C++とは
C++の概要やメリット、デメリットを解説します。
概要
C++はC言語から派生したオブジェクト指向のプログラミング言語です。
C言語からプログラミングの文法、OSやハードウェアへアクセス可能などの特徴を受け継いでいます。これらの特徴に加えてオブジェクト指向など、新たなプログラミングパラダイムを取り入れており、非常に汎用性の高いプログラミング言語です。
オブジェクト指向型プログラミング言語として、代表的な言語にJavaやC#が存在していますが、JavaやC#はC言語と互換性がありません。開発の目的によってC言語と互換性をもたせたシステムを構築する場合は、C++が利用されます。また、C言語と同様にC++にはWindowsやLinuxなどのOSそのものを制御できるという特徴があるため、開発言語として選択されるケースもあります。プログラムの実行速度が高速な点も人気である理由の一つです。
C++にはいくつかのパッケージが存在しており、代表的なパッケージとして「VisualC++」や「BorlandC++」が存在しています。VisualC++はマイクロソフト社の統合開発環境であるVisual Studioのパッケージであるため、Visual Studioで開発を行う場合にはVisualC++も合わせて習得すると良いでしょう。BorlandC++はボーランド社が開発した統合開発環境であるC++Builderのパッケージで、C++を利用したスマホアプリケーションやゲームを開発する際に使用されます。
関連記事:C++とはどんなプログラミング言語なのか|転職希望者向けに解説
開発事例
¥組み込み開発の現場では、プログラミング言語の信頼性と稼働にリソースが少なくて済むため多く利用されてきました。そのため、組み込み系システムの開発現場ではC言語と互換性があるC++が採用されるケースが多々あります。
近年需要が高まっている組み込み系プログラミングの領域は以下の3領域です。
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・IoT向けのプログラム開発・自動運転の実現に向けた車載器向けのプログラム開発
・ロボット制御プログラムの開発
組み込み系以外では、ネイティブアプリ開発ができる言語としてモバイルアプリの開発現場でも普及しています。
習得するメリット
C++を習得する最大のメリットとして、活躍できるフィールドが広がる点です。組み込み系システム開発の現場だけでなく、モバイルアプリケーションやWebアプリケーションの開発現場など、幅広い現場でC++エンジニアに需要があります。活躍の場を広く持ちたい人にとっては最適な開発言語といえるでしょう。
また、C++はオブジェクト指向のプログラミング言語であるため、一度習得しておけばJavaやC#など、他のオブジェクト指向言語を理解しやすくなることも魅力の一つです。
習得する際のデメリット
C++で活躍の場を広げるためには、周辺知識も必要な点です。
Windowsアプリケーションを作るためにはVisualC++が必要になり、スマートフォンアプリやゲームを開発するにはBorlandC++が必要になります。これらを使いこなすにはC++のスキルや知識だけでは不十分で、コンパイラごとに必要な知識を習得しなければなりません。
さらに、C++には他の言語では用意されているようなライブラリも少ないため、一から自分で記述しなければならない場面が多く、必然的にコード量も多くなります。
汎用性が高く、幅広い開発に用いることができる言語である分、それらを実現させるにはさまざまな知識が必要になるため、初心者には学習ハードルの高い言語であるといえます。
C++の習得が難しい理由
C++は他の言語と比較して習得が難しいといわれる言語です。理由は2点あります。一点目は登場時期が古く難易度が高いC言語がベースとなっていることです。C言語は機械語に近いアセンブラを意識して作られた言語です。ハードウェアやOSへのアクセスを実現するため、メモリ管理をプログラマが実装します。このメモリ管理をプログラマが意識しなければならない点がC言語の難しい理由となっており、C++もこの点を引き継いでしまっています。
C言語やC++ではプログラマはメモリの確保、解放の記述が必要です。その記述が誤っている場合には、実行時に致命的な障害を引き起こします。さらには他の言語では直接的に操作する頻度が下がっているポインタという概念も利用しており、こちらもメモリアクセスを意識する必要性があります。JavaやPythonなどの言語では、プログラマはメモリ管理をプログラミング言語や実行環境に任せることが可能です。
2点目はC言語に機能を追加しているため、複雑性が増している点です。さらにC++では、C言語にないオブジェクト指向というプログラミングパラダイム(考え方)を取り入れています。オブジェクト指向の導入によりプログラミングの自由度は高まっていますが、プログラマが制御しなくてはならない範囲はさらに増加しました。
さらに、テンプレートなどの新規仕様も後続のバージョンで取り入れ、結果としてC言語よりも膨大な言語仕様を形成しています。これも難易度を高めてしまっている要因の一つです。
C++の勉強方法については、「C++の勉強方法は?おすすめの本やWebサイト、基本文法なども紹介」の記事でも詳しく解説しています。
資格の取得を検討している方は、「C++の資格とは?プログラミング能力を強化するための鍵」も参考にしてみてください。
C++エンジニアの需要状況
汎用性の高いプログラミング言語であるC++は市場価値も高いため、C++を扱えるエンジニアの需要は高いといえます。2023年7月時点でレバテックキャリアにて公開されている言語「C++」の募集中の求人情報の件数は1,726件でした。2022年時点では800件ほどだったため、募集件数が増えていることが分かります。
以下、本項ではレバテックで公開している求人情報をもとに需要状況について、さらに詳しく解説します。
C++エンジニアの年収相場
C++エンジニアの年収相場は、職責や個人のポテンシャルによって金額が大きく変わります。求人データを参照してみると、最低年収で400万円程、プロジェクトマネージャークラスの年収となると700万円台が一般的です。年収相場は個人のポテンシャルもさることながら、業界によっても左右されます。
2023年7月時点でレバテックキャリアに掲載されている言語「C++」の求人・転職情報より年収の平均値を算出してみました。30件を抽出し、年収の最小値と最高値の中間の平均からC++エンジニアの平均的な年収を算出すると544万円でした。
開発するアプリの種別によっても、必要とされるスキルの違いから年収に差異が見られました。例えば、モバイルアプリケーション開発よりも、サーバーシステム開発や組み込み系システム開発の方が高い年収傾向にあります。これはアプリケーション知識の習得に加え、基盤や回路、OSなどのバックボーンを含めたハードウェア知識の習得が必要となり、学習難易度がより高いことが影響しています。
需要が高い業界
C++エンジニアは多岐にわたる案件からニーズがあります。
C言語と互換性があることから、組み込み系システム開発やサーバーシステム開発などの業務システム関連の業界からの需要が存在します。また、ゲームエンジンに開発言語として採用されていることからゲーム開発現場からの需要も根強いです。さらには、VR、AR等の先端技術での開発でもC++の自由度の高い言語特性から需要が存在しています。
求められるスキルや経験
汎用性が高いC++は、開発環境や内容によって求められる知識が変わります。
組み込み系システム開発ならC言語や、Linux/WindowsなどのOS、ハードウェアの知識や経験が求められることが一般的です。
モバイルアプリケーション開発であれば、Android/iOSなどのモバイルOSの知識や経験、バックグラウンド処理のデータベース知識などが求められます。
ゲーム開発の場合には、ゲームエンジンの使い方などもC++言語のスキルとあわせて必要になります。
関連記事:C++エンジニアの転職は難しい?将来性や需要、年収などを解説
C++の将来性とは
2018年時点で、自動車メーカー業界などの組み込み産業からC++エンジニアの募集があるため、メーカー側も今後数年はC++を開発に利用すると考えられます。IoTなどの取り組みも今後盛んに行われることを想定すると、数年先の将来性としては大きな懸念は少ないと言えるでしょう。
一方、C++は仕様が複雑で習得難易度が高いといわれており、C++を習得するエンジニアが減るのではないかといった意見もあります。また、モバイルアプリ開発など用途が重複するSwiftやC#に徐々にシェアが移ってきているという意見もあり、継続的に見守る必要がありそうです。
2022年にはC++の人気が上昇
ソフトウェア品質のテスト会社「TIOBE Software」によると、2022年に最も人気度が上昇したプログラミング言語はC++です。人気な理由は3点挙げられます。
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・2020年12月にリリースされたC++20で様々な機能が追加された・オブジェクト指向言語として高水準でありながら、パフォーマンスも高い
・Googleの主要サービス開発に使用されている
それぞれについて詳しくみていきましょう。
2020年12月にリリースされたC++20で様々な機能が追加された
2020年12月にリリースされた「C++20」は、国際標準機構によって規格化されている最新版です。主な更新内容は、モジュール機能の追加、ビットフィールドにデフォルトの値を設定可能、型名が明らかな場合のtypename省略などになります。
これらの変更でC++の利便性が上がり、人気に繋がったと推測されています。
オブジェクト指向言語として高水準でありながら、パフォーマンスも高い
C++はオブジェクト指向でありながら、非常に高いパフォーマンスを誇っています。オブジェクト指向プログラミングのPythonなどは、可読性は高いもののパフォーマンスは低いです。一方C++は高いパフォーマンスを誇っているため、数百万行に及ぶ大規模なコードも効率的に実行できます。
そのため、組み込みシステムなどコードが大規模になる場合はC++が選ばれています。
Googleの主要サービス開発に使用されている
C++は高い普及率を誇るGoogle Chrome、Android オープンソースシステムなどの開発に使用されています。これらのサービスは特に自動車や金融業界、ゲーム業界など高いパフォーマンスを要求される業界で広く使用され、高い人気を誇っています。
これらの背景もC++人気上昇の要因と推測されています。
C++以外の将来性が期待できる言語
C++エンジニアでも、C++以外の言語にもアンテナを張っておく必要があります。その他の言語についても知らなければ、C++との比較も行えないためです。
また、IT技術の流行を見極め、将来まで言語が活躍できるものであるかを注視する必要もあるでしょう。C++との親和性も考慮して、注目すべきプログラミング言語について紹介します。
Python
Pythonは汎用性の高いスクリプト言語です。特にAIやデータサイエンスなどの領域で、統計情報や数学的ライブラリが充実しているため活用が進んでいます。技術者の人気も高まっており、その結果として技術情報の検索もしやすい点も魅力です。
求人・転職情報も多く、今後も需要が見込まれる言語です。
JavaScript
JavaScriptはWebのクライアントサイドで必須言語としての地位を築いており、非常に需要の高いスクリプト系プログラミング言語です。言語のバージョンアップにより機能の拡充が進められており、フレームワークも充実していることから、今後もWebサイトの開発に無くてはならない技術として将来性が見込めます。
近年では、サーバーサイド言語としても利用され始めており、今後も高い需要が見込めます。
Java
JavaScriptはWebのクライアントサイドで必須言語としての地位を築いており、非常に需要の高いスクリプト系プログラミング言語です。言語のバージョンアップにより機能の拡充が進められており、フレームワークも充実していることから、今後もWebサイトの開発に無くてはならない技術として将来性が見込めます。
近年では、サーバーサイド言語としても利用され始めており、今後も高い需要が見込めます。
JavaScriptの求人・転職情報Javaは、現在の開発元であるOracleによると、世界中に数百万人の開発者を持ち、510億以上の実行環境が存在する普及度合いの高いプログラミング言語です。マルチプラットフォームに対応しており、堅牢性とモジュール分割のしやすさから大規模開発で多く採用されています。
現状の普及度合いが高いため、以下の点でベンダーからの人気があり、将来性も高いといえます。
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・技術者を集めやすい・情報が得やすい
・既存システムに利用されている
C++同様にオブジェクト指向言語であり、C言語を参考にしている部分も多いためC++エンジニアが親しみやすい点も注目ポイントです。
C++の将来性に関するよくある質問
Q1. C++の欠点は何ですか?
C++の欠点は言語仕様が複雑なため、学習コストが非常に高い点です。C++は高いパフォーマンスと多くの機能を実装できる柔軟性を備えていますが、文法が非常に複雑になっています。そのため、学習コストが高く、特に初心者の方が習得するのは努力が必要です。
また、完全に使いこなすにはオブジェクト指向の概念を理解する必要があります。
Q2. C++はなぜ人気が出たのですか?
C++は以前から人気のプログラミング言語ですが、2020年に最も人気が上昇したプログラミング言語です。理由は以下の3点と言われています。
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・2020年12月にリリースされたC++20で様々な機能が追加された・オブジェクト指向言語として高水準でありながら、パフォーマンスも高い
・Googleの主要サービス開発に使用されている
まとめ
本記事では、C++の特徴からC++エンジニアの需要状況、将来性について解説しました。
C++はオブジェクト指向のプログラミング言語において、唯一C言語と互換性があるプログラミング言語です。それゆえに、組み込み系システム開発ではなくてはならない存在となっています。「モノとインターネットをつなげる」というIoT化を目指した取り組みが近年盛んであり、組み込み系システム開発に追い風が吹いていることも組み込み系エンジニアにとって有利なポイントです。
自動運転システム開発を行っている自動車分野や着用型ウェアラブルデバイスの開発を行っている医療分野、ドローン配送サービスを開発している物流分野などその動向は多岐に渡ります。IoT化が盛り上がる近年において、C++は今後も需要の続く将来性のあるプログラミング言語といえるでしょう。
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