西澤 貫(にしざわ とおる)
キャリアコンサルタント国家資格を保有する、レバテックキャリアのアドバイザー。求職者の強みを活かせる企業を提案するため、カウンセリングは転職相談に留まらず人生相談に発展することも。株式会社リクルートキャリアが主催する「GOOD AGENT AWARD 2017」で特別賞を受賞。
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高橋 悠人(たかはし ゆうと)
レバテックフリーランスを運営するITソリューション事業部事業部長。大阪支店の立ち上げから福岡、名古屋支店の運営にも携わり、全国のエンジニア事情に精通している。
正社員ITエンジニアの人材動向
まずは、正社員として転職を希望しているITエンジニアの登録データから、現在の人材動向を考察します。
JavaをメインスキルとするITエンジニアが62.5%。コロナ禍で多くの人材が市場に
2020年現在、正社員として転職を希望する登録者のメインスキル(プログラミング言語)の割合は、Javaがトップで62.5%、次いでPHPが6.0%、C#・C#.NETが5.9%という結果になりました。
Javaをメインスキルとする登録者が圧倒的なシェアを占めている上に、昨年から約20ポイント増と、強い伸びも目立ちます。その理由としては複合的な要因が考えられます。
2020年の上半期、特に4月にコロナ禍で緊急事態宣言発動以降、エンタープライズ向けのシステムへの投資が昨年に比べて大きく縮小していました。そういったシステムの開発では、Javaが広く使用されているため、案件終了に遭ったJava人材が集中的に市場に流出していたことが考えられます。また、手元の案件に携わりながらも、先行き不透明の中、未来に対する不安感からエージェントに相談するエンジニアも増えました。
ほかには、2019年7月にみずほ銀行のシステム移行が終了し、その案件に関わっていたエンジニアが転職市場に流入してきたことや、景気不振の影響でエンジニアの言語選択が比較的コンサバティブな言語へ回帰していることも、Javaの割合を押し上げた要因として考えられます。
Javaの割合拡大に押されて、ほとんどのプログラミング言語は今年で縮小傾向にある中、VB.NETがそのシェアを拡大させました。VB.NETは業務系、特に帳票システムの開発に多く使用されているため、Javaと同様の理由で人材流出が発生したほか、SaaS系のプロダクトの普及により、帳票系のシステムへの需要が下がり、エンジニアの余剰が出たことも一因となっています。
20代登録者が増加傾向で全体の55.8%。30代の動きは保守傾向に
2020年における登録者の年齢層は、20代が昨年から7.5%伸び、全体の55.8%を占める結果となりました。
特に20~24歳は昨対比で5.8ポイント上昇しています。若い世代は自らの訴求に素直な傾向にあるため、入社後のギャップを早期解決するために、短いスパンで転職を検討している若手エンジニアが増えています。
また、リモートワークの普及も若い人材の動きを後押ししています。東京都が2020年3月~4月に行った都内企業のテレワーク導入状況に関するアンケート調査の結果では、4月時点で67.2%の企業が導入しており、同年3月から2.6倍と急拡大していることがわかりました(※)。コロナ禍により、新卒入社時点からリモートワークが中心となったことで、コミュニケーション不足により会社に馴染めず、転職を検討する人が増えた可能性も考えられます。
さらに、今年4月に緊急事態宣言が発表されたことを受け、経験の浅いエンジニアに対する市場需要が激的に縮小したことから、若手人材が人材市場に一時的に滞留したこともこのデータに反映された形になりました。
一方で、サービス登録者のうち、30代の割合が昨対比で約8.5ポイント減少しています。要因としてコロナ禍で経済の先行きが不透明ななか、20代と比較して家庭を持っている人の比率が多い30代では、転職に対してより慎重であることが推測されます。
また採用コスト削減の観点から、実務経験豊富のエンジニアを会社に残ってもらおうと、30代を引き止める動きが企業側で強くなっている可能性もあります。
※出典:東京都「テレワーク導入緊急調査」(2020年12月2日アクセス)
初めて転職活動に挑む人の割合が縮小。転職市場全体の動きが慎重に
2019年と比較して、2020年は「初めて転職活動をする」人の割合が小さくなっており、昨対比で5.5ポイント減少しています。市場の先行きが不安定な中、1回目の転職に乗り出す人が、一旦市場動向を見守る姿勢に入ったことが影響しているといえるでしょう。
実際ヒアリングの現場では、サービスに登録はしたものの、3ヶ月、さらには6ヶ月後の転職を考えているという求職者が増えています。また、実際の開発現場環境や作っているプロダクトの情報を求める求職者が多くなり、市場全体の動きが慎重になったといえます。
転職理由のトップは「キャリアアップ」。「その他」ではリモートワーク希望者が増加
2020年における転職理由のトップは昨年に引き続き「キャリアアップ」で39.1%を占めています。次いで「仕事内容への不満」20.0%、「収入が少なかったから」11.3%という結果になりました。
「キャリアアップ」が多く選ばれた背景には、SNSの普及でIT業界全体の解像度が高くなったことがあると考えられます。近年動画配信サービスなど情報発信プラットフォームの台頭により、エンジニアは他社や業界全体の情報を仕入れるチャンネルが増え、以前と比べてより細かいキャリアイメージが立てられるようになったといえるでしょう。そこから派生したニーズや将来に対する不安が 「キャリアアップ」に集約されています。
一方、「仕事内容への不満」は昨年から6.3ポイント減少と、割合の縮小が目立ちます。2019年下半期から続く景気不振にコロナ禍の強い影響も相まって、「現職への不満」がエンジニアの主要な転職判断軸から外されている可能性があります。また、リモートワークで業務以外のやりとりやミーティングが減少したことも、エンジニアの不満緩和に一役買っているように思われます。
それと関連して、転職理由に「その他」を選んだ人の中にも、リモートワーク可の職場を求めるケースが多く見られます。また、複数の収入源を持ちながら活動したいということから、副業可の求人を希望するケースも増えています。
「倒産やリストラ等のやむを得ない理由」の割合が20代、40代で微増。
倒産やリストラ等のやむを得ない理由で転職を検討している人のうち、20代が4.9ポイント、40代が7.3ポイントと、それぞれ割合が拡大したという結果になりました。 コロナ禍で企業が人件費削減の動きをとり、経験の浅い若手と比較的に年齢層の高いエンジニアが転職を迫られる状況になりました。
転職活動で優先したいポイントは「スキルアップ」できるかどうか
求職者が転職先選びで優先するのは「スキルアップ」が58.4%ともっとも多く、昨対比で2.1ポイント上昇しました。
何を「スキルアップ」として捉えるかは求職者によって幅があり、「現在の担当フェーズより上の工程を携われること」を挙げる人もいれば、「幅広い経験ができること」を挙げる人もいます。
外部環境が激しく変化する中で、スキルが固定化されることへの不安から、スキルのアップデートや職能の拡張を求める動きがエンジニア全体で強まったといえます。
その次に「収入アップ」を求める人が2.4%上昇しています。こちらは短期的に前職に比較して高収入を得たいというより、コロナ禍を機に今までのキャリアを見直し、より高収入につながるようなキャリアパスを歩みたい方が増えたと推測できます。
フリーランスITエンジニアの人材動向
続いて、フリーランスとして案件受注を希望するITエンジニアの登録データから、フリーランスIT人材の動向を考察します。
フリーランス登録者数は、2016年の約3.4倍に増加
レバテックのフリーランス登録者数(フリーランス転向希望者を含む)は年々増加しており、2020年の登録者数は2016年の約3.4倍となる見込みです。
フリーランス登録者数の増加は、フリーランスで働くことへのハードルが下がってきていることの象徴ともいえます。特に近年では、国による働き方改革の推進で、フリーランス、個人事業主といったキーワードのメディア露出増に伴い、フリーランスという働き方がより身近な存在になったことが、市場拡大の大きな要因だと推測できます。
またリモートワークの普及により、勤務地や出勤時間に縛られず自由に仕事できることへの憧れから、フリーランスに転身するという方も増えてきています。
20代が全体の4割超を占める。30代は現場との関係維持を選ぶ傾向に
2020年のフリーランス市場において、10代~20代の若手人材の登録割合が拡大しており、全体の約43%を占めています。学校教育でプログラミングを体系的に学んできたデジタルネイティブ世代がフリーランス市場に進出してきたことが、フリーランスの若年化が進む一因になっています。
また、20代の若手ITエンジニアはタイムパフォーマンスを重視する傾向にあり、投下したリソースに対して報酬が明確なフリーランスの働き方に惹かれているとも推測できます。
さらに、「自分の今のスキルではフリーランスが務まるか」という力試しの気持ちでエージェントに登録するケースもあります。こういった方の増加は、前述したフリーランスという働き方の浸透や、若手エンジニアの強いスキル志向が影響していると考えられます。
一方、30代以上の割合がどの年齢層においてもやや縮小傾向を見せたのは、コロナ禍で市場の先行きが不安定ななか、すでにフリーランスとして働いている中堅人材が現場との関係を維持する動きに出ていることが原因だと考えられます。
フリーランス人材のメインスキルもJava、PHP、C#・C#.NETが上位。Javaが3割弱でトップ
2020年における、フリーランスとして案件受注を希望する登録者のメインスキル(プログラミング言語)の割合は、Javaがトップで29.1%、次いでPHPが13.8%、C#・C#.NETが10.8%という結果になりました。
トップ3の言語は正社員版と同じですが、正社員希望の登録者ではJavaが全体の約62%を占めていたのに対し、フリーランス希望の登録者は全体の約30%未満にとどまっています。
C#・C#.NETとJavaの割合が拡大。製造業・金融業の開発投資抑制が影響
昨対比で登録者がメインスキルとしている各プログラミング言語の割合の増減を見てみると、C#・C#.NET、COBOL、Javaという順に登録人材の割合が伸びていることがわかりました。
C#・C#.NETとJavaの割合拡大は、今年前半に起きた製造業・金融業の開発投資抑制で、案件解約に遭ったエンジニアが市場に流出したことが要因として挙げられます。特にC#・C#.NETの案件数が、3月から7月にかけて大きく落ち込み、該当スキルを持った人材が次の現場を求めてエージェントに登録するケースが多く見られました。
割合が縮小した言語の中で、Rubyは衣料系のECサイトなどBtoCのWeb系企業の業績不振が一因と考えられます。昨年好調だったPythonが縮小したのは、今年に入って機械学習ブームが若干落ち着いたことに加え、機械学習などPythonが強いRD領域への投資が昨年度後半から縮小し、案件数が減少し始めたことにも影響を受けている可能性があります。
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