラの知識・スキルを身に付ける必要があります。ITインフラに関する経験がない人は、サーバーやネットワークといった、ITインフラの基本を習得することから始めましょう。
また、ITインフラの知識・スキル習得するために、まずインフラエンジニアとしてキャリアを積む方法があります。インフラエンジニアとして、サーバー・ストレージ・ネットワークなどに関するインフラ構築に携わると、構築環境がオンプレミスからクラウドになったとしても、基本的な考え方はほとんど同じであるためスムーズにスキルを活用できます。
このように、インフラエンジニアとして経験を積むことは、AWSエンジニアに転職を目指す上で、効率的なキャリアプランといえます。
ステップ2:AWSの各種サービスを理解する
次に、AWSに関する知識・スキルを身につけましょう。既にITインフラの知識・スキルを持っている人やインフラエンジニアの経験者は、このステップからでよいでしょう。
前述のとおりAWSには多くのサービスがあります。顧客の要望に沿ったサービスを提供するためには、さまざまな種類のサービスを理解し、組み合わせる必要があります。
またAWSは常に新しい技術が追加されていくため、AWSエンジニアになった後もAWSの最新技術の習得を継続するようにしましょう。
ステップ3:AWS関連の資格を取得する
AWSの概略や各サービスの理解を深めた後は、Amazon社が認定するAWSの資格取得を目指しましょう。AWSの資格取得は、知識・スキルをさらに深め確かにするだけでなく、AWSエンジニアとしての転職で有利になりやすいです。
ここでは、AWSエンジニアへの転職におすすめの資格を2つ紹介します(後章でも紹介)。この2つの資格は高度なものではありませんが、AWSの基本的な知識・スキルを国際的に証明するものといえるでしょう。
「AWS認定クラウドプラクティショナー」
基礎コースの認定資格で、初心者におすすめです。AWS全体の知識と、最低6か月の使用経験が必要です。
「AWS認定ソリューションアーキテクト」
AWS上での各サービスを設計、構築するための実践的な内容が問われます。1年以上の実務経験をもつ人を対象としているため、ある程度経験を積んだあとに挑戦してみるとよいでしょう。
ステップ4:転職エージェントなども活用しながら、AWSエンジニアの求人に応募する
求人サイトを確認すると、AWSを含む多くのクラウドエンジニアの募集があります。なかには経験が浅くても応募が可能な求人もありますが、全くの未経験だと募集も少なく年収も低めとなります。そのため、上記のように、インフラなどの経験を積んでからの方がキャリアアップしやすいといえるでしょう。
転職エージェントを活用すると、自身の経験やスキルに合った募集とのマッチングができる可能性が上がります。未経験者・インフラエンジニア経験者・プログラミング経験者など、さまざまなスキルに応じて転職エージェントがマッチングしてくれます。また、転職エージェントでは応募時の職務履歴書などの添削のサービスをしてくれるところもあるので、ぜひ活用を検討してみましょう。
AWSエンジニアの仕事内容
次に、AWSエンジニアの仕事内容について具体的に解説します。
設計
一般的な開発と同様に、顧客に対してヒアリングを行い要件定義書にまとめます。クラウド上のAWSで動作させる仮想化基盤、DBサーバー、Webサーバー、DevOps基盤、LDAPサーバーなどの設計を行います。
クラウドの設計ではクラウドサービスの特性である拡張性・可用性を引き出し、セキュリティに留意した設計が求められます。
構築
要件定義書に沿ってAWS上にインフラの構築を行います。具体的にはクラウド上の仮想コンピューティング環境あるEC2上にストレージの S3、データベースのRDSやDynamo DB、セキュリティのAWS ShieldやAWS WAFなどのサービスを使ってインフラを構築します。またネットワークはVPCといわれる仮想ネットワークを使って構築していきます。
運用
AWS上に構築したインフラの運用を行います。具体的には、インスタンスの監視・ソフトウェアのアップデート対応・OS/ミドルウェアの設定変更・チューニング、さらには障害時の対応などを実施します。
AWSエンジニアに求められる知識・スキル
次に、AWSエンジニアに一般的に求められる知識・スキルの具体例を解説します。
ITインフラの知識・スキル
AWSエンジニアは「AWS上にITインフラを構築すること」が求められるため、自ずとITインフラについての知識・スキルが必要とされます。一般的にはサーバー・ストレージ・ネットワークなどのシステムのインフラ構築が中心になるため、インフラエンジニアやネットワークエンジニアが持つ知識・スキルが求められます。
AWSの知識・スキル
AWSには多種多様なサービスが200種類以上あるため、その多くを学ぶ必要があります。顧客の要望に応え、何が顧客に適しているか、どの組み合わせがよいかなどを判断するためです。
まずベースとして、以下の主要なサービスに関する知識・スキルが求められます。
EC2:仮想コンピューティング環境
RDS:データベース
S3:ストレージ
VPC:仮想ネットワーク
Elastic Load Balancing:負荷分散装置
セキュリティの知識・スキル
クラウドのITインフラを使う際にはセキュリティの設定が重要になります。クラウドでのセキュリティ設定ミスが発生すると、たとえば「設定ミスで顧客情報が閲覧可能状態になる」「クラウドストレージの誤設定による情報漏洩が発生する」といった事故が起こり得ます。
このような情報漏洩事故を防ぐためにも、AWSのセキュリティに関する知識・スキルを身につける必要があります。
アプリケーション開発の知識・スキル
以上に加え、AWSエンジニアはクラウド上で稼働するWebサービスやモバイルアプリケーションなどさまざまな業務システムのことも理解しておく必要があります。オンプレミスと同様にITインフラ上にアプリケーションを開発するため、アプリケーション開発に関するプログラミングの知識・スキルもプラグラマーほどの専門性は求められませんが重要です。
関連記事:インフラエンジニアに求められるAWSスキルとは
AWSの知識・スキルを身に付ける方法
次に、AWS初心者にも有用な勉強方法について解説します。
自身で勉強する
AWSの公式サイトには学習コンテンツが非常に多くそろっているため、AWSは独学で習得しやすいという特徴があります。基本的なことから上級者向けまで、さまざま学習用のコンテンツが用意されており、入門者から中級者向けのハンズオンや実践演習もできるようになっています。
AWSの公式サイトには「AWS 初学者向けの勉強方法 6 ステップ!2022 年版!」として勉強方法が記載されているので、ぜひ参考にしてみてください。
勉強会に参加する
AWSに関するさまざまな勉強会が、企業や個人、技術者コミュニティの主催で開催されています。オンライン・オフライン問わず行われており、connpassやSNSなどで募集されることがあります。特にオフライン対面でエンジニア同士が集う場合にはコミュニティができ、スキルを共有できるでしょう。また、Amazon主催の勉強会もあるためAWSの公式サイトで随時確認することをおすすめします。
スクールを活用する
クラウドエンジニアやAWSに関するスクールは数多く存在し、オンラインや対面形式などの選択が可能です。スクールでは、より実践的なスキルを現役エンジニアなどの講師が教えてくれるため、興味も湧きやすく、AWSの認定資格の対策もしやすいです。ただしスクールはコストがかかるため、よく検討して選択しましょう。
関連記事: AWSの勉強手順を公開|クラウド初心者なら知っておきたい!
AWSの認定資格
AWS認定資格は、Amazonが運営するベンダー資格で、所持するとAWSに関する専門知識・スキルを証明することができ、転職に際しても効果的な資格といえるでしょう。
AWS認定資格は、FOUNDATIONAL、ASSOCIATE、PROFESSIONAL、SPECIALTYの4つのカテゴリーにわたって難易度や専門性で分けられています。すべてがオンラインでトレーニングや受験が可能で、ハンズオンなども準備されており、学習しやすい環境が整っています。
(以下に解説する情報は2022年12月現在の情報です。)
FOUNDATIONAL
FOUNDATIONALは初心者向けのAWS認定資格です。AWSを最初から学びたい方はFOUNDATIONALから始めるのが良いでしょう。
AWS Certified Cloud Practitioner(クラウドプラクティショナー)
出題分野:クラウドのコンセプト/セキュリティとコンプライアンス/テクノロジー/請求と料金設定
ASSOCIATE
ASSOCIATEは経験1~3年程度の中級者向けの資格で、以下3種類の認定資格があります。
AWS Certified Solutions Architect - Associate(AWS認定ソリューションアーキテクトアソシエイト)
出題分野:
弾力性に優れたアーキテクチャの設計/高性能アーキテクチャの設計/セキュアなアプリケーションとアーキテクチャの設計/コストを最適化したアーキテクチャの設計
AWS Certified Developer - Associate(AWS認定デベロッパーアソシエイト)
出題分野:
デプロイ/セキュリティ/AWSのサービスによる開発/モニタリングとトラブルシューティング/リファクタリング
AWS Certified SysOps Administrator - Associate(AWS認定SysOpsアドミニストレーターアソシエイト)
出題分野:
モニタリング、ロギング、および修復/信頼性とビジネス継続性/デプロイ、プロビジョニング、およびオートメーション/セキュリティとコンプライアンス/ネットワークとコンテンツ配信/コストとパフォーマンスの最適化
PROFESSIONAL
PROFESSIONALは経験が約2年以上の難関資格で、以下2種類の認定資格があります。
AWS Certified Solutions Architect – Professional(AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル)
出題分野:
組織の複雑さに対応する設計/新しいソリューションの設計/移行計画/コスト管理/継続的な改善
AWS Certified DevOps Engineer – Professional(AWS認定DevOpsエンジニアプロフェッショナル)
出題分野:
SDLCのオートメーション/構成管理とInfrastructure as Code/モニタリングとロギング/ポリシーと標準のオートメーション/インシデントとイベントへの対応/高可用性、耐障害性、災害対策
SPECIALTY
SPECIALTYは専門分野に特化した試験で、以下6種類の認定資格があります。
AWS Certified Advanced Networking – Specialty(ネットワーキング)
出題分野:
ハイブリッドITネットワークアーキテクチャの大規模な設計および実装/AWSネットワークの設計と実装/AWSタスクのオートメーション/アプリケーションサービスとのネットワーク統合の構成/セキュリティとコンプライアンスの設計と実装
AWS Certified Data Analytics – Specialty(データアナリティクス)
出題分野:
収集/処理/ストレージとデータ管理/分析と可視化/セキュリティ
AWS Certified Database – Specialty(データベース)
出題分野:
ワークロード固有のデータベース設計/デプロイと移行/マネジメントとオペレーション/モニタリングとトラブルシューティング/データベースセキュリティ
AWS Certified Machine Learning – Specialty(機械学習)
出題分野:
データエンジニアリング/探索的データ分析/モデリング/機械学習の実装とその運用
AWS Certified Security – Specialty(セキュリティ)
出題分野:
インシデントへの対応 /ログ記録とモニタリング/インフラストラクチャのセキュリティ /アイデンティティ管理とアクセス管理 /データ保護
AWS Certified: SAP on AWS – Specialty(SAP on AWS)
出題分野:
AWS での SAP ワークロードの設計/AWS での SAP ワークロードの実装/SAP ワークロードの AWS への移行/AWS での SAP ワークロードの運用とメンテナンス
関連記事: AWS認定資格で年収アップは可能?転職における市場価値とは
AWSエンジニアの年収
AWSエンジニアの年収は、レバテックのサイトによると約500万円〜700万円程度が多く、インフラエンジニアなどの職種とほぼ同等かやや高い傾向にあります。大規模プロジェクトのAWSの担当やプロジェクトマネジメントの経験を積んでいくと1,000万円など、より高い年収になることもあるようです。ただし、入社数年での年収は、経験にもよりますが一般的には約500万円前後と考えておいた方がよいでしょう。
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