仕事がきつい?ユーザー系SIerの特徴を解説!転職のポイントも解説

最終更新日:2024年6月27日

大手企業のシステム部門が独立したユーザー系SIerは、親会社並みの福利厚生や給与など待遇がよいため、IT系でも人気の高い職場です。一方で、検索エンジンにユーザー系SIerと入力すると「きつい」とサジェストされる場合もあり、転職を検討する際に「仕事が大変なの?」と不安を感じるかもしれません。結論から言えば、「きつい」は個人的な感覚であり「ユーザー系SIer=きつい仕事」というわけではありません。

本記事では、ユーザー系SIerの仕事の特徴を紹介し、どういった点を「きつい」と感じてしまうのかについて解説します。ユーザー系SIerへの転職を検討している方はぜひチェックしてみてください。

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この記事のまとめ

  • ユーザー系SIerとは、大企業の情報システム部門から独立したルーツを持つSIerで、親会社との関係から安定した受注を持つことが特徴です
  • 親会社と同等の待遇やコンプライアンスが適用されることが多く、ワークライフバランスを重視して働きやすい職場であることが多いです
  • 一方で、親会社の案件は類似するものが多く、業務に変化や刺激を求めるエンジニアにとってはつらく感じる場合もあります

ユーザー系SIerの仕事はきつい?

大会社のシステム部門が子会社として独立した企業が、ユーザー系SIerです。大企業の子会社であるため、一般的にはユーザー系SIer以外のIT関連企業と比較した場合、福利厚生が充実しています。また、コンプライアンスを重視する傾向にあるため、残業が少なく、SIerのなかでも働きやすい職場として知られています。

一方で、ユーザー系SIerと検索すると「きつい」「やめとけ」といったネガティブなワードがサジェストされることもあります

一般的に「きつい」というと、残業が多く肉体的にきついシーンを考えますが、ユーザー系SIerは比較的残業が少なく、肉体的なきつさは感じにくい職場です。「きつい」と感じた人の多くは、エンジニアを取り巻く環境に対してきつさを感じていると言えます。

次章以降、ユーザー系SIerの特徴やメリット・デメリットを紹介します。転職を検討している皆さんは、自分に合った職場かどうかをチェックしてみてください。

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そもそもユーザー系SIerとは

IT以外を本業に持つ企業(ユーザー企業)の中でも組織の規模が大きい場合には、組織内で利用するITシステムの規模は大きく、数も多くなります。ITシステムの運用や管理、開発を行うためにITエンジニアも多数が必要となり、社内の情報システム部門が拡大していきます。情報システム部門が一定以上の規模となった場合には、情報システム部門を情報システムに携わることを専門とする子会社として独立させることがあります。独立させる理由には、ITスキルを持った専門的な集団により外部から利益を確保することやコスト面でのメリットなどがあげられます。

このような背景で生まれたSIerを、ユーザー系の企業をルーツに持つSIerのためユーザー系SIerと呼びます。

なお、日本国内のSIer業態としては、ユーザー系SIerの他に独立系SIerやメーカー系SIer、外資系SIerがあります。

ユーザー系SIerに共通する5つのメリット

ユーザー系SIerに共通する5つのメリット


ユーザー系SIerに共通する5つのメリットや特徴について解説します。そのほとんどが親会社を持つことにより生まれるものです。

1.仕事が安定している

ユーザー系SIerの仕事は大企業である親会社からの受注がメインです。そのため、基本的に安定して仕事があることが特徴のひとつと言えます。

従って、「営業が無茶な仕事を受注して、現場が急に忙しくなる」といった事態はほぼ起こりません。毎日同じような仕事量を同じように続けていくことができます。

また、親会社から定期的に受注するため「仕事が急に暇になり、経営が不安定になる」といったこともほとんどありません。

このように、安定して仕事を続けられることは、大企業のグループ会社である、ユーザー系SIerならではのメリットと言えます。

2.自社内での開発がメイン

例えば、機密情報を多く扱うプロジェクトの場合、クライアント企業に常駐し、クライアントが用意したパソコンで作業することも多くあります。クライアント先への常駐はプロジェクトの状況によっては精神的にきついケースもあるでしょう。

また、クライアント先への常駐は、通勤が大変になるなど物理的なストレスも発生しがちです。場合によっては短期賃貸マンションでの生活を余儀なくされることもあります。

一方、ユーザー系SIerの主なクライアントは親会社です。ほぼ同じ会社ですから、機密情報を扱う場合も、必ずしも親会社で作業する必要はありません。いつもの職場で、気心の知れたチームで、いつもの端末で作業できるため、それだけでもストレスは軽減されるものです。

このように、クライアント先への常駐がほぼ無い勤務形態は、ユーザー系SIerならではの特徴ですし、メリットといえます。

3.上流工程がメイン

ユーザー系SIerの主なクライアントは親会社です。ですから、基本的に元請けの仕事を担当することになります。2次請け・3次請けといったケースはほぼありません。

元請けなので、仕事内容は要件定義や基本設計など、上流工程がメインです。プログラミングやテストなどは2次請けに依頼するケースが多くあります。

そのため、要件定義に必要な企画力、プロジェクトを推進するためのマネジメント能力が身につきます。これらはIT業界以外でも役立つ能力です。

4.充実の福利厚生と高い給与水準

ユーザー系SIerの福利厚生や給与は親会社(大企業)に準じたものとされるのが一般的です。そのため、IT関連企業としては比較的好待遇とされるのがユーザー系SIerの待遇面での特徴です。

また、大企業である親会社はグループ会社全体でコンプライアンスを重視しているケースが多く、残業や休日出勤などは発生しづらい傾向にあります。また、先ほど紹介した通り、仕事量がそもそも安定しているという特徴もあります。

このように、ワークライフバランスを実現しやすい職場が多いこともユーザー系SIerならではの特徴です。

5.社会的信用性が高い

ユーザー系SIerは会社名に親会社(大企業)の名前を冠していることが多くあります。これは社会的信用に直結しますし、メリットとなり得ます。

一般的なIT系企業では、それなりの規模を誇る企業でも知名度は小さいものです。仕事を説明する際、苦労した経験のある人も多いのではないでしょうか。一方で、ユーザー系SIerであれば、親会社の名前が知れ渡っているため、「ああ、〇〇の関連会社ですか」などと、すぐに理解してもらえます。

親会社の系列に属していることで、ローンが組みやすくなる、クレジットカードの審査が通りやすくなるなどの直接的なメリットを得ることができます。

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ユーザー系SIerの仕事がきついと思われるシーン

前章で紹介した通り、ユーザー系SIerは残業が発生しづらく、福利厚生が充実しているなど、ワークライフバランスを重視した職場である場合が多いです。とはいえ、人によっては「きつい」と感じるシーンも発生します。どういった状況で、どのようなことに「きつい」と感じるのか、その詳細について解説します。

開発の全行程に関わるようなスキルを得にくい

企業にもよりますが、ユーザー系SIerのエンジニアが担当するのは主に上流工程です。また、クライアントは主に親会社なので、同じようなシステムの担当が多くなる傾向にあります。これは仕事が大変になりにくいメリットがある反面、仕事内容が偏りやすいという点ではデメリットです。

また、新しい技術を試す機会や、開発の全工程を担当するといったケースはまれです。様々な案件に挑戦し、幅広い技術・知識を得たいエンジニアにとっては物足りなく感じる可能性があります。そのため、「ユーザー系SIerは『自己成長しづらく』きつい」と感じる人もいるようです。

ただし、前章でも紹介した通り、業務に従事することで企画力やマネジメント能力といったスキルを身につけることは可能です。技術的なスキルをフォローしたいなら、社内で勉強会を開くなど、自分次第で身につけることもできるでしょう。

変化が少ない

クライアントは主に親会社で、客先への常駐も発生しづらいことは前章で述べた通りです。これはメリットでもありますが、場合によっては「変化が少なく物足りない」と感じるケースもあるようです。業務環境の変化に刺激を受けて成長することも望みづらいといえます。

仕事内容に変化を求める人は、希望のプロジェクトに参画できるよう、積極的にアクションを起こす必要があります。そのためには、現在の仕事に直接関係無いスキルについても積極的に学ぶ姿勢が欠かせません。

出世が狭き門である

ユーザー系SIerは、一般的に子会社的な立場です。そのため、管理職は親会社からの出向がメインとなります。生え抜きで上のポジションを目指すのは狭き門です。

いずれは社長や管理職などを目指したい人にとっては、難しい環境となる可能性があります。このように出世しづらい状況に対し「ユーザー系SIerはつらい」と感じることがあると言えます。

とはいえ、絶対に上を目指せないわけではなく、ユーザー系SIerで様々な経験を積み、別の職場へとステップアップする人も多くいます。「出世しづらくつらい」と考えるのか、ユーザー系SIerならではの経験を積み、次のキャリアへ繋げようと考えるのか、キャリアパスの考え方次第と言えます。

外部案件が多い会社もある

ユーザー系SIerの特徴を知り、自分にあった環境と考えて就職した場合にも、ミスマッチが起こることもあります。ユーザー系SIerでも親会社からの案件ではない、外部案件(外販)が多い企業も存在するためです。

親会社の業績が停滞しIT投資が鈍った際には、ユーザー系SIerは内部の案件は期待できなくなります。このような状況となったとき、ユーザー系SIeでも外部案件が主となる場合があります。外部案件では、ユーザー系SIerのメリットをいかしづらいため、他の部分にメリットを持つSIerに比べて「つらい」と感じることがあるでしょう。

残業代による収入アップは期待できない

ユーザー系SIerでは、就業規則や福利厚生が充実しているのが特徴です。そのため残業は発生しづらい傾向にあります。これは一般的にはメリットとされることが多く、昨今の働き方改革などを考えると優良企業と言って良い待遇です。しかし、他のSIerなどから転職してくるエンジニアで、残業代で収入を増やそうという考えがある場合、つらい環境とも言えます。特に、独立系SIerやメーカー系SIerで残業を多くしていた環境からユーザー系SIerへ転職すると、感覚の違いに戸惑ってしまうかもしれません。

残業が少ないのは一般的に大きなメリットです。また、基本給が高い傾向にあることもユーザー系SIerの特徴ということを忘れてはいません。

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ユーザー系SIerとその他のSIerとの違い

日本国内のSIerには、ユーザー系SIer以外に独立系SIerとメーカー系SIer、外資系SIerがあります。転職を検討しているのであれば、それぞれの違いを認識しておくとよいでしょう。

ユーザー系、独立系、メーカー系、外資系、それぞれにメリット・デメリットや特徴があるため、自分に合った転職先を考えることが大切です。

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独立系SIer

独立系SIerは親会社を持たないSIerです。ユーザー系SIerとの大きな違いは、親会社を持っているかいないかという点です。

独立系SIerは、様々な企業のプロジェクトに参画できるため、幅広い知識や技術を身につけたい人におすすめです。一方で、プロジェクトが変わるたびに新しいことを覚えなくてはならず、業務が大変という側面もあります。

メーカー系SIer

メーカー系SIerとは、ハードウェア開発などのIT関連企業を親会社とするSIer企業です。ユーザー系同様に親会社のシステム開発を担当することもありますが、独立系同様に、クライアント企業へシステムを導入する案件も多く発生するのが特徴です。親会社のハードとセットでシステムを納入する案件もあります。ITに関する深い知識を得たい人におすすめです。

業務都合上、クライアントの企業に常駐するケースも多く、そういった意味で大変さを感じる人もいます。

外資系SIer

外資系SIerは海外資本のSIer企業です。欧米などに本社をもつIT系の企業の日本法人にあたります。

本社のノウハウ、技術力、ブランド力を持つことが大きなメリットです。また、日本国内に資本を持つSIerと比較して、成果主義の評価制度を強く取り入れており、年功序列の面が強い国内資本のSIerとの大きな違いとなっています。

ユーザー系SIerへの転職で求められるスキル

捉え方によっては「きつい」と感じられることもあるユーザー系SIerですが、ここまで紹介した通り、多くのメリットがある職場です。ユーザー系SIerへの転職を考える人に向け、求められるスキルについて紹介していきます。

マネジメント能力

ユーザー系SIerの仕事は上流工程がメインであるため、マネジメント能力が求められます。マネジメント経験は転職活動時に有利となる可能性が大きいので、職務経歴書や面接でしっかりとアピールしてください。

なお、他のスタッフへのマネジメント経験が無くても、自分自身はマネジメントしているはずです。納期を守るため、どんなことを意識しているのかなどを、転職活動前に整理しておくことをおすすめします。

学習意欲

ここまで紹介してきた通り、ユーザー系SIerの仕事は上流工程がメインです。また、クライアントは基本的に親会社という環境なので、プロジェクトの内容は似た内容になりがちです。

そのため、開発全般に関する技術を身につけたいなら、仕事以外の時間に自ら学習する必要があります。自ら学習するタイプであれば、様々なプロジェクトにアサインされる可能性が高まり、スキルアップしていくことができます。

ユーザー系SIerを目指すときのポイント

転職希望者に向けて、ユーザー系SIerを目指すためのポイントについて解説します。主に準備段階での対処となりますので、早い段階から備えておきましょう。

親会社の仕事内容をしっかりと理解しておく

ユーザー系SIerの親会社の事業内容は、金融系、製造系、物流系など様々です。当然ですが、それぞれ求められるシステムは大きく異なります。

そのため、親会社の事業内容をある程度理解しておかないと、仕事をする上で支障が出ることがあります。また、親会社の事業内容に興味を持てるかどうかも転職者にとって重要な要素と言えるでしょう。

就職・転職の口コミサイトを確認する

他の項目でも記載しましたが、ユーザー系SIerとひとくくりに言っても内情は様々です。外販がメインとなっているケースや業務の忙しさ、残業の量、システム開発での担当範囲など転職の求人情報からでは読み取れない情報も多々存在します。

このような内情に触れるための方法の一つに、就職・転職に関する口コミサイトを参照することがあります。必ずしも全てを鵜呑みにできるものではありませんが、臨場感のある情報を得ることが可能です。

勤務形態や残業、福利厚生を確認する

待遇面の条件や、残業時間の実態なども、求人の情報と口コミなどを照らし合わせて確認しておきたいところです。親会社はコンプライアンスを重視していたとしても、業務都合が優先され多忙で残業時間が増えている場合もあります。あいまいな情報だけでなく、平均の残業時間や離職率などの数値で表される情報を注視するとよいでしょう。

また、転職での面接などの機会で改めて担当者に確認することも検討しておきましょう。

必要な知識・技術を身につけておく

転職者は基本的に即戦力として扱われるため、目指す企業で使われているプログラミング言語や技術についても調査し、身につけておくと良いでしょう。これまでのプロジェクトで使った経験があれば、職務経歴書などに明記しておきましょう。

また、関連する資格がある場合、取得しておくこともおすすめです。資格そのものもアピールにつながりますが、勉強への意欲も評価の対象となり得ます。

ユーザー系SIerに関するQ&A

最後に、ユーザー系SIerに関するQ&Aについて紹介します。

Q1. ユーザー系SIerに将来性はありますか?

ユーザー系SIer企業の将来性は、親会社の影響に大きく左右されます。

ユーザー系SIer企業の多くは大企業を親会社としています。そのため、親会社から安定した受注がある限り安定しています。一方で、親会社の業績が思わしくない場合は、その影響を全面的に受ける可能性があります。たとえそういったケースであっても、エンジニアは不足気味なので、ユーザー系SIerで上流工程の経験を積めば、市場価値の高いエンジニアとして広範な分野で活躍できるでしょう。

関連記事:SIerの将来性は?今後なくなると言われる理由と市場価値

Q2. ユーザー系SIerの弱みは何ですか?

システム開発工程における上流工程の業務が中心になり、プログラミングなどの実装工程は外注することが多くなります。そのためマネジメント業務が中心で、業務上でプログラミングなどのテクニカルなスキルを磨く機会は少なくなるでしょう。

Q3. ユーザー系SIerはどのような人が向いていますか?

大きな親会社を持ち、安定して受注案件があるユーザー系SIerには、安定志向を持った方が適しているといえます。仕事や職場に変化や刺激を求める方には、あまり適していないかも知れません。

また、企画やマネジメントといった上流工程を担当することが多いため、上流工程を得意とする・好むエンジニアはユーザー系SIerに向いています。

Q4. ユーザー系SIerの志望動機の書き方を教えてください。

ユーザー系SIerの場合、親会社の業界や業種に合った志望動機を書くのが基本です。たとえば製造業なら「日本の製造業のグローバルな発展に貢献したい」などが志望動機となるでしょう。また、ユーザー系は上流工程の経験者を採用する傾向が強いため、それ相応のスキルがあることをアピールすることも重要です。

関連記事:SIerの志望動機の書き方と例文|書く時のポイントと注意点も解説

まとめ

ユーザー系SIerとは、親会社の情報システム部門から独立したSIerで、多くは親会社からの安定した受注が見込めるメリットを持ちます。親会社と同等のコンプライアンスや待遇が用意されることも多く、他のSIer企業と比べてワークライフバランスを実現しやすい職場です。

一方、親会社から類似した案件を受注することが多く、仕事の内容は大きな変化がない傾向があります。また、企業の成り立ちから元請けとなることが多く、担当する工程は主に上流工程で、実際の開発に携わる機会は多くはありません。

仕事内容や担当工程に関する傾向は一般的にデメリットとはされませんが、変化や成長を求めるエンジニアや開発現場での活躍をしたいエンジニアにとっては「つらい」と感じることもあり得ます。

ユーザー系SIerへの転職を検討している場合には、自分がどのような仕事、職場で働きたいのかを改めて整理して、転職先の選択を行いましょう。

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