大手SIerの売上高&平均年収ランキング一覧!特徴も解説

最終更新日:2024年8月21日

大手SIerは、大規模なシステム開発プロジェクトを統括する役割を持ち、確立された方法論に従って開発を行うのが特徴です。経営が安定し、福利厚生も充実している傾向にあるため、大手SIerへの転職を考える人も多いのではないでしょうか。
本記事では、大手SIerの仕事内容やメリット・デメリットを紹介しながら、転職を考える上で押さえておきたいポイントを解説します。

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この記事のまとめ

  • 大手SIerとは、大規模システムの開発を統括する企業
  • 大手SIerの売上は数兆円にものぼり、なかでも上位企業は世界で見ても高い売上を誇っている
  • 大手SIerで働くメリットやデメリットははっきりしているため、転職を検討する際はポイントをおさえる

大手SIerとは?

大手SIerとは


SIer企業の中でも、システム開発において数百〜数億円に達する大規模プロジェクトを手がけるのが大手SIerです。また、売上や従業員数などの企業規模の大きさ、業界内での知名度の高さも「大手」と呼ばれる理由の一つでしょう。大手SIerには、大手電機メーカー系列のIT企業や外資系IT企業などが含まれます。

SIerの市場規模と将来性

経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると2022年の情報サービス業の売上高は15兆9982億円、そのうちSIerが主に手掛ける「受注ソフトウェア」の売上高は、9兆4639億円と約6割を占めています。この数値から、非常に大きな市場であることがわかります。

デジタル化の加速によりSIer市場は今後も拡大していくことが予想されるでしょう。そしてSIerの市場規模の拡大にともない、大手SIerの将来性にもますます期待できるといえます。

SIerの種類別の特徴

SIerの種類と特徴


SIerには大きく分けて「ユーザー系」「メーカー系」「独立系」「外資系」「コンサル系」の5つの種類があります。大手SIerの実態をより深く知るためにも、SIerを種類別に見ていきましょう。

5つのSIerの種類の特徴や、代表的な大手SIer企業名を下記の一覧表でまとめました。

SIerの種類 事業の傾向 担当業務 待遇・労働環境 代表的な大手SIer企業
ユーザー系SIer ・大手親会社からの受注で事業は安定・主に自社内開発 ・大規模な案件の上流工程メイン・入社数年でマネジメント職を任される場合が多い ・親会社に準じた待遇や福利厚生・ホワイト企業が多い傾向 ・株式会社NTTデータ
・伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
・SCSK株式会社
・株式会社野村総合研究
メーカー系SIer ・大手メーカーから独立した子会社・事業安定 ・自社のハードウェアと組み合わせた情報システムの提案/構築/運用 ・親会社に準じた待遇や福利厚生
・年功序列体制が残っている場合がある
・客先常駐の可能性あり
・富士通株式会社
・日本電気株式会社(NEC)
・株式会社日立製作所
独立系SIer ・自由度高くプロジェクトに携われる
・独立した経営でやや不安定
・100%外販
・上流工程から下流工程まで幅広い
・裁量を持って多様な技術を追及できる
・実績を出せば出世しやすい
・ほかのSIerと比較すると待遇面で満足しにくい場合がある
・株式会社大塚商会
・TIS株式会社
・株式会社オービック
外資系SIer ・海外のIT企業が設立した日本法人
・事業安定
・100%外販
・海外基準のソフトウェアを日本企業に導入 ・多国籍人材によるグローバルな開発 ・年齢、性別によらない実力評価
・実績を出し続ければ高収入
・日本オラクル株式会社
・日本アイ・ビー・エム株式会社
・アクセンチュア株式会社
コンサル系SIer ・ITを活用した経営戦略やIT戦略の支援
・100%外販
・上流工程メイン
・顧客に寄り添いながら課題解決に向けた価値提供が必要
・競争力が激しい分、IT業界の中では高収入
・総合的なスキルの高さが求められる
・業務量が多い
・三菱総合研究所
・株式会社ベイカレント・コンサルティング
・アビームコンサルティング株式会社
ユーザー系SIer

上場企業のような大手企業が自社の情報システム部門を子会社として独立させた業態を指し、主に上流工程に携わります。基本的に客先常駐ではなく自社内開発ができるので、働き方の面でメリットに感じる人が多いでしょう。

また、親会社やグループ会社からの受注が多いため、経営は安定しやすい傾向です。収入や福利厚生に関しても親会社に準じたものになっており、比較的ホワイト企業が多いといわれています。

メーカー系SIer

ハードウェアの開発を中心に行う情報機器メーカーがシステム部門を子会社として独立させた業態です。インフラで稼働するアプリケーションの開発から運用までトータルで手掛けるため、大規模案件が多く、業務範囲も広くなります。

ユーザー系と同じく親会社のサポートがあるため、経営は安定しやすく、待遇面も充実しているでしょう。ただし、客先常駐の可能性があることは踏まえておく必要があります

独立系SIer

親会社を持たないため、特定の業界・分野に縛られることなく、自社の判断で予算やプロジェクトを決められる点が強みです。また、上流工程から下流工程まで幅広い業務の経験が積めます。ただし、案件受注のための営業力が経営に直結するので、業績は不安定な面があります。

待遇面では実績を評価されれば出世しやすいですが、ユーザー系SIer・メーカー系SIerのような親会社を持つ企業と比較した場合、待遇面で満足しにくいかもしれません。仕事内容を重視するのであれば、幅広い経験を積みたい人や自分のやりたい事が明確に決まっている人には向いているでしょう。

外資系SIer

グローバルな事業を手掛ける海外企業が日本法人を設立し、日本市場向けにシステム開発を行う業態です。自社ソリューションサービスを日本展開したり、逆に日本企業の海外進出を支援したりしています。

国際市場で通用する高いスキルや語学力が求められるので、ハードルが高いと感じる人は多いでしょう。また、年齢・性別によらない実力主義なので競争は激しいですが、成果を出し続けることができれば出世や高収入が望めます

関連記事:外資系SIerの企業例9選!年収、メリットやデメリットも解説

コンサル系SIer

システム開発・導入において、特に顧客の経営戦略や業務分析などの上流工程に焦点を当てた業態です。社内外問わず多くの人との能率的なコミュニケーションをとりながら、顧客の求めるゴールまで伴走します。

IT業界の中でもトップクラスの収入であるため、競争が激しく総合的に高いスキルを求められるでしょう。また、業務量が多いことや顧客の要望への対応に大変さを感じる人が多い傾向があります。

関連記事:SIerの将来性は?今後なくなると言われる理由と市場価値

大手SIer企業の売上高ランキング一覧

ここからは大手SIer企業の2023年3月31日時点における最新売上高ランキングを確認していきましょう。ここでは上位10企業を紹介します。
※上記企業の有価証券報告書または公開資料に基づき掲載

順位 企業名 売上高 Sierの種類
1 富士通株式会社 3兆7,138億円 メーカー系
2 株式会社NTTデータ 3兆4,902億円 ユーザー系
3 日本電気株式会社(NEC) 3兆3,313億円 メーカー系
4 株式会社日立製作所 2兆3,890億円 メーカー系
5 パナソニック コネクト株式会社 1兆1,257億円 ユーザー系
6 株式会社大塚商会 8,610億円 独立系
7 株式会社野村総合研究所 6,922億円 ユーザー系
8 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 5,709億円 ユーザー系
9 TIS株式会社 5,084億円 独立系
10 SCSK株式会社 4,459億円 ユーザー系

上位5社は売上高1兆円を超える非常に大規模な企業であることがわかります。また、上位にランクインしているのは、親会社やグループ会社を持つメーカー系、ユーザー系SIer企業がほとんどです。企業規模の大きさや事業の安定性を十分に裏付けるものだと分かるでしょう。

大手SIerの平均年収ランキング一覧

続いて、大手SIer企業の平均年収ランキングを見てみましょう。ここでは2023年3月31日時点における上位10企業を紹介します。
※上記企業の有価証券報告書または公開資料に基づき掲載

順位 企業名 売上高 Sierの種類
1 株式会社野村総合研究所 1,242万円 ユーザー系
2 株式会社電通国際情報サービス 1,128万円 ユーザー系
3 日本オラクル株式会社 1,127万円 外資系
4 株式会社ベイカレント・コンサルティング 1,118万円 コンサル系
5 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 1,029万円 ユーザー系
6 株式会社三菱総合研究所 1,025万円 コンサル系
7 株式会社オービック 1,006万円 独立系
8 株式会社日立製作所 916万円 メーカー系
9 富士通株式会社 879万円 メーカー系
10 株式会社NTTデータ 867万円 ユーザー系

「大手」と呼ばれるだけに10社全てが平均年収800万を超えており、下記の5社は売上高、平均年収ともにランクインする結果となりました。

  • ・富士通株式会社

    ・株式会社NTTデータ

    ・伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    ・株式会社野村総合研究所

    ・株式会社日立製作所

大手SIer企業は、業績が安定しているうえ、非常に高給であることが分かります。また、SIerの種類で見ると、売上高ランキング同様に平均年収ランキングにおいてもメーカー系、ユーザー系SIerが上位に多く見られます。

ランキング上位の大手SIerの特徴比較

大手SIerランキング上位10位までの企業を把握したところで、企業別の業績や今後の展望についてもう少し深掘りしていきましょう。大手企業の中でもランクインした9社の企業をピックアップして解説していきます。どのような企業がより自分に合う企業なのか、考えながら見ていきましょう。

富士通株式会社

SIerのなかでも最大級といわれ、2023年3月時点では国内ITサービスの売上高で日本1位を誇っています。メイン収益となっているサービスソリューション事業のほか、ハードウェアソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションを展開しています。

理化学研究所と共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」は2023年11月、計算速度の世界ランキングの2部門で8期連続第1位を獲得しており、世界でもトップレベルのスペックを有しています。富士通の知名度は国内・世界ともに高いといえるでしょう。

今後は、社会や企業の発展やニーズによりデジタル化が一層進んでいくことを想定し、2023年度から持続的成長と収益力向上のための新たな取り組みを始めています。また、SDGsやESGを踏まえたマテリアリティへの取り組みも強化していくようです。

株式会社NTTデータ

NTTデータは1988年の創業以来、高度な技術力によって社会のインフラを支えています。特に官公庁や金融業界に強く、2023年3月時点の売上高はランキング2位と国内トップに並びます。創業から30年を超えていることからも企業の安定性が分かるでしょう。社会貢献度が高くやりがいを感じられることや、強いブランド力が企業人気の高さにもつながっているといえます。

2023年3月期の売上高3兆4,902億円のうち、約5割の1兆8,804億円は海外収益です。2023年7月1日よりグローバル経営体制に移行したこともあり、今後はますます海外事業を拡大していくことが予想されます
また、災害大国といわれる日本において、ITを活用した防災対策も進めていく方針のようです。「防災×デジタル」は巨大市場になると予想されており、NTTデータの活躍にますます期待できるでしょう。

日本電気株式会社(NEC)

2019年で創業120周年を迎えたNECは、AI(人工知能)、5G、生体認証などの最先端ICTにより社会や産業のDXを推進しています。たとえば、社会インフラを担う鉄道などのシステム監視通報業務の自動化や顔認証を利用したセキュリティ強化などが挙げられます。

3兆円を超える売上高は、大手SIerの中でもNECを含めた上位3社のみです。平均年収は10位のNTTデータに続く843万円ですが、十分高収入と言えるでしょう。また、120年という長い歴史からは顧客や従業員を大切にしていることや、時代を生き抜いてきた企業の強さがうかがえます。

今後は、働き方をさらに進化させるべくビジネスインフラの整備や成長事業であるグローバル5Gの国内シェア拡大と海外市場への販売に力を入れていく予定です。

株式会社日立製作所

企業の業務システムや社会インフラのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、サステナブルな社会の実現に貢献しています。AI(人工知能)やIoTなどの先進のデジタル技術を活用し、金融業界、官公庁へのサービスを提供しています。

今後はAIトップクラス人材を含むデジタル人材の確保強化と、1.1兆円にのぼる研究開発費の投資によってデジタルイノベーションの加速を目指します。
これまでの知見や技術を最大限に駆使し、よりスピーディーに価値を提供するためのサービス「Lumada」を中心に海外を含めた複数拠点への展開に力を入れていくようです。

野村総合研究所(NRI)

コンサルティングサービスとITソリューションサービスを主軸に、インフラ・製造・金融・流通・官公庁など多数の分野においてサービスを展開しています。その中でも特に金融業に対するソリューションを強みとしています。

平均年収ランキングでは1,242万で第1位、売上高ランキングにおいても第7位の結果となりました。売上高と年収がどちらも業界トップクラスであることは人気の理由の一つでしょう。

今後はDX(デジタルトランスフォーメーション)領域やグローバルでの成長を目指していきます。海外展開においてNTTデータと比べると遅れをとっていますが、世界線での成長を目標に掲げていることから今後も期待できるでしょう。

株式会社オービック

株式会社オービックは独立系SIerの中で最も年収が高い結果となりました。また、売上高は2023年3月期は1,002億円でしたが、1995年から29期連続で営業最高益を更新続けていることから業績は好調といってよいでしょう。

ERP(基幹系システム)である統合業務ソフトウェア「OBIC7」を主軸とし、 会計業務を中心にさまざまな業務、業種に対応する最適なソリューションを提供しています。株式会社アイ・ティ・アールが発表した「ITR Market View:ERP市場2023」によると、「OBIC7」は国内ERP市場において2021年度ベンダー別売上金額別シェアNo.1を獲得しています。

独立系SIerの特徴には業績の不安定さが挙げられますが、株式会社オービックのような実績と知名度のある大手企業が多いのも事実です。

三菱総合研究所(MRI)

大きく分けてシンクタンク・コンサルティング、ITサービスの2つを展開しています。その領域は官公庁・教育・医療・福祉・環境など多岐に渡り、企業の「総合力」で付加価値の高いサービスを提供しています。

2023年9月期の売上高は1,221億円ですが、2期連続で過去最高の売上高を更新しています。また、幅広い分野に対応できるプロフェッショナル人材を確保していることは強みといえるでしょう。優秀な人材の確保・育成により1人あたりの生産性を上げ、収益率の高いビジネスモデルを確立しています。

今後も既存事業の拡充強化が予想されますが、AIやタグ情報などを活用した研究開発やコミュニケーションロボットサービスの動向にも期待してよいでしょう。

電通国際情報サービス(ISID)

電通グループ各社の強いバックボーンと、金融業界や製造業界の大手企業を顧客に持ち、顧客企業の成長を支える先進的なITソリューションを展開しています。具体的には、金融機関へのグローバル化を支援するコアバンキングシステムや最先端の金融工学を実装したソリューションなどを提供しています。また、製造業においては3次元設計の実装支援やAI(人工知能)を活用した業務改革の支援など、幅広い業務に貢献しているといえるでしょう。

売上高ランキング上位10社には入りませんでしたが、平均年収ランキングでは2位とSIerの中ではトップクラスの年収です。2022年12月期の売上高は1,291億円ですが、売上高・各段階利益ともに5期連続の増益・増収となっており業績は非常に好調といえるでしょう。

また、2030年の目指すべき姿として、多様な人材、多彩なテクノロジー、多種のソリューションを持つ売上高3,000億円規模の企業となることを掲げています。今後も企業の成長に期待できるでしょう。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

伊藤忠商事グループの主要子会社である伊藤忠テクノソリューションズは、社会インフラや金融、情報通信など幅広く事業を展開しています。ITシステムの全行程において、まるごとサポートできるトータルサポートプロバイダであり、工程ごとの最適解を提供できることが強みといえるでしょう。

2023年3月期の業績は、受注高、売上収益、売上総利益、受注残高が過去最高となりました。また、2015年度から2023年度まで順調に業績を伸ばし続けていることもあり、企業への注目度もますます高まっていくでしょう。

今後はDX推進支援や5G 、クラウドビジネスの拡大をより強化していきます。また、人材育成と経営基盤の強化を目標としグループ全体の成長を図る方針です。

大手SIerの仕事内容

大手SIerの仕事内容


大手SIerと中小のSIerを比較すると、企業規模だけではなく仕事内容でも違いが見られます。大手SIerは大規模システムを受注し、プロジェクト管理を主に行う一方、中小SIerは開発・テストといった特定の局面に携わる傾向にあります。

以下では、具体的な大手SIerの仕事内容を解説します。仕事内容を知ることで、具体的な仕事内容がイメージできたり、自分がやりたい仕事かどうかを判断したりしやすくなるでしょう。

担当する案件

大手SIerは各分野における大企業や官公庁といった、さまざまな業界の顧客を抱えています。開発するシステムも多岐にわたり、可用性や信頼性に厳しい要件を持つ統合基幹システムや金融システムといった大規模なプロジェクトが含まれます

顧客企業の要望に従ってカスタマイズ開発を行ったあとで、保守・運用の作業を長期間委託される場合もあるでしょう。また、特定の技術や業界ごとにパッケージ化したソリューションを用意し、効率的な開発を行えるよう、似た要件を持つ企業へ横展開していく案件も見られます。

開発プロセスにおいて担当する局面

大規模システムにおける開発プロセスは、一般的に業務分析・要件定義・設計・開発・テスト・運用の順で実施されます。大手SIerの場合、顧客企業と直接契約し、業務分析や要件定義といった上流工程を担当する場面が多いでしょう。元請けとなる大手SIerはプロジェクト全体を統括する一方、開発やテストといった詳細な作業は中小SIerへ再委託される傾向にあります

求められるスキル

顧客企業と直接やり取りしたり、大規模なチームで作業を遂行したりするため、大手SIerのSE(システムエンジニア)は高いコミュニケーション能力が必須といえるでしょう。さらに、開発チームを統括するプロジェクト管理スキルがあると、より高い評価を受けられます。また、技術的なキャリアパスを志向する場合、システム全体を設計するスキルを磨き、アーキテクトとして活躍する方法もあります。

大手SIerで働くメリットとデメリット

大手SIerは、大規模プロジェクトに携わりたい人に適した環境です。しかし、大手ならではの難しさもあるため、人によっては働きにくさを感じる場合もあるでしょう。以下では、転職を考慮する際に理解しておくべき、大手SIerで働くメリットとデメリットを解説します。

大手SIerで働くメリット

大手SIerは、知名度が高く企業規模も大きい企業ばかりです。企業について詳しくなくとも「大手」と聞くだけで良いイメージを持つ人も多いでしょう。では、大手SIerで働く場合にはどんなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。

メリット1:安定した経営と、優れた福利厚生

大手SIerは、長期契約の大規模プロジェクトを受託し、プロジェクトに付随する運用・保守作業もあわせて受託するので、安定した売り上げが見込めます。また、世界的に展開するグローバルなプロジェクトへ参加できるのも大手SIerならではのメリットといえます。

待遇面においては比較的収入が高く福利厚生も充実していて、いわゆる「ホワイト企業」も見受けられます

メリット2:社会のインフラを支えられるやりがい

多くのユーザーが利用し、社会のさまざまな場面に影響を与える情報インフラを担当することに、やりがいを感じられる人も多いです。社会インフラの整備は、国や地域の発展を左右する重要な役割でもあります。その分、提供するソリューションやプロジェクト管理の手法には高い要求が課されますが、その要求に応える中で自身のスキルを向上できるのも利点です。

メリット3:汎用的なスキルが身につく

大手、中小にかかわらず、SIerは、さまざまな業界の設計、開発、運用・保守、コンサルティングなどの業務に携わります。そのため、業務経験を通してITスキルだけではなく、コミュニケーション能力やマネジメント能力のスキルアップも図れるでしょう。

また、優秀な人材が集まる大手SIerへ転職することで、大手企業の確かな技術とノウハウに触れながら、より専門的な知識を習得できます。大手企業での実績があれば、将来のキャリアアップも期待できるでしょう。

メリット4:幅広いプロジェクトに携われる

大手SIerであれば大規模なプロジェクトを担当する機会が多く、業界、分野、工程も多岐に渡ることが予想されます。専門的なことだけではなく幅広く経験を積みたい人にとっては、大手企業で働くことにやりがいを感じられるでしょう。

大手SIerで働くデメリット

大手企業でも、大手ならではのデメリットがあります。長年培ってきた企業のやり方や経営方針など、柔軟に変化させられない部分もあり、時には業界の中で遅れをとることも想定されます。まずは、一般的にいわれるデメリットが自分にとってのデメリットにもなるかどうかを確認してみるとよいでしょう。

デメリット1:新しい技術へ挑戦するのは難しい場合がある

SIerでは、会社の指示に従って特定のプロジェクトへ参加することになりますが、必ずしも希望の案件に配属されるとは限りません。たとえば、ある技術を扱うシステム開発に携わりたいと思っても、該当する案件で人員が募集されなければ、参加は難しいでしょう。既に確立された技術を横展開したり、古いシステムを保守したりする案件も多く見られます。

SIerは顧客の希望に従って設計・開発を行うので、個人の意見で新しい技術を採用するのが難しいケースもあります。新しい技術へ常に挑戦したいという意欲を持ったエンジニアにとっては物足りなく感じるかもしれません。

デメリット2:クラウドの普及により仕事が減っている

SIerの将来性について不安視される理由の1つに、クラウドサービスの普及が挙げられます。あらゆるシステムがクラウド上に容易に構築できるようになったため、SIer業務が縮小してきているといわれています。

中小のSIerは大手よりもクラウドの影響を受ける可能性が高いです。大手SIerに関しては、資金繰りしやすい面や複数の事業展開もしやすい点から、多少ダメージがあっても経営自体に大きな影響はない可能性があるでしょう。

デメリット3:賃金低下・人材不足の恐れがある

大手SIerが大きな案件を受注し、中小の下請け企業に仕事を丸投げするような多重下請け構造が問題視されています。さらに、人材不足などの理由から下請けから孫請けへと仕事を委託するケースも多いです。一次下請け、二次下請け、三次下請けと、下になればなるほど受注金額と賃金が低下していく構造です。

SIer業界の構造を理解せずに転職先を決めてしまうと、満足できる待遇や収入を得られない可能性があります。大手SIerであれば問題ありませんが、転職先候補の企業が何次請けの仕事を受注しているのかを確認しておくと安心でしょう。

関連記事:SIerから転職したい理由とは?おすすめのタイミングと成功の条件

大手SIerへの転職でアピールできるスキル

大手SIerへの転職でアピールできるスキル


比較的収入が高く福利厚生も手厚い大手SIerは、転職を希望する人が多く優秀な人が集まってくるため、応募する際は入念に準備する必要があります。転職先としてSIerに応募するときには、以下のようなスキルをアピールできると効果的でしょう。

ITスキル

これまでシステム開発に携わっていた経験があれば、そこで発揮したITスキルをアピールできます。大手SIerは上流工程を担当するケースが多いため、要件定義や設計に関する経験は評価されやすいでしょう。ほかには、大手ベンダーの製品に関する資格を取得するのもITスキルをアピールする方法の一つです。

業務知識

特定の業界や業務に精通している人材は重宝されます。たとえば、製造業のIT部門に在籍していた人は、SIerへ転職後、製造業向けソリューションを担当するキャリアパスが考えられます。前職で得られた業務知識やベストプラクティスを、ほかの企業へ横展開するのに活用できるからです。

ソフトスキル

大手SIerはプロジェクトを統括する役割を担うケースが多いので、ITスキルだけではなく、プロジェクト管理などのスキルも必要です。顧客企業と直接やり取りしたり、大規模チームの中で利害関係者と協業したりする際に、コミュニケーションや交渉といったスキルが求められます

大手SIerで描けるキャリアパス

大手SIerについて具体的な企業名を挙げながら特徴や業務内容などを説明してきました。より自分に合ったSIer企業への転職を成功させるために、転職後のキャリアパスについてもイメージできるようになると良いでしょう。

せっかくSIerへ転職できても、自分の望むキャリアパスを描けなければまた転職を繰り返すことになりかねません。転職後の不一致を防ぐためにも、SIerのキャリアパスについての理解を深めていきましょう。

エンジニアのキャリアパス

IT人材の需要が高まる中でエンジニアの職種やキャリアパスも多様化してきています。エンジニアとして働いていて、自分にはどのようなキャリアパスがあるのか考えたことはあるでしょうか。技術職であるエンジニアは、高度な技術とITスキルが求められます。今後も技術力や専門的な知識を深めていきたいのであれば、具体的に次の3つのキャリパスが期待できるでしょう。
 

  • ・PM

    ・ITコンサルタント

    ・フルスタックエンジニア

PM(プロジェクトマネージャー)

プロジェクトの品質・納期などを適切に管理し、プロジェクト全体を円滑に進める重要な役割を担うのがPMです。システム開発における一連の業務に精通している必要があるため、設計や開発業務を経たあとにPL(プロジェクトリーダー)、そしてPMとなるのが一般的です。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは、クライアントの経営課題や経営戦略、経営戦略などをヒアリングし、その解決・支援のためにIT技術を用いてサポートします。エンジニアは技術職ですが、ITコンサルタントは営業職に近い職種であり、総合力が求められる問題解決のプロといわれています。とはいえ、IT技術に関する幅広い知識も欠かせません。また、社内外問わずさまざまな人と関わるため、高いコミュニケーション能力も必須でしょう。

フルスタックエンジニア

1人で複数の開発工程を担うことができるフルスタックエンジニアは、IT業界の人材不足によって注目が高まってきています。ただし、複数の分野においてハイレベルな技術と知識を持っていなければならないでしょう。具体的には、上流工程から下流工程まで一貫して担当するケースや、アプリケーション開発とインフラ開発の両方ができるケースなどがあり、組み合わせはさまざまです。

営業のキャリアパス

エンジニアとしての将来に不安がある場合は、営業へのキャリアパスも考えられます。営業は向き不向きが分かれる職種ではありますが、エンジニアでの経験があれば、エンジニアサイドの視点や業界知識を営業に活かせるでしょう。また、営業職を経験したあとは管理職へのキャリアパスも考えられます。

SIerに関するよくある質問

最後にSIerを目指す方が抱きやすい質問に回答していきます。

Q1.大手SIerとは何なのか、定義を教えてください

SIerに大手と中小を区別する明確な基準はありませんが、一般的に大手SIerは従業員が数千人以上または売上高が数百億以上など規模の大きなSIer企業を指します。また、ITシステム開発を一括で請け負える、一次受けとして国や官公庁から仕事を受けられる企業も大手SIerといえるでしょう。

Q2.大手SIerの強みは何でしょうか?

大手SIerの主な強みは以下の2点です。

・安定した経営と優れた福利厚生
・社会のインフラを支えている

大きな売上が見込める大型プロジェクトの受注や付随する運用・保守業務があるため、安定した経営のもと優れた福利厚生の企業が多いです。また、大手SIerは社会のインフラを支える大規模プロジェクトに参加できるため、やりがいも大きく高い要求にこたえることで自身の成長にも繋がるでしょう。

Q3.大手SIerに転職するにはどうしたらよいですか?

大手SIerへの転職を目指すには、企業研究と自己分析が欠かせません。大手SIerの事業内容や求められる人物像についてよく理解し、さらに自分のアピールポイントを明確にしておきましょう。大手SIerの情報収集の方法として、転職エージェントを利用してみるのも1つの手です。情報収集と分析を入念に行い、企業が求める人材に合致した経験やスキルを得るよう対策を練ると良いでしょう。

まとめ

SIer企業の中でも「大手」と言われる有名企業をいくつか紹介してきました。SIer大手企業とはどのような企業なのか、どういったメリット・デメリットがあるのかなどを踏まえた上で、自分に合う企業やキャリアプランをイメージできたでしょうか。

大手企業は、比較的待遇が良いことや経営が安定していて将来性もあることから、求人倍率も高くなる傾向があります。そのため、大手SIerへの転職を検討する場合は、しっかりと自己分析をし、自分をアピールするための魅力的なポートフォリオを作成しましょう。

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