組み込みエンジニアとは
組み込みエンジニアとは、コンピュータシステムを制御するためのソフトウェアやハードウェアを設計・開発するエンジニアです。家電製品や自動車、航空機、医療機器、工場設備など、あらゆる分野の製品に組み込まれるマイコンやプロセッサ向けのプログラムを作成するのが主な仕事となります。
組み込みエンジニアの作成するプログラムには、タイトなリソース上で動作し、バグが発生しない精密さが求められます。大規模なITシステムの構築とは別の専門性の高いスキルが必要な職種です。
組み込みエンジニアの役割
組み込みエンジニアはハードウェアを直接的に制御するソフトウェアを作成し、組み込みシステムを実現する役割を担います。ハードウェアだけでは実現できない細かな制御ができる組み込みシステム全体を見通し、ハードウェアの性能を最大限引き出すのも重要なミッションです。
組み込みシステムはハードウェアと連携して利用され、直接ユーザーが利用するケースも少なくないため、高い品質が求められます。たとえば、家電製品に搭載した組み込みプログラムが期待通りに動作しなければ、返品される場合もあるでしょう。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて、組み込みシステム全体を完成させる重要な役割を果たす仕事です。
制御エンジニアとの違い
一般に制御エンジニアは、大型のインフラ施設や工場のラインなどの設備をコントロールする制御システム向けのプログラムの作成を行います。また、自動車やエアコンなどの大型家電を扱うエンジニアも制御エンジニアと呼ばれる場合があります。一方で、組み込みエンジニアも工業用機械やロボットを扱うケースがあるため、その境目は一概にはいえません。
ハードウェアを制御するプログラム作成を行う点は組み込みエンジニアと同様で、違いは制御する機械の大きさといえます。ただし、この違いとなる境目に明確な定義はないため、「組込・制御エンジニア」として一括りにされる場合もある共通部分の多いエンジニア職種です。
組み込みエンジニアに必要なスキル
組み込みエンジニアには、プログラミングに限らず、電子機器や機械、ソフトウェア、ハードウェアなどに関する多種多様なスキルが必要です。組み込みエンジニアの作るプログラムやソフトウェアは、車両や家電に搭載されるマイコン向け、ネットワーク機器やカーナビなどの電子機器、工業用機械、ロボットの制御といった目的で作成されます。
ほかのITエンジニアと共通する面もあるものの、ハードウェアに近い部分のプログラムを作成するため、ほかのITエンジニアとは違うスキルも必要とされます。
プログラミング言語
組み込みエンジニアが開発に使う主なプログラミング言語について紹介します。代表的なのはC言語およびC++、Python、Java、アセンブリ言語などです。中でも、アセンブリ言語は馴染みのない方も多いでしょう。しかし、アセンブリ言語は組み込みエンジニアならではの必須スキルといえます。
C言語およびC++
C言語は、UNIXオペレーティングシステムの開発に使用されたことで有名で、組み込みシステムやアプリケーションの開発で幅広く使用されているプログラミング言語です。汎用性の高さや動作速度が速く安定している特徴があります。1972年に最初のバージョンが開発されており、長い歴史を持っています。ハードウェアに近い部分を直接制御する低水準言語の特徴も併せ持つため、組み込みエンジニアが頻繁に扱う言語です。
C++は、C言語にオブジェクト指向プログラミング機能を追加した言語です。習得難易度が高い代わりに、自由度が高く、AIやゲーム開発などの開発でも採用される場合があります。正確にはC言語の後継ではないですが記述は似ているため、C言語のスキルを持ったエンジニアは比較的習得しやすいでしょう。
両言語ともメモリ効率が高く、高速な処理が可能なため、組み込みシステムに特に適しています。
Python
Pythonは高水準のプログラミング言語であり、組み込みエンジニアのあいだでも利用が広がっています。PythonはCやアセンブリに比べて書きやすく、コードが簡潔で読みやすいため、開発効率が向上するのがメリットです。一方で、スクリプト言語のため動作速度はコンパイル言語に劣ります。
Java
Javaは、現在はOracle社が開発元となっている世界中で広く利用されるプログラミング言語です。汎用性が高く、実績が豊富で、JVMによるマルチプラットフォームやオブジェクト指向、フレームワークやライブラリ(API)が充実しているなどの特徴を持っています。JVMとは、Java Virtual Machineの略で、Javaのプログラムを動作させるためのソフトウェアです。
メモリ管理をJVMにより行っているため、C言語やC++などで必須のメモリ管理にとらわれなくて良い点もメリットです。
組み込みプログラムに向けてJava ME(Micro Edition)を提供しており、IoTを含めた組み込み開発で利用されています。
アセンブリ言語
アセンブリ言語は機械語に近い低水準のプログラミング言語です。組み込みエンジニアがアセンブリ言語を使う理由は、より低水準でのコントロールを細かく制御できるためです。コンパイラの最適化機能が限定されているため、CやC++のコードでは最適な制御ができない場合があり、その対応として利用されるケースがあります。
ソフトウェア関連のスキル
組み込みエンジニアが求められる、ソフトウェア関連スキルについて紹介します。RTOSやLinuxといったOSをはじめ、組み込みシステムのデザインパターンやデバッグなど、広範なスキルが求められます。
リアルタイムOS(RTOS)
組み込みエンジニアにとって、リアルタイムOSは重要な要素です。リアルタイムOSは、決められた期限内にタスクを処理する、タイムリーな応答性を持つシステムの開発に必要です。
Linux OS
組み込みエンジニアがLinuxを使用するケースは増えてきており、特にオープンソースのLinuxカーネルを使用するのが一般的です。Linuxは汎用的で高機能なOSなので、組み込みシステムの設計や開発が容易になる場合があります。
システムオンチップレベルのソフトウェア最適化スキル
システムオンチップ(SoC)レベルのソフトウェア最適化スキルは、組み込みエンジニアにとって重要なスキルの1つです。最適化スキルには、メモリやプロセッサ使用量を最小限に抑えた上で高いパフォーマンスを実現する能力が含まれます。
組み込みシステムのデザインパターンに関する知識
組み込みシステムのデザインパターンは、汎用的なアルゴリズムとデザインの問題に対するソリューションを提供します。これらのパターンは、コードの再利用性や保守性、拡張性、信頼性の向上に役立ちます。
デバッギングスキル
デバッグは、システムの正確性と信頼性を確保するために必要なプロセスです。具体的には、プログラムを一行ずつ実行したり、任意の処理で停止させたりする作業により、バグ・障害を調査します。組み込みシステムは、通常、物理的なアクセスが困難なため、複雑な問題の特定と解決がより難しくなる傾向があります。そのため、バグや障害を見つける高いデバッギングスキルが必要です。
既存のコードベースを使うスキル
組み込みエンジニアは、大規模なコードベースを維持、理解、保守する能力が求められます。さまざまなソースコード管理システムやバグトラッキングツール、デバッグツールを使用して、コードベースを改良し、問題を特定、解決する必要があります。
割り込みドリブンな処理の設計
割り込みは、タイマ、ADC、UARTなどの外部イベントに対処するために使用されます。組み込みエンジニアは、ハードウェアイベントに応答して、割り込み処理を適切に実行できる設計スキルが必要です。
ハードウェア関連のスキル
ハードウェア関連のスキルは、デジタル回路やアナログ回路の基礎、オシロスコープの使用方法、回路設計、基板製造技術などを含みます。これらのスキルは、マイコンやセンサー、モーター、通信機器などのデバイスを開発するために必要です。
マイクロコントローラ(MCU)
マイクロコントローラ(MCU)は、プログラム可能な回路で、組み込みシステムでは一般的に使用されます。MCUのプログラミングには、C言語やアセンブリ言語、MCUのアーキテクチャについての理解が必要です。
マイクロプロセッサ
マイクロプロセッサは、コンピュータのCPUの機能を実行する役割を担う、微小な装置です。一般的に高度なコンピュータに使用されます。マイクロプロセッサには、一般的にリアルタイム制御の必要がなく、高度な処理能力が求められます。組み込みシステムを動作させるためにも重要な役割を果たすため、マイクロプロセッサの仕組みや機能を知っておく必要があるでしょう。
デバイスドライバ
デバイスドライバは、ハードウェアとソフトウェアを接続するプログラムを指し、組み込みシステムに活用されます。そのため、組み込みエンジニアが開発・利用するためには知識とスキルが欠かせません。デバイスドライバの開発には、ハードウェアアーキテクチャに関する知識も必要です。
ヒューマンスキル
システム開発プロジェクトでは、複数人でチームを作ってシステムを構築する場合が多いです。チームでの成果を実現するためには、円滑な推進に向けたコミュニケーション能力が必要となります。
また、タイトな環境でのプログラム作成では仕様・要件についての確認や齟齬の解消が必要不可欠です。クライアントやハードウェア側の担当者、さらに連携するアプリケーションの担当者など対外的なコミュニケーション能力も求められます。
その他技術知識
組み込みエンジニアには広範に渡る知識・スキルが必要ですが、身につけると業務理解が深まり実務で応用できます。まずはプログラミング言語やソフトウェア、ハードウェアなどのスキルを優先すべきですが、併せて身につけると良い技術的な知識について紹介します。
モノのインターネット(IoT)
「モノのインターネット」を指すIoTの技術進歩によって、家電や自動車、工業用機械などさまざまなモノが遠隔で操作できる時代に変化してきています。
組み込みエンジニアがIoTに携わる場合には、ネットワーキングや通信プロトコルの知識、省電力性の高いデバイスやシステムの設計能力、高い信頼性のあるデバイスの開発スキルなどが必要です。IoTにおいては、膨大なデータを扱うためにデータ処理の効率化やデータベースの設計が重要になります。
また、セキュリティの面でも高いスキルが必要で、デバイスやネットワークの脆弱性を熟知して、安全で信頼性の高いシステムを開発する必要があります。さらに、クラウドやWeb技術、人工知能(AI)や機械学習の知識があるとIoT開発に役立つでしょう。
インターネットベースの各種テクノロジー
インターネットベースのテクノロジーは、組み込みエンジニアにとってますます重要になっています。これには、Webプロトコルやクラウドプラットフォーム、RESTful API、M2Mなどが含まれます。それぞれの機能を以下にまとめました。これらのテクノロジーを理解することは、組み込みエンジニアにとって非常に重要です。
-
・Webプロトコル
組み込みデバイスとWebアプリケーションの通信を可能にする
・クラウドプラットフォーム
IoTシステムの開発、デプロイメント、管理に必要なスケーラブルなリソースを提供する
・RESTful API
デバイス間のコミュニケーションを簡素化する
・M2M
IoTシステムが自律的に動作し、人間の介入なしで自己修復を可能にする
データ構造に関する知識
組込みエンジニアが必要とするデータ構造に関する知識は、アルゴリズムの実装やメモリ使用量の最適化などに重要です。リストやスタック、キュー、ツリー、ハッシュテーブルなどの基本的なデータ構造を理解し、それらを適切に使用しなければなりません。また、ビットフィールドなどの特定のデータ構造に関する知識も必要となる場合があります。
英語スキル
組み込みエンジニアには英語スキルも求められます。より一般的なケースでは、英語のドキュメントを読むために英語の読解力が求められます。組み込み開発では、海外製の部品を使うケースが珍しくなく、そのマニュアルはほとんどが英語で記述されているからです。技術書や最新のニュースも英語の場合が多いため、英語の読解力があると日常的な情報収集に役立ちます。
また、海外勤務がある企業に所属すれば、直接的にコミュニケーションをとる英会話スキルが必要な場合もあるでしょう。
関連記事:組み込みエンジニアが英語を使えることで得られるメリット
未経験から組み込みエンジニアになるために必要なスキル
未経験から組み込みエンジニアになるために必要なスキルについて紹介します。未経験からいきなり高度なスキルを習得するのは難しいため、組み込みシステムで扱われる主要なプログラミング言語を学んだり、ハードウェアやソフトウェアの基礎スキルを身につけたりするのがおすすめです。組み込みエンジニアに求められるスキルは多いですが、その中でも優先順位を決めて主要なものから着実に身につけていくと良いでしょう。
関連記事:組み込みエンジニアになるために必要な勉強
現場でよく利用される開発言語
組み込みエンジニアが現場でよく利用する開発言語は、C言語とC++です。C言語はメモリ操作が容易で、ハードウェアへのアクセスが比較的容易なため、組み込みシステムの開発に向いています。C++はオブジェクト指向のプログラミングに対応しており、ソフトウェアの設計がしやすく、再利用性が高いので、多くの組み込みシステムで使用されています。
ハードウェアやソフトウェアの基礎知識
未経験から組み込みエンジニアを目指す場合は、まずは基礎知識の習得が欠かせません。
ハードウェアの基礎知識としては、電気回路、マイクロコントローラ、センサー、アクチュエーターなどが挙げられます。
ソフトウェアの基礎知識としては、C言語、アセンブリ言語、制御システム、リアルタイムオペレーティングシステムなどです。
これらの基礎知識を身につけると、組み込みシステムの設計、開発、テスト、デバッグなどに役立ちます。
組み込みエンジニアとして活躍するために持っておきたいスキル
組み込みエンジニアとして活躍し、キャリアを築いて高い年収を得るには、今後成長分野となるスキルの習得が有効です。IT技術は進歩し続けトレンドも変化していくため、時代の先を見据えて新しいスキルを磨いたり既存の知識を刷新したりする必要があるでしょう。ここでは、将来的に組み込みエンジニアとして活躍するために持っておきたいスキルを紹介します。
マイコンのスキル
組み込み開発においてマイコンは欠かせない重要な要素です。高性能化および小型化を求め、新たなマイコンが次々と開発されています。新規に登場するマイコンの中でも顧客にとって有用な新機能を押さえ、最適な選択ができるよう理解を深め続ける姿勢が求められます。
人工知能(AI)の知識・スキル
幅広い分野で活用が模索され生成AIなど一般にも普及が広がっているAIは、組み込み開発と組み合わせた用途にも期待が集まる技術となっています。
組み込みのデバイス内で機能する組み込みAIは、各種の認証や推論などが実用化されつつある状況です。また、産業用ロボットの制御でも活躍が期待されています。さらに、IoT技術との組み合わせでは、AIを用いたデータ抽出によるデータの通信量を抑える仕組みも有望視されます。
loTに関する知識・スキル
家電、自動車、医療などの機器においてIoTの活用が広まっており、一般化されつつある選択肢となっています。利用する業種や業界は拡大を続けており、組み込みエンジニアにとってはさらなる需要が見込まれる領域です。将来的にもなくなることは想定されないため、確実に身につけるべきスキルといえます。
組み込みエンジニアのスキルマップ「組込みスキル標準」
組込みスキル標準(ETSS)は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)および経済産業省により策定された、組込みソフトウェア開発者の育成・活用のためのスキル基準です。大きく下記の3つのカテゴリに分かれています。
-
1. スキル基準
2. キャリア基準
3. 教育研修基準
2024年7月1日時点の最新版は、2008年度に策定された組込みスキル標準ETSS2008です。
有効に活用すれば組み込みエンジニアとしてのスキルを明確化できます。キャリア形成上で次に必要となるスキルを探す手掛かりにもなるでしょう。
1. スキル基準
組込みソフトウェアに関する技術スキルを「技術要素」、「開発技術」、「管理技術」の3つのカテゴリに整理し、それぞれを初級、中級、上級、最上級の4段階の階層でスキル診断を行います。スキルの定量的な可視化を目的とするものです。
2. キャリア基準
組込みシステム開発に関わる職種・専門分野を分類し、経済性と責任性の度合いを7段階のキャリアレベルで表したものです。職種は全10種類に分けられており、職種に紐づいて1つまたは2つの専門分野が紐づいています。
職種、専門分野の組み合わせは以下のとおりです。
職種 | 専門分野 |
---|---|
プロダクトマネージャー | 組込みシステム 組込みソフトウェア開発 |
ドメインスペシャリスト | 組込み関連技術 |
システムアーキテクト | 組込みアプリケーション開発 組込みプラットフォーム開発 |
ソフトウェアエンジニア | 組込みアプリケーション開発 組込みプラットフォーム開発 |
ブリッジSE | 組込みソフトウェア開発 |
開発環境エンジニア | 組込みソフトウェア開発 |
開発プロセス改善スペシャリスト | 組込みソフトウェア開発 |
QAスペシャリスト | 組込みソフトウェア開発 |
テストエンジニア | 組込みソフトウェア開発 |
3. 教育研修基準
組込みソフトウェア開発のスキル・キャリアアップを支援する教育カリキュラムのフレームワークを定義しています。活動のポイントと予定成果物をペアとして3つの組み合わせが対象です。
活動のポイントと予定成果物は以下になります。
-
・研修コースなどが対応する技術範囲やレベル定義などのカリキュラムの枠組みの策定
教育カリキュラムフレームワーク
・組込み技術者教育カリキュラムの品質維持
未経験者向け教育ガイドライン
・組込み教育カリキュラムの普及
研修コース開発手順書
組み込みエンジニアとしてのスキルを証明できる資格
組み込みエンジニアになるために必要な資格は特にありません。しかしながら、プロジェクトへのアサインや転職時などで活用できる資格が存在します。
資格を取得しても、必ずしも現場で通用する人材として認められるわけではありません。しかし、資格の種類によって、どのような知識やスキルが身についているかを示すアピール材料になるのはメリットです。
ここでは、組み込みエンジニアがスキルを証明するのに有効な資格を紹介します。
関連記事:組み込みエンジニアに役立つおすすめ資格6選!参考書籍や求められるスキルも解説
ETEC(組込み技術者試験制度)
ETEC(組込み技術者試験制度)は、一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が運営する組み込みエンジニア向けの試験制度です。二段階のレベルがあり、クラス2は組込みソフトウェア開発の初級者向けのエントリレベル、クラス1は中級者向けのミドルレベルの知識を有することを示す試験です。クラス1はETSSのレベル3に相当します。
クラス2(エントリレベル) | クラス1(ミドルレベル) | |
---|---|---|
試験時間 | 90分 | 120分 |
試験形式 | CBT | CBT |
試験会場 | 日本全国のピアソンVUE社公認試験会場 | 日本全国のピアソンVUE社公認試験会場 |
出題数 | 120問 | 90問 |
回答形式 | 多肢選択式 | 多肢選択式 |
合格基準 | なし 正答率によりグレードA、B、Cの 3段階で評価。評価基準は明示されていない |
なし 正答率によりグレードA、B、Cの 3段階で評価。評価基準は明示されていない |
合格率 | なし 過去のグレード分布 |
なし 過去のグレード分布 |
実施日時 | 随時 | 随時 |
受験料(税込) | 1万6,500円 | 2万2,000円 |
JSTQB(テスト技術者資格認定試験)
JSTQB認定テスト技術者資格とは、テストの技法や評価、テストマネジメントに関するスキルを証明する資格です。JSTQBはJapan Software Testing Qualifications Boardの略称で、ソフトウェアテスト技術者認定の運営を行っています。各国のテスト技術者認定組織と相互認証を行っているため、海外でも有効な資格です。
「Foundation Level」ではソフトウェアテスト全般の知識が問われ、「Advanced Level」ではテストマネジメントやテスト評価に関する知識が問われます。組み込みエンジニアに特化した資格ではありませんが、テストエンジニアリングに関する知識を習得できます。Advancedではテストマネージャとテストアナリストの役割別に試験が提供されています。
ほかにもSpecialistやAgileといった受験カテゴリがあります。
Core Foundation | Core Advanced | |
---|---|---|
試験時間 | 60分 | テストマネージャ:180分 テストアナリスト:120分 |
試験形式 | CBT | CBT |
試験会場 | 日本全国のピアソンVUE社公認試験会場 | 日本全国のピアソンVUE社公認試験会場 |
出題数 | 40問 | テストマネージャ:65問 テストアナリスト:40問 |
回答形式 | 多肢選択式 | 多肢選択式 |
合格基準 | 26点以上 | テストマネージャ:75/115点以上 テストアナリスト:52/80点以上 |
合格率 | 51.7%(2022年) | テストマネージャ(2021年):33.44% テストアナリスト(2022年):41.6% |
実施日時 | 随時 | 随時 |
受験料(税込) | 2万2,000円 | 2万2,000円 |
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営する国家資格試験です。ITエンジニアとして実務に臨むための基礎レベルのスキルが問われます。出題範囲はハードウェアやソフトウェア、プログラミング、プロジェクトマネジメントなど多岐に渡ります。
直近の2024年5月の合格率は45.3%、前年度全体でも平均47.1%となっており、難易度はそこまで高くないといえるでしょう。組み込みエンジニアに限らずITエンジニアとしてのスキルと知識を示せる資格です。
基本情報技術者試験 | |
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試験時間 | 科目A:90分 科目B:100分 |
試験形式 | CBT |
試験会場 | 日本全国のCBT-Solutions試験会場 |
出題数 | 科目A:60問 科目B:20問 |
回答形式 | 多肢選択式 |
合格基準 | 各科目ともに600点以上/1,000点満点 |
実施日時 | 随時 |
受験料(税込) | 7,500円 |
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の運営する国家資格試験です。ITエンジニアとしての基礎レベルを問う基本情報技術者試験からワンランク上のスキル、知識を持つことを示すことができる資格です。ITエンジニアとしての応用レベルのスキルを持ち、高度IT人材として方向性の定まった者を対象者としています。令和5年度春期試験の合格率は27.2%でした。
応用情報技術者試験 | |
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試験時間 | 午前(科目A):150分 午後:150分 |
試験形式 | 筆記 |
試験会場 | 全国の定められた試験会場 |
出題数 | 午前:80問 午後:11問(解答数5問) |
回答形式 | 午前:多肢選択式 午後:記述式 |
合格基準 | 午前・午後ともに60点以上/100点満点 |
実施日時 | 春期(4月)、秋期(10月) |
受験料(税込) | 7,500円 |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の運営する国家資格試験です。IoTを含む組み込みシステムの開発に関係する広い知識とスキルを持つ設計・構築・製造を主導するエンジニアを対象者としています。IoTを含めた組み込みソフトウェアに特化した資格試験であり、取得すると組み込みエンジニアとしての高いスキルを示せます。
令和5年度秋期試験の合格率は16.6%でした。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | |
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試験時間 | 午前Ⅰ:50分 午前Ⅱ:40分 午後Ⅰ:90分 午後Ⅱ:120分 |
試験形式 | 筆記 |
試験会場 | 全国の定められた試験会場 |
出題数 | 午前Ⅰ:30問 午前Ⅱ:25問 午後Ⅰ:2問(解答数1問) 午後Ⅱ:3問(解答数1問) |
回答形式 | 午前Ⅰ:多肢選択式 午前Ⅱ:多肢選択式 午後Ⅰ:記述式 午後Ⅱ:論述式 |
合格基準 | 午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ:60点以上/100点満点 午後Ⅱ:ランクA |
実施日時 | 秋期(10月) |
受験料(税込) | 7,500円 |
OMG認定資格試験
OMG認定資格試験は、組み込みエンジニアが携わるソフトウェア・制御のモデリングといった、モデリングスキルを認定する世界標準の技術者試験です。OMGとはOBJECT MANAGEMENT GROUPの略で、大きなカテゴリはBPM(ビジネスプロセスマネジメント)、SysML(システムモデリング言語)、UML(統一モデリング言語)の3つに分かれています。それぞれのカテゴリで複数のレベルの試験が提供されているため、段階的なスキル向上とその証明が可能です。
OMG認定資格試験で扱うスキルと知識は、組み込みエンジニアに限らず幅広い技術者に向けた資格で海外でも共通したスキルを示すものです。英語圏の組み込み部品を利用するケースが多い組み込みエンジニアにとっても有用な試験といえます。合格率は公開されていません。
以下では各カテゴリのファーストステップとなる、基礎・初級レベルに該当する試験の概要を紹介します。その他の試験はOMG公式サイト(英語)を参照ください。
BPM技術者資格試験 (初級基礎) |
SysML技術者資格試験 (モデルユーザー) |
UML技術者資格試験 (ファンダメンタル 初級) |
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試験時間 | 120分 | 120分 | 150分 |
試験形式 | CBT | CBT | CBT |
試験会場 | 日本全国の ピアソンVUE社公認試験会場 |
日本全国の ピアソンVUE社公認試験会場 |
日本全国の ピアソンVUE社公認試験会場 |
出題数 | 90問 | 90問 | 90問 |
回答形式 | 多肢選択式 | 多肢選択式 | 多肢選択式 |
合格基準 | 正解数62問 | 正解数56問 | 正解数60問 |
実施日時 | 随時 | 随時 | 随時 |
受験料(税込) | 3万7,250円 | 3万7,250円 | 3万7,250円 |
LPIC・LinuC
LPIC、LinuCはいずれもLinuxに関するスキル・知識を身につけ、証明できる資格試験です。組み込みエンジニアの業務でもLinuxを利用するケースがあるため役立つ資格といえます。
LPICは、非営利団体Linux Professional Instituteによって運営されるLinux技術者向けの国際的な資格制度です。LPIC-1からLPIC-3の3段階で構成され、LPIC-3はさらに専門分野により試験が分かれています。
LinuC(リナック)は、LPI-Japanの運営するLinux技術者に求められる技術力を証明できる認定資格です。レベル1からレベル3で構成されており、レベル3は専門分野別の3種類の試験があります。
どちらの試験も合格率は公開されていません。以下では、各カテゴリの初級レベルのみを記載しています。その他の試験は公式サイトを参照ください。
LPIC-1(101-500および102-500) | LinuCレベル1(101および102) | |
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試験時間 | 90分 | 90分(5分程度のアンケート含む) |
試験形式 | CBT | CBT(入力問題が多少含まれる場合あり) |
試験会場 | 日本全国の ピアソンVUE社公認試験会場 またはオンライン |
日本全国の ピアソンVUE社公認試験会場 またはオンライン |
出題数 | 60問 | 約60問 |
回答形式 | 多肢選択式、穴埋め式 | 多肢選択式、穴埋め式 |
合格基準 | 500/800点 | 非公表 目安は正解率65~75% |
実施日時 | 随時 | 随時 |
受験料(税込) | 各1万5,000円 | 各1万6,500円 |
C言語プログラミング能力認定試験
C言語プログラミング能力認定試験は、サーティファイが運営するC言語スキルに関する民間資格試験です。3級から1級までの試験が提供されており、最上位の1級では実践レベルのスキルが問われます。2022年度の平均合格率は65.75%でした。級ごとの合格率は公表されていません。
C言語は組み込みエンジニアの業務でよく使われるプログラミング言語のため、能力を示す際に役立つ資格です。以下では3級のみの試験概要を一覧で紹介します。
3級 | |
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試験時間 | 60分 |
試験形式 | リモートWebテスト |
試験会場 | どこでも |
出題数 | 大問6問 |
回答形式 | 多肢選択式 |
合格基準 | 得点率60%以上 |
実施日時 | 随時 |
受験料(税込) | 5,400円 |
組み込みエンジニアの転職市場状況
組み込みエンジニアの転職市場は、非常に高い需要状況が続いています。最新技術への関心が高く、より高いスキルを持つ組み込みエンジニアは、転職市場で重宝されるでしょう。特に、IoTやAIなどの技術の発展に伴い、組み込みシステムの需要は増加しており、それに伴ってエンジニアの求人数も増加傾向にあります。実際に、2024年7月時点でレバテックキャリアに掲載されている、組み込みエンジニアの求人情報は631件あります。
では、より具体的な組み込みエンジニアの転職市場状況について解説します。
組み込みエンジニアの求人・転職情報一覧>
関連記事:
組み込みエンジニアは難しい?なぜ人材不足なのか
組み込みエンジニアの需要と将来性について
組み込みエンジニアの転職市場は?評価されるスキルや経験も解説
組み込みエンジニアの需要が伸びる理由
近年は、IoT(Internet of Things)の発展に伴い、組み込みシステムの重要性が高まっています。また、ロボット制御への活用が期待される組み込みAIが実用化フェーズに入りつつあり、これらの技術革新によって組み込みエンジニアの需要も増している状況です。
そのため、IoTやAIの高い技術力を現場で活用できる組み込みエンジニアは転職市場で重宝されるでしょう。IoTもAIも今後幅広い活用が想定される分野で、組み込みエンジニアの需要を高める要因といえます。
組み込みエンジニアの活躍の場
今後、組み込み開発を求めている業界として、下記が挙げられます。IoTの普及により、組み込みエンジニアを求める現場は増加中です。
-
・電子/電気/OA機器業界
・自動車業界
・医療業界
・家電業界
・航空業界(宇宙産業、防衛産業などを含む)
・物流業界
組み込みエンジニアの年収
2024年7月時点でレバテックキャリアに掲載されている募集中の求人から算出すると、組み込みエンジニアの平均年収は約636万円です。日本の組み込みエンジニアの場合、一般的には、大手メーカーや半導体メーカーで働くエンジニアの年収は高く、中小企業やベンチャー企業で働くエンジニアの年収は比較的低めとなります。
また、関東圏や関西圏などの都市部では、年収が高く、地方都市や田舎の地域では年収が低めとなる傾向があるでしょう。
関連記事:組み込みエンジニアとは?仕事内容や年収、資格、将来性などを解説
組み込みエンジニアに関するよくある質問
組み込みエンジニアに関するよくある質問と回答をまとめました。ここで紹介する質問は、これから組み込みエンジニアへの転職を目指す人に共通するケースが多いため、一度確認しておくと良いでしょう。特に制御エンジニアとの違いについては、組み込みエンジニアに興味を持つ多くの人が疑問に感じる点です。組み込みエンジニアの概要について簡潔の記載となるため、詳しくは本記事内の記載や関連記事などを参照してください。
Q1. 組み込みエンジニアは何をする仕事ですか?
組み込みエンジニアは、機器や製品の内部に埋め込まれたマイクロプロセッサやマイクロコントローラなどのハードウェアをプログラムする業務を担当しています。具体的には、組み込みシステムの設計、実装、テスト、デバッグなどの作業が含まれます。
Q2. 組み込みエンジニアに向いている人の特徴を教えてください
組み込みエンジニアは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせてシステムを作成する過程で、モノづくりの醍醐味が味わえる仕事です。また、品質を高めるために地道なデバッグ作業などが必要な業務でもあります。そのため、モノ作りが好き、あるいは地道に作業を積み上げられる方は向いているでしょう。
Q3. 組み込みエンジニアと制御エンジニアの違いを教えてください
制御エンジニアは、比較的大型のインフラ施設や工場のラインなどの設備をコントロールする制御システム向けのプログラムの作成を行う職種です。組み込みエンジニアとの違いは、プログラムで制御する対象が大型か小型かの区別によるとされていますが、その境目は一概にはいえません。
まとめ
組み込みエンジニアはよりハードウェアに近いタイトな領域のプログラムを作るエンジニアです。高度な設計・開発技術が必要とされる分野であり、広範に渡る領域の知識や技術、ヒューマンスキルが求められます。自身の能力を対外的に示すためには、組み込みスキル標準(ETSS)に沿ってスキルを整理したり各種資格を取得したりするのがおすすめです。
また、組み込みエンジニアはIoTに関連して高い需要があります。さらには今後普及していくと想定されるロボットへの組み込みAI開発にも欠かせない技術者として期待されているため、将来性も高いといえるでしょう。
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