未経験からプロジェクトマネージャーになるには?資格や適性を解説

最終更新日:2024年3月4日

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの計画立案、進捗・リソース・契約・リスク・品質管理などを行うポジションです。管理業務の円滑な遂行がプロジェクトの成否を左右します。

プロジェクトマネジメントスキル、トラブル対処経験、顧客折衝スキルなどが求められるため、業務経験を積み、プロジェクトリーダーを経て、プロジェクトマネージャーとなる段階を踏んだキャリアパスが一般的です。それでは、実務未経験から目指すには、どのようにステップを踏めばよいのでしょうか。

本記事では、キャリアアップしてプロジェクトマネージャーを目指す現役エンジニアに向け、目指す際の条件や必要なスキル、取得しておきたい資格などを解説します。

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この記事のまとめ

  • 未経験からプロジェクトマネージャーになるには、資格取得によるスキル向上や、マネジメント経験を積むことが重要です
  • プロジェクトマネージャーとプロジェクトメンバーとなるITエンジニアでは、必要なスキルや適性は異なるものも多いです
  • プロジェクトマネージャーからのキャリアパスには、ITコンサルタント、マネージャー、社内SE、フリーランスなどがあります

未経験からでもプロジェクトマネージャーになれる?

エンジニア未経験からでもプロジェクトマネージャーになることは可能です。ただし、未経験の状態からすぐにプロジェクトマネージャーになるのではなく、開発担当者やプロジェクトリーダーなどの実務経験を経て、スキルを向上させた後になれる、というのが正確なところです。

その理由としては、プロジェクトマネージャーというポジションに求められるスキルが広範に渡ることがあげられます。システム開発などのITに関するプロジェクトの全体的な工程像、必要となる成果物、開発担当者などの実務担当者の業務内容、プロジェクト管理への知見、顧客の業種・業界や業務への理解など必要となるスキルをあげていけばきりがありません。

また、業務の特性上、豊富な経験も求められます。プロジェクト推進上で発生する課題は、原因や選択可能な施策などもケースバイケースで臨機応変な対応が求められるため、それまでの経験が重要となります。顧客との折衝においても窓口となることが多く、経験知が必要となるシーンが少なくありません。

一部例外となるのは、他の業種でプロジェクトマネージャー経験がある人の場合です。プロジェクトマネジメント手法はITだけでなく他の分野でも共通しているため、すぐにIT業種のプロジェクトマネージャーを勤めることができる場合もあります。

プロジェクトマネージャーとは

プロジェクトマネージャーとは、システム開発プロジェクトにおける責任者となるポジションです。プロジェクトの現場をまとめ、プロジェクトを成功に導くミッションを持つ重要性の高い役割のため、多くのエンジニアがキャリアパスの到達点として目指しています。

プロジェクトマネージャーの役割

プロジェクトマネージャーの役割は、システム開発プロジェクトの全体を管理・推進し、プロジェクトを成功に導くことです。IT事業者に所属するプロジェクトマネージャーの場合には、事業の単位となるプロジェクトにおいて利益を追求する役割も担います。

システム開発プロジェクトにおいては、プロジェクト推進上の障害となる問題が様々な方向から発生します。多岐に渡る関係者の利害関係や技術的な課題、予算と納期などあらゆる問題に対し、顧客と折衝しながら最善の解決策を見つけることがプロジェクト推進では必要となります。

実際の設計やプログラミング、テストなどにおいては直接の作業者とはならず、管理やレビューなどを担当する場合が多いです。

プロジェクトマネージャーの仕事内容

プロジェクトマネージャーは、各プロジェクトにおいて決められた期日までに成果物(システムや仕様書、ハードウェアなど)を完成・納品することへの責任を負っています。そのために、主に以下のような業務を担当しています。


  • ・プロジェクトスコープ(作業範囲)の決定

    ・プロジェクト体制の構築(人員の配置やチーム編成など)

    ・プロジェクトの全体的なスケジュール設定

    ・プロジェクトの進捗確認、定例会の開催など管理運営全般

    ・人員(SEやPGなど)の手配及び人的コスト管理

    ・クライアントとの交渉


プロジェクトマネージャーは、システムの開発や改修といったプロジェクトをやり遂げるために、プロジェクトチームを結成します。このとき、どういった人材がどれだけ必要かを計算し、必要な人材を確保します。

また、スケジュールを設定してプロジェクトを動かし、常に進捗をチェックします。必要であれば人材の追加投入などを行い、計画修正もしていかなくてはなりません。顧客から何らかの要求(業務変更に伴うシステムの仕様変更など)があった場合は、交渉の窓口としても活躍します。

関連記事:プロジェクトマネージャーとは?役割・仕事内容・必須スキルを解説

プロジェクトリーダーとの違い

プロジェクトリーダーは開発者などの立場からプロジェクト内のチームを牽引するポジションです。いわば、プロジェクト内のチームにおけるプレイングマネージャーにあたります。

一方、プロジェクトマネージャーはマネジメントに特化し、プロジェクト全体を責任範囲とします。そのため、プロジェクト体制上はプロジェクトリーダーよりもプロジェクトマネージャーの方が上になります。

関連記事:プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーの違いは?

未経験からプロジェクトマネージャーになるには

未経験からプロジェクトマネージャーを目指す方法について解説します。
大きな流れとしては、「資格を取得する」→「現場でマネジメント経験を積む」→「転職する」というステップです。

プロジェクトマネージャーは技術職未経験であっても、他の業界や他の職種でマネジメント経験があれば目指しやすい職種です。ただし、ITやプロジェクトマネジメントに関する知見は求められますので、これらを補填していく必要があります。

資格を取得する

資格取得は、プロジェクトマネジメントに必要な知識を横断的に学ぶことができ、対外的な知識の証明にもなります。プロジェクトマネージャー向けの資格としては、以下3つが代表的です。


  • ・PMP

    ・プロジェクトマネージャ試験

    ・ITコーディネータ試験


関連記事:プロジェクトマネージャーに役立つおすすめの資格と難易度を解説

PMP®

PMPは、プロジェクトマネジメントの概念が生まれた米国の団体「PMI(米国プロジェクトマネジメント協会) 本部」が認定している国際的な資格です。同団体が提唱する「PMBOK (Project Management Body of Knowledge) 」は、プロジェクトマネジメントのノウハウを体系的にまとめており、これをベースにした資格がPMPです。PMPはIT業界で高い評価を得ることが多く、未経験者でも一定の知識を有することの証明になります。

PMPの受験資格の要件は以下です。プロジェクトマネージャーのポジションではなくとも、プロジェクトマネジメントの実務経験が必要とされるため、注意が必要です。

学歴 プロジェクトマネジメントの経験
中等教育卒業(高校卒業、準学士号または海外の同等資格) 5 年/60 か月以上にわたる、一意かつ重複しないプロジェクトマネジメントの実務経験

または

学歴 プロジェクトマネジメントの経験
4 年制大学卒業(学士号または海外の同等資格) 3 年/36 か月以上にわたる、一意かつ重複しないプロジェクトマネジメントの実務経験

または

学歴 プロジェクトマネジメントの経験
GAC認定プログラムによる学士号取得または大学院卒業(学士号もしくは修士号、または海外の同等資格) 2 年/24 か月以上にわたる、一意かつ重複しないプロジェクトマネジメントの実務経験
プロジェクトマネージャ試験

プロジェクトマネージャ試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営し、経済産業省が認定する国家資格試験です。プロジェクトマネージャーに求められる組織運営、管理能力、リスク管理と分析、評価に関する知識などが問われます。日本国内では、さきほど紹介したPMPと並び、もっとも代表的なプロジェクトマネージャー向け資格といえます。

過去の統計データから合格率は毎回15%前後と非常に難易度が高く、記述や論述式の回答が求められる問題もあるため、試験対策が必須とされています。

ITコーディネータ試験

ITコーディネータ試験は2001年にスタートした特定非営利活動法人ITコーディネータ協会により運営される資格試験です。経済産業省の推進資格でもあります。

試験では、経営戦略やIT戦略、プロジェクトマネジメントに関する知識を問われます。また、資格取得には試験合格に加えて6日間の集合研修の完了が必要とされます。IT業界ではプロジェクトマネジメントやPMO(Project Management Office)の一員として参画するときに、評価される資格といえるでしょう。

ITコーディネータ試験は受験資格の要件などは特にありません。ITCのメンバーIDを取得すれば受験可能です。

応用情報技術者試験

応用情報技術者試験は、プロジェクトマネージャ試験の下位資格です。アプリケーション開発者向けの応用レベルの資格にあたります。ほとんどの人は、応用情報技術者試験に合格した後にプロジェクトマネージャ試験を受験しています。基本情報技術者試験は応用情報技術者試験の下位資格です。

応用情報技術者試験はプロジェクトマネージャだけでなく、IT業界で幅広く需要があり、また評価もされます。内容としても幅広いのですが、基本情報技術者試験に比べると得意分野に絞って選択することができます。

現職でマネジメント経験を積む

プロジェクトマネージャーは一足飛びに目指せる職種ではありません。必ず何らかのマネジメント経験が問われます。

そのため、まずは現職で小規模チームのリーダーなどに就き、チームマネージメントの経験を積む必要があります。そして、この時に役立つのが資格試験で得たマネジメントの知識です。マネジメントを任せてもらう際のアピールにもなるでしょう。

中小SIerなどのリーダー職に転職する

中小SIerの中には、未経験者でも応募できるチームリーダー、グループリーダー、マネージャーの求人を出しているところがあります。中小SIerではプロジェクトマネージャーという職種を設けていない場合も多いですが、これらの職種は多くの場合プロジェクトマネジメント業務も担当します。

こういった求人に応募し、マネジメントのイロハを学ぶのも有効な方法のひとつです。ただし、未経験者の転職はハードルが高いため、前述したように資格取得とマネジメント経験を経ることで転職の成功確率を高めておくのがおすすめです。

面接対策をする

未経験者の場合は、プロジェクトに関わったことがなくても、学習意欲やチャレンジ精神、コミュニケーション能力など、他の職種で培ったスキルや経験をアピールすることが大切です。

プロジェクトマネージャーに必要なスキルを身につけるために、資格取得や独学、セミナー・講座の受講などで学習を進めることも重要です。学習しきれていない部分は、入社後に積極的に学ぶ姿勢をアピールすると良いでしょう。

プロジェクトマネージャーの志望動機

面接では、プロジェクトマネージャーになりたい理由をほぼ確実に聞かれます。理由は人それぞれ異なりますが、一般的には以下のような内容は含めるべきとされます。


  • ・応募企業でなければならない理由

    ・プログラマーやSEとしての経験を活かして会社に貢献できること

    ・入社後の目標


給与や待遇面のことばかり言うのは当然NGですが、難しいのがスキルアップなどの面です。自分自身の成長などはアピールした方が良いのですが、自分のことだけになってしまうと企業側のメリットを提示できていません。

自分自身が成長できることと、結果的に企業のメリットになることの両方を含めていけると良いでしょう。

IT業界未経験者がプロジェクトマネージャーを目指すには

IT業界未経験からプロジェクトマネージャーを目指す場合には、より条件が厳しくなるため下記のポイントを踏まえた対策を行うとよいでしょう。

また、大手企業への転職はハードルが高い傾向があるため、まずは中小企業のPMポジションを狙うことをおすすめします。

業務や技術に関する知識を身につける

IT業界未経験者を受け付けている求人でも、IT業の業務や技術的な知識は必要となります。未経験からプロジェクトマネージャーを目指す場合には、専門的な業務知識を保有していることが前提となるでしょう。

この場合には、応募する企業が求めている業務知識とITを結び付けられるよう、ソリューションや技術の知識を身につけるとよいです。例えば、ITコーディネータ試験に向けた学習を行うことにより、業務知識とIT企業での利用の仕方を学ぶことが可能です。

また、IT業界のプロジェクトマネージャーには、プロジェクトマネジメントに関する知識とスキルが必要とされます。プロジェクトマネジメントでよく利用される手法などは身につけておきたい内容です。


  • ・WBS(Work Breakdown Structure=プロジェクトを作業単位に分割し階層構造に再構築する手法)

    ・開発手法(ウォーターフォールモデル、アジャイルモデル)

    ・テスト手法(V字モデル、W字モデル)


これらのプロジェクト運営に必要となる知識は、「SEやPGをはじめとしたプロジェクトメンバーをどう動かすか」「どの工程にどれだけの人員が必要か」など、工程や人的リソースの管理に役立ちます。国家資格である基本情報技術者試験などを取得して、ITに関する基礎知識を身につけるのも良いでしょう。

これまでのマネジメント経験を整理する

プロジェクトマネージャーとしての転職を目指す場合、転職先の企業選びは非常に重要です。

これまでの業務知識やマネジメント経験から、どのようなプロジェクトで力を発揮できるかを整理し、転職先を検討する必要があるでしょう。スキルマップや経験したプロジェクトの履歴を作成することで、自分にマッチする企業を見つけやすくなります。

プロジェクトマネージャーに向いている人・向いていない人

プロジェクトマネージャーには向き不向きがあります。プログラマーやシステムエンジニアに向いていても、プロジェクトマネージャーに向いているとは限りません。逆に、プログラマーやシステムエンジニアとしては、そこそこのスキルであっても、プロジェクトマネージャーとしては活躍する人もいるでしょう。

それでは、どのような人がプロジェクトマネージャーに向いていて、逆にどのような人はプロジェクトマネージャーに向いていないのでしょうか。

関連記事:
プロジェクトマネージャーの平均年齢は?何歳まで目指せる?
プロジェクトマネージャーとディレクターの違いとは?

向いている人の特徴

プロジェクトマネージャーに向いている人の特徴として、以下が挙げられます。


  • ・コミュニケーション能力が高い

    ・チームをまとめられる

    ・課題に対する意識が高い


プロジェクトマネージャーは、プロジェクトに関係する多くの人とコミュニケーションを取る必要があります。そのため、円滑なコミュニケーション能力が必要です。

またプロジェクトマネージャーはプロジェクトチームのリーダーとして、チームをまとめる役割があります。そのため、リーダーシップやマネジメントスキルが求められます。

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトのスケジュールや品質、予算などの管理を行います。そのため、細かいところまで目配りできる意識が重要です。

向いていない人の特徴

プロジェクトマネージャーに向いていない人の特徴として、以下が挙げられます。


  • ・関係者とコミュニケーションを取るのが苦手

    ・論理性に欠ける

    ・ストレス耐性がない


プロジェクトマネージャーは、多くの関係者とコミュニケーションを取る必要があります。そのため、人と話すことが苦手だと、プロジェクトマネージャーには向いていないかもしれません。

プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体を把握し、細かい部分まで考慮しながらスケジュールや予算、品質管理などを行います。そのため、論理的思考力が必要です。コミュニケーションも正確に取る必要があるので、その点でも論理的思考力は不可欠でしょう。

プロジェクトマネージャーはコミュニケーションや課題解決でストレスを感じることがあります。トラブルが発生することはどうしても避けられないからです。そのため、ストレスに弱すぎると、プロジェクトマネージャーには向いていないかもしれません。

プロジェクトマネージャーに求められるスキル、知識、経験

本項ではIT系企業のプロジェクトマネージャーに求められるスキルや経験について解説します。ここまでに記載してきたプロジェクトマネージャーの仕事内容を進める上で、以下のようなスキル、経験が求められます。

IT業界では、一般的にプロジェクトマネージャーはPGやSEを経験し、チームリーダー(TL)やプロジェクトリーダー(PL)などを経てからキャリアアップすることが多い職種です。しかし、必ずしも技術職の経験が必要というわけではありません。

他業界でのマネジメント経験や、特定の分野(金融やロジスティクス)に関する豊富な業務知識・経験があれば、それを活かしてプロジェクトマネージャーになることは可能です。ただし、クライアントに対して技術的な解説ができるプロジェクトマネージャーは信頼を得やすい傾向にあります。

関連記事:SEからプロジェクトマネージャーを目指す方法

ヒューマンスキル

プロジェクトマネージャーに必要となるヒューマンスキルについて、代表的なものを紹介します。これらのスキルを合わせて持ち、総合的に高いパフォーマンスを発揮できることが重要です。

コミュニケーションスキル

システム開発プロジェクトには必ずクライアントがおり、仕事の相手はコンピュータではなく人間です。複数の関係者間で共通の認識を作り、プロジェクトチーム全体をまとめるには高度なコミュニケーションスキルが必要となります。

プロジェクトマネージャーがコミュニケーションスキルを発揮するシーンとして、下記が例に挙げられます。


  • ・顧客要求を引き出し、プロジェクトリソース(受注金額、体制、技術力など)から現実的なプロジェクトプランを提案し交渉する

    ・ステークホルダーへの状況説明や各種の協力依頼

    ・プロジェクトチームを率い、チーム内の円滑な関係を築く

リーダーシップ

プロジェクトマネージャーはプロジェクトチームの責任者です。チームをまとめ牽引するリーダーシップも必要とされます。

また、このプロジェクトチームは自社内のメンバーに限らないことが重要なポイントです。クライアントの事業部門担当者、システム部門担当者、その上司などのステークホルダーもプロジェクトをともに進める仲間として味方につけ、一つのチームとして成功を目指すのが理想です。

課題解決・分析力

プロジェクトを進めていくうえで、各種の問題の発生は避けられません。プロジェクトマネージャーはこれらの課題を可能な限り速く発見し、分析、解決に導くスキルが求められます。

あらゆるエンジニア職種には課題解決力が必要ですが、プロジェクトマネージャーの場合には問題の早期発見と、周囲を上手に巻き込んで課題解決に導くことが特にポイントとなります。

課題の早期発見には、その芽となるリスクについてのマネジメントを実施します。

また、課題の解決においてはプロジェクトマネージャーが直接解決することが重要ではなく、効率的かつ確実に解決することが重要です。プロジェクトメンバーや周囲に協力を仰ぎ、適材適所で問題解決できるメンバーをあてがい、解決へ導くこともスキルの一つです。

各種管理能力

プロジェクトマネージャーはプロジェクトに関するあらゆることの管理を行います。

例えば、下記が例として挙げられます。


  • ・人員、予算の適切な配置を行うためのリソース管理能力

    ・スケジュール、作業進捗の管理

    ・課題管理

    ・リスク管理

    ・コスト管理

    ・品質管理


管理を行っていて、はじめて異変が発生した場合に気づくことができ、対処が可能となります。

求められる知識、経験

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの実作業についても広く知識を持っている必要があります。実作業がどのようなものかを知っていなければ、適切な管理はできないためです。

また、プロジェクトの様々なシーンにおいて、判断が重要となる場合があります。その際に役立つのが、IT業やその他業務におけるプロジェクトでの経験です。経験は、問題に直面した際の選択肢を増やし、判断の基準ともなってくれます。このため、経験も重要視されるポイントとなります。

ITに関する技術的な知識

ここまでの記載からは意外に思われるかもしれませんが、ITに関する技術的な知識はプロジェクトマネージャーにとっても重要性の高い知識です。顧客の要件という形を持たないものを、ITシステムとして実現するには、具体化が必要となります。その具体化を行う裏付けとなるのが技術的な知識なのです。

例えば、顧客がWeb画面上でアニメーションの表現を取り入れたいという要望を持っている場合、最終的には技術的に実現できるかどうかを判断しなければ要望への対応可否も回答することができません。プログラムでどのように記述するかというレベルではなくとも、できること、できないこと、新たに追加された機能などの概要は抑えておきたいところです。

また、技術的なバックボーンがない場合には、エンジニアとの会話中で妥当性を判断するのが難しいという側面があります。エンジニアとの信頼関係を築くうえでも、技術的な知識の保有は一つのポイントとなります。

クライアントの業界に関する業務知識

プロジェクトマネージャーはシステムを構築する対象となるクライアントの業界、業務について知識を持つ必要があります。

多くのシステムはクライアントの業務の効率化や品質の向上を目的に行われます。業務の改善が目的である以上、業務をよく知り、細かく分析しなければ改善にはたどり着けません。

また、業界、業種によって業務の行い方や慣習は違います。ITシステム上で再現する必要があるのであれば、その詳細についても知る必要があります。

システム開発プロジェクトに従事した経験

IT業界でシステム開発プロジェクトに従事した経験は、システム開発プロジェクトの進行、各工程での実施内容などを知ることに繋がります。

具体的には、プロジェクト全体を組み立てる際、作業における見積やスケジューリングに対して、実感を持って行えます。理屈の上では分かっていても、実際に自分のしたことのない作業を見積もったり、スケジューリングするのは難しいものです。

また、段取りを知っていることで、次に必要なアクションを予測しやすくなる点でも、プロジェクト従事経験が活きてきます。

プロジェクトマネジメント経験

進捗管理や品質管理などのプロジェクトマネジメント業務の経験は、まさにプロジェクトマネージャー業務の一部を先取りして行ったのと同様です。プロジェクトマネージャー業務は多岐に渡りますが、その中の一部でも実施したことがあるという経験は、プロジェクトマネージャー業務をこなすうえで多少の余裕を与えてくれるでしょう。

プロジェクトマネージャーの需要

「DX白書2023」によると、日本の企業ではプロジェクトマネージャーの量、質ともに不足していることがわかります。DXを推進する人材の量と質の確保について尋ねた結果、「過不足はない」と回答した割合は量が9.6%、質が6.1%と非常に低い割合です。

また、データ利活用に関連する人材のアンケートでは、「不足している」と回答した人の割合は以下のようになっています。


  • ・データ利活用に理解のある経営・マネジメント層:50.9%

    ・データを活用した製品・ サービスを企画できる事業企画:61.8%

    ・データの高度な分析を行う データサイエンティスト :62.6%

    ・データを活用したソフトウェア やシステムを実装できる開発者:56.1%

    ・データ分析を行い、自社の 事業・業務に活かせる従業員:68.7%


上での回答からわかることは、マネジメントから開発者まで幅広く人材が不足しているということです。プロジェクトマネージャーのようなマネジメント側の人材も不足しています。

関連記事:プロジェクトマネージャーの転職市場状況について

未経験可のプロジェクトマネージャーの求人例

本記事内で未経験からでも応募可能なプロジェクトマネージャーの求人が存在することについては言及してきましたが、具体的にどのような求人が出ているのでしょうか。

下記では、レバテックキャリアに掲載されている求人・転職情報をもとに、事例を紹介します。事例内ではプロジェクトの企画・推進やディレクションした経験などが求められていますが、必ずしもプロジェクトマネージャーとしての業務経験は必要ありません。

たとえば、SEとして管理側の役割を担った、顧客と開発チームメンバーの間に入ってコミュニケーションを積極的に行った、といった経験でも十分にアピール材料になります。そのため、役職名にとらわれず、コミュニケーションを取ってマネジメントした経験などをしっかりアピールすることが大切です。

新規配達サービスの企画、推進

【業界】
・IT・通信
・販売・小売

【業務内容】
店舗型の販売・小売業を営む関連会社に向けた、新規配達サービスを企画、推進するプロジェクトマネージャー。
サービスの企画・提案から構築・運営支援までをプロジェクトマネージャーとして管理。

<具体的な業務内容>
・顧客要望のヒアリング
・サービスの企画、要件定義
・関連システムへの影響調査
・ステークホルダーとの調整
・サービスリリースまでのプロジェクト推進、管理

【求められるスキル・経験】
・何らかの開発経験
・ユーザー目線のプロジェクトマネージャーとして活躍できる方を求めており、IT業界の経験が無くとも可です。開発経験や開発の工程などの知識がある場合には優遇します。

【想定年収】
400~700万円

【勤務地】
東京都

システムの上流工程を担うプロジェクトマネージャー

【業界】
・IT・通信

【業務内容】
デジタルマーケティング業の顧客に向け、上流工程を取り行うプロジェクトマネージャ―

<具体的な業務内容>
・要求分析
・要件定義
・見積
・システム提案

【求められるスキル・経験】
・何らかのプロジェクトのリーダーとして、主体的にプロジェクトを推進した経験
※システム開発プロジェクトに限りません
・チームを率いて業務を成功に導いた経験

【想定年収】
450~800万円

【勤務地】
東京都

官公庁やビッグユーザー案件を推進するプロジェクトマネージャー

【業界】
・IT・通信

【業務内容】
官公庁やビッグユーザー案件、プライム案件におけるプロジェクト進行を担当。
コンサルティングや商談フェーズにも参画いただきます。

<具体的な業務内容>
・開発案件における企画立案~納品までのプロジェクトマネジメント
・顧客に向けたIT戦略立案、企画提案などのコンサルティング業務
・営業担当者と同行しての商談フェーズへの対応
・プロジェクトチームを構成するメンバーの育成

未経験入社からIT人材、PMとキャリアアップした方もいます。

【求められるスキル・経験】
下記のいずれかの経験
・開発/システム開発(Web系・オープン系・汎用系)におけるプロジェクト管理業務経験2年以上

【想定年収】
700~800万円

【勤務地】
愛知県

プロジェクトマネージャーの年収

厚生労働省が商標登録している職業情報提供サイト「jobtag」によると、プロジェクトマネージャーの平均年収は660.4万円です。IT業界の中でも、プロジェクトマネージャーの平均年収は高めです。

また、2024年1月22日時点でレバテックキャリアに掲載されている求人・転職情報より、職種「プロジェクトマネージャー」に該当する情報を30件抽出し、平均年収を想定してみました。この場合、プロジェクトマネージャーの平均年収は約726万円となります。

プロジェクトマネージャーの求人・転職情報

関連記事:プロジェクトマネージャーの年収とは?求められる経験やスキルも解説

プログラマーやSEと比べて年収は高い

同じくjobtagのデータから、プログラマーSEの年収を紹介します。プログラマーの平均年収は550.2万円、SEの平均年収は550.2万円となっています。これは、元としている令和4年賃金構造基本統計調査における各職種が職業分類(ソフトウェア開発技術者(WEB・オープン系))で同一のためです。

プロジェクトマネージャーと比較した場合は、100万円以上平均年収に差があります。

プロジェクトマネージャーからのキャリアパス

プロジェクトマネージャーからどのようにステップアップが可能なのか、キャリアパスをご紹介します。ひとことにプロジェクトマネージャーと言っても在籍している業界により選択肢が大きく異なるため、SIerに在籍している場合と、それ以外の場合に分けて解説していきます。

SIerの場合

SIerに在籍しているプロジェクトマネージャーのキャリアパスとして、以下が挙げられます。


  • ・社内の幹部職

    ・ITコンサルタント

    ・フリーランス

    ・社内SE

社内の幹部職

SIerのプロジェクトマネージャーから社内幹部に出世するコースは王道と言えるキャリアパスです。具体的な役職は企業によって異なりますが、マネージャ―、部長職、GM、CIO(最高情報責任者)、センター長、などが挙げられます。社内での出世だけでなく、他社に前記のような役職で転職するルートもあります。

ITコンサルタント

ITコンサルタントへのキャリアパスも一般的です。ひとことにITコンサルタントと言っても幅が広いですが、たとえば外資系のITコンサルタントは大規模なプロジェクトの最上流工程を担っていることも少なくありません。結果的にプロジェクトマネージャーの上の工程を担当することになるので、より上流工程を目指すという意味で良いキャリアアップでしょう。

フリーランス

フリーランスへの転身も増加傾向にあります。フリーランスになった場合、プロジェクトにはいろいろな立場で参加が可能です。プロジェクトマネージャーだけでなく、SEやPGとして参画する選択肢もあるでしょう。会社員時代より下流工程で参画しても、企業が仲介しない分手取りの報酬は多くなるケースもあります。

社内SE

ワークライフバランスを求める場合、社内SEという選択肢もあります。SIerでキャリアを積んだ人材への需要は大きいため、転職市場では有利です。社内SEはSIerに業務を発注するケースも多く、その際にSIerでプロジェクトマネジメント経験が役立ちます。

SIer以外の場合

Web業界、アプリ業界などのプロジェクトマネージャーの場合、以下のようなキャリアパスが考えられます。


  • ・ITコンサルタント

    ・フリーランス

    ・社内SE

    ・プロダクトマネージャー(PdM)


職種については同じ名前でも、SIerの場合と中身が少し異なることには注意が必要です。

ITコンサルタント

SIer以外のプロジェクトマネージャーからITコンサルタントへのキャリアチェンジを行う場合、大規模プロジェクトではなく主に中小企業を対象としたシステム、アプリ提案を行うコンサルティングが主な対象となります。プロジェクトマネージャーとして活躍していた際の経験を活かすため、顧客規模が似ている方が適しています。

フリーランス

フリーランスに転身する場合もITコンサルタントと同様の考え方です。SIerのような大規模プロジェクトや客先常駐ではなく、小規模なシステム、アプリ開発や受託でサイトやツール作成を請け負うようなフリーランスとして活躍しやすいでしょう。

社内SE

社内SEに関しては、どの業界でプロジェクトマネージャーを担当していた場合であっても応募先に差異はないでしょう。IT業界で培った技術力やマネジメント力を他業界で活かすキャリアパスです。

プロダクトマネージャー(PdM)

ITサービスを自社で提供する企業のサービスの責任者として活躍するプロダクトマネージャー(PdM)も有力なキャリアパスとなります。プロダクトマネージャーの場合、責任範囲はサービスの運営を含めたプロダクトを用いた事業全体となります。

Webサービスの提供は事業の形態として普及が進んでいますが、比較的新たな業態のため、その管理を行うプロダクトマネージャーは不足しているのが実情です。

プロジェクトマネージャーは一つ一つのプロジェクトが業務の区切りとなりますが、サービスを提供するプロダクトマネージャーの場合は継続的な機能追加や改善が必要とされるため、継続的に開発とリリースを繰り返しながらサービス運用を行います。より長いスパンでのシステム開発の責任者となるポジションです。

プロジェクトマネージャーに関するよくある質問

プロジェクトマネージャーに関するよくある質問と回答をまとめました。プロジェクトマネージャーを目指す参考になれば幸いです。

Q1. プロジェクトマネージャーは何歳からなれますか?

一般的にプロジェクトマネージャーに関する定義はなく、年齢に関する規定もありません。所属組織やプロジェクトにおいてプロジェクトマネージャー業務が行えることが、プロジェクトマネージャーになるための条件といえます。

ただし、スキルと経験が必要なため、30~40代がボリュームゾーンとされています。それを裏付けるデータとして、直近の令和五年度秋期のプロジェクトマネージャ試験の合格者平均年齢は38.1才です。

Q2. プロジェクトマネージャーになるには何が必要ですか?

プロジェクトマネージャーに求められるスキルや経験は幅広く存在します。代表的なものとしては下記があげられます。


  • ・システム開発プロジェクトでの実務経験

    ・システム開発に対する知見

    ・プロジェクトマネジメントスキル

Q3. プロジェクトマネージャーの平均年収はいくらですか?

2024年1月22日時点のレバテックキャリアのデータからは、プロジェクトマネージャーの平均年収は約726万円と推測できます。また、厚生労働省の職業情報提供サイトjobtagによると、平均年収は660.4万円です。

まとめ

この記事では、未経験者がプロジェクトマネージャーを目指すための方法を解説してきました。プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体の指揮官的な存在であり、IT業界でも特に需要が高い職種です。SEからキャリアアップ・年収アップを目指したい人にとってもひとつの選択肢となります。

またプロジェクトマネージャーからさらにキャリアアップするルートもあるので、ぜひプロジェクトマネージャーをキャリアパスのワンステップとして検討してみることをおすすめします。

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