ユーザー系SIerはホワイト企業?メリット・デメリットを解説

最終更新日:2024年8月21日

ユーザー系SIerはホワイトなイメージが強いため、転職を考えたことがある人も多いでしょう。しかし、必ずしもホワイトとは限らないため、注意が必要です。本記事ではユーザー系SIerの特徴や独立系・メーカー系との違い、ホワイトな企業を選ぶポイントについて解説していきます。

また、ユーザー系には「外販中心」と「内販中心」の企業があるため、それぞれの違いやメリット・デメリットについても解説します。ユーザー系SIerへの転職を視野に入れている方は、本記事をぜひ参考にしてください。

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この記事のまとめ

  • ユーザー系SIerとは、企業の情報システム部門が子会社や関連会社として独立してできた企業
  • ユーザー系SIerは上流過程に関わる機会が多く、その業界の専門知識を身につけられる
  • ユーザー系SIerは、親会社に業務内容や労働環境を依存しているため、母体の企業研究も重要

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SIerとは

SIerとは、システムインテグレーターの略称で、クライアントの業務課題を解決するために、ITシステムの企画・設計・開発・運用・保守までを一貫して提供する企業のことです。

SIerは、「ユーザー系」「メーカー系」「独立系」に分類され、その需要は業界を問わず高まっています。技術革新が加速する中、SIerは企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を支える重要な役割を担っています。

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ユーザー系SIerとは?

ユーザー系SIerとは、商社や金融、通信などさまざまな業界の大手企業の傘下に位置するSIer企業のことです。大手企業の情報システム部門が独立し、SIerとして事業を展開するケースが多く見られます。

ユーザー系SIerの多くは、プロジェクト管理や要件定義といったシステム開発の上流工程をメインに担当します。システム開発のプログラミング・詳細設計は、下請けのSIerに外注することがほとんどです。

また、親会社やグループ企業からの安定した受注が見込めるため、経営基盤は比較的安定していることも特徴といえるでしょう。

ユーザー系SIerとメーカー系SIerの違い

ユーザー系SIerの比較


メーカー系SIerは、パソコンやネットワーク機器などハードウェアを提供しているメーカーを親会社に持つSIer企業を指します。大手家電メーカーの子会社などがメーカー系に該当するでしょう。

メーカー系SIerはユーザー系と違い、親会社向けではなく他社向けのシステム開発が中心となります。親会社のハードウェアで動くソフトウェアを開発し他社に提供することがメインであり、他社に常駐して働くケースも多くあります。

ユーザー系SIerと独立系SIerの違い

独立系SIerは、親会社を持たず一つの会社として独立しているSIer企業です。独立系SIerは他社に提供するシステムの開発をメインに行い、他社と直接契約して、要望に基づくシステムを一から開発します。

独立系SIerの場合ユーザー系と異なり、上流工程ではなくプログラミングやテストなど下流工程を担当することが多いです。また、顧客が指定する納期に合わせるため、開発スケジュールがタイトな傾向で、企業によっては繁忙期に残業が多く発生するケースもあります。

関連記事:外資系SIerの企業例9選!年収、メリットやデメリットも解説

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ユーザー系SIerの仕事内容

ユーザー系SIerの主な仕事内容は、親会社の業務システム構築です。各種ベンダーなどの下請け会社を管理し、システム構築のサポートを行います

親会社やグループ企業からの受注を「内販」と呼び、親会社・グループ企業にはITサポートを、下請け会社には業務知識の支援を行います。ユーザー系SIerは、単なる下請け管理ではなく、親会社・グループ企業と下請け会社の間に立ち、円滑なコミュニケーションを促進する重要な役割を担っています。

ちなみに、グループ企業ではない外部企業からの案件を受注することを「外販」と呼びます。また、グループ企業から完全に独立し、独立系SIerと同様の立ち位置で事業を展開するユーザー系SIerも存在します。以下では、「内販」と「外販」について詳しく解説します。

内販

ユーザー系SIerにとって、親会社やグループ会社向けの業務を「内販」と呼びます。ユーザー系SIerは、もともと親会社やグループ会社からの受注を主な業務としていたため、内販の割合が高くなる傾向があります。

内販中心のユーザー系SIerは、親会社・グループ会社の業務に特化したシステム開発や保守・運用を主な事業としています。特に、従業員数が数百人規模のユーザー系SIerや、親会社が金融業界や生活インフラ関連のサービスを提供している場合、内販への依存度が高くなります。

しかし、近年では外販にも力を入れるユーザー系SIerが増えており、内販のみに頼る企業は減少傾向です。これは、事業の多角化や収益源の多様化を図るための戦略的な動きといえるでしょう。

外販

ユーザー系SIerにおいて、グループ企業以外の外部企業から案件を受注することを「外販」と呼びます。内販と外販の両方を行うことにより、売上の拡大と経営リスクの分散が可能となります。

特に、商社を親会社として持つユーザー系SIerは、外販を主な業務として設立されるケースが多いです。また、親会社がコンサルティング業界に属する場合や、ベンダーの資本が入っているユーザー系SIerも、外販が多い傾向があります。

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ユーザー系SIerで働くメリット・デメリット

ユーザー系SIerには、親会社のシステム開発に関わる内販と、他社向けの開発に関わる外販があります。これら2つは企業の性質や仕事内容が大きく変わるので、同じユーザー系でも分けて考えることが大切です。

以下では、それぞれのメリット・デメリットを解説します。ユーザー系SIerへの転職を考えている方は企業検討の要素として参考にしてみてください。

メリット

ユーザー系SIerで働くメリットとして、親会社が大手企業であることが多く、福利厚生がしっかりしている場合が多いことが挙げられます。基本的に親会社からの案件を受けるため、自社内で働けることもメリットになりえるでしょう。

また、親会社のシステム開発に携わるため、自ずと親会社が展開する事業に関する業界知識が身につくこともメリットの一つです。しかし、内販と外販の比率によってメリットも変わるので、確認しておく必要があります。

以下では、内販が中心の場合と外販が中心の場合に分けてメリットを紹介します。

内販が中心の場合

内販中心のユーザー系SIerのメリットは「ホワイト企業が多い」「上流工程に携わることができる」などがよく挙げられます。内販の場合、親会社が顧客であるため「納期を短くして欲しい」など無理な要求がなく、残業が発生しにくい傾向であるのもメリットの一つです。

加えて、親会社から継続して仕事を受注できるため、会社の経営が安定しており安心して働くことができます。また、メーカー系SIerで多い客先常駐がほぼなく労働環境を重視する方にとっても働きやすいでしょう。

また、プログラミング作業自体は外部に依頼するため、ユーザー系SIerは上流工程の業務に集中できます。親会社の業界に特化した上流スキルを身につけたい方にも、ユーザー系SIerは働きやすい企業形態の一つといえます。

外販が中心の場合

外販中心のユーザー系SIerのメリットは「幅広い仕事に携われる」などがよく挙げられます。内販中心とは逆にさまざまな企業向けにシステムを開発するため、幅広いスキルを身につけることが可能です。

Web系などに転職する際にも幅広く身につけたスキルは役立つでしょう。また、内販中心の場合と同様ですが、親会社があるため会社の経営が安定していることもメリットです。

デメリット

ユーザー系SIerのデメリットとしては、親会社の影響を受けやすいということがあります。親会社の経営状況によっては、子会社として影響を受ける場合もあるでしょう。

また、基本的には案件の上流過程の業務がメインとなります。そのため、開発業務のプログラミング実務は外注することが多くなり、プログラミングなどのITスキルを磨く機会は少なくなりがちです。

以下では、内販が中心の場合と外販が中心の場合で分けて、デメリットを紹介します。

関連記事:SIerからの転職先|転職したい理由や転職する際のポイントを解説

内販が中心の場合

内販中心のユーザー系SIerのデメリットは「携われる仕事の幅が狭い」「出世が難しい傾向がある」などがよく挙げられます。親会社で扱うシステムを専門で開発することに加え、上流工程を担当することが多いため、身につくスキルが偏ってしまい転職で不利になってしまう可能性もあります。

「ユーザー系SIerへの転職はあくまで通過点」と考えている方は注意が必要です。

また、ユーザー系SIerの管理職の多くは親会社からの出向であることも多く、転職時に管理職入社をしていない限り課長クラス以上の出世が難しいというケースもあります。

外販が中心の場合

外販中心のユーザー系SIerのデメリットは「労働時間が増えやすい」などがよく挙げられます。顧客の要望に対応するために急に納期が短くなるなどのケースもあり、残業が発生しやすい傾向にあります。「ホワイトだから」という理由でユーザー系SIerを志望する方は、この点に関して注意が必要でしょう。

また、内販中心の場合と同様に、課長クラス以上の出世が難しい場合があることもデメリットといえます。

関連記事:SIerからWeb系企業への転職を成功させるには?難易度や成功例

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ホワイトなユーザー系SIerを選択するポイント

転職活動をしている方にとって、検討している企業がホワイト企業かどうかは非常に気になるところです。転職してから「思っていた感じと違った」とならないようにしっかり見極めることが重要です。

ユーザー系はホワイトなイメージが強いですが、必ずしもそうとは限らない場合もあります。
転職活動のためにホワイト企業の特徴を知っておきましょう。

関連記事:SIerの志望動機の書き方と例文|書く時のポイントと注意点も解説

親会社がどの業界に属しているか

特に内販中心のユーザー系SIerの場合、親会社の業界によって身につけられるスキルの種類が異なります。たとえば親会社が金融会社の場合は、業務の中で金融関連の知識が身につきます。

もし金融関連に興味がない場合、仕事をしても楽しくない状況に陥ってしまうかもしれません。そうならないために、自分のやりたいことやキャリアアップを考え、マッチしている業界を選択しましょう。

親会社の経営は安定しているか

ユーザー系SIerの場合、給料・ボーナスは親会社の状況に左右される場合があります。親会社の経営が傾いた場合、ボーナスなどが減少してしまう可能性もあるでしょう。

安心して仕事ができるようにするためにも、親会社の現状や将来性に関するリサーチは念入りに行うことをおすすめします

親会社以外から発注がどの程度あるか

ユーザー系SIerの中には外販を中心に行う企業もあります。内販を中心にシステムを開発している企業ではなく、外販が中心の企業である場合、クライアントからの要望や納期で、残業時間が比較的増えやすい傾向があります。

ホワイトな環境を目指す場合、志望先企業の内販・外販の割合がどうなっているかは確認しておきましょう

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業界別のユーザー系SIer企業一覧

ユーザー系SIer企業一覧


ユーザー系SIerは、さまざまな業界に事業を展開しています。各業界と属する企業について紹介します。

業界 代表的な企業
金融・保険 ・東京海上日動システムズ
・ニッセイ情報テクノロジー
・中央コンピュータシステム
通信・ライフライン ・NTTデータ
・NTTコミュニケーションズ
・ソニーネットワークコミュニケーションズ
物流・運輸 ・ヤマトシステム開発
・日立製作所
・JR東日本情報システム
商社 ・伊藤忠テクノソリューションズ
・インフォコム
・兼松エレクトロニクス
製造 ・日鉄ソリューションズ
・豊田自動織機ITソリューションズ
建設 ・コンピュータシステム研究所
・住友林業情報システム
・メルカードテクノ開発
その他 ・テプコシステムズ(エネルギー系)
・セブン&アイ・ネットメディア(小売系)
・野村総合研究所(コンサルティング系)

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ユーザー系SIerの年収ランキング一覧

ユーザー系SIerの年収ランキングは以下の通りです。

※下記企業の有価証券報告書または公開資料に基づき掲載
※企業ごとの有価証券報告書の提出時期のばらつきにより、日付に若干の誤差がありますが、最新のデータに基づいています(2024年5月13日現在)

順位 企業名 平均年収
(記載のないものは全て2023年3月31日)
1位 野村総合研究所 1,242万円
2位 電通国際情報サービス 1,133万円 (2023年12月31日)
3位 SRAホールディングス 1,125万円
4位 三菱総合研究所 1,103万円(2023年9月30日)
5位 伊藤忠テクノソリューションズ 1,028万円
6位 CAC Holdings 1,011万円(2023年12月31日)
7位 Kudan 899万円
8位 NTTデータ 867万円
9位 GMOペイメントゲートウェイ 863万円(2023年9月30日)
10位 セゾン情報システムズ 768万円

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ユーザー系SIerに将来性はある?

近年ではシステムのクラウド化が進み、クラウドサービスを利用すれば、一からシステムを構築せずとも業務ができるようになっています。しかし、今すぐにユーザー系SIerの需要がなくなるということはないです。

IT業界全体での人材不足は大きな問題となっており、経済産業省のデータによると、2030年には約40〜80万人の規模でIT人材不足になると懸念されています。そのため、SIerの需要もまだ続いていくでしょう。

しかし、ユーザー系SIerの業務は要件定義など上流工程が多いため、プログラミングなどの技術が身につきにくい傾向があります。今後のキャリアパスを考えて、自身でプログラミングやコンサルティングなどに関するスキルアップをしていく努力が必要です。

関連記事:SIerの将来性は?なくなると言われる理由と対策、市場価値を解説

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ユーザー系SIerに向いている人の特徴

ユーザー系SIerに向いている人には、いくつかの特徴があります。具体的な特徴としては、一つのことを極めたい人が挙げられます。

また、自社内で働きたい人もユーザー系SIerに向いているでしょう。さらに、親会社やグループ企業からの安定した受注が見込めるため、安定志向な人にも向いています。本章では、ユーザー系SIerに向いている人の特徴について解説します。

一つのことを極めたい人

一つのことを極めたい人にとって、ユーザー系SIerは最適な環境といえるでしょう。親会社の業種に特化するため、視野が狭くなるという懸念もありますが、システム構築という観点では、業種はそれほど重要ではありません。

特定の分野で深い知識やスキルを持つことは、ITエンジニアにとって大きな市場価値となるでしょう。

自社内で働きたい人

自社内で働きたい人も、ユーザー系SIerに向いています。ユーザー系SIerは、扱うシステムの多くが親会社の業務に関連しているため、自社内での開発作業が可能です。

ただし、ユーザー系SIerの中には、親会社やグループ会社への常駐を求められたり、親会社の業種以外の企業を顧客として持つケースもあることを忘れてはいけません。ユーザー系SIerを目指す前に、事業内容や勤務形態について十分なリサーチを行うことが大切です。

関連記事:SESの客先常駐|メリット・デメリットやSIerとの違い

安定志向な人

安定志向な人にとって、ユーザー系SIerの働き方は理想的だといえるでしょう。ユーザー系SIerは、親会社やグループ会社からの計画にもとづいてシステム開発を行うことが多いため、安定した業務環境が期待できます

しかし、この安定性は新技術の導入やチャレンジングなプロジェクトへの取り組みが少ないことを意味します。そのため、最新技術に挑戦し、新しいことにチャレンジしたい方にとっては、ユーザー系SIerの業務スタイルが物足りなく感じられる可能性があるでしょう。

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ユーザー系SIerに関するよくある質問

ユーザー系SIerに興味のある方の中には、ユーザー系SIerならではの特徴や強み、そして業務内容が気になる方が多いようです。SIerにはユーザー系、メーカー系、独立系と種類があるため、特徴や強み、業務の違いなどを比較して検討するのが良いでしょう。

下記ではユーザー系SIerに関するよくある質問に答えています。類似の疑問を持つ方は参考にしてみてください。

Q1. ユーザー系SIerの特徴には何がありますか?

ユーザー系SIerは、親会社で扱うシステムの開発業務をする内販と、自社システムの開発で培ったスキルを活かした他社向けの開発業務をする外販があるのが特徴です。同じユーザー系でもどちらの比率が大きいかによって企業の雰囲気や特色が変わります。

Q2. ユーザー系SIerの強みは何ですか?

ユーザー系SIerの強みとして、システム開発の上流工程から携わることが多いため、業界に対する知識やスキルを身につけられることが挙げられます。また外販の場合、他社からの案件となるため自社の業界だけでなくさまざまな業界に携わることが可能です。そのため多くの業界知識を得られます。

Q3. ユーザー系SIerの業務内容を教えてください。

ユーザー系SIerでは、親会社のシステム構築をするのが主な業務となります。親会社の業務改善につながるシステムのコンサルティングや要件定義をし、下請けの企業に下流工程を依頼します。親会社の業務に関する深い知識と、下請けに依頼するためのプログラミング知識などを持っておく必要があります。

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まとめ

ユーザー系SIerとは、一般企業の情報システム部門が独立した子会社で、親会社で扱うシステムの開発などを手がけています。ユーザー系SIer企業はシステム開発の上流過程に関わる機会が多く、その業界の専門知識や業界知識を身につけることができます。そのため、その分野に特化した人材としてステップアップしていくことができるでしょう。しかし、労働環境は親会社に依存している部分が多く、企業理解には親会社のリサーチもしっかり行うことが重要です。

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