- 組み込みエンジニアにおすすめの資格6選と参考書籍
- 組み込みエンジニアについて
- 組み込みエンジニアが資格を取得するメリット
- 組み込みエンジニアに求められるスキル・知識
- スキルマップとなる組込みスキル標準(ETSS)について
- 未経験からの組み込みエンジニア転職で知っておきたいこと
- 組み込みエンジニアに関するよくある質問
- まとめ
組み込みエンジニアにおすすめの資格6選と参考書籍
組み込みエンジニアになるために必須の資格はありません。とはいえ、資格を取得すれば組み込みエンジニアの仕事に活かすことができ、仕事の質も高められるメリットがあります。
おすすめの資格は、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験、ETEC(組込み技術者試験制度)、OCRES(OMG認定組込み技術者資格試験プログラム)、JSTQB認定テスト技術者資格、.LPIC・LinuCなどです。ここでは、組み込みエンジニアにおすすめの6つの資格と参考書籍を紹介します。
1.基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
基本情報技術者試験および応用情報技術者試験は、IPAが運営する国家資格試験です。サーバーやネットワーク、プログラミング手法、ハードウェアなどすべてのエンジニアに共通して求められるIT知識が幅広く出題されます。
どちらの資格もエンジニアの登竜門的な位置付けであり、多くのIT企業では就職(新卒)から3年以内程度で取得することが推奨されています。合格率は基本情報技術者試験は40%前後である一方、応用情報技術者試験は20%前後と、比較的難易度の高い資格です。
基本情報/応用情報技術者試験に関連する書籍(本)
『よくわかるマスター 令和5-6年度版 基本情報技術者試験 対策テキスト(富士通ラーニングメディア)』
最新シラバスVer.8.0に対応しており、1冊で「科目A試験」と「科目B試験」に必要な知識を習得できる最適な書籍です。シラバスに沿った目次構成で体系的に学習しやすく、詳細な用語解説も収録されているので理解度を深めやすい内容になっています。
各章末に配置された過去問題や予想問題を活用すれば、学習の進捗確認ができます。不正解の選択肢についても丁寧に解説されており、解答の根拠が明確化されています。
『ニュースペックテキスト 応用情報技術者 2023年度(TAC出版)』
オールカラー印刷と図解により考え方のプロセスを視覚的に把握できます。スタートアップ講座と情報満載の目次によって、初学者でも効率的に学習を進められる構成になっています。
午前・午後試験対策では解説方法がそれぞれ分けられており、インプットしやすいように工夫されています。側注は色別で重要ポイントが確認しやすく、各章末には過去問題と最新の試験問題が掲載されているため、アウトプット力も磨ける1冊です。
2.エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、IPAが実施する国家試験で、試験問題では非常に高度な知識・技能が問われます。対象者は、組込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行う人材とされているため、中級から上級者向け(実務経験10年以上が目安)の試験です。組込みシステム開発における各工程を主導的に遂行し、開発環境の構築・改善ができることが期待されます。合格率は15%〜20%程度です。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験に関連する書籍(本)
『情報処理教科書 エンベデッドシステムスペシャリスト 2023年版』(牧隆 史、松原 敬二、広田 航二、満川 一彦、翔泳社)
このテキストは応用情報技術者試験合格者、またはそれと同等の知識のある方を対象とした午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱの対策本です。午前II試験の必要知識を中心に分野別に解説しており、午前Ⅱに新しく追加された新分野にも対応しています。さらに、午前Ⅱ対策として再出題される可能性が高い過去問が100問掲載されています。
午後Ⅰ対策では、解答テクニックの丁寧な解説と、令和4年度までの過去問を書籍とWebダウンロードで入手可能です。午後Ⅱ対策には、ITストラテジストとシステムアーキテクトの論述式過去問を2回分取り上げ、論文作成プロセスと解答例を示しています。
3.ETEC(組込み技術者試験制度)
ETECは、一般社団法人組込みシステム技術協会が実施する試験です。初級から中級技術者を対象としているため、駆け出しの組込みエンジニアにもおすすめの試験です。試験は合否判定ではなく、客観的なレベル判定が行われます。
試験は、組込みソフトウェア技術者試験クラス2(エントリレベル)と組込みソフトウェア技術者試験クラス1(ミドルレベル)の2つあり、それぞれグレードA~Cで評価されます。中級技術者向けのクラス1試験を受験するためには、クラス2試験で500以上のスコアを取得しなければいけません。
クラス2試験の対象者は、組み込みソフトウェア教育を受けている学生や社内教育を受けたプログラマなどです。CPUやメモリなどの技術要素やソフトウェア設計、テスト技法、通信などに関する知識が問われます。
ETECに関連する書籍(本)
『組込みソフトウェア技術者試験クラス2対策ガイド』(組込みシステム技術協会、CQ出版)』
組込みソフトウェア技術者試験クラス2(エントリレベル)に対応したテキストのみの対策本で、図面を多用した見やすい構成になっています。組込みエンジニアの基礎知識を効率的に学ぶための最適な書籍です。現場の組込み技術者が最低限理解すべき「組込み最重要キーワード」をピックアップし、分類・整理しています。
4.OCRES(OMG認定技術者資格試験)
OCRESは、組み込みシステムの開発者やアーキテクト、プログラマを対象とした世界130ヶ国以上で実施されているグローバルな資格試験です。試験はモデリングの世界基準である「BPM」、「SysML」、「OMG」の3種類あり、それぞれの概念や利活用のための知識を認定します。
「BPM」は初級、中級、上級の3つのレベル、「SysML」と「OMG」はそれぞれファンダメンタル、インターメディエイト、アドバンストの3つのレベルに分かれています。上位レベルの資格認定を得るには、下位レベルの資格取得が前提となります。
認定レベルが上位になるほど、より難易度が高く専門的な組み込みシステムの知識が問われます。認定されれば組み込みエンジニアとしての希少価値が高められるだけでなく、グローバルな活躍も期待できるでしょう。
OCRESに関連する書籍(本)
『組込みシステムのためのソフトウェアエンジニアリング 基礎編』(ジム・クーリング、山本 哲也、アイテック)
組込み系システムに関する世界的な名著であり、OCRESの標準テキストとして採用されている書籍です。ソフトウェアの設計、テスト、デバッグ、ドキュメント作成、レビューなど、組み込み開発の基礎的な知識を習得できるため、試験を受けない方やシステム開発未経験の方にもおすすめの1冊です。
5.JSTQB認定テスト技術者資格
JSTQB認定テスト技術者資格とは、テスト技法やテストマネジメント、テスト評価のスキルを証明する資格です。各国のテスト技術者認定組織と相互認証を行っているため、海外でも有効な資格となっています。
「Foundation Level」はソフトウェアテスト全般の知識が問われ、「Advanced Level」はテストマネジメントやテスト評価の知識が問われます。2023年11月1日からは、新しく「Foundation Level Specialist 自動車ソフトウェアテスト担当者試験」が開始されており、受験対象者は、「Foundation Level」資格試験の合格者です。
これらは組み込み系に特化した資格ではありませんが、テストエンジニアリングに関する知識を習得でき、組み込みシステムの開発においても品質向上に役立つでしょう。
JSTQB認定テスト技術者資格に関連する書籍(本)
『ソフトウェアテスト教科書 シラバス2018対応』(大西 建児、佐々木 方規、鈴木 三紀夫、中野 直樹、福田 里奈、町田 欣史、湯本 剛、吉澤 智美、翔泳社)
ロングセラー公認テキストとしてJSTQBのFoundation Level試験に対応した対策本です。最新シラバスのバージョン2018に対応しており、試験範囲の解説だけでなく、重要用語の定義や模擬試験も収録されています。試験を受ける人にとって必須の参考書といえるでしょう。
6.LPIC・LinuC
LPICやLinuCは、Linux技術者のスキルと知識を認定する資格です。これらはLinuxに関連した資格であり、LPICは世界共通の認定資格になります。また、LinuCは日本の認定資格でLPI-JAPANが認定しており、Linuxに特化した資格ではあるものの、Linux領域に限らずシステム開発や運用管理の現場で実際に必要とされる知識やスキルも問われる技術認定です。
Linuxはシステム開発やサーバーOSとして広く利用されているため、組み込みエンジニアの実務にも役立つ価値ある認定資格です。認定されれば自身のキャリアをさらに推進することが可能となります。
また、これらの資格はLinuxの広範な用途と技術に関するスキルを明確に示すための有効な手段となります。LPICとLinuCは、Linux技術者としての能力を証明するための重要なステップであり、技術者の専門性と信頼性を高めることにつながります。
LPIC・LinuCに関連する書籍(本)
『Linux教科書 LPICレベル1 Version5.0対応』(中島能和、濱野 賢一朗、翔泳社)
LPICのレベル1は、ITエンジニアとしての第一歩とされ、組み込みエンジニアの仕事にも役立ちます。このテキストはLPIC(Linux技術者認定)レベル1 Version5.0に対応しており、出題範囲を網羅的かつ易しく解説しています。また、「101試験」「102試験」の両試験に対応し、章ごとの練習問題や模擬試験を収録しています。
『Linux教科書 LinuCレベル1 Version 10.0対応』(中島 能和、濱野 賢一朗、翔泳社)
LinuCレベル1 Version 10.0に対応した認定テキストです。「101試験」「102試験」の2試験に対応し、出題範囲を完全に網羅しています。各章末には学習内容を確認できる練習問題が豊富に掲載され、巻末には本試験に向けた模擬試験も収録されています。さらに、Linux実習環境(CentOS、Ubuntu)を翔泳社Webサイトからダウンロード可能で、コマンドを入力し実践的に学習できます。
組み込みエンジニアについて
組み込みエンジニアを目指している方にとって、仕事内容や年収、将来性など気になる要素はたくさんあるでしょう。組み込みシステム自体についてもよく理解しておく必要があります。これらの要素が把握しきれていないと、転職活動もスムーズに進みません。
ここでは、組み込みシステムの概要や組み込みエンジニアの仕事内容、年収、将来性などについて解説します。
組み込みシステムとは
組み込みシステムとは、さまざまな機器に搭載されているコンピュータシステムを指します。PCのような汎用的な用途に使用されるのではなく、特定の用途に特化して設計された機器の制御を行うシステムです。
たとえば、テレビやエアコンなどの家電製品、スマートフォンなどの通信機器、OA機器、自動車、医療機器などを電子制御するのも組み込みシステムです。組み込みシステムの開発は、半導体の技術進歩により、さらなる進化を遂げています。
組み込みエンジニアの仕事内容
組み込みエンジニアの仕事内容は、組み込みシステムの設計・開発でアプリケーションエンジニアとも似ている職種です。一方で、さまざまな組み込みシステムを開発するため、CPUやOS、メモリの制御や回路図の設計、ドライバ設計といった組み込みエンジニア特有の知識とスキルが必要になります。
組み込みエンジニアの年収
レバテックキャリアに掲載されている求人情報を見てみると、組み込みエンジニアの年収は300万円〜1,200万円と非常に幅があります。平均すると想定年収は約572万円になり、組み込みエンジニアとしての経験がある方であれば、比較的高い年収が望めそうです。
用途の限られるアセンブリ言語よりも、多くの組み込みシステムで汎用的に使用されるC言語を扱えるエンジニアの方が、年収が高い傾向にあります。また、プロジェクトマネージャーなどマネジメント職として採用されると700万円以上の年収が提示されやすくなります。
関連記事:組み込みエンジニアの年収は?求人例や年収を上げる方法も解説
組み込みエンジニアの将来性
IT技術の進展は、組み込みエンジニアを含めたすべてのIT技術者の需要を後押ししています。また、IoT(モノのインターネット)が急速に普及し、パソコンやスマホだけでなく、家電などの機器も当たり前にインターネットに接続する時代になったことで、組み込みエンジニアの需要も高まっています。
IoT家電の要となる技術は、外部環境を精密に捉えるセンサーです。組み込みエンジニアは、センサーが捉える明るさや加速度、音、温度、湿度などの情報を的確にシステムに反映させる重要なポジションです。
今後はより人と一体化した組み込み機器の増加が予測されています。また、自動車業界では自動運転、医療業界では内視鏡AIを組み込んだ診断支援システムなど、多くの業界がIotに注目しており、組み込みエンジニアの将来性にもますます期待できるといえます。
しかし、需要が増すとはいえ、どのような組み込みエンジニアでも生き残ることができるとは限りません。今後も組み込みエンジニアとして活躍するためには、技術と知識のアップデートは必要不可欠です。
関連記事:組み込みエンジニアの需要と将来性について
組み込みエンジニアはやめとけといわれる理由
組み込みエンジニアの仕事は、つまらない、きつい、やめとけ、といったネガティブな意見を耳にすることがあります。では、どのような理由で組み込みエンジニアのネガティブイメージが広がっているのでしょうか。
組み込みエンジニアに対する多くの意見を参考にすると、以下のような理由が考えられます。IT業界のほかの職種においても、このようなイメージが先行する傾向がありますが、転職を考えるのであれば、事前に知っておくべきことでもあります。
専門知識やスキルの習得が大変
組み込みエンジニアは、専門的な知識とスキルが必要な職種です。扱うプログラミング言語やOSの種類が多く、電子回路の知識も必要です。このように幅広いスキルセットが求められるため、学習を継続し続けなくてはいけない、大変なイメージが持たれやすいといえます。
さらに、専門的な知識と経験を積むためには相当な時間と労力がかかることも、組み込みエンジニアはやめとけといわれる理由の1つです。
クライアント都合の急な要望への対応
組み込みエンジニアとして下請け企業に所属すると、クライアントの要望による変更が発生することがあります。製品開発のスケジュールは初期に設定されますが、クライアントの都合により部品の変更や機能追加など、予期せぬ変更が求められることもあります。
イレギュラーな変更があっても納期が延長されず、残業や休日出勤が発生する場合もあるため、結果として組み込みエンジニアは仕事がきついと思われがちです。
納期の厳しさ
納期に追われるプレッシャーを感じやすいのも理由の1つです。システム開発のプロセスにおいては、最初にクライアントと共に開発時間やバグ対応を含むスケジュールを作成し、納期を設定します。しかしながら、予想以上のバグが発生したり、クライアントからの仕様変更の要望があったりすると、計画通りに進行しないこともあります。
スケジュールが遅れていても納期を延期できないケースが多いです。納期の厳守はエンジニアとしての信頼性につながる一方で、無理な要求に対して再調整を打診することも重要な要素となります。
関連記事:組み込みエンジニアは難しい?なぜ人材不足なのか
組み込みエンジニアが資格を取得するメリット
資格取得は、組み込みエンジニアとしての市場価値を高められ、その学習プロセスにおいても業務に関わる知識を深められるなどメリットが多いです。
特に未経験から組み込みエンジニアに転職する場合は、経験がない分、資格が明確なスキルの証明として役に立つでしょう。組み込みエンジニアとしてキャリアアップを狙う場合も、資格の存在はスキルの証明のみならず、スキルアップへの姿勢・意欲を示すものにもなり、有利に働いてくれます。
自身のスキルを客観的に証明できる
資格は、スキルの判断材料とされることが多いです。言葉では伝わりにくい目に見えないスキルを評価してもらうためには、確かな証明となる資格があるほうが有利といえます。
また、国家資格や国際基準などの難易度の高い資格であるほど、より秀でた専門性や技術力が証明できるため評価も高くなります。転職においても、組み込みエンジニアの業務に関する知見や技術力の程度を証明するのに役立ちます。
スキルアップへの姿勢・意欲を示せる
資格を取得するには合格に向けて学習する時間や継続し続ける努力が必須です。そのため、試験に合格するまでの学習プロセスから読み取れる、前向きな姿勢・意欲が評価されることも多いです。1つのことを成し遂げるための自発的な行動力は、仕事においても大切なことであり、転職時にもアピールしやすいです。
年収アップに繋がる
特定の資格を取得した社員に対し、資格手当や奨励金を支給する企業もあります。資格1つに対してそれぞれ資格手当の金額が設定されていることが多く、難易度によっても金額が異なる場合があります。奨励金は一時金ですが、資格手当は雇用されているうちは毎月継続してもらえるため、金銭的なメリットが大きいです。
また、「資格手当の支給=企業が取得を推奨している」ということでもあり、積極的に取得すれば評価にもつながりやすく、その取得数が多ければ多いほど年収アップが期待できます。
組み込みエンジニアに求められるスキル・知識
組み込みエンジニアに求められるスキルや知識は、どのようなものがあるのでしょうか。組み込みエンジニアに求められるスキルの種類は、「エンジニアとして必要なもの」と「組み込みエンジニアならではのもの」の2種類に大別されます。ここでは、組み込みエンジニアに求められるスキルや知識について、具体的に解説します。
関連記事:組み込みエンジニアの転職で評価されるスキル・経験とは
よく使われるプログラミング言語
ソフトウェアを開発する上ではプログラミング言語が必須です。プログラミング言語には、C言語やC++、C#、Java、アセンブラなど多数の種類があります。これらのプログラミング言語を扱うスキルは、組み込みエンジニアとして働くために必要不可欠です。以下では、組み込みエンジニアが扱うことの多いプログラミング言語を紹介します。
C言語、C++、C#など
C言語は多くの組み込み系ソフトウェアで汎用的に使用されているプログラミング言語で、組み込みエンジニアとして活躍するにあたっては必須の言語といえます。
C言語の特徴として、組み込み系のみならずソフトウェア開発全般で活用できる汎用性や処理速度が早いなどのメリットがあります。ただ、概念が複雑で習得難易度が高いため、比較的簡単に習得できるPythonやGoなどの新しいプログラミング言語と比較すると人気は控え目です。だからこそ、習得しておけば必要な場面でキーマンとして活躍することが見込めます。
また、C言語から派生したプログラミング言語であるC++は、C言語の処理をさらに速くしたものです。また、C#はJavaとC言語を組み合わせたもので、Microsoft製品であるVisual Studioなどの統合開発環境を用いた開発に適しています。
Java
JavaはC言語を元に改良されたプログラミング言語で、こちらも非常に汎用性が高いプログラミング言語です。以前は処理速度が遅く、リアルタイムな動作を要求される組み込み系ソフトウェアではあまり利用されませんでした。しかし、パフォーマンスが大きく改善され、組み込み系のプログラミング言語として広く活用されるようになってきました。
Javaを習得すれば、WebアプリやAndroidアプリなど組み込み系以外の分野でも活用できるため、人気が非常に高いプログラミング言語です。
アセンブリ
アセンブリは機械語に近い記述でコンピュータを動作させる低水準なプログラミング言語で、ハードウェアの制御などに使われます。低水準言語とはコンピュータの動作に近いことを指し、一方で人間の感覚に近いC言語やC#、C++、Javaなどは高水準言語といわれています。
アセンブリを学ぶことで、CPUやOSの機能についてよく理解でき、高水準言語を使用する際にも、コンピュータの無駄のない動作を意識した効率的なプログラム作成に役立ちます。難解な見た目とは裏腹に命令の数は少なく習得はしやすいですが、用途が限られるので習得優先度としてはC言語やJavaのほうが上になります。
ソフトウェア
組み込み系OSには、代表的なものとしてTRONやT-Kernelなどがあります。これらの組み込み系OSの知識は、最低でも1つは身につける必要があるでしょう。一般的なパソコンがWindowsやMacOSなどのOSを使うのと同様に、組み込み機器にも専用のOSがあります。代表的な組み込み系OSには、以下のようなOSがあります。
-
・TRON
・T-Kernel
・VxWorks
・OSEK
・Rt-Linux
ハードウェア
組み込みエンジニアの仕事がWeb開発などと異なる点は、ソフトウェアだけでなくハードウェアの知識が必要な点です。回路図やCPU、電子デバイスの知識は、組み込みエンジニアの仕事において習得すべき知識になります。以下では、組み込みエンジニアにとって必要な回路図やCPU、電子デバイスの知識について、それぞれ具体的に解説します。
回路図
いくつものIC(集積回路)がつながっているものを回路図といいます。組み込み機器は機器ごとに固有のハードウェアがあり、その中のCPUにプログラミング言語で記述したソフトウェアが書き込まれることでデバイスを動作させています。
組み込みエンジニアは何をどのように動かすかを、回路図を元にプログラミングします。回路図で使われる記号は多種多様ですが、たとえば電源(電流と電圧を供給する電力源)、スイッチなど代表的なものは最低限理解し、回路図は必ず読めるようにしておきましょう。代表的なものを押さえておけば、あとは多くの回路図を読み込む中で慣れていくものです。
CPU(マイコン)
組み込みエンジニアが作ったソフトウェアを動作させるのがマイコン(マイクロコントローラー)です。多くの企業で高性能なマイコンの開発が日々進んでいるため、1つ覚えたら終わりというものではなく、常に最新情報をリサーチし把握しておく必要があります。メーカーや型番によってマイコンの仕様も異なるので、仕様書は必ず読むようにしましょう。
電子デバイス
組み込み開発で利用される電子デバイスには、センサーやスイッチ、モーター、カメラなど多くの種類があります。センサーは温度センサー、加速度センサーなど、外部環境の情報をインプット(入力)する電子デバイスのことです。またスイッチは、電気回路のON・OFFを切り替える電気部品です。これらの電子デバイスの知識も組み込みエンジニアに求められます。
コミュニケーション能力
組み込みエンジニアの仕事には、技術的な知識やスキルだけでなく、コミュニケーション能力も求められます。組み込みエンジニアは、要件定義から設計、開発、構築、導入までの一連のプロセスを進め、クライアントやチームメンバーとのコミュニケーションを通じて、システムの最適化を図ります。また、自身のアイデアを他人に理解してもらうためにも、コミュニケーション能力は不可欠です。
英語力
エンジニア全般にもいえることですが、英語を読み解くスキルも大切です。特に組み込みエンジニアが扱う部品や製品のマニュアルは英語で表記されているケースが多く、IT業界の最新動向などの一次情報は海外から発信されるのがほとんどです。最新情報や機器の情報をいち早く正確に認識するためにも英語力も養っておくと良いでしょう。また、英語のスキルが高ければ将来的に国外でも活躍の場を広げられる可能性が十分あります。
関連記事:組み込みエンジニアが英語を使えることで得られるメリット
スキルマップとなる組込みスキル標準(ETSS)について
IPAが定義する組込みスキル標準(ETSS)は、組み込みソフトウェア開発に必要なスキルが明確化されたものです。自身のスキル確認に活用でき、雇用する側においても、採用を判断する指標として有効です。組み込みエンジニアの能力を可視化し、人材の育成と有効活用を目的としています。
ETSSは次の3つの基準から構成されています。
-
1.スキル基準
2.キャリア基準
3.教育研修基準
スキル基準では、技術スキルを「技術要素」「開発技術」「管理技術」の3つに分け、階層的に整理します。分類された項目に対して、4段階のレベル(初級、中級、上級、最上級)で診断することで技術者のスキル分布を定量的に可視化します。
キャリア基準は、組み込みソフトウェア開発に関わるエンジニアの職種を10種類に分類し、それぞれの種類・専門分野ごとに7段階でキャリアレベルを示します。
教育研修基準は、組み込みエンジニアの人材育成の教育プログラムを定義したものです。組み込みシステム開発者育成を実現するための手段が明確化されています。
未経験からの組み込みエンジニア転職で知っておきたいこと
未経験から組み込みエンジニアに転職をする場合、どのようなことを知っておくべきでしょうか。経験者と比べると未経験からの転職は難しく、事前の下調べや対策は念入りに行わなくてはいけません。そのため、組み込みエンジニアに向いている人の特徴や必要なスキルの勉強方法などは、転職前に知っておくべき情報といえます。
未経験から組み込みエンジニアへ転職する場合には、以下のようなことを知っておくと良いでしょう。
組み込みエンジニアに向いてる人
組み込みエンジニアは、仕組みが複雑なハードウェアやソフトウェアの開発などに携わることが多いため、何かを組み立てることが好きな人には向いています。ソフトウェアをコーディングすることによってハードウェアを物理的に動かすことに楽しさを見出すことができる人であれば、なおさら向いているといえるでしょう。
必要スキルの勉強方法
組み込みエンジニアに必要なスキルは、参考書や研修、学習サイトなどを通して身につけることが可能です。
ただし、プログラミング言語をはじめ、多くのスキルは参考書や座学研修などでのインプットだけでは習得が難しいものです。インプットした内容は、実際に手を動かしアウトプットすることが大切です。アウトプットを繰り返し、理解度を把握しながら着実に進めていくことをおすすめします。
学習サイトの中には、Progateのようにブラウザ上でインプットとアウトプットが同時にできるサービスもあります。ほかにも便利なサービスはたくさんあるので、自分に合う方法を見つけ上手に活用しましょう。
関連記事:組み込みエンジニアになるために必要な勉強
組み込みエンジニアに関するよくある質問
組み込みエンジニアへの転職を目指す方からは、さまざまな疑問や質問が寄せられます。たとえば、組み込みエンジニアの将来性や仕事内容、ETEC資格、エンベデッドエンジニアの意味についてなどがあります。組み込みエンジニアはやめとけ、といわれることがある一方で、職種に関心を持っている人も多いようです。
以下では、組み込みエンジニアに関するよくある質問について、それぞれ回答します。
Q1. 組み込みエンジニアの将来性は?
組み込みエンジニアの将来性は非常に明るいといえます。IoT、AI、自動運転などの技術進歩に伴い、組み込みシステムの需要は増加傾向にあります。その結果、組み込みエンジニアの需要も増えています。また、組み込みエンジニアは多様な業界で活躍できるため、キャリアの選択肢も広がっています。
Q2. 組み込みエンジニアはどんな仕事?
組み込みエンジニアは、さまざまなデバイスや機器に内蔵される組み込みソフトウェアの設計や開発を行う職種です。ハードウェアとソフトウェアの両方を理解し、それらを最適に組み合わせて機能を実現します。組み込みエンジニアが手掛ける仕事は、スマートフォン、自動車、家電製品など、私たちの日常生活に密接に関わっています。
Q3. ETEC資格とは?
ETEC資格は、一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が実施する試験で、初級〜中級レベルの組み込み系ソフトウェアの技術者が対象です。スキルと知識の向上を目的とし、学習の到達度判定や技術者評価の目安として活用されています。資格を取得すれば、組み込み系ソフトウェアの知識やスキルを証明できます。
Q4. エンベデッドエンジニアとは?
エンベデッドエンジニアのエンベデッドとは「組み込まれた、埋め込まれた」などを意味します。組み込みエンジニアと同義であり、家電から自動車までの製品に組み込まれるソフトウェアの開発を担当する職種です。スペック検討から設計、実装、テストまでを行い、日常生活で使う製品に多く関わっています。
Q5. 組み込みエンジニアとIoTエンジニアの違いは何ですか?
組み込みエンジニアとIotエンジニアは似て非なる職種です。組み込みエンジニアは主に機器に組み込むシステムの設計・開発を担当します。一方で、Iotエンジニアは組み込みシステムを含むIotシステム全体の構築・管理に関わり、インターネットと接続されたモノを操作するアプリケーションも開発します。
まとめ
この記事では、組み込みエンジニアへの転職やキャリアアップを図りたい方に向けて、組み込みエンジニアの仕事内容や役立つ資格、参考書籍、将来性などについて解説しました。
組み込みエンジニアはソフトウェアに関する知識だけでなく、ハードウェアや電子回路の知識などが幅広く求められます。これらの知識を効率的に学習するためには、資格試験を活用するのが効率的です。スキル証明にもなるため、積極的に活用してみると良いでしょう。
組み込みエンジニアの仕事に興味がある方は、この記事を参考に転職を目指してみてはいかがでしょうか。
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