IoTエンジニア向け資格4つを試験内容や難易度で徹底比較

最終更新日:2024年10月4日

IoTエンジニアは、家電製品やモバイルデバイスに対して、インターネットに接続できる小型のコンピュータやセンサーとソフトウェアを組み込むエンジニアの総称です。システム開発だけでなく、組み込み系のスキルも要するため、技術習得のハードルが高い職種です。しかし、IoTの普及が急速に進む今、IoTエンジニアの需要も徐々に伸びています。

本記事では、IoTエンジニア志望の方やスキル向上を目指す現職IoTエンジニアに向けて、IoTに関する資格を紹介します。試験概要や難易度、学習方法などについて解説するため、参考にしてみてください。

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この記事のまとめ

  • IoTに関する資格として、「IoT検定」「IoTシステム技術検定」「ワイヤレスIoTプランナー検定」「エンベデットシステムスペシャリスト試験(ES)」がある
  • IoTエンジニアは広い範囲の知識を求められるため、関連する分野の資格獲得はスキル向上とスキル証明において有効な手段
  • IoTに関する資格は初学者向けのレベルも展開されているため積極的に挑戦すべき

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IoTエンジニア向け資格4つ

IoTエンジニアを目指す場合に有効な資格を紹介します。2024年9月時点で、IoTエンジニアや志望者向けにおすすめできる資格は以下4つです。

ここでは、それぞれの試験概要や費用・難易度・勉強方法などを詳しく説明します。

IoT検定

IoT検定はIoT検定制度委員会が主催する検定試験です。IoTに関する知識やスキルを可視化し、より一層IoTを普及させることを目的として実施されています。技術面、マーケティング、ユーザーのそれぞれの視点から、IoTを企画・開発・利用するために必要な知識を有していることを認定する資格試験です。

IoT検定全体では、IoT一般ユーザー向けとIoTプロフェッショナル向けに大きく分類されています。IoT一般ユーザー向けは、下記の1種類です。

・IoT検定ユーザー試験 パワー・ユーザー(IoT-PU)

IoTプロフェッショナル向けは、下記の3レベルに分かれています。2024年9月時点ではIoT-PCのみが提供されており、ほかの2つは「詳細準備中」とされています。

  • ・IoT検定レベル1試験 プロフェッショナル・コーディネータ(IoT-PC)

    ・IoT検定レベル2試験 プロフェッショナル・エンジニア(IoT-PE)

    ・IoT検定レベル3試験 プロフェッショナル・アーキテクト(IoT-PA)

IoT検定ユーザー試験パワー・ユーザー

IoT検定ユーザー試験パワー・ユーザーは、IoTシステムを使うビジネスパーソンに向けた試験です。開発者向けの検定ではないため、技術的な内容よりも戦略立案やIoTプラットフォーム上での実務など、一般的なビジネスパーソン向けの内容が出題されます。試験時間は40分で全48問、CBT方式で行われます。

合格に向けた学習方法としては、IoT検定制度委員会が公開しているスキルマップ(IoT検定ユーザー試験スキルマップβ版)を読み込み、全体像を把握しましょう。記載してあるキーワードを理解できるレベルを目指します。また、公式サイトにてIoT-PU対応のテキストも紹介されているため、こちらの利用もおすすめです。

受験費用
(税込)
8,800円
難易度 IT系資格試験のなかでは易しめ
出題範囲 ・戦略とマネジメント
・産業システム
・ネットワーク
・デバイス
・プラットフォーム
・データ分析
・セキュリティ
評価方法 正答率に応じたグレード制
グレードA: 正答率86%以上
グレードB: 正答率76~85%
グレードC: 正答率66~75%
IoT検定レベル1試験プロフェッショナル・コーディネータ

IoTを用いたシステム開発における基本的な知識を有しており、IoTに関する企画の立案やプロジェクトの推進ができることをを示せる試験です。開発者のなかでも現場のリーダークラスを想定した内容となっており、ユーザー向けのIoT-PUより技術的な内容の比重が高いです。試験時間は60分で全70問、CBT方式で行われます。

取得するための勉強方法として、IoT-PUと同様に、IoT検定制度委員会が公開しているスキルマップを読み込みましょう。その上で、公式サイトにて紹介されている公式テキストやIoT系の技術テキストを用いて、知識を深めていく方法がおすすめです。

受験費用
(税込)
11,000円 
難易度 IT系資格試験の中では平均的
出題範囲 ・戦略とマネジメント
・産業システム
・法務
・ネットワーク
・デバイス
・プラットフォーム
・データ分析
・セキュリティ
評価方法 正答率60%以上で合格

IoTシステム技術検定

IoTシステム技術検定は、官民連携で設立されたモバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が主催するIoTに関するスキルを検定する試験です。難易度別に基礎中級上級の3つのグレードが設けられており、ITエンジニアだけでなく、経営者や営業などの非エンジニアも対象としています。

IoTシステム技術検定 基礎(IoTアドバイザー)

IoTシステム技術検定 基礎(IoTアドバイザー)は、IoTを扱うビジネスパーソン向けの試験です。必要なレベルとしては、IoTに関する基礎知識を理解していることが求められます。試験時間は60分で全60問、CBT方式で行われます。

取得するための勉強方法としては、公式テキストの活用や検定のサンプル問題を用いた学習がおすすめです。

受験費用
(税込)
通常:13,750円 
学生:9,350円 
難易度 IT系資格試験の中ではやや易しい
出題範囲 ・IoTシステム構成と構築技術
・センサ/アクチュエータ技術と通信方式
・IoTデータ活用技術 (AI)
・IoT情報セキュリティ対策技術
・IoTシステムのプロトタイピング技術
IoTシステム技術検定 中級(IoTエキスパート)

IoTシステム技術検定 中級検定(IoTエキスパート)は、IoTシステムの構築、活用に関する実践的な技術を問う試験です。主に、ユーザー企業の中堅社員やIT・ICT企業のSEなどを対象としています。試験時間は90分で全80問、CBT方式で行われます。

効果的な学習方法としては、基礎検定同様、公式テキストサンプル問題の活用がおすすめです。

受験費用
(税込)
通常:18,150円 
準会員/正会員/賛助会員:14,850円 
相互協力会員:15,950円 
学生:11,550円 
難易度 IT系資格試験の中では平均的
出題範囲 ・IoTシステム構成と構築技術
・センサ/アクチュエータ技術と通信方式
・IoTデータ活用技術
・IoT情報セキュリティ対策技術
・IoTシステムのプロトタイピング技術
IoTシステム技術検定 上級(IoTプロフェッショナル)

IoTシステム技術検定 上級(IoTプロフェッショナル)は、IoTを用いた専門的なサービス構築に必要な知識が問われる試験です。システム企画・設計などを行う上流工程を担当するエンジニアを対象としています。認定を受けるには、1日半程度の専門技術講習を受講し、論述式試験に合格する必要があります。独学は非常に難しいため、ある程度の実務経験と専門技術講座の受講が必須です。

また、受験するには以下のいずれか1つの条件を満たしていなければならないため、注意が必要です。

受験費用
(税込)
IoTシステム技術検定【中級】合格者:55,770円 
早稲田大学 スマートエスイー修了者:35,750円 
情報処理学会 認定情報技術者(CITP):35,750円 
再受験の方:28,050円 
難易度 高め
受験資格 ・IoTビジネスモデル設計
・IoTセキュリティ
・AI活用によるIoTアプリケーション
・最新技術動向

ワイヤレスIoTプランナー検定

ワイヤレスIoTプランナー検定は、IoTシステム技術検定と同じモバイルコンピューティング推進コンソーシアムにて運営するIoTの技術知識とビジネス知識を検定する資格試験です。

主な対象はDXを導入する企業の中核リーダーとされています。IoTに関する基礎的な知識を習得し、システム構築者などと円滑なコミュニケーションができるレベルを目指す方に向けた資格です。

認定を受けるには、CBTによる試験方式専門技術講習(+理解度確認テスト)の2種類の方法があります

CBT試験は、試験時間60分で四肢択一の問題が60問、理解度テストは、30分で四肢択一の問題が30問出題されます。

試験方式 CBT方式 専門技術講習(理解度確認テスト)
受験費用
(税込)
通常:15,950円 
学生:11,550円 
22,550円 
難易度 IT系資格試験の中では易しめ
出題範囲 ・IoT利活用するためのビジネス知識
・IoTシステムに関する技術基盤知識
・IoTの仕組み
・活用事例をベースにした導入と運用
・IoT基盤技術(5G、LPWA、AI、セキュリティ)

エンベデットシステムスペシャリスト試験(ES)

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する国家資格である高度情報処理試験の1つです。IoTを含む組み込み開発者向けのスキルを示すことができます。

難易度の高い試験であるため、合格するにはしっかりとした対策が必要です。午前の選択式は、過去問や市販のテキストを用いた独学で対策が可能です。ただし、午後の記述式試験は、10ページ以上におよぶ長文を読み込んだ後に記述式で回答していきます。そのため、ある程度の「慣れ」が必要になるでしょう。特に実務未経験の場合は、予備校の対策講座などを駆使した対策がおすすめです。

受験費用
 (税込)
7,500円 
難易度 IT系資格試験の中でも易め
出題範囲 午前Ⅰ・Ⅱはテクノロジー・マネジメント・ストラテジーの各分野から
満遍なく出題されます。

午後Ⅰは設計・開発分野に関する問題が出題されます。
午後Ⅱは下記の分野が対象です。

・組込みシステム、IoT を利用したシステムの事業戦略、製品戦略、
製品企画、開発、サポート及び保守計画の策定/推進
・機能要件の分析/機能仕様の決定
・対象とするシステムに応じた開発手法の決定/汎用モジュールの利用
・組込みシステムのシステムアーキテクチャ設計/要求仕様の策定
・組込みシステムのソフトウェア設計/実装
・組込みシステムのハードウェア設計/実装
・保守

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そもそもIoTエンジニアとは?

IoT関連の資格を取得し、IoTエンジニアへの転職を検討しているのであれば、職種について正しく理解しておく必要があるでしょう。IoTエンジニアとは、家電や自動車などのデバイスにIoT機能を組み込む仕事です。ここではIoTエンジニアの概要と主な仕事内容について詳しく解説します。転職を検討している人は参考にしてみてください。

関連記事:
IoTエンジニアは未経験から転職可能?年収や将来性は?
制御エンジニアとは?仕事内容や年収、資格も紹介

IoTエンジニアの概要

IoT(Internet of things)エンジニアとは、家電・自動車・デジタルデバイスなどに対し、IoTの仕組みを実装する職種です。音度センサーや画像センサーなどを活用するセンシング対応や無線通信機能の実装、超小型コンピュータ(シングルボードコンピュータなど)で稼働するソフトウェアの開発などを行うため、従来の組み込みエンジニアよりも豊富な知識と高度なスキルが求められる傾向にあります。

IoTエンジニアの仕事内容

IoTエンジニアの主な仕事内容は、IoTデバイス上で動作するソフトウェアの「設計・実装(コーディング)・テスト」です。作業工程の大枠としてみれば他分野のITエンジニアと大きな差はないといえるでしょう。ただし、一般的なソフトウェア開発とは異なり、ハードウェアの知識が必要になります。具体的には以下のような作業を行います。

連携部分の開発

現在実用化されているIoTデバイスの多くは、温度・加速度などを計測するセンサー機能と、無線通信機能で構成されています。IoTエンジニアは、こうした機能が外部とスムーズにデータをやり取りできるように、連携部分の開発を担います。

たとえば、IoTデバイスで取得した温度情報をスマートフォンで検知できるように、IoTデバイス側に温度測定用センサーやネットワーク通信機能を実装します。

プログラミング

デバイス内にさまざまな機能を付与するプログラミングは「組み込みプログラミング」と呼ばれます。IoTデバイスの多くは、小型のデジタルデバイスであることから、プログラムが使用可能なハードウェアリソースには著しい制限が課されています。組み込みプログラミングでは、「限られたハードウェアリソースを、いかに有効に使いきるか」を念頭に置いたプログラミングが必要です。

回路設計、製作

IoTエンジニアは、回路設計や製作を担当することもあります。物理的な回路を制作するため、電子回路に関する知識が必要です。また、「Arduino」や「Raspberry Pi」など、手のひらサイズの基板上にCPUやメモリなどが組み込まれた「シングルボードコンピュータ」上で回路設計を行うこともあるため、小型デバイスの知識も求められます。

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IoTエンジニアが資格を取得するメリット

IoTに関連する資格取得を目指す際、メリットを知っておくとモチベーションを保ちやすいでしょう。IoTエンジニアが資格を取得するメリットとしては、「求められる知識やスキルの証明になる」「必要な知識を網羅的に学べる」ということが挙げられます。

また、これらのメリットから資格取得は実務歴の浅い方や他業種から転職される方にもおすすめです。経験が浅くても、信頼を得られる可能性が高まります。

求められる知識やスキルの証明になる

IoTエンジニアは技術職なので、当然知識やスキルを求められます。新人や異業種からの転職者の場合、職歴でスキルを証明することが難しいため、資格を取得しておくと客観的なスキルの証明となるでしょう。また、早いタイミングで関係者からの信頼を得る可能性も高まります。

必要な知識を網羅的に学べる

資格試験はその業界に深く関わる団体が作成しているため、合格に向けて勉強することでIoTに関する必要な知識を網羅的に学べます。たとえば全く何もない状態からIoTの知識を身につけていくには、何をどのように学んでいけばいいか分かりづらいですが、試験に向けて学習に取り組むことで、試験範囲などから知識の要点を押さえることができるでしょう。

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資格以外にIoTエンジニアに求められるスキル

IoTエンジニアはITエンジニアの中でも多岐に渡るスキルが求められる傾向があります。技術的なスキルはエンジニアとして当然必要ですが、あわせて、ヒューマンスキルも必要です。

ヒューマンスキルとは、IoTに関する知識やプログラミングスキルとは違い、コミュニケーションやチームワークなど一社会人としてのスキルです。

以下では、資格以外で、IoTエンジニアに求められるスキルを詳しく紹介します。

ヒューマンスキル

IoTエンジニアに限らずエンジニアには、ヒューマンスキルが必要です。たとえば、IoTエンジニアはチームメンバーとのやりとりや顧客へのヒアリングなどが仕事に含まれるため、円滑なコミュニケーション能力が求められます。さらに、複数メンバーと協力してプロジェクトを遂行するチームワークも重要です。

また、開発プロジェクトにおいて、タスクやスケジュールを管理するプロジェクトマネジメント能力や問題解決に向けたクリエイティブな解決能力などがあると良いとされています。

技術的なスキル

IoTエンジニアには幅広いITスキルが必須です。

IoTエンジニアは、ネットワークとIoTデバイスを連携させるため、デバイスやソフトウェア、ネットワークやクラウドなど広い分野の知識を必要とします。また、近年ではIoTデバイスが収集した大量のデータを分析する人工知能のシステム開発に携わる場合もあります。ITに関する幅広い知見を持っておくことで、重宝されるIoTエンジニアになれるでしょう。

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IoTエンジニアは将来性のある職種

IoTは、家電や製造、輸送など幅広い分野において、必要不可欠となりつつある技術です。今後、ますますIoTエンジニアの活躍できるフィールドは広がることが想定され、需要も高まることが予測されます。

レバテックキャリアにて2024年9月時点で、職種「組込・制御エンジニア」キーワード「IoT」を指定して検索を行うと、227件の求人・転職情報が該当しました。また、職種「組込・制御エンジニア」以外でも広い分野でIoTエンジニアを求める需要があります。

IoTエンジニアの求人・転職情報>

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IoT資格に関するQ&A

IoTエンジニアを目指している方のなかには、IoTに関する資格について気になる方が多いでしょう。IoTに関連する資格についてのよくある質問としては、おすすめの資格や合格率についてなどが挙げられます。以下では、IoT資格に関するよくある質問と回答を紹介します。受験を考えている人は参考にしてみてください。

Q1. IoTエンジニアにおすすめの資格を教えてください。

IoTエンジニアにおすすめの資格は以下の4つです。


  • ・IoT検定制度委員会「IoT検定」

    ・MCPC「IoTシステム技術検定」

    ・IPA「エンベデットシステムスペシャリスト試験(ES)」

    ・MCPC「ワイヤレスIoTプランナー検定」

Q2. IoT検定の合格率はどれくらいですか?

IoT検定ユーザー試験パワー・ユーザーに合否判定はなく、正答率に応じた「グレード制」を採用しています。また、IoT開発者向けのIoT検定レベル1試験プロフェッショナル・コーディネータは、正答率60%以上で合格となりますが、合格率は公表されていません。

Q3. IoT検定は国家資格ですか?

IoT検定は国家資格ではなく民間資格です。IoT検定を主催しているIoT検定制度委員会は、複数の業界団体・企業・有識者で構成されています。

IoTを含む組み込みエンジニア向けの国家資格としては、IPAの実施するエンベデッドシステムスペシャリスト試験があります。

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まとめ

IoTエンジニアに必須の資格はありません。しかし、取得することで、客観的に知識を証明できたり、必要な知識を習得できたりします。

本記事ではIoTに関する資格の概要や取得するメリットなどについて紹介しました。IoT関連の資格としては「IoT検定」「IoTシステム技術検定」「ワイヤレスIoTプランナー検定」「エンベデットシステムスペシャリスト試験(ES)」が挙げられます。試験範囲や難易度がそれぞれ異なるため、自分に合った試験に挑戦することがおすすめです。

IoTの資格取得を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

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この記事の監修

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